これはクリプトン・フューチャー・メディア(以下クリプトン)のVOCALOID(ボーカロイド)及びVOCALOID2キャラクター・ボーカル・シリーズのキャラクター(通称ボカロ)と『マリア様がみてる(マリみて)』のクロスオーバーです。
『マリみて』メインサイトなので、『マリみて』は周知の事実として、ボカロについて簡単にフォローを。
【ボカロの説明(発売順)】(みんなの方が詳しいでしょ、たぶん)
【MEIKO(メイコ)】日本語ボカロ第一号。ショートカットの女性。みんなからお姉さん扱いされている。いつのまにか酒をあおるようなキャラに。公式イラストが赤い衣装だったので、赤がイメージカラー。通称めーちゃん。
【咲音メイコ(サキネ-)】MEIKOが16歳の頃アイドルとして活躍していた時の名義。
(という設定でMEIKOを若く聞こえるよう調教したシリーズ。あくまでソフトはMEIKOを使用する)
【KAITO(カイト)】MEIKOのヒットに気をよくして作られた男性ボカロ。しかし、世間は厳しかった(売れなかった)が、ミクが売れて相手となる男性ボカロが彼しかいなかったのでようやく日の目を見ることに。青い髪で青のマフラーがトレードマーク。アイスが好きらしい。
【初音ミク(ハツネ-)】「ポップでキュートなバーチャルアイドル」(公式サイトより)というキャッチコピーで登場した緑(青緑)のロングのツインテールの少女。16歳。髪の毛と同じ色のネクタイをしている。現在もボカロを代表する存在である。なぜかネギを持っている事が多い。
派生キャラ「弱音ハク」「亞北ネル」もいるが、今日は出さないので割愛(泣)
【鏡音リン(カガミネ-)】「パワフル&チャーミング超フレッシュなツインボーカル」(公式サイトより)というキャッチコピーで登場した黄色いセミロングヘアに大きな白いリボンをつけた少女。14歳。セーラー服で髪の毛と同じ色のスカーフがついてる。ミカンがすきらしい。ロードローラに乗っているところをよく目撃されているが……免許は?
【鏡音レン(カガミネ-)】リンと同じ黄色い髪の少年。14歳。セーラーカラーに髪の毛と同じ色のネクタイをしている。双子かと思ったら公式ではそういう設定はないらしい。バナナを持たされることが多い。中の人はリンと一緒。
(ソフト的にはリン&レンでセットなので、ソフト1本で2人のキャラクター分となる)
【巡音ルカ(メグリネ-)】「クール&ハスキー! 大容量バイリンガル・ボーカル」(公式サイトより)ピンクのロングヘアの女性。20歳。スリットの深いスカートが特徴的な衣装を着ている。先輩ボカロのネタにおののいた発売元が必死にクールビューティーのイメージで売り込んだのに、マグロを振り回すわ、タコになるわ、百合キャラになるわという笑撃の末路をたどった。
【説明ここまで】
■最後に最も大事な注意書き■
このSSの巡音ルカさんはキャラクター崩壊を起こしています。
ルカさんのイメージを守りたい人は申し訳ありませんが、お引き取りください。
ルカは本を読んでいた。
本のタイトルは『マリア様がみてる』。
読み終えた本を本棚に戻し、ルカは『マリみて』の世界を妄想する。
(いいなあ。私もめーこさんのこと「お姉さま」って呼んだり、「タイが曲がっていてよ」ってミクのタイを直したりしたいな〜)
嘆息するルカの目に本棚の別の本が飛び込んできた。
『魔法大全』
(これだ!)
ルカはその本を手に取りほくそ笑むと、ためらうことなく呪文を唱えた。
「リリアン! リリアン!」
リリアン女学園。
白薔薇のつぼみ二条乃梨子は講堂裏の思い出の桜の木のところに向かっていた。
角を曲がってみると先客がいた。
「……」
緑の長い髪を二つに縛っている生徒だった。
桜を見上げ、気持ちよさそうに歌を歌っている。
その歌声が乃梨子の心に染みわたっていく。
初めて聞く歌だったが、とても気持ちいい。
聞き入っていると、その少女は歌うのをやめ、乃梨子の方を見た。
「ああ、ごめんなさい。邪魔するつもりはなかったのだけど」
乃梨子が詫びると少女は言った。
「いいえ。こちらこそごめんなさい。あなたがいるのに気づいていたのだけど、あまりにこの桜が綺麗で歌を途中でやめたくなかったの」
微笑んで少女は言う。
「そうだったんだ。勝手に聞いちゃった」
「いいの。私は誰かに歌を聞いてもらうのが好きだから。あ、誰でも彼でもってわけでもないんだけど」
「私でよかったのかな?」
「あなたがよかったの」
そう言って微笑む彼女に乃梨子は自分の心が惹かれていくのを理解した。
「あの。名前を聞いていいかな? 私は二条乃梨子。二年生」
「私、初音ミク。ミクって呼んで。乃梨子さん」
「ミクね。ミクは何年生? お姉さまっている? あ、お姉さまっていうのは実のお姉さまじゃなくって、この学校独特のシステムで『姉妹(スール)』って制度があって、一人の先輩が一人の後輩を本当の姉妹のように導いて指導するっていうやつで、そういう決まった先輩が、いるのかなって?」
「ううん。いないよ。あと、私は一年生。あ、乃梨子先輩って呼ばなきゃいけなかったんだ。ごめんなさい」
ミクは頭を下げて詫びる。
「いいよ。私だって先輩のこと『志摩子さん』って呼んでるもの。それで、ミクはお姉さまを作る気はある?」
「ん? どうしてそんなこと聞くの?」
「えーと、だから……よかったら、私の妹にならない?」
「うん!」
会って間もないミクに自分でも驚くほど積極的に話を進めた乃梨子だったが、ミクの早い決断にびっくりした。
「えーと。じゃあ、私のお姉さまに紹介したいから、一緒に来て」
「行くっ!」
乃梨子はミクの手をとって薔薇の館に連れてきた。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう……って、乃梨子ちゃん、その人は?」
誰? というように福沢祐巳さまがミクを見る。
「めーちゃん!」
ミクはそう叫んで部屋に入った。
部屋にいたのは、紅薔薇さまの祐巳さま、黄薔薇さまの島津由乃さま、紅薔薇のつぼみの松平瞳子、……と、誰だ?
「ミクじゃないの」
めーちゃん、と呼ばれたその人はミクと知り合いらしかった。
「ええと、メイコちゃんの知り合い?」
「はい! 初音ミクです。私は──」
「ちょっと待った。志摩子さんが来てからちゃんと自己紹介してもらうから」
座って、と祐巳さまはテーブルの中央にミクと、メイコちゃんと呼ばれた生徒を座らせた。
「お待たせしました」
部屋に入ってきたのは黄薔薇のつぼみ有馬菜々ちゃんで、その後に入ってきたのは乃梨子のお姉さまで白薔薇さまの藤堂志摩子さんだった。
瞳子が入れたお茶を配るのを手伝い、席に着く。
「じゃあ、瞳子が先だったから瞳子から説明して」
祐巳さまに促され、瞳子が話し始める。
「皆さまにご報告があります。私、松平瞳子はここにいる咲音メイコさんを妹として迎えるつもりです。お姉さまのお許しがいただければ今ここで儀式を行うつもりです」
「ええっ!」
乃梨子は驚いて声を上げた。
「どうしたの、乃梨子?」
志摩子さんに聞かれて、乃梨子も事情を説明することにした。
「実は私も。こちらにいる初音ミクさんを妹として迎えようと思っています。お姉さまがお許しになれば、私もロザリオを渡すつもりです」
「乃梨子も!?」
びっくりして瞳子が乃梨子の顔を見る。
「瞳子。私は反対しないわ。いろいろ思うところがあってあなたが選んだ妹だもの。あなたの姉だからって口出しはしないわ」
祐巳さまが言う。
「乃梨子。私に気を使う必要はないのよ。あなたが選んだ妹はきっと私も好きになって受け入れられると思うわ」
志摩子さんが言う。
「では、みんなが証人になって儀式を……」
さて。ミク、メイコたちボカロは苗字は違っても一つ屋根の下に暮らす義姉弟のような関係にあった。
「ただいま〜」
「うっ、うっ……うわああっ!!」
ミクとメイコが帰るとルカが号泣していた。
「どうしたの?」
メイコが先に帰っていたリンに聞いた。
「うん。ルカがね、メイコ姉さんに魔法をかけて『咲音メイコ』にしてまでリリアン女学園に通わせたじゃない。で、自分もリリアンに行ったら……20歳だから、大学生になっちゃったんだって」
「そりゃ、あたりまえでしょう」
何を今さら、というようにメイコは言う。
「で?」
「姉妹システムが大学にないって教えられて、ショックだったみたいよ」
「ルカ、お茶でも飲んで落ち着いて」
レンが入れてくれたお茶を皆ですする。
「めーちゃん、ミク。学校はどうだった?」
KAITOが聞く。
「いや〜、16歳に戻されて、高校からやり直しじゃない? しかも、『姉妹』って特殊なシステムもあるし。慣れるまでかかりそう」
メイコは苦笑して言う。
「でも、私もめーちゃんも『お姉さま』が出来たんだよ」
「ぬぁんですってええええええええええ!?」
ルカが叫び声をあげ、全員がビクリ、と肩を上下させる。
「誰っ? 誰と姉妹になったのよっ!?」
ミクをルカが問い詰める。
「二条乃梨子さん」
「って、なんでロサ・ギガンティア・アン・ブゥトン・プティスールになんてなってるのよっ!?」
「わー、さすがバイリンガルだね。ルカ」
リンが棒読みで突っ込む。
「バイリンガル関係ない! フランス語! 正確にはフランス語風で、フランス語の文法からは逸脱してるし! って、そうじゃなくて」
キッ、とミクを睨むようにルカが見る。
(なんてこと。ミクのお姉さまになる予定だったのに〜)
「ミク。今すぐ別れなさい」
「ど、どうして? 乃梨子さん、いい人だよ。話もあうし」
「あんな仏像ガールの何がいいわけっ!?」
「いや、仏像とか関係ないけど、何言ってるの?」
キョトン、としてミクは聞き返す。
「いいから別れなさいよっ! なんなら、私がロザリオ返してきてあげるからっ!」
「ひ、ひどい。何てこというのよ。ルカのばかっ!」
ルカのばかっ! にやられてルカはよろめいて倒れた。
「そういうこと言うんだったら、ルカとはもう、口きかない」
そこまでミクに言われて、ルカはKOされた。
「で、めーちゃんのお姉さまは?」
リンが聞く。
「私のお姉さまは松平瞳子さん。あ、先輩の事は瞳子さまって言うんだっけ?」
笑顔で言うメイコの声にルカは再び立ち上がり、ダブルヘッダー第二戦を開始した。
「めーこさんがロサ・キネンシス・アン・ブゥトン・プティスール!? あんなドリルの何がよくてロザリオなんか受け取ったわけ?」
「なんかほっとけなくって。あ、ルカ。もし、ミクに言ったみたいなことを私にも言うようだったら、箱に詰めてアマゾンに送ってあげるからね」
「今更返品なんて──」
「いや、本当にブラジルの密林の方に」
「……」
ルカは第二戦も完敗した。
(こんなはずじゃなかった。私はめーこさんをお姉さまと呼ぶはずが……はっ! そうだ、今から中学生になって、来年めーこさんの妹になればいいんじゃん。なんだ、簡単じゃない)
「リン。高等部に入ったら私の妹にならない?」
「あー、めーちゃんずるい。リンは私の妹にしようと思ってたのに」
ルカ、第三戦試合開始前に敗北。
(こんなはずじゃなかった。私は「タイが曲がっていてよ」がやりたかっただけなのに〜。小笠原祥子みたいな事やりたかっただけなのに〜)
「ううううううう」
「ルカが、また泣きだしたんだけど」
レンがフォローしようとするが。
「やめておくんだ。今のルカなら巻き込まれたらレンを性転換させて妹にするくらいやりかねない」
と、KAITOに止められ、レンはそっとルカを見守るだけにした。
(いっそ、小笠原祥子になり代わりたい……って、代わっちゃえばいいのよ! そうよ! 居合六段百合十段の私がただのお嬢さまなんかに負けるはずないし。めーこさんの代わりに水野蓉子がお姉さまで我慢するとして、福沢祐巳が妹でも脳内変換でミクとして……これだ!)
「ふっ……ふっふっふっふっ……」
見守っていたレンは急に不気味な笑い声を出したルカにもう着いていけず、部屋に戻った。
翌日。
リリアン女子大。
「ごきげんよう」
(小笠原祥子キターッ!!)
待ち伏せするルカが飛び出そうとした時、肩をつかむ者がいた。
「君、何やってるの?」
佐藤聖だった。
「うわああああああ! エロギガンティアでたーっ!!」
「失礼な」
にっこり笑いながら佐藤聖はガチ百合殿堂入りの実力でルカを退けた。
(こんなはずじゃ……こんなはずじゃ……)
校門の付近で膝を抱えて涙ぐむルカ。
(私もめーこさんみたいに若返ることが出来たらよかったのに……だって……だって……)
ルカは変身した。
「どーして私、タコにしかなれないのよ〜っ!!」
それ以来、リリアン女学園の校門にはタコが住むという伝説が生まれたという。