写真部の部室の壁にセピア色の写真が飾られていることに笙子が気づいたのは今日だった。
小さな額に入れられた写真には少女が四人写っていた。リリアンの制服を着てはいたが昔風のおさげやおかっぱというヘアスタイルでずいぶん古いもののようだ。
「あら、その写真が気になる?」
「え、ええ」
声をかけてきたのは部長でその写真は戦前の物だという。更に部長はその写真にまつわる少女たちの数奇な運命と不思議な巡り合わせでこの場に飾られた経緯を語ってくれた。
「この写真にそんな物語が……」
そこに現像室から蔦子さまがでてきた。感動を分かち合いたかった笙子は話しかけた。
「蔦子さま、この写真」
「ああ、よくできてるでしょう? 古本屋で昔の写真の技術書見つけてトイカメラと残ってた薬品で再現したのよ。たまたま演劇部の皆さんに協力してもらったからいい感じになって、ちょっと気に入ってるの」
涙目で笑う部長の横で笙子は色あせた写真を見つめ、ため息をつくのであった。