去年、祐巳からチョコレートをもらってとても嬉しかったから今年は私もと思った。祥子にとってはそれだけの話だった。
「なぜ一月だというのに売り切れているんですの?」
チョコレートで有名なお菓子屋さんの店先で祥子は叫んだ。
「なぜとおっしゃられましても、各店舗三十個限定の商品でして……あ、他の店舗でしたらまだ若干の余裕があるかと」
「他のお店ならあるのね」
申し訳ないと思った店員が調べてくれて行けそうな店舗を紹介してもらったのだが。
「ごめんなさい、つい先ほど売れてしまいました」
祥子は眉間にしわを寄せる。
「どんなに遠くても構わないわ。他に取り扱いのある店舗を紹介していただけませんか?」
「遠いですよ?」
「ええ、結構。確実に手に入るならどこへでもいくわ」
バレンタイン前の週末、祥子は沖縄に飛び日帰りした。そして思いもよらないチョコレートに喜ぶ妹との一時を過ごすことに成功したという。
いや、喜ばなきゃガッカリなんてもんじゃなかっただろうけどね。