【No:2520】 【No:2528】 【No:2529】の続きというより変奏曲。
翌週。
「わかったわ。リリアンって聞きしにまさるおもしろい、もとい怖ろしいところね。次は気をつけるようにするわ。ガチでネコな白薔薇のつぼみ」
「先生までーーーーーー!!」
悪い予感がした。とんでもなく悪い予感がした。
小テストが配られる。おそるおそる問題を見る。
『Q3 次の単語を使って文を書け』
……
2. rosebud
ふむ。先生も懲りたか。おそろしくストレートな問題を出したじゃないか。
さすがにこれならなにもないだろう。
すぐ後ろで、なにやら紙つぶてが特徴ある髪型の生徒から発射されたのにまだ気づいていないしあわせな乃梨子だった。
「またですかあ。こんどは何があったんですか?」
授業が終わってまた職員室に呼び出され、おののく乃梨子。注視する周りの先生方。
その目線が心なしか生暖かいのは気のせいか。
「ま、まあ……見てちょうだい……」
いささかうんざりする新米英語教師。
どんっ、とプリントの山を乃梨子の前に放り出す。
「意味はあっているといえばあっているんだけどねえ。ここまで来ると問題かしら」
『仏像趣味の蕾』
『仏像趣味でガチの蕾』
『仏像趣味でガチでネコの蕾が姉を見る目はまるで野獣』etc.
「あってるのかよ……先生……それも白薔薇省略で確定かよ……」
力尽きた白薔薇のつぼみこと二条乃梨子は、今週最初の機能停止に陥った。
† † †
当然。
薔薇の館はかなり荒れ模様だった。特に乃梨子が。
どうみても、ど〜ぉみてもわかってやってるとしか思えない。
「なっていませんわね」
「瞳子?」
「『つぼみ』は平仮名が正解だよね」
「はいはい。そうですね、祐巳さま。英語で書いちゃいけませんね」
また瞳子にボロクソに言われてなんだかうれしそうだし。
「まったく」
なによ。
「瞳子、『仏像趣味の白薔薇の蕾はガチオブガチ百合100%で姉を見る目はまるで野獣』ってちゃんと書いて回しましたのにぃ。みなさん不正確ですわ」
「おまえかーーーーーーー!」
「へえ、乃梨子ちゃんて……ちょっと意外だね」
「祐巳さま? だから何がどう意外なんですか!?」
一方で全くわかっていないらしい志摩子さんの、きょとんとした顔はかわいい。絶対にかわいい。志摩子さんこそ "The white rose of virginity innocence" そのものだ。うん、そうにちがいない。
「ふーん。じゃあ "The Rosebud is a rosebud." は、『白薔薇の蕾は仏像趣味のガチオブガチ百合100%で姉を見る目はまるで野獣』って訳すのね」
「由乃さん! えーと、よく意味はわからないけどそれは言い過ぎだわ」
「ガチでタチの志摩子さんには言われたくないわね」
「タチ?」
「そこっ! 何度もいらんこと教えないーーー!」
だめだ。だれか暴走特急のブレーキかけて。お願い。
結局、何もわかっていない様子の志摩子さんは、また天使の微笑で乃梨子に言ったのだった。
「それで乃梨子は、私がタチがいいの?」
「!!」
乃梨子、通算4度目の機能停止。
あと何回あるんだろう?
思いついて一発タイトル。人のネタに乗っかる癖……ごめんなさい。