言えなかった言葉。
伝えられなかった気持ち。
想いは昇華して、愛情になる。
それは、『好き』とはちょっと違って。
ただ純粋に、幸せになって欲しいと思う心。
たとえ、その隣にいるのが私じゃない他の誰かだとしても。
少しばかりの心の痛みと共に、私はきっと笑うことが出来るはず。
だから、私はこの想いを閉じ込める。
あの人をもうこれ以上苦しめたくないから。
私が『妹』になったら、皆の祐巳さまを見る目が、きっと変わってしまうから。
それは私には耐えられない事。
でも・・・最後に一度だけ。
想いに鍵を掛ける前に、たった一度だけ。
私は仮面をはずす。
「祐巳さまが好きです」
小さく細いその声は、とても自分のものとは思えなく。
「瞳子は、祐巳さまが好きです」
もう一度紡いだ言葉は、思いがけず自分の心を揺さぶる。
「祐巳さまの事が、大好きです」
溢れ出た涙を止めることも出来ず、私はうずくまる。
閉ざすはずだった心、断ち切るはずだった想い。
「たすけてください・・祐巳さま」
再び仮面を被ることも出来ない瞳子を、月の光だけが優しく包んでいた