年が明けて今日から新学期が始まる。
冷たい空気の中マリア様に手を合わせて今年最初のお祈りを捧げる。ううん、新年の目標を祈願する。
もうお姉さまの卒業も間近、その前に選挙もやってくる。
でも、今の私はそんな事よりも大切なことがある。
クリスマスに受け取ってもらえなかったロザリオをあの娘に受け取ってもらえるようにがんばらなくちゃ!
もっと貴方のことを知りたい。貴方に近づきたい。
合わせていた手をぐっと握りファイティングポーズ。
「マリア様見ていてください、福沢祐巳は松平瞳子を妹にしてみせます!」
意気が上がった私は足取り軽く鼻歌を歌いながら昇降口へと向かうのだ。
「女なんだろ?ぐずぐずするなよ〜
胸のロザリオに火をつけろ〜
祐巳は負けない一足お先
光の速さで明日へダッシュさ
若さ若さってなんだ?振り向かないことさ
愛ってなんだ?ためらわないことさ
瞳子〜あばよ涙、瞳子〜よろしく笑顔
私の妹、瞳子〜♪」
「・・・・・・まったく、あの方の能天気さは底無しですか」
マリア様の前で瞳子は頭を抱えていた。
今は最も登校する生徒が多い時間帯、瞳子も祐巳の後ろでそっと祈りを捧げていたのだが。
いきなりの宣言と能天気な歌声を、皆と一緒に聞かされることになろうとは思いもしなかった。
瞳子の顔、いや耳の先まで恥ずかしさで真っ赤になっていることだろう。
「悪い想いは天使の心で
すべて忘れて生まれ変わるのさ
祐巳と瞳子は名も無き花を
守り続ける薔薇さまになるのさ〜
若さ若さってなんだ?
あきらめないことさ
愛ってなんだ?くやまないことさ
瞳子〜あばよ昨日、瞳子〜よろしく未来
祐巳の妹、瞳子〜♪」
祐巳の歌声がマリア様の庭に響き渡り、新聞部が駆けつけるまであとわずか・・・・・・。