【1179】 時の流れ私は一人で涙する  (計架 2006-02-25 20:24:10)


ちょっと反則気味ですが、【No:1054】の続きです。
あの終わりかたで納得している方は読まない方が吉です。
ちょっと位反則でも良いと言うかたのみよんでくれれば幸いです。






生きたいと願った。

死にたくないと思った。

でも、私が願ったのは、決してこんな形で生きていく事じゃなかったはずなのに・・・
















「う・・・ぅうん・・・」


けだるげな声を上げ、静かに身体を起こす。

頭がボーっとしているから、眠たげに目をこする。

暫くそうして、私は辺りを見回す。


「・・・あれ・・・? ここ、どこ?」


外を見る。

カーテンが有る所為で景色は見えないが、もうすぐ日が沈むのだろう。

空は薄く、茜色に染まっていた。

横たわっているベッドの周りはカーテンが引かれ、病室のようだった。


「・・・あぁ」


そうだ、飛行機が落ちて・・・

病院に運ばれたのだろうか? なんにしても生き残る事はできたらしい。

そんな事を考えながら、窓に引かれたカーテンを開く。

予想通り、空は茜色に染まり、かすかに闇がさし始めている。

一緒に飛び込んできた景色は、ほのかに懐かしく、しかしありえない風景を写している。


「ぇ?」


懐かしい、ありえない。

茜色に染められたそれは校庭。

まばらに居る生徒は運動部だろうか?

それは、懐かしいあの高等部に入るより以前。

お姉さまにあうより、瞳子にあうより以前。


「ここ・・・は・・・」


鮮明に思い出す。

この景色。

規律に厳しく、厳格なこの学校ではあまり来ることはなかったけど、それでも何度かお世話になったこの場所。


「中等部の、保健室・・・」


呆然と、私はそれだけ呟いた。










どれだけそうしていたのだろう。

ずいぶん長かったような、それで居てそれほど時間もたっていないような。


「あら祐巳さん? 目を覚まされたのですね?」

「・・・シスター?」


私の意識は、部屋に入ってきたシスターの声で引き戻された。


「私、何で・・・?」


こんな所にいるの?

そうたずねたかった。

でも声がでなかったか。


「HRの最中にね、突然倒れたんですよ。
 駄目ですよ、体調が悪いのに無理をしては」

「あ、はい。すみません」


心配そうな顔をしているシスターにそう答えて、考える。

飛行機が落ちて、ここに運ばれた?

そんなわけが無い。

なら、ここはドコ?

私は・・・ダレ?

私の記憶はドコまでがホントウ?

私は・・・・・・イマドコニイルノ?






帰り支度を済ませ、心配して送っていこうかというシスターの申し出を断り、私は街に出る。

公衆電話から、今から帰ることをお母さんに伝え、とぼとぼと歩く。

私の知っている声。私が知っている人。

・・・私を知らない人。

私はダレ?

何故ここにいるの?

だって・・・これなら・・・

あの人たちにあえないなら・・・

今、生きている意味がない。

私は独りで生きていけるほど強くない。

でも、今私は孤独だ。

誰も私を知らない。

そして、私はあの人たちにあえない。

だって、あの人たちは、お姉さまは、瞳子は、遠い未来(あした)に生きているんだから。

ふらふらと歩いていた街中で、立ち並ぶビルの片隅で。

独りだけ置いていかれた過去(じかん)の中で。

暫く、暗く染まった世界に包まれながら。

酷い孤独を感じながら。

私は、声も無く、動きも無く、唯静かに。


 涙を流し続けた・・・











はい、超祐巳逆行。
能力もカウンセラー設定も全て出てきませんが、続けるならそっちも有効に使おうかと思います。
・・・評判悪ければ続けないと思うけど。


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