【3285】 速報最近情報  (bqex 2010-09-10 21:11:43)


実写映画の話です。情報はうp時のものです。


 9月9日。
 乃梨子はじっと某webサイトを見つめていた。

「どうしたの?」

 と乃梨子の実の妹が声をかけてきた。

「うん。これ……これ、ちょっと見てくれる?」


【内容】

映画「マリア様がみてる」最新情報!
書き下ろし小説付前売り券(限定1万セット)、予約受付中!
小説では、祥子と祐巳のシークレット・エピソードが読めるよ!
加えてA4サイズの特製クリアファイルも付いてくる!

(詳細は「マリア様がみてる」映画オフィシャルサイトをご覧ください)

【内容ここまで】


「……まあ、たしかにお姉ちゃんは白薔薇派だし、志摩子さんも出番が少なそうだけど、買うんでしょう?」

 と妹がいうと、乃梨子はため息をついた。

「あのさ、映画をやる場所が東京都、大阪と、名古屋じゃない? いくらなんでも、買えないよ」

 映画の時系列に合わせてあるので、現在乃梨子は中学3年生だった!

「ええっ? 来年の春に京都まで行って受験に失敗するお姉ちゃんらしくないよ。東京まで見に行けばいいのに」

 妹は突っ込んだ。

「ネタバレ全開の言い方だね。そこを突っ込んだら予告SSが成り立たないからそこはスルーして。映画が来ないのは仕方がないから、映画のチケットは買わないでひびき先生のイラスト目当てに『マリア様がみてる』の無印から『いとしき歳月(後)』まで、8冊のセット、『マリア様がみてる 第一期豪華BOX』買おうっと」

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ。お姉ちゃん。プロト版主人公なのになんで自分の入学前のエピソードだからって、買わないかな。志摩子さん、出てるでしょう?」

 乃梨子が初登場するエピソード『銀杏の中の桜』はこの世に登場した『マリア様がみてる』のエピソードで、最も早く発表されたものだった。

「イラストだけ、コピーした」

 著作権の保護と作者の生活の安定のためにもそういう真似はやめましょう。

「酷い! お姉ちゃんは酷い! このSSの作者さんですら『マリア様がみてる』の原作単行本全巻はもちろん、百合派なのにBL本の『お釈迦様もみてる』の全巻まで持ってるのに」

「って、いうか。この人が一冊も読んでなかった方がびっくりするわ」

 買いそびれたり、お金がなくって後回しにしてるうちに売り切れちゃったものいっぱいあるよ〜(笑)

「このSSの作者の個人事情は置いておいて、本当に『マリア様がみてる 第一期豪華BOX』買うの?」

「うん」

 と、乃梨子は予約ボタンを押した。
 キャンセルはできませんよと念を押されて進んだのは昨日の話。


 9月10日。
 妹が映画オフィシャルサイトサイトをチェックして叫んだ。

「お姉ちゃん! 千葉に『マリア様がみてる』の映画が来るよっ!」

 くどいようだが、映画の時系列に合わせてあるので乃梨子は千葉に住んでいた!

「……マジ?」

「うん。早く【ここで実在のコンビニ系列グループ名書いちゃうとさすがにがちゃがちゃSS掲示板の規約に触れちゃうだろうからカットって、オイイイィ!】に行ってチケット予約しようよ」

【追記】東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、北海道、福岡は決まったぞ。

「しまったああっ!! 千葉に来ないと思って、昨日『マリア様がみてる 第一期豪華BOX』買ってしまったああっ!!」

 乃梨子は頭を抱えた。

「お姉ちゃん……やっちゃったね」

「こうなったら、魔法少女志摩子を呼ぶ!」

「ちょ、ちょ……」

 妹が止めようとしたが、乃梨子は必死に「志摩子さーん! 志摩子さーん!」と叫んでいた。

「はーい」

 志摩子さん、窓から登場。

「って、ここ何階だと思ってるの?」

 妹は突っ込んだ。

「ふっ、原作に二条家の描写はないので、今なら窓から入ってこられる高さもアリなのだよ」

 乃梨子はちょっとニヒルに決めてみたつもりだったが、妹から見たら決まってなかった。

「って、普通の志摩子さん呼んでどうするの? 『魔法少女志摩子』でしょ、呼びたかったのは」

「あ」

「え? 『魔法少女志摩子』に会いたかったの? 仕方がないわ。乃梨子、乃梨子の実の妹さん、ちょっと後ろを向いていただけるかしら?」

「はーい」

「って、私のキャラクター名『乃梨子の実の妹』かよ。仮名でいいからつけろよ。こんなに喋ってるのに」

 乃梨子は素直に、乃梨子の妹はブツブツ言いながら後ろを向いた。

「『こんな時は秘密の呪文! ロサロサ・ギガギガ・ギガンティア!』」

 効果音『シャラララ〜ン』(っていうか、ラジオドラマのあの音)が鳴る。
 志摩子、急いで着替える。

「乃梨子、ごめんなさい。背中のファスナーが引っ掛かっちゃって……手を貸してくれる?」

「あ、はい」

「って、変身じゃなくて着替えじゃんか! しかも、手かかってるし!」

 乃梨子の妹は突っ込んだ。

「志摩子さん、ファスナーに髪の毛が挟まっちゃってて、うまくとれないんだけど」

「挟まった髪だけ、切っちゃってもいいわ」

「ハサミ取ってくれる?」

「って、私の手も借りるのかっ!」

 と、言いながら、乃梨子の妹はハサミを乃梨子に渡した。
 乃梨子は挟まってどうしようもない髪だけを切って、ファスナーを上げようとした。

「あ、ごめん。一回下げないと上がらないみたい」

「いいわ」

「お姉ちゃん、それって趣味じゃないよね?」

 乃梨子、ちょっとファスナーを下げて、挟まっていた髪を針で取り除き(再び乃梨子の妹の手を借りた)ようやくファスナーを上げる。

「お待たせしました」

「あ、魔法少女志摩子」

 乃梨子はお約束の台詞を言った。

「って、志摩子さんが着替えただけじゃん! しかも、この突っ込みまでの道のりが長すぎる!」

 乃梨子の妹は突っ込んだ。

「まあまあ」

「で、なにを困ってるのかしら?」

「あ、うん。『マリア様がみてる 第一期豪華BOX』をキャンセルしたいんだけど」

「乃梨子、サイトの規約で、『サイト側に不手際や不都合があっての注文取り消しは受け付けますが、お客さまのご都合でのキャンセルはできません』って書いてあるわ」

「そこを魔法で何とか!」

 乃梨子は魔法少女志摩子を拝んだ。

「乃梨子、何でも魔法で出来ると思ったら大間違いよ! 魔法は万能ではなくて、ちょっとしたお手伝い程度に考えて頂戴」

「ま、そうだよね」

 乃梨子の妹は相槌を打つ。

「魔法で宇宙を無から創造したり、死んだ人間を片っ端から生き返らせたり、不老不死の人間を生み出したり出来ないでしょう?」

 魔法少女志摩子は真面目に語る。

「って、そんな壮大な物語じゃないし! これ、宣伝SSだから! 厳密に言えば、具体的な店の名前とか出したらマジでここのサイトの規約に引っかかるから、『これこれこういうことがありますよ』ネタで遊んでるだけだから!」

 乃梨子の妹は突っ込んだ。

「うう、志摩子さん。私は間違ってた。そうだね。安易に魔法に頼っちゃいけないよね」

「いや、お姉ちゃんは懲りずに半年後に『魔法でもいいから新幹線動け』ぐらいの事思うから」

「乃梨子!」

「志摩子さん!」

 無意味に白薔薇のまぼろしを飛ばして二人は抱き合った。

「って、なにしたくて魔法少女志摩子呼んだわけ、お姉ちゃん!」

 乃梨子の妹は突っ込みに疲れてきた。

「実写映画の上映館は決まり次第オフィシャルサイトに上がっていくから諦めるなってことをいいたくて」

「いい加減にして!」

 ちゃんちゃん♪


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