【714】 真剣勝負ホンネとタテマエ  (琴吹 邑 2005-10-10 03:24:55)


琴吹が書いた【No:678】「心の扉華麗にスルー 」の続きになります。

物語を最初から確認したい場合は
http://hpcgi1.nifty.com/toybox/treebbs/treebbs01.cgi?mode=allread&no=81&page=0&list=&opt=
を参照してください。



「日曜日ですが、花寺の生徒会長とどこに行ったんですか?」
「花音寺です。花音寺の秘仏を見せてもらいに行きました」
「二人で?」
「ええ、ご存じだと思いますけど、花音寺は、花寺学園に近く、花寺の生徒会長と白薔薇さま、私と歩いていたら目立つだろうなと言うことで、それを避けるために」
「なんで、花寺の生徒会長と?」
「花音寺の秘仏というのは、基本的に一般公開していない物なんです。そこで、花音寺と縁の深い、花寺の生徒会長さんにお願いしたわけです」
「花寺と花音寺って縁が深いんですか?」
「花寺学院は花音寺が創設した物だというのはご存じではないですか? 花寺の生徒会長の口添えがあれば秘仏を見られると思ったからです」
「見た後はどうしたんですか?」
「秘仏のお礼に、お茶をご馳走して、それから、駅ビルに行って白薔薇さまと合流して、そこで、生徒会長さんとは別れました」
「………」
「以上で良いですか?」
「乃梨子さん。つまらない」
「そんなこと言われてもねえ」
 人がいなくなった教室で、私はインタビューを受けていた、
 目の前にいるのは、新聞部の日出実さん。昨日のことを受けて、早速取材に来たようだ。
 まあ、この程度のことは予想済だったので、難なく対処する。志摩子さんと途中であったのも、幸いした。
「じゃあ、ここからはオフレコで………。で、花寺の生徒会長さん、どうだった?」
「どうっていわれてもね。ここで、私がよく言っても、悪く言っても色々ありそうだから、ノーコメントにしておく」
「口が堅いなあ………。まあこんな所かなあ………。恋物語なんてそう簡単に落ちてるわけ無いしねえ」
「まあ、そう言うことね」
「残念………ありがとう。この記事だとかわら版に載るのは微妙な所ね」
 そう、ぶつぶつ言いながら、日出実さんは帰っていった。
 ふぅ。どうやら、山は乗り越えたようだ。ほっと一息ついて、ぼんやりと窓の外を眺める。
 夕焼けの校庭。陸上部がトラックをぐるぐる回っているのが見える。
 昨日出したメール。最後の追伸の意図は伝わっただろうか?
 祐巳さまの弟さんだから、伝わっていないだろうなと、ぼんやりと考える。
「聞きましたよ。乃梨子さん。祐麒さんとデートだったんですか?」
 その声に、びくりと身体を震わせる。
「と、瞳子。びっくりさせないでよ。」
 一息ついたところで、後から声を掛けられた。完全に不意打ちだったので、本当にびっくりした。
「で、祐麒さんとデートだったんですか?」
「デートかどうかはともかく、なんで、瞳子がその話題を?」
 「ちょっと忘れ物を取りに戻ったんですの、そうしたら、なにやら面白そうな話題が聞こえてくるものですから」
「盗みぎきとは、あまりよくないんじゃない?」
「聞こえてしまっただけですわ」
 といいつつ、目をそらす瞳子。
「まあ、新聞部のインタビュー受けていたくらいだから、別にかまわないけどね」
 その言葉に目を丸くする瞳子
「かわら版で交際宣言とはやりますわね」
「だれがそんなことするかっ!」
 瞳子のドリルを片方取り、すぐさま瞳子の顔に向かって投げつけた。
「まあ、それは、冗談としても……」
 そう言いながら、瞳子は私の後の席に座った。
「私は、乃梨子さんのこと応援しますわ」
 彼女は、真面目にそう言いきった。
 彼女の中では、私が祐麒さんに恋をしていることは確定されてしまったようだ。
 その確定された事項を何とか取り消したくて、私は最後の抵抗を試みる。
「瞳子の中では、確定事項かい。あのねえ、誤解されると嫌だから、しょうがないから、教えるけど、祐麒さんの評価はマイナスだったんだよ」
「そうですか………」
 その言葉はやはり効果があったようで、ちょっと考え込む瞳子。
 どうやら、もう一つの山もうまい具合に越えられそうだ。
 そう思っていたら、瞳子は何かを思いついたように、クスリと笑った。
 瞳子の笑いに私は思わず身構える。そして、瞳子が言った言葉は、私にとって、完全に想定していない言葉だった。
「ねえ、乃梨子さん。祐麒さんの評価は、どういう題目で、つけたのかしら」
「………」
 思わず沈黙する私に、勝ったとばかりに笑みを浮かべる瞳子が恨めしい。
 わたしは、ため息をついて、祐麒さんの評価したときの題目を言った。
「………二条乃梨子が福沢祐麒を好きではない事を確認する」
「やっぱり。乃梨子さんだから言い訳するために一ひねりしてあると思いました」
「絶対ばれないと思ったんだけどね………」
 私はそう言って、ため息をつく。
「私もほとんど騙されそうでした。でも、先ほど外を見ていた乃梨子さんは、どう見ても恋する乙女の表情をしてましたから。その評価はあり得ないなと思って」
「ほんとに人をよく見てるよ。瞳子は。悪いけど、まだ誰にも言わないでくれる?」
 その言葉に、瞳子はほほ見えながら頷いた。



 祐麒さんの評価はマイナス。
 評価した題目は、『二条乃梨子が福沢祐麒を好きではない事を確認する』
 マイナス×マイナスはプラス
 それは、二条乃梨子は福沢祐麒を好きであるということ。
 つまり、二条乃梨子は、福沢祐麒に恋をしているということ。


 そう、二条乃梨子は福沢祐麒に、恋している。



FIN


☆☆☆☆☆☆☆☆
  あとがき
☆☆☆☆☆☆☆☆
今回の話はとあるサイトのアンケートの結果を受けて考えた物です。
自分で読むなら、乃梨子との話が読んでみたいなと。
で、どういう話にしようかと思って、乃梨子だから、行動的だけど慎重に行くのではないか。だから、ます自分の気持ちを確認するための行動を取るのではないか。
というふうな、感じで書き始めました。
だから今回の目標というのは、べたべたな恋愛話にしないことと最後の一文、「二条乃梨子は福沢祐麒に、恋している」と言う文を書きたくて、こういう展開になりました。
がちゃSだけに予期せぬイベントも起きましたけど。途中で雨が振って相合い傘とか。


いままで、やったことのない連載というかたちもすごく面白かったです。
いままで、全部が書き終わるまで感想とかもらえないし、感想そのものももらえないことがほとんどでしたから、
途中で、色々コメントを入れてくれたみなさんには本当に感謝しています。
ありがとうございました。

その後は何か書けたらいいなと思っています。
で、羽藕観音経由でAIRに絡めることが出来ないか、いまAIRをやってみたりとかしてます。どうなるかはわからないですけど。

あと、質問ですね。メールの追進の意味ですけど、あれは、IMソフトへの登録許可を意味しています。
それが伝わるかどうかは微妙な表現ですけど。


それでは、ありがとうございました。


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