初投稿の暦です。
ちょっと異色なマリみて書いてみました。
魔法少女☆志摩子
「ねえ、乃梨子」
「なあに、志摩子さん」
夕暮れの教室。下校時刻も差し迫った時分、私は志摩子さんとふたり。
「私は乃梨子のお姉さまとしてちゃんと出来ているかしら」
「はは、志摩子さんがちゃんと出来てなかったら他のどんな上級生もちゃんと出来てないよ」
志摩子さんは夕暮れが似合う。
「そう、よかったわ」
「そうそう自信もちなよ」
これでもかってくらい儚げな様子が失礼なくらいピッタリと嵌る。
「私こそちゃんとつぼみとして出来てるか不安だよ」
「それこそ大丈夫よ」
神様が未完成なまま投げ出した、この世界の最後の1ピース。
「乃梨子はどこに出しても恥ずかしくない立派なつぼみよ」
そう言ってたおやかに笑う。
「照れちゃうな」
ああ、願わくばこの人と一緒に世界に組み込まれたい。
「ねえ、乃梨子」
「なあに、志摩子さん」
志摩子さんには雪も似合うな。
「何かして欲しいこと、あるかしら」
白薔薇だからってわけじゃないけど。
「もうすぐ誕生日でしょ」
「覚えててくれたんだね」
―――志摩子さんとひとつになりたい。
「当然よ、私の誕生日のときのプレゼントはうれしかったわ」
「どういたしまして」
この人と一緒にいれば何でも出来るような気がする。
「じゃあ、志摩子さんとひとつになりたいな、なんちゃって」
「そんなことでいいの」
世間知らずなところも好きだ。
「って意味分かってる?」
「ええ、もちろんよ。いらっしゃい」
志摩子さんの手が私の頭にのびる。
「さあ、力を抜いて」
「う、うん」
志摩子さんの胸に抱かれながら力を抜くと―――意識が暗闇に落ちた。
ぐるぐると螺旋階段を転げ落ちる。
落ちながら何もかもが脱げる。
裸になっても終わらない。
私の心も何もかもが脱げる。
溶ける解ける融ける。
ああバターになる童話があったな、と最後に思った。
「乃梨子」
「……あ、志摩子さん」
衣服は脱げてなく、もちろん私は溶けたわけではない。
相変わらず志摩子さんの胸に抱かれたまま。
「どうだった」
「うん、なんか怖かった」
そうとしか言いようが無い。
「私が私じゃなくなるみたいだった」
「そう、それでもひとつになりたい?」
もうあんな怖い思いはやだな。
私がいて志摩子さんがいる、それが一番いい。
「やめとくよ、なんか志摩子さんにもう会えなくなりそうだったし」
そう、と言って志摩子さんは笑った。
「でも駄目」