つづいています。
【No:2557】→【No:2605】→【No:2616】→これ。
「なんだかお腹がすいたわ」
ひとしきり祐巳を叱ってから祥子さまが言った。
まだ晩ご飯を食べるには早い時間だけど、あれだけ声を出すとお腹の減りも早くなるのかな、なんて祐巳が考えていると、
「やっぱり祐巳ちゃんは、祥子さんの食欲増進剤ね」
清子小母さまが嬉しそうに手を叩いて笑った。
その言葉に、祐巳は梅雨のあの日を思い出した。
すれ違いお互い辛い思いをしたけれど、結果的には二人の絆を深めた去年の梅雨。
精神的に参っていた祥子さまは祐巳が会いに行くまでろくに食事を取っていなかった。おそらく、今回もあの時のような状態になっていたのだろう。
今頃そんな事に気付く自分が情けなくて、祐巳はうつむいて唇を噛んだ。
やっぱりもっと早く行動を起こすべきだった。極度に落ち込んだ祥子さまがどうなるか、自分はあの梅雨の日に学んだはずだったのに……。
しょんぼりしている祐巳の手に、ふと温かいものが触れた。祥子さまの手だった。
「祐巳も一緒に、何か食べましょう」
祐巳を見上げる祥子さまは、慈しむようなまなざしをしていた。だから祐巳は気付いてしまった。自分がいつものように百面相をしてしまった事に。
でも祐巳が尋ねたところで、たぶん祥子さまはとぼけるだろう。優しい人だから。
祐巳は小さな手をそっと握り返して「はい」と笑った。
これからずっと、私は祥子さまに寄り添っていこう。だって私は妹なのだから。妹は支えなのだから。
祐巳はそう心に決めた。
食事を済ませた後、二人はまた祥子さまの部屋へ戻ってきた。
清子小母さまとは食堂で別れた。きっと小母さまなりに気を遣ってくれたのだろう。
祐巳は久しぶりに祥子さまと二人っきりになれた事を喜んでいたが、できれば行きだけじゃなくて帰りも手を繋いでほしかったなぁ、なんて欲張りな事を考えてもいた。
「どうかしたの? 祐巳」
「い、いえっ。何でもありません」
ふかふかしたベッドに腰掛けた祥子さまが、隣に座る祐巳をキョトンとした顔で見上げてくる。
その仕草の愛らしさに、祐巳は頬を赤らめながら首をブンブカ横に振った。
ほんの少し首を傾げた祥子さまは「おかしな子ね」と微笑んだ。
なんだかもう、わざとじゃなかろうかと疑いたくなるほど可愛すぎる祥子さまに、祐巳は己の内から噴出してきそうな良からぬ衝動を抑えようと必死だった。
祐巳を辛うじて持ち堪えさせたのは『犯罪』の二文字だった。
じゃあ祥子さまが元の姿だったらかまわないのかい? というツッコミは入れないでおこう。それが大人の優しさってもんだ。
祐巳がそうやって己と闘っている姿を祥子さまは、自分のシッポを追いかけてクルクル回っている愛犬を見るような目で眺めていた。
だが、祐巳がその視線に気付く事はない。なにせ、いっぱいいっぱいだから。
時折、苦悩に満ちた表情で「頑張れ私っ……!」なんて呟きを漏らす祐巳を、優しいまなざしで見つめ続けている祥子さまはかなり度量が広いと思う。
「私が捕まったら……お父さんやお母さん、それに祐麒にも迷惑がっ……!」
祐巳はまだ闘っている。
このまま果てのない死闘を続けるのかと思いきや、祐巳は悪い夢から覚めたみたいに急に我に返った。そしてなにやら首をひねりだす。
「……あれ?」
「どうしたの?」
「いえ、あの……、何か大事なことを忘れてるような気がして……」
そう言いながらも、祐巳はその『何か』を思い出そうと記憶を探った。
祐巳は考えている……考えている……考え「あーーーーっ!!」……思い出した。
のはいいが、つい勢いよく立ち上がってしまったものだから、隣に座っていた祥子さまが驚いてベッドから落っこちそうになってしまった。
しかしそこは骨の髄まで『祥子さま大好き症候群』にかかっている祐巳の事。祥子さまの可愛らしい悲鳴を聞くやいなや、加速装置でも付いているのかと疑いたくなるほどの動きで小さな身体を抱きとめた。
なんでも平均。という祐巳のキャッチフレーズは、祥子さまが絡んでいない時限定のようだ。
「大丈夫ですかお姉さまっ!?」
「……えぇ。大丈夫よ。もう、びっくりさせないでちょうだい」
「すいません……」
「あんな大声をだして、いったいどうしたというの?」
「両親に電話をする約束をしていたのに、すっかり忘れてまして……」
ベッドに座りなおした祥子さまの質問に、祐巳は床に膝をついた格好で答えている。
べつに粗相をしたから跪いているわけではない。ちょっと見上げる位置に祥子さまがいる今の状態は、祐巳にとってとても落ち着ける体勢なのだ。
出逢った時からずっと身体的にも性質的にもそうだったのだから、当然ではある。
祐巳から事情を聞いた祥子さまは「それならすぐにご両親に電話をかけた方がいいわね」とベッドからぴょんと飛び下りた。
その動作を見た祐巳は『うはっ!可愛い!』と正気を失いかけたが辛うじて踏みとどまった。ただ顔は残念なほどニヤけていたが。
今この場に蔦子さんがいたら、一瞬にしてフィルムを使いきってしまいそうなくらいの残念ぶりだったが。
「電話をお貸しいただけるだけで十分ですよ」
わざわざついて来てもらうのも悪いと思った祐巳は、部屋で待っていてくださいと祥子さまに言った。
――が、
「……祐巳は私といるのがイヤなの?」
「へ?」
祥子さまはなんだか怒ったような拗ねたような顔で祐巳を見上げている。
思いがけない事を言われてポカンとしている祐巳に、祥子さまは「どうなの!?」と詰め寄ってきた。
「そ、そんなわけありません! 私がお姉さまといるのがイヤだなんて……そんな事、絶対にありえませんから!」
むしろ一生お傍にいたいくらいです!
というのは心の中だけで叫んでおいた。
必死に言う祐巳をじぃっと見つめた祥子さまは、すぐにぷいっと横を向いてしまった。
「なら、いいじゃないの。一緒に行ったって」
「は、はい。そうですね……」
祥子さまは祐巳を置いて、とことこと部屋を出ていってしまった。
小さな背中を慌てて追いかけながら、祐巳は胸をざわつかせた。
これはもしや……、いやまさか……あのお姉さまが……? でもでも、ひょっとすると……、
私に甘えてくれているのかな……?
そんな事を考えていた祐巳の顔は、誰もが生温かいまなざしをおくらずにはおれないほどの蕩けっぷりだった。
そんな顔でぴょんこぴょんこ部屋を出ていった祐巳が、扉の向こうで待ってくれていた祥子さまに叱られたのはいうまでもない。
祥子さまのベッドに腰掛けた祐巳は、ツインテールじゃない自分の髪をそわそわといじっていた。
お泊りは初めてではないが、今日はちょっとわけが違う。
お正月にお邪魔した時は聖さまが一緒だったし、なによりそれぞれお布団を敷いてそこで寝た。
けれど今日、祐巳は祥子さまのベッドで寝る事になっている。
もちろん祥子さまと一緒に――。
両親への電話も済み(祥子さまが清子小母さまに頼んでくれたので、親同士あっさり話がまとまった)無事に外泊許可をゲットした祐巳は、ずっと祥子さまの傍にくっついていた。
お正月に泊まった時のようにかわりばんこにお風呂に入り、おしゃべりをしてすごした二人。で、そろそろ夜も更けてきたことだし寝ましょうか、というところで問題発生。
――今夜、祐巳が寝る場所をどうするか、だ。
祐巳はてっきり前回と同じく、和室で祥子さまと一緒に寝るものと思い込んでいたのだけれど、その案は祥子さまの「ベッドで寝たい」という発言であっさり却下された。
なら、お布団を一組祥子さまの部屋に持ってきてベッドの隣に敷くのだろうなと祐巳は思った。いくらなんでも、慣れないお家で一人ぼっちの夜を過ごすのは祐巳も遠慮したかったから。
でもそうなると、横になった時に高さに差がありすぎてお姉さまの寝顔が見れないなぁ……。
なんて考えて、顔だけでなく全身から残念オーラを放っていた祐巳が祥子さまにお布団をどこから持ってくればいいのか聞いたところ、不思議そうな顔で言われたのだ。
「一緒に寝ればいいじゃない」――と。
祐巳はめまぐるしく表情を変えた後、そわそわタイムに突入。
そして今にいたる。
「祐巳は茶色がいいのよね?」
髪の毛を乾かし終えた祥子さまが祐巳に聞いた。
そわそわが一気にドキドキに変わった祐巳だったが、祥子さまのお顔を見るなり、あれ?と首を傾げる。
「えっと……」
普段の祐巳ならば、祥子さまが自分のスタイルを憶えていてくれた事が嬉しくて「はい!茶色がいいです!」と元気よく返事をしそうなものだが、今はなにやら考え込んでいる。
なんとなく感じたのだ。祥子さまは茶色じゃない方がいいんじゃないかって。
祐巳に気を遣って聞いてくれているけれど、本当は真っ暗にしたがっている。そんな気がした。
「あの……、絶対に茶色でなくてはいけないというわけでは……」
祥子さまは真っ暗の方がいいんじゃないですか?
そう一言聞けば済む話なのかもしれないが、祐巳の隠された特殊能力『ご機嫌ななめを事前に阻止!(対祥子さま限定)』が発動、警鐘を鳴らしたため、日和った言い方しかできなかった。
祥子さまはさりげなく「そう」とだけ返事をしたが、祐巳の目には明らかにホッとしているように見えた。
どうやら祐巳の特殊能力は正常に機能しているらしい。
「今日は暗くして寝ましょう、お姉さま」
「でも……、祐巳はそれで平気なの?」
「え? 平気です……けど?」
お姉さまがそうしたいのなら、部屋の電気くらい消したっていい。祐巳はそう思ったのだが、祥子さまは何か引っかかっているようだ。なんだか困ったような顔で祐巳を見上げている。
祥子さまは困った時のお顔も綺麗だけれど、できればいつも笑っていてほしいなぁ、なんて日ごろから思っている祐巳としては、これは由々しき事態だ。
しかも今の祥子さまは幼女のお姿をしている。いたたまれなさ五割り増しだった。
自分は何か間違えたんだろうか。
祐巳がおろおろしていると、祥子さまが困った顔のまま言った。
「だって、あなた最近怖い夢を見るのでしょう? 暗くしたらよけいに怖くなるのではなくて?」
「あ……」
怖い夢を見るから一人で眠りたくない、そんな小さい子みたいな事を言う妹を、祥子さまは気遣っていたのだ。
祥子さまは暗い部屋で眠りたがっている。これは間違いない。
でも、祐巳が怖がっているのに電気を消すなんてできない。だから困っている。
胸が、ぎゅっとしめつけられた。
こんなに大変な目にあっているというのに、祥子さまは祐巳を心配しているのだ。
祐巳はしゃがみ込み、祥子さまの小さくて温かい手に触れた。
本当は胸のしめつけと同じくらいの強さでぎゅっとしたかったけれど、そんな事をしたら祥子さまに痛い思いをさせてしまうから、だからそっと包み込むようにするだけにしておいた。
「私なら大丈夫です」
「……本当?」
「はい。だって祥子さまが傍にいてくださるから。だから怖くなんてありませんよ」
しばらく祐巳をじぃっと見つめていた祥子さまだったが、やがて納得したように笑ってくれた。
「そう。じゃあ、もう寝ましょうか」
「はい」
部屋の明かりを消して、二人はベッドに横になった。
祥子さまのベッドはセミダブルだったから、女の子二人が並んで寝転がってもそんなに狭さを感じない。
まして今は平均的な体型の女子高生と幼女の二人なわけだから、縮こまって寝る必要なんてちっともなかった。
そんなわけで、一緒に寝ると聞いた時に祐巳がうっかり想像(妄想?)してしまった、お姉さまと寄り添いあって眠る図、というのは実現しなかったわけである。
ベッドの中で祥子さまとぴったりくっついた状態……。嬉しいけれど、ドキドキしすぎて絶対眠れない。
そんな不安(むしろ期待)を抱いていた祐巳は、ほっとしたような、残念なような、複雑な心境だった。
「おやすみなさい祐巳」
「おやすみなさいお姉さま」
真っ暗な部屋の中、祐巳は祥子さまの方を向いていた。
まだ目が慣れていないから、祥子さまの顔も何も見えない。しばらく目を閉じてから、もう一度祥子さまを見てみたけれど、ちっとも見えない。
祐巳は目を閉じている時間を長くしてみることにした。
お姉さまはやっぱり仰向けでお休みになっているのかなぁ……。
お正月を思い出しながら祐巳はそんな事を考えていた。
……このベッド……なんだかいい匂いが……する……なぁ…………。
大好きな祥子さまの香りに包まれた祐巳は、目が暗闇に慣れる前に眠ってしまった――。
祐巳が眠ってしまってから、どれくらいの時間が経っただろう……。
胸の辺りがもぞもぞする感覚に、祐巳は夢の世界から呼び戻された。
まだ半分眠っている祐巳は自分がどこにいるのか分からなかった。祐巳のぼんやりした頭は、それを思い出す前に自分の胸元にくっついている温かいものの存在に気付いた。
……あれ?……なんだろう?
考えるより先に祐巳はそれに触れてみた。
さらさらしていて……、やわらかくて……、そしてやっぱり温かい。
ボーっとしながらも祐巳は、手ざわりが心地良いその温かいものをなでなでし続けた。
「……ごめ……なさい……」
「?」
祐巳の胸にくっついている温かいものがしゃべった。
ここにきてようやく祐巳が覚醒した。
「……お、お姉さま!?」
祐巳の胸に、祥子さまがしがみついている。それはもう、ぎゅうっと。
『お姉さまが顔を埋めるような、そんなっ……そんな立派なものじゃないですからーーっ!!』
祐巳は力いっぱいパニクっている。
口に出して叫ばなかっただけ偉かったね、と褒めてあげるべきだろうか。いささか判断に迷う。
「どどどどうなさったんですかお姉さま!?」
「……起こしてしまって……っく……ごめ、なさい……」
「!?」
祥子さまが泣いている。
祐巳の頭は急激に冷えていった。逆に氷のように固まっていた祐巳の身体から力が抜けていく。
自分にしがみついて震える小さな身体……。
もれ聞こえてくる押し殺した嗚咽……。
この人を護ってあげたい。祐巳はそう思った。強く強く思った。
泣きやんでもらいたくて、笑ってほしくて、祐巳はやさしく祥子さまの髪を撫でる。
お姉さま相手に失礼かな……。
ちょっとだけ心配になったけれど、祥子さまは怒ったりせず、じっと祐巳に身を任せていた。
祐巳は祥子さまの震えが治まるまで、ずっとそうしていた。
しばらくして落ち着いたらしい祥子さまは、気まずそうに祐巳の手からもぞもぞとすり抜け背中を向けてしまった。
「……みっともないところを見せてしまったわね」
膝を抱きしめた胎児のようなポーズで、祥子さまがぽつりと言った。
その小さな背中に、祐巳は胸を掻き毟られるほどの愛おしさを感じた。
どんな言葉を選んだら、この気持ちが伝わるんだろう。
何を言えば、届くだろう。
想いだけが溢れ出し、祐巳は黙り込む。
どうすれば愛しい人に笑ってもらえるのか……。それを必死に考えながら。
「……本当にごめんなさいね」
だから祐巳は、
「もう大丈夫だから……」
祥子さまの事を、
「おやすみなさい……祐巳」
――何も言わずに抱きしめた。
「ゆ、祐巳……?」
祥子さまは驚いて身じろぎしようとしたけれど、ぎゅっと抱きしめた祐巳の腕から逃れる事はできなかった。
もちろん祥子さまが苦しくないよう祐巳は細心の注意を払っている。けして力任せに捕まえているわけではない。
だから祥子さまが本気で逃げようと思えばできたはずだ。けれどしなかった。
「祐巳。私ね……」
「はい」
「眠るのが怖いの」
「……」
「いつもいつも目が覚めるたびに、私は少しずつ幼くなっていく……。夜、目を閉じるのが怖い。次に目を開けた時、取り返しのつかない事になっているんじゃないかって……、自分で動くことすらできない状態になっているんじゃないかって……、そう思うと怖くて怖くてどうしようもないのよ……」
祐巳の腕に小さな手が触れた。
「私は朝を迎えるのが怖い。今日が終わってしまうのが怖いの……っ!」
小さな手に掴まれた祐巳の腕が、痛みを訴えた。
けれど祐巳は手を振り払ったりはしない。絶対に。
この痛みは祥子さまの痛み。祥子さまの心の痛みだ。それを祐巳が拒絶するなんて、あり得ない。
「お姉さま。こっちを向いていただけませんか?」
「……」
「お願いします」
祐巳の腕の中で祥子さまが身体ごと振り返った。
茶色じゃないからはっきりとは分からないけれど、祥子さまはたぶん泣いている。
祥子さまが部屋を暗くしたかった理由が、ようやく祐巳にも分かった。
祐巳は祥子さまの濡れた頬をそっとさすった。
「私にはお姉さまの恐怖や苦しみを取り払うチカラはありません。でも――」
「……でも?」
「傍にいます」
「……」
「ずっとお姉さまのお傍にいますから。だから、お姉さまの痛みを私にも分けてください」
「……祐巳。まったく……、私は姉失格ね。妹にこんな事を言わせるなんて」
「いいえ。失格なんかじゃありません。祥子さまは世界中で唯ひとり、私がお姉さまとお呼びしたい方です」
「私だって……、でもだからこそ、あなたに自分の痛みを押し付けるなんてまねできない」
「お姉さま。どうか私から幸せを奪わないでください」
「え?」
「お姉さまからいただけるすべてが私の幸せなんです。喜びも哀しみも、苦しみや痛みだって、それがお姉さまのくれたものなら、私は幸せなんですよ?」
「……ねぇ、祐巳」
「なんですかお姉さま?」
「私が眠るまで、抱きしめていてくれる?」
「眠っている間もずっと抱きしめていますよ」
祥子さまが祐巳の胸にぴたりとくっついてきた。
祐巳も変にうろたえたりせず、祥子さまの小さな身体を包み込むように抱きしめる。
「祐巳は温かいわね」
「お姉さまだって温かいですよ」
「そう。じゃあ、きっとよく眠れるわね」
「はい」
「おやすみなさい祐巳」
「おやすみなさいお姉さま」
次の日、祥子さまの若返りは止まっていた。
でもそれが次の段階への前触れだったなんて、この時は誰も気付いていなかったのだけれど――。