がちゃS・ぷち

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No.1
作者:柊雅史
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2005-06-04 17:21:30
萌えた:34
笑った:98
感動だ:9

『祥子のメイドデビュー』

「どうして私がそんなことをしなくてはなりませんの?」
聖さまの提案を聞いて、祥子はその端正な眉を歪ませた。
「罰ゲームだから」
「ですから、どうして私が……」
「祥子、あんたのミスで昨日一日の仕事がパー。お陰で私は明日、日曜出勤しなきゃなんないんだよ。悪いと思っているなら、ちょっとくらい誠意を見せてくれなくちゃ」
「だからって、どうしてそんなことを……」
聖さまの言うとおり、祥子はちょっとしたミスで、昨日聖さまが一日がかりで仕上げた書類をダメにしてしまった。
それは悪いと思っている。思っているのだけど……だからと言って、どうして聖さまの言うことを一つ、何でも聞かなくてはいけないのか。
これがお姉さまならともかく、聖さまが相手では何を言われるか分かったものじゃない。
「いいじゃない。無茶なことは言わないわよ」
「……お姉さま。お姉さまからも何か言ってください」
わきわきと聖さまが怪しい手の動きを見せるのに、祥子は一歩引きながら、唯一にして最大の味方に助けを求めた。
「聖」
祥子の視線を受けて、お姉さまが鋭い視線を向ける。
「な、なに……?」
「どうせなら、祥子には明日、一日メイドになってもらいましょう」
「「はぁ!?」」
にやり、と笑ったお姉さまに、祥子と聖さまの声が重なる。
「聖は祥子に、雑用をやらせるつもりだったのよね? そうよ、ね?」
「も、もちろん。そんな、エッチないたずらなんてしようとしてないよ!」
「そうよね。だから、メイド。分かるわよね?」
「……う、うん」
びくびくしながら聖さまが頷く。
「じゃあ、決まりね。――祥子、そういうことだから。明日は休日出勤する私たちのために、メイドとして働きなさい」
軽くウインクするお姉さまに、祥子はその意味を理解した。
要は聖さまに変なことをされないよう、あくまでメイドのするような雑用――お茶汲みやお掃除をやりなさい、ということだろう。
そのくらいなら望むところだ。祥子だって、聖さまには悪いことをしたと思っているのだし。
「分かりましたわ、お姉さま」
「ちぇ」
祥子が頷くと、聖さまが軽く舌打ちした。

     ☆   ★   ☆

やられた、と祥子は手渡された包みを開けて呟いていた。
「祥子、はいコレ」
とお姉さまに手渡されたその包み。
その中にあるのは、メイド服だった。クラシックな。
「お姉さま……何を考えてるのですか」
頭を押さえながら祥子は呟く。
聞いたところで返って来るのは「祥子のメイド服姿が見たかっただけ」とか、そんな軽い返事が返ってくるのだ。絶対。
そういえば、無関係な江利子さままで登校していたのは、こういうことか、とある意味祥子は納得する。
これもまた、お姉さまの愛なのだろう。多分。きっと。
頭の固い祥子を柔らかくしようとする、お姉さまからの愛。そう思うことにした。

用意されたメイド服に着替え、カチューシャと伊達眼鏡まで装着し――これってお姉さまの趣味なだけなんじゃ、と愛を疑ったのはヒミツだ――祥子は執務室に戻る。
「お待たせしました」
扉を開けた途端。
「「「うおおおおおおおおおおおおっ!!」」」
リリアン女学園ではめったに聞けない雄叫びと共に、パシャパシャとフラッシュの焚かれる音が響く。
「祥子、似合う!」
「でしょう? 祥子みたいな黒髪には、メイド服が似合うと思ってたのよね」
「あはははははははははははっ!」
大騒ぎをする3人の薔薇さまに、祥子の両肩がふるふると震える。
この、祥子をおちょくることにかけては鉄のような結束と、全校生徒の憧れの存在らしからぬ悪ノリを見せる3人のリリアン女学園最高権力者に対して、人生最大の一喝を加えるべく。
祥子は大きく、息を吸い込んだ。


「……強気なメイドって言うのもありよね、聖」
「きっとメイド頭だ」
「あひゃひゃひゃひゃ」
「まだ言いますかっ!」


(コメント)
柊雅史 >とりあえずテストも兼ねて一本。ボタンも一回ずつ押してみてあります。(No.1 2005-06-04 17:22:06)
弥生 >はじめまして。マリ見て見てから来ました。面白いです。(No.17562 2009-05-16 04:34:50)

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