※ご注意: これはSSではありません。
ソレをご承知の上でお読みください。
その朝、彼は手元の部品を吟味しているうちに、工具が足りない事に気が付いた。
仕方が無い。 近くのDIY(日曜大工)用品店で買ってこよう。 今日は夕方から雨らしいし、早めに動こう。
彼は窓の外の、ようやく暖かさをまし始めた春の日差しを確認すると、薄手のジャケットを引っ掛けてバイクのキーを取り上げた。 目指すのは自宅から3kmほどの所にある大型店だ。
道中、すっかり温んだ風の感触を楽しみながら彼は思った。 これで杉の奴が花粉さえ飛ばさなければ最高の季節なのになぁ。 彼は重度の花粉症を患っていたので、正直この季節は出歩きたくなかった。
だが、アレが無くては午後の作業も出来ない。 はやくも詰まり始めた鼻のせいで辛うじて口で息をしながら、彼はせめて花粉空間の滞在時間を短くすべくアクセルをひねった。
交通法規の枠内で最大限加速した彼は、思ったよりも早く目的地に着いた。
近隣最大級のDIY用品店である。 単に一巡りするだけでも5分はかかる、ましてどこにあるのか解らないものを探しながら棚の一つ一つを確かめていけば一帯何分かかる事か。 ある意味迷宮のような店である。
彼は入り口を入ったところで、店舗内をざっと一望して思った。
だめだこりゃ。
競争の激しい業界のせいか、新規の品々が入っている。 だけでなく、模様替えまで行われている。 昨年末に訪れてから約2ヶ月しか経っていないのに、もう何がどこに行ったのやら、訳が解らない。
彼は自力発掘をすぐさま諦め。すごすごとオレンジ色のスタッフジャケットを着た年配の女性に声をかけた。
「すいません。 ハンディ瞳子はどこに有りますか?」
「あ、それなら電気機具ですから、2つめの通路をずーーっと行って、No21の棚になります。」
「ああ、どうも」
偶にしか来ないが、ここはスタッフの対応が良いので気に入っている。
言われたとおり、2つめの通路に入ってつらつらと歩く。 左右の棚を冷やかしながら、来るたびに増えてゆくアイテムに感心する。 あ、ねじ山ゲージがある、買っておこう。
ボンヤリ歩いているうちに、ふと気になった。
あれっ?
さっきなんて言って訊いたっけ?
”ハンディ瞳子”??
ハンディ瞳子 って言っちゃわなかったか? え、何で通じちゃうの? あの小母さん何者? この先に一体なにがあるの? ハンディな瞳子が陳列されてるのか?
いわく言いがたい悪寒に襲われながら、彼は冷やかしをやめて目的の棚へと足を速めた。
16、17、18、、、 そして21!
そこにあったのは、工事現場などでよく使われる、無線免許の必要ない低出力ハンディトーキだった。
はは、は、 ハンディ・ ”トーキ” かっ!
はーー。 よかった。 本当にハンディな瞳子が並んでいたらどうしようかと思ったよ。
って、じゃあ、今日の目的のブツはどこにあるんだ?
更にウロウロする事20分。 売り場の反対側、7番の棚で見つけました。 充電式のハンディ ”ドリル”。
それにしても、ネタでなく、素でドリルを ”瞳子” って呼んじゃうのって。 人としてかなーり問題が無いか? > 自分。
朝から、自分自身の一般人としての資質にそこはかとなく不安を覚える春霞の土曜日は、こうして始まったのだった。
、、、多分鼻が詰まっていたから、聞き間違ってくれたんだろうな、あの小母さん。
憎むべき花粉症に、救われちゃったのかもね。 不本意ながら。
◆この話は、完全な ”ノン” フィクションです。 実在の人物・団体とは思いっきり関係してます。◆
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とか。 (泣