がちゃS・ぷち
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No.2847
作者:まめとりもち
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2009-02-21 23:28:43
萌えた:18
笑った:31
感動だ:21
『でたとこ勝負の革命児』
まえがき:
※この作品は、以前、私が投稿した作品の続編で、第2話目になります。
尚、1話を未読な方は、宜しければ、こちらをどうぞ →【No:2814】
※この作品は、一般的に逆行モノと言われるSSです。次第に原作の流れと乖離した物語へ成り始めます。
苦手な方は、ご注意ください。
※投稿が遅れてすみませんでした………。確保したKeyが、本命モノとは、
色違いの別物であった事が判明した為、1週間程、呆然と過してしまいました。(涙)
------------- 以下、本文です ----------------------------------------------------------
■前回通りと言えば良いやら、前回より酷いと言えば良いやら…■
まあ、学園祭明けの振り替え休日は、1日中熱が高くてどうすることも出来なかった。明けて火曜日、この日も動けなかったのは相変わらず…。学校に登校するどころか、立つことすら上手く出来ぬ有様。歪む視界の中、寝ている内に何時の間にか午後となり、令ちゃんが戻ってきた。分かってはいたけど、部活をサボったようだ。色々と言い訳しているけどね……。
でも………
私 は 知 っ て る の よ!!(未来の令ちゃんに聞いたからね!)
もう今更だから、部活サボったとか、問い詰める気もないけどね。
何より、今日は、色々と令ちゃんに聞かなければならないこともあるしね……。
だ・か・ら、さっさと情報を 吐 き な さ い ! !
そして祐巳さんと祥子さまが、無事に姉妹となったことを聞くと、心の底から安堵する。
良かった…。腹を切らないで済んだわ! 祐巳さん、これから仲良くがんばろうね!!
思わず浸ってしまう私…。しかし空気の読めない姉によって、無残にも打ち壊されるのであった。
「……あれ? 由乃、今日はロザリオを着けてないんだね?」
!? ゲェッ!! 令ちゃんの奴、もうロザリオ無いのに,気付いたよ……(汗)。
人の胸元を覗くのは、如何なものでしょうか? と、問い詰めたい所なんですが……。
「汗をかいたから、さっき、着替えた時に外したの!!」
……と、何とか誤魔化した。正直なところ、微妙に納得していない様な表情をしていたからなあ…。これは今度疑われたら、多分誤魔化しは効かないだろう。
そして夜、私は菜々に連絡を入れる。勿論、一時的にロザリオを戻してもらう為に……。
■翌日の午後■
シクシクシクシクシク…………。
誰か……。
シクシクシクシクシク…………。
誰か、この悪ノリする妹を、何とかして下さい!!
「嗚呼、マリアさま……。何ということでしょう…。心無いお姉さまに、貰ったばかりのロザリオを、奪われてしまいました」
シクシクシクシクシク…………。
人聞きの悪いことを言わないで頂戴!! というか、貴女がゴネているから、私はまだ、受け取っていないわよ!!
「姉にロザリオを突き返すだけでなく、妹のロザリオまで奪う。私のお姉さまは、リリアン姉妹制度での偉業を、2つも同時に成そうとして居る様です」
あ〜〜〜〜、もう!!あなた、昨日事情を説明した時、納得していたじゃない!
「……理屈では分かっていても、感情が納得しないってこと、有りますよねぇ?」
気持ちは分からない訳じゃあ無いわ! でも非常事態なんだし………、仕方が無いじゃない!!
…って、この子は、十分に分かってやっているんだよね……。ただ情況を利用して、気の済むまで楽しんでいるのが分かるだけに、非常に性質が悪いわね……。何時、令ちゃんが帰ってくるか分からないこの情況で、ズルズルと話を伸ばされるのは、非常に宜しくない事態である。
「ガタガタ言わ無いの!ちゃんと埋合わせするから!」
これ以上の悪ふざけは、本気で怒るわよ!の意味を込めて、少し強めに言うことにする。そう、事は急を要する事態で有るのだ!
「本当に、埋め合わせをして頂けますか?」
馬鹿にしないで頂戴! 『この島津由乃に二言など無い!』のだから……。
「…では、お姉さまが回復したら、またケーキを食べに行くのも良いですねぇ。1年程早いですが……」
あら? 珍しい……。この子がデートのおねだり? まぁ悪い気はしないけど……。
ハイハイ……。分りました、分りました……。ケーキでもランチでも奢るから、機嫌直して頂戴……。
全く……。なんか、ドッと疲れたわ……。病弱な姉を少しは労わりなさいよ……。
「可愛い妹の、チョッとしたお茶目じゃあないですか!?」
貴女の場合は、微妙にお茶目以外のモノを感じるのよ……。
「よしの〜、入るよー! あれ? お客様が来てたんだ!?」
…………と、なんで?この時間に令ちゃんが!? 考えるまでもない。またサボったのか! まだ、菜々からロザリオを受け取ってないのに、なんてタイミングの悪い時に、帰ってくるんだろう……。
「……貴女この間、由乃を介抱してくれた子だよね?」
と、菜々に気付く令ちゃん。
「ごきげんよう。令さま。中等部2年の有馬菜々です」
なんて外面だけは良いのやら……。まったく、貴女がさっさとロザリオ渡さないから、余計な言い訳を、考えなければならないじゃない!
「あれ? それ、ロザリオ…?」
「はい、由乃さまに、令さまから頂いたロザリオを見せて貰っていた所です」
うわーー、凄い自然に誤魔化したわね、この子……。そういえば以前は、江利子さまが相手でも、咄嗟に堂々と嘘を吐いて居たし、秋に行ったデートの時も、こちらが舌を巻く程の機転を見せていたなぁ……。うん、私も色々と誤魔化されないように注意することにしよう。妹の嘘を見抜けぬ姉なんて格好が付かないだろうから。
などと考えている間、菜々と令ちゃんは、ロザリオの話で盛り上っていた。時々『由乃には、このロザリオにフリフリの服を着けた姿が一番似合う』とか全くロザリオに関係無い、姉馬鹿全開な不穏な台詞も聞こえたりしたが、この際全て無視……。そこの馬鹿妹、目をキラキラさせて、着て貰えませんか?と言いたげな顔をするのは止めなさい!
「惜しいなあ…」
ん? 令ちゃん、なんの事を言っているのよ? そんな顔をしても着ないわよ!!
「いや、菜々ちゃんが3年生なら、来年、由乃の妹にピッタリなのに…」
令ちゃん…、相変わらず、時々良い勘してるよ…。ホント時々だけどねぇ………。
その後、令ちゃんが用意したお茶とお菓子で、簡易なお茶会となる私の部屋……。
しかし、病人の部屋でお茶をするだなんて…… この姉も妹も、ちょっとは遠慮しようとか思わんのか? まぁ今日は気分が良いから別に良いのだけれど……。
「ごめんなさいね、菜々ちゃん。お世話になったばかりか、借りた物まで取りに来させたあげく、お見舞いまで頂いて……」
菜々がここに来た理由は、頭を冷やす為に使ったハンカチを、取りにきて貰ったいうことになっている。
「全く……、本当に由乃は仕方が無いのだから…。そういう事は私に頼めば良いでしょうに……。かえって菜々ちゃんに、気を使わせてどうするの?」
ハイハイ反省してますよ………。それは真実でないのだが…… 話の上から考えると、どう見ても私の不手際だからね。形の上だけでも反省しておかなきゃ私の性格を疑われてしまうし。しかし、こういう時だけお姉さまぶるんだから……。
「ちゃんと聞いているの? 由乃!」
はい……。分りました……。 流石にリリアン生が、他人の居る前で公然と姉に楯突く訳には行かないからねぇ…。でも、後で覚えていなさいよ!! 令ちゃん……。
「……………………………」
そんな他愛もない遣り取りを、令ちゃんとしている内に、菜々の様子が、少しおかしい事に気が付いた。
ん? 菜々の奴、随分と大人しいけど……。一体どうしたのかしら? 今更、遠慮するなんて殊勝な子でも無い筈なのだが。
「…………話には聞いていましたが、本当に仲が良いのですね?」
ふと、菜々が羨ましそうに漏らす。……あれ? 貴女の所の姉妹仲って、悪かったかしら?
「うちの姉達は、皆そろって武道をやっている為か、どちらかと言うと体育界系の色が強く、令さまと由乃さまの様な関係とは凄く違います」
「あれ?菜々ちゃん姉妹居たんだ?」
「はい。私は祖父の家の養女になったので苗字は違いますが、太仲女子高の剣道部に居る田中姉妹は、私の実の姉達です」
「ああ、そうなんだ…」
以外な所で繋がりってあるものだねえ…。とか暢気に言ってるし…。(そのうち嫌と言う程、繋がりを実感して貰うけどね!!)
しかし、本当に菜々の奴、一体、如何したのかしら? 何か黙り込んだと思えば、私に何か言いたそうな顔しているし……。ハテ? 私、何かやらないとイケナイことあったかしら? まぁ、あの子が直接言わないってことは、大したことじゃあ無いのかもしれないしねぇ。 気にしないでおくか……。
そして、私は気付かなかった。菜々の顔がドンドンに不機嫌になっていることに………。
「そうそう、令さま聞いて下さい。私の姉ったら酷いのですよ…。以前、私にくれたモノが急に必要になったから直ぐ返せと、こちらの都合も聞かずに、無理矢理取り上げたりするんです……」
ブッッッッーーーーーーーーーーー!!! ゲホッ! ゲホッ!!!
突然、ナニを言い出すんだ!! このプチ凸!!
「あの田中さんが…。とても信じられない…」
令ちゃんが、真に受けている!! いあ、あの……… それは、多分………。
「私のお姉さまは、猫を被っていて、外面だけは良いですから、大抵の方には、信じて貰えないのですが……」
ゲホッ! ゲホッ!!! それ… 絶対、実姉妹のこと言っているんじゃ無いでしょう?
「由乃!? 大丈夫? しかし、それは酷いお姉さんだねえ、菜々ちゃん」
「本当に由乃さまが羨ましいです。令さまのような素敵なお姉さまが居るなんて……」
令ちゃんをまるで理想の姉と言わんばかりの誉めちぎる菜々。裏を返せば、私に『もうちょっとがんばりましょう』と言っているに等しいのだ。『何のつもりよ!?』の意思を込めて睨むも、スルーされてしまった……。う〜〜ん、なんか地雷踏んだのかもしれない。
『応援してますので私の代わりに姉を…』
『今度の対抗戦がんばってください!』
『菜々ちゃんの敵は取ってあげる』
とか、なんかもう…………、私抜きで盛り上る2人。私はお茶を吹いてから、ベットに強制的に寝かされ蚊帳の外……。
盛り上る2人を、恨めしく眺め、そこでようやく菜々が拗ねていたことに気付く。
(ゴメン、菜々! 私が悪かったわ!)
(もう、お姉さまなんか知りません!!)
……………………………結局、中々、許して貰えませんでした。
少し拗ねた妹(私)に、微笑ましく見守る姉(令ちゃん)……。傍から見ると『自分が非常にお邪魔虫のような気がして、ちょっと心穏やかな情況では無かった』と、後の菜々が語ったのであるが……。この時に私が、少しでも察することが出来ていたのならば…… 今でも時々思い返す。そして心に刻む………。姉と妹に挟まれた時は、ちゃんと両者に配慮しよう……。
教訓:『菜々は拗ねると、結構、痛い仕返しをする!!』
令ちゃんも、私と江利子さまに挟まれた時って、こんな気持ちだったのだろうか?
落ち着いたら、もっと労わってあげよう。
■久々にまともに話した友■
こう何か色々と、私の周囲の流れが前回と乖離してきているので、ちょっとだけ焦りだしている。
まあ私の中身が全然違うので、仕方が無いとは割り切っているが、正直、これだけは変わって欲しくないと思ってるいる事が有る。すなわち、私と令ちゃん、及び、私と祐巳さんとの関係が其れに当たる。(菜々に関しては解決したので考慮外)
令ちゃんは殆ど身内同然の上、これまでに培って来た基盤があるので、最悪何とでもなるのだが………。
問題は祐巳さんよねえ…。まだ、殆どまともに話していないーーーー!!
今まで意図的にその様に振舞って来たので、仕方の無い事では有るのだが、下手をすると切っ掛けを逃してズルズルと……… なんて事に成りかねない! そんな事態に成るなんて、冗談じゃあないわ!!
確か、私の休み明けに、偶然話す機会が有ったことが、大きな切っ掛けだったわよねぇ…。
さあ、運命の病欠明け初日の放課後だ……。
前回通りノートを写しながら待ちましょうか………。
ソワソワ。
……ドキドキ。
…………ワクワク。
………………………………。
…………………………………………。
……………………なんか、全く来る気配ないんですけど!?
どうしたの?祐巳さん。あなたは此処に来るはずでしょう?
もし祐巳さんがこの教室に来なかったら………。
考 え た く な い わ … (汗)
「あれ…?」
いらしゃ〜〜〜〜〜いませ!! 本当に良く来てくれました。
思わず何処かのガキ大将のように「おぉ心の友よ!!」と叫んで抱きつきそうになりました。
いや〜〜、一時は本気で駄目かと思ったわ。手術前の心臓に凄く悪いなあ。
「……由乃さん? !?ッ… し、失礼しましたー!!!!」
ああッ?! 何で逃げるのよ!! 失礼しちゃうわね! 待ちなさーい!!
「……だって由乃さん。電気も点けない薄暗い教室で、妖しくブツブツと呟く知り合い姿なんて見たら………。それに私の姿見たときに、ニタァって不気味に笑ってるし……。誰だって驚いて逃げたくもなるよ!!」
そ、それは失礼したわね。(そんなに怪しい人状態だったのか…) でも、その台詞を言うのは1年ばかり早くないかしら?
「な、何のこと?、訳分からないよぅ……。それに凄い形相で追いかけてくるし…。本当に怖かったんだからね!」
祐巳さんが本気で怯えているよ。う〜〜〜、マズイなあ…。ちょっと遣り過ぎたかしら…?
素直に謝り倒そう…。余り後まで、引かせたくないしねえ…。
まぁ……、その後の必死のフォローのおかげかしら(?)、なんとか前回のように交流を持つことはできた。
しかし、帰り際に放たれた友人の言葉……。
「由乃さんて、以外と面白い人だったんだ……」
……祐巳さん。 そんな評価言われても、全然!全く喜べないよ?
なんか交流の内容に、微妙なズレが残っているような感じを受けるのは、気のせいかしら?
■革命の始まり
ひと言で言うと…、いや、ちょっと適切ではないか……。
端的に言うと…、いや、変わりないか……。
あーーーーーーー、もうーーーーーー、鬱!!!!!!!
最初は、先の展開知ってる身で、当日に本気に怒れるのか? とか思った時期も有りました。
私が自分で思っていた以上に短気だったのか、はたまた令ちゃんが前回以上に私を怒らせたのか?
演技で済ます予定が、マジ怒り。本気でロザリオを突き返す羽目になるとは………。
自分でやっておいて何ですが、アレは、かなり令ちゃんにダメージを与えてしまったと思う。今更ながら、自らの短慮というか、気の短さには嫌気がして来る。(私も直そうとしているのだけれども………)
そして、鬱になっている、もう1つの大きな理由…。
それは、暫く菜々との接触を絶った為……。
−−−−話は、ロザリオを返して貰った日に遡る−−−−
「病院に入院した後、見舞いには来なくていいわ……」
これから起こるであろう黄薔薇革命の顛末を説明した後、見舞いに来ると言った菜々に対して私が返した言葉である。
『……そんな!? 私、絶望しています……』な瞳で見ないで下さい、菜々さんや………。
ちゃんとした理由が有るんだから!
「ロザリオを奪うだけでなく、近づくことも許さないだなんて…」
いあ、だから聞けよ… 人の話を!!
……(説明中)……
「つまり、お互いの為とはいえ、御自分の我侭で令さまに寂しい思いのさせているのだから、自分だけ安穏に妹の支えを受けるのはフェアでは無いという自己満足のために、妹にも寂しい思いを、味遭わせる訳ですね………」
間違ってはいないケド…………、もの凄く言葉にトゲを感じるのは気のせいですか?
「私は客観的に、事実のみ言っただけです。お姉さま……」
いや、だから恨みがましく見ないで下さい、菜々さんや……。
「いあ、本当に申し訳ないと思ってます! 本当よ! 本気よ! でもこれなら3人とも公平に寂しい訳だから………。『三方一両損』ならぬ『三方総受寂』で大岡裁き…。ナンチャって……」
……マズイ! 菜々の目が次第に細くなっていく……。完全に外したというか地雷踏んだというか……。いや悪気は無かったの! ただ場を和ませようと軽く言っただけで……。ゴメンナサイ………………。
「そうですね、確かに3人とも寂しくなるのですから、そういう面では公平と言えますね。 よ・し・の・さま………」
グサッ!!!
き、効いたわ……。昔、祥子さまと口論した時の祐巳さんが、『祥子さま』と言った後の祥子さまの様子が思い浮かぶ………。あれは周りの人どころか、言った祐巳さん本人が後で心配した程に、哀愁が漂っていたわね…。今なら分かるわ…………。
そう、妹に態と名前で呼ばれると、結構、精神的に堪えるわね。今なら当時の祥子さまと友情を深められそうね………。
祐巳さん、その口撃は、すっごくエゲツナイと思う………。(後で注意しておこうかしら?)
「本気で悪いと思ってますか?」
……思ってます。すごくすっごく、不本意だと思っております。この分も埋め合わせは考えて居るから、本当に勘弁して下さい。
「どうして、そこまで…」
ん!?
「いえ…、何故そこまでなさるのですか?」
そうね…。相手とは常に対等で有りたいって思っているからかしら? 未来の事を多少は知っている今の状態だけでも、十分フェアじゃないしね……。事が終わった後に、胸を張って令ちゃんとの仲を戻す為には、やっぱり私自身も試練を乗り越えた証みたいなモノが欲しいのよ。単なる自己満足だって理解はしているんだけど………。
ゴメンね……。頑固な姉で……。こんな偏屈な姉は嫌いになった?
「由乃さまはズルイです……。その様なことを言われたら、もう文句なんて言えないじゃなですか……」
「そろそろ御暇しますね。ごきげんようお姉さま。手術の成功を心よりお祈り致します」
「ごきげんよう、菜々。また学園で会いましょう」
−−−− 回想終了 −−−−
そんな訳で、私は前回と同じく、外部への接触は、祐巳さんのみという状況で、手術までの道程に居るのであるが………。 なんか、オカシイわね。なんで前回より寂しく感じるんだろう…?
…………私、弱くなっちゃったのかな?
「顔色があまり良くないみたいだけど… 大丈夫? 由乃さん…」
嗚呼、祐巳さんに心配させてしまったようだ。しっかりしろ由乃! 前に通った道ではないか!
こんなことでは、退院後に、令ちゃんにも菜々にも、顔を会わせることなんか出来ないぞ!!
前回より早めに連絡を取った祐巳さんは、頻繁に訪れてくれている。見舞いに来てくれた初日は、黄薔薇革命騒動のピークだった為、若干、恨み言など言われてしまったが………。
「ごめんなさい。ちょっと考え事してた…」
私の言葉の裏に、何かを感じ取ったのかもしれない…。祐巳さんは気遣いの言葉を掛けてくれる。やっぱり、ここでも祐巳さんは、祐巳さんだよ…。本当に頼れるなあ……。
「それで、様子はどう?」
「まだ、落ち込んでいるみたい。でも…、最近、少し元気が出てきたと思う」
主語は抜いたのに…… よく分かったなぁ。
そうか……。やはり令ちゃんに言うのは、週明けくらいにお願いした方が無難だろうな……。
「お手数を掛けます。祐巳さん、本当にありがとう…」
「友達は、やっかい事を引き受ける運命にあるようなものだって、紅薔薇さまが言ってた」
嗚呼、懐かしいなぁ、祐巳さんが良く言って言葉……。そう言えば、紅薔薇さまの受売りだって言っていたなぁ。懐かしい記憶を思い出した。そうか…、その名言は、この頃に受け継がれたのか……。祐巳さんも紅薔薇ファミリーにすっかり馴染んだ様子で何よりである。当時の紅薔薇さまは、随分と祐巳さんを可愛がっていたからねえ。今回もまた可愛がられているのだろう……。なんといっても蓉子さまのお気に入りの孫だったし……。祐巳さんの話を聞く限りでは、紅薔薇ファミリーは、余り変わっていない様に見える。今のところ、私という異分子が入ったことによる、紅薔薇ファミリーの流れの乖離は最小限に抑えられていると考えて良いだろう。
(白薔薇は情報が少なすぎて判断出来ないけど、余り関わってないから多分大丈夫だと思う…)
そうなると………。
やっぱり、中身の違う私の影響を、思いっきり受けている令ちゃんが心配だな。ちゃんと立直ってくれると良いのだけれど……。
「令ちゃんも、誰かに相談していると良いのだけれども…」
「大丈夫だよ! 令さまだって心配してくれている友達が居ると思うし…。現に、祥子さまも動いてくれているから……」
いや、それは、分かって居るんだけどね…。
こういうモノって、相手の相性とか友好度とか性格とかにも影響されるし……。
「じゃあ、私が祥子さまから、それとなく様子を聞いてみるね!」
いや、流石にそこまでして貰わなくても……。ちょっと藪蛇とかになったら怖いし。
「大丈夫、大丈夫! 私にまかせて由乃さんは、体を治すことだけに集中しておけば良いから。 あっ…、もうこんな時間だ! また来るね! ごきげんよう」
と、台風の様に去っていく祐巳さん……。
いや、これから起こるかもしれない(?)、祥子さまとの破局寸前を乗り越えた祐巳さんなら、特に心配とかしないのですが……。
祐巳さん、張りきり過ぎて、自爆だけはしないでね……。
■手術の前
明後日は対抗戦の本番。つまり私の手術の日でもある。
まったく、生涯で2度心臓の手術を受ける目に遭うなんて、1年前は予想だにしませんでした。
「明日の応援は、私の分も宜しくお願いするわね」
「うん。まかせて。だいぶ元気になったから、今の令さまなら問題無いと思うよ」
祐巳さんとの、手術前最終打ち合せも滞り無く進み、いざ本番の日を待つばかりとなっている。そういや、祐巳さんが来た時に、やっぱり凸とのニアミスをしました。そういえば彼の御方も入院してたよなぁ…って、今、初めて思い出しました。まったく肝心な時に、役に立たない御祖母様ですねぇ……。間違っても本人の前で言うと、後が怖いので言えませんが……。
私自身の手術は……… もうお医者様に委ねるしか無いので、あれこれ考えても、仕方の無いことであるので、ここまで来たら思い悩むことは無いのであるが……。思い浮かぶのは、あれ以来、顔を会わせていない菜々の姿……。
……嗚呼、元気でやっているかしら?
時折、そんな考えが浮かんでしまい、なんか前回の手術時より士気が上がらない……。
マズイわ!! なんとか明日位までに、気持ちを切り替えなければ!!
「なんか余り元気が無さそうだけど…。なにか心配事でも有るの?」
そ、そんな事ないわよ。
「ん〜、本当に? 凄く強がっているように見えるよ?」
もう、本当になんでもないわよ! なんか…やけに突っ込んでくるわねえ、今日の祐巳さんは……。
「ふ〜〜ん」
何やら『考えている事まる分かりですよ?』的な表情をしている祐巳さん。いや、貴女の表情の方が、考えている事を分かりやすく出してくれるおかげで、何か企んでいそうな事だけは、なんとなく推測出来るのですが……。正直こちらは手術前なので、余りストレスになりそうな事だけは、御遠慮したいところなのですが。
「……ちょっと、お花の水を替えてくるね!」
いや、そこまでして貰うのは、さすがに悪いと思うのだけれど……。
「良いから、良いから! 行って来ます!!」
ハイ……、行ってらっしゃい。全く…本当にナニを企んでいるのやら……。まさか令ちゃんとか連れて来てないわよね?
しかし、次に病室に入ってきた人物を見て、言葉を失ってしまう。
何故なら…、何故なら、そこには、つい先程まで考えていた菜々が、花瓶を持って立っていたのだから……。
「………………………」
「………………………」
(会えて嬉しい!)(何で来たのよ!)
お互い言葉も出ない情況の中、色々の感情が私の中を渦巻いている。 何故、祐巳さんがこの時点の菜々と接点持っているの?
でも、やっぱり。会えて嬉しいという思いが強く感じられる自分が居た。
「申し訳ありません。お姉さま。祐巳さまに無理を言って、連れて来て貰いました……」
菜々が重い口を開く……。まぁ完璧に姉の言い付けを破ったからねぇ。流石にバツが悪いのであろう。
それにしても、祐巳さんのアノ悪戯を隠している表情の裏には、こんなドッキリが有ったのか……。まぁ来ちゃった以上は、仕方が無いわねぇ……。そう、何時の間にか、もう菜々を許してしまっている自分が居る。
何て甘いのであろう……。
結局、私は令ちゃんの同類だ……。妹には甘すぎる……。いや、妹に頼りきっている……。
自分の事を棚に上げて、私は何をやっているんだろう?
嗚呼、手術後にどんな顔して、令ちゃんと向き合えば良いやら……。
そして…… 例え菜々と云えども、1つだけ怒らないとイケナイ事がある!
そう…… 何故! 祐巳さんと接触したの? あれ程、他家への影響を少なくする為、少なくても黄薔薇革命が落ち着くまでは、下手に動かない様に、釘を刺して於いたのに……。
「それが……、街で色々と考え事をしながら歩いていた時に、偶然、祐巳さまとぶつかってしまいまして……」
ふーむ。ボーっとしていたにせよ、菜々が、人とぶつかるなんて珍しいわね……。まぁ祐巳さんがボーっとしているのは容易に想像出来るのであるが……。
「そして話している内に、お姉さまのことを、うっかり口を滑らせてしまいまして……」
まぁ、有り得ない話では無いわね。殆ど完璧に確りとして居そうだけど、時々信じられないようなポカをする子だしねぇ。最も故意に漏らした可能性も有るが、祐巳さん自身のペースに巻き込まれたとすると…… 多分、本気でミスしたんだろうなぁ……。慌てる菜々の様子が思い浮かぶ。チッ!現場で見てみたかったかも……?
「それで、事情を知った祐巳さまが、今日、お見舞いに行くと連絡下さりまして……」
それで、一緒に来たと………。まぁ親友が、お節介を焼いたという所だろうか?
「祐巳さまから御伝言です。『応援の件は了解した。お邪魔虫は、このまま帰宅するので、ごゆっくりどうぞ…』だそうです」
やっぱり……… 気を利かせてくれたのか………。
此処に来る前の世界では、お節介が好きだった我が友。そして、こちら祐巳さんの行動パターンは、そんな嘗ての友を彷彿とさせる…。基本的に同じ人物だから、当然の事と言ってしまえば、身も蓋もない話となってしまうが……。まぁ折角だから厚意に甘えることにしよう。あの友が気を利かせた時は、大抵の場合、事態を好転させてくれたので、非常に有難かった……。自力でがんばるという誓いは破ってしまったけど、こっちは命が掛かってる勝負の前だから、少し位、マリア様も大目に見てくれますよね?
結局、親友の『有難いお節介』のおかげで、なんとか手術の前に士気は回復できた。
何だかんだ言っても、祐巳さんは、私の救いの女神様だったと云う事なのか……。
そして、何時の間にか、令ちゃんにばっかり、強く言えなくなってしまった自分の姿……。
これは、今後の結果の如何に関わらず、令ちゃんに本気で謝り倒さないと。
本当に、勝手な妹でゴメンね……。令ちゃん……。
■戦い済んで
手術が無事済んで数日後、病室のベッドの上で目覚めたると、傍に令ちゃんが居ることに気が付いた。気だるいまどろみの中から、まだ目覚めぬ意識を無理矢理叩き起して、ベットから起き上がった後、私は結果を尋ねた。
「試合……。どうだった?」
慌てて起きた為か、ちょっと体が覚束ない。
「……まだ、無理しちゃだめでしょう」
ベッドの上に置いてあった、令ちゃん作の肩掛けを、私に掛ける令ちゃん。2週間前の私の行動を責める訳でもなく、一言も恨み言を言わずに、唯、何時も様に、無茶をする私を心配そうな表情で見ていた。
「……勝ったよ」
そして、仕方が無いなぁっと云った表情を崩すと、微笑みながら答えてくれた。
……やはり前回通りの結果になったのか。
姉が、無事に試練を乗り越えてくれて内心ホッっとする。色々と積もる話をしたい所であるが……。 私には、まず先に、するべき事があるのだ。即ち、令ちゃんに対して謝罪することである。
そして私は、令ちゃんに謝った。生まれて此の方、令ちゃんにここまで謝ったことは無いかもしれない。嘗て自分が手術後に語ったその想いを、再び令ちゃんに……。
「もう気にしなくて良いから、この話はここで御終い……。2週間ぶりに積もる話でもしましょう」
そして、私は、再び令ちゃんに許された……。前回より、若干後ろ暗い所が有るので、本気で申し訳ない気持ちでいっぱいなのであるが、もう令ちゃんは、本気で気にしていない様子であった。そして、私達は、色々と会えない間の話をしていた訳であるが、事態は私の予想を、遥か斜め上を行く結果となっていて驚くのであった。
「1本勝ち?!」
「うん、段位は相手の方が上だったけど、不思議と負ける気はしなかった」
殆ど前回通りに進んだ、太仲女子高等学校との決勝戦。リリアン側が2勝1敗1分で迎えた大将戦で、なんと令ちゃんは、本戦にて田中姉から1本を奪取して、勝ち数が同じ場合に実施される代表戦まで行かせなかったらしい。
ちょっとマテ!! 確か相手は3段持ちじゃなかった!? いや、ナニそんなに落ち着いているんだよ令ちゃん……。柔らかな表情が何時もに増して凛々しく……… って、見惚れている場合じゃないだろ!! 由乃!!
「結果だけ見ればそうだけど、己が持ってるものを、全力を出し切っただけだよ……」
いや、だから……。貴方はどのこスーパー令ちゃんですか!? 一体どういう経緯で、3皮以上剥けちゃったのよ!!
「あの後、色々と考えたんだ…。今までの自分とか、剣を握る意味とか…。そして気が付いたんだ……。今の自分の本当の姿、今の自分に足りないモノ、そして、これから自分の目指すべき姿が……。これも、由乃と祥子の叱責おかげだよ……」
マテ!! そりゃ少しキツ目ではあったが、私は前回と大して(?)変わったことはしていないぞ……。
……と言う事は、祥子さまがナニかしたってこと!? そういえば祐巳さんが、何か張り切っていたような……。
今度、祐巳さんが見舞いに来たら『何したのか?』聞いてみるか……。
−−−−
「わ、私は、何もしていないよ! 令さまのフォローを、お姉さまにお願いしただけで……」
いや、取って食う訳じゃ無いから、そんなに慌てなくても良いと思うのですが……。相変わらず表情が豊かというか、考えている事が顔に出るというか………。まぁ祥子さまが、何かしたのだけは理解したわ。結局『ナニをしたのか?』自体は、知らない様だから、これ以上は追求しないけれど。
……それにしても。(ニヤ) 何時の間にか『お姉さま』ですか……。
「え! もう…からかわないでよ…。まだ、言い慣れて無くて、凄く恥ずかしいんだから…」
いえいえ、姉妹仲の宜しいことで、良い傾向です。(ニヤニヤ)
「この前、紅薔薇さまに色々と相談している時に、注意されちゃったから……。それで、お姉さまに、令さまのフォローを頼んだ時から、思い切って言う様にしたんだけど……」
OK…、謎は全て解けた……。舞い上がった祥子さまが、必要以上にがんばってしまった、という訳なのね……。今の祥子さまなら、祐巳さんが、甘えて『お姉さま』と言えば大抵の無理は聞いてくれるんだろうなぁ……。
それにしても祥子さま…、貴女は少し、いや凄く、がんばり過ぎたようです。まぁ、こんな令ちゃんも良いなと思っている自分が、私の中で大きくなっているので、別に良いのだけれど… 前回を知って居る身としては、少し戸惑う時が有りますのデスワ……。
「そう言えば、手術前に祐巳さんが、菜々を連れてきてくれた事へのお礼を、まだ言ってなかったわね……」
ビクッ!! 途端に挙動不審になる祐巳さん。 ん…? 一体どうしたのよ?
「あ、あ、ごめんなさい!!」
いや、ナニを怯えているのですか? 本気でお礼を言おうとしているのに……。
「だ、だって由乃さん、私が勝手なことをしたのを凄く怒っているって、菜々ちゃんが……」
全く、あの子は……。面白がって、事態をややこしくする癖は、少し注意しておかなきゃねぇ。親友に怯えられるのは、ちょっと寂しいのだから………。
−−−−
「あれは、まるで鬼神の様でした。いえ、猛る剣鬼っと言った処でしょうか…」
……いや、久々に顔を会わせた第一声が、人の姉を鬼呼ばわりですか? 菜々さんや……。
「他の言葉が思い付きませんので……。しかしあれ以来、私の姉達は、令さまに物凄く畏怖を感じている様子なので、全くの言い掛りとは言えないと思うのですが……」
段位持ちの実力者達を、そこまで恐れさせるなんて……。一体ナニをしたのよ? 令ちゃんは?
……(説明中)……
「突いた?!!!」
「はい。打ち合いで、令さまが場外に押し出された後の試合再開直後に……」
最初は、地力に勝る田中姉が、終始試合を押し気味に進めていたらしい。しかし、令ちゃんが1度場外を取られ、後が無くなった試合再開直後、田中姉が畳み掛けようと、動いた矢先に出来た僅かな隙に、突き技を決めたという試合の流れであったようだ。
『突き』それは中学生以下の試合では、使用が禁止されている危険な技でも有る。(高校の試合でも禁止される場合も有るらしいからねぇ) まともに食らった相手に、しばらく呼吸することが困難になる程の大ダメージを与える剛の技。しかし、相当な技の精度が要求される上に、避けられ易く、避けられた後は、全身が隙だらけとなり、負けがほぼ確定してしまう為、まともに試合で使用できるようなレベルに至るまで、相当に修練が必要なハズである。………そういえば以前から、自宅の道場で、時折叔父さんと『危険だから見学禁止』の秘密稽古してたような……。
まさか!! これの事だったの?!
「姉も、まさかリリアンの生徒が、突いて来るとは思わなかったと言っておりました」
そりゃぁ、お嬢さま学校のリリアン生が、使用レベルの突き技を使うなんて、普通は思わないだろうねぇ……。
「あれ程、綺麗に決まったのは、姉の慢心に因る所も大きいとは思いますが、少なくとも技の切れ自体は、相当な修練を経た結果で有ると分かりますので、恐らく令さまの切り札として持っていた、決め技だったと思うのですが」
来年は……、かなり警戒されるかしら?
「太仲女子高の姉達だけでなく、交流戦以外の場所で、他の2校からもかなりマークされるでしょうねぇ。特に2番目の姉は『来年、長姉の敵を絶対に取る!』息巻いて居ましたし……」
随分と流れが変わってきたなぁ……。まぁ全てが同じって人生も面白みが無いしねぇ……。ならば流れが変わってしまったついでに剣道を始める時期を早めるのも良いわよねぇ……。まだ令ちゃんには反対されていた(体調の戻り具合が不明なため)けど……。
「という訳で、貴女に剣道を教えて貰いたいのだけれど…?」
「……正気ですか? さすがに令さまの御許可を取られてから、始めた方が宜しいかと思うのですが……」
その令ちゃんに反対されているから、菜々に頼んでいるのではないか!
「私は令さまの代わりですか……」
菜々の目が次第に細くなって……… やばっ!! 早くフォロー入れないと!!
「いぁ、今回は貴女からも教わろうと思っていたのよ! 本当よ! 本気よ!!! お願い! 信じて!!」
形振り構わずしてしまった言い訳に、姉の威厳など微塵も無いのであるが、私の失言が原因だしねぇ……。
何より……… 放 置 す る と 何 す る か 分 か ら な い か ら!!
「分かりました。……でも直ぐは流石に問題が有るので、お姉さまの回復の様子を視て、問題無さそうになったら、ということで宜しいでしょうか?」
うんうん、宜しくお願いね。出来るだけ、やさしくしてね?
「修羅コース、地獄コース、叫喚コース、臨死コースなどご用意しておりますが?」
……スパルタ決定かよ!!!
■エピローグ
「私を妹にして下さい!!!」
体調の回復したある初冬の日のマリア像前、私は令ちゃんに頭を下げて、妹にしてくれるように頼んだ。周りには、私と令ちゃん以外の人も少なからず居て、衆人が注目する中での復縁依頼となった訳であるが、前より人が多いような気がするのは気のせいかしら? 正直言うと前回よりドキドキしたかもしれない………。色々と遣り過ぎたし……。もしかすると令ちゃんは、よりを戻すのを了解してくれないかもしれない。
そんな私に少し驚いたものの、令ちゃんは、ただ微笑んでロザリオを私の首に掛けてくれた。
ありがとう………………。
マリア像の周りで様子を伺っていた人達から、驚きの声が漏れるのが聞こえた。
……でも、ちょっと驚かせることになるけど、許してね。
そして、私は菜々をこちらに呼んだ。
「このロザリオ、貴女の首に掛けても良いかしら?」
ざゎ……。周りの息を呑む気配が克明に分かった。そりゃそうだろう…。中等部の生徒を妹に選ぶこともそうであるが、まだ私は1年生だしね……。また、碌でもない無い勲章を1つ手に入れる事になる訳であるが。
「お受けします。」
いい度胸だよ…。これから大変だろうと言うのに…。しかも勝算なんて余り無いからねえ…。
びっくり顔の令ちゃん。(そりゃ、そうだろうな…) 一瞬何か言おうとした様だが、静かに一度、目を閉じた後は、何時もの令ちゃんの表情に戻っていた。
「そっか………。由乃にも見つかったんだね。おめでとう…」
えっと〜〜? いや認めていいのか?この事態を………。多少のお小言は覚悟していたんだけど……。
「貴女なりの意志表明と、気遣いなのは分かったからね……」
えっ…?
「恐らく…。 いえ、ほぼ確実に、このまま行くと来年度中は、由乃の妹の位置は空席になる……。そうなったことの意志表明と、孫を見ることなく卒業する運命になった私への気遣いってとこかしら?」
うぁ…、なんで其処まで洞察出来たのよ! というか本物の令ちゃんかしら?
「失礼ねえ…。これでも、由乃との付き合いは誰よりも長いのよ。それくらい落ち着いて考えれば分かるわよ」
なんか令ちゃんが凄い方向に覚醒したのは気のせいですか? というか、前と雰囲気もちょっと違ってるし!!
「まあ、その件に関しては、後で皆で話し合うことにしましょう………。私達だけでどうにか出来る話では無いからね。今は、由乃の意志と気遣いを尊重してあげる」
もしかして、私、いや、祥子さまは、とんでもない令ちゃんを生み出してしまった!? 妹としては凄く誇らしいのですが、前を知ってる身としては、もの凄くコワイです………。
「さぁ、ここに居ると周りに人が居て落ち着かないから、家に行きましょう」
…………
『時間があれば、今度、家の道場で稽古つけてあげる』
『宜しくお願いします』
…………まぁ孫分が出来て嬉しいのは分かるが、妹を放って置いて良いのですか?
まぁ良いか… 今日だけは許してあげる!!
目の前の光景………。それは、以前の私が、令ちゃんに贈れなかったモノである。
もし令ちゃんに孫が出来た世界が有ったのならば……。
嗚呼! これだ!! この光景が見たいが為に、がんばってみたのだ!!
じゃれ合う、妹(菜々)と姉(令)………。
決して交わることの無い世代差で有る為、本来であれば在り得ぬ光景を眺めながら、今後のことを考える………。
嗚呼、遂に賽を投げてしまった! もはや後戻りは出来ない!!
大人しく待つ方法も有ったのだけれど、今回は、令ちゃんに孫と過ごす日々を贈りたい。
……いいえ、何より自分があと1年以上も待てない。
前例がない? 姉妹制度の枠から外れる?
それが、どうした!! 無茶は承知の上!!
前例が無いなら作ってみせる! 道が無いなら切り開いて通る!!
座して待つなど私らしくない!
仮に、もしダメでも1年我慢すれば良いだけのこと…。
ならば…。
ならは、精一杯、納得のいくまで足掻いてみせる。
信号が、赤に変わるその瞬間(とき)まで……。
……そして、第2次黄薔薇革命の幕は上がった。
ん!? そういえば、
……………現場に三奈子さまの姿が有った様な気がするわ。ちょっと早まったかしら?(汗)
→ [Continuer]
[Fin]
■あとがき
※一般の剣道の試合って、3本勝負だと思っていたのですが、どうも本編では、1本勝負っぽい描写で書いて
あった為、対抗戦のルールを「1本勝負」で突きOKにしました。もしかすると原作と設定が異なる
可能性が有りますので、御了承下さい。
■おまけ
※これ以降の内容は、本編とは一切関係の無い『楽屋話』となります。興味の無い方・苦手な方は、スルーして下さい。
注意:以下は、SSでもナンでも無いシロモノです。
−−−−これは、まめとりもちが行っていた、Key取得時に発生した、一部ノンフィクションな物語−−−−
【指令】
投稿する第2話のKeyを取得せよ!! 以下のモノが対象となる。
@「黄薔薇革命」または其れに類する言葉 → 即時確定
A「返されたロザリオ」または其れに類する言葉 → とりあえずセーブする
B「破局」に類する言葉 → 内容次第でセーブ
尚、捨てるKeyであっても無駄にしてはならない!! 何かネタを考えながらReLoadすること!!
----------------------------------------------------------------------
T ReLoad ( ・ω・)シつ カチッ!! →「バラエティギフト」「未来の白地図」 etc.
(´・ω・`) ザンネン、サブタイトル違いかぁ…………。
以前、見た記憶が有るから、アノKeyは中に有るハズなんだけどなぁ………。
----------------------------------------------------------------------
U ReLoad ( ・ω・)シつ カチッ!! →「紅薔薇革命」「黄薔薇運命」 etc.
。゚(゚´Д`゚)゚。 …………なんてマギラワシイKeyなんだ!!
しかも「紅薔薇革命」を本命と勘違いして、投稿準備してしまったよ…。
なんで色違いに気付けなかったんだろ? よっぽどテンパってたのかなぁ……。
間違いに気付いた後、1週間程、テンションが落ちて何もしませんでした………
----------------------------------------------------------------------
V ReLoad ( ・ω・)シつ カチッ!! →「と○ちゃんに………」「世○薔薇様が………」 etc.
(;゚д゚) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(;゚д゚) このKeyって使っても良いのだろうか……?
というか、あの大御所様の、あのキャラを使えってことですか……?
( ・ω・) 試しに妄想してみる………。
( ・ω・) ………………………………。
恐れ多くて電波が受信できません!! ○| ̄|_
----------------------------------------------------------------------
W ReLoad ( ・ω・)シつ カチッ!! →「ドリル神拳」
(゚д゚) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2000年に渡り受け継がれてきた、恐るべき暗殺拳があった!
その名を…
ドリル神拳!!
天空に連なるドリルの星のもと
一指双電動のドリル神拳を巡って、悲(喜)劇は繰り返されん……
チャララ〜!! ♪
チャラララ〜ラララ・ラ〜〜ラ〜〜ラ〜〜♪
ラ! ラ!♪
You are Tohko !! ♪
愛で、祐巳が、堕ちてく〜る〜♪
You are Tohko !! ♪
薔薇の、中に、堕ちてく〜る〜♪
熱い心『 なんか変なデンパキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!! 』無!駄!だよ〜♪
(゚∀゚) ・・・・・・・・・・・・
こんなSS書いてる場合じゃねえよ…………… ○| ̄|_
がんばれ! まめとりもち………。
何時か、本命のKeyが出るその時まで………
………結局、出ませんでした。○| ̄|_
Fin
(コメント)
不二さん >菜々チャン最高!! さすがは2代目凸さま。(No.17372 2009-02-22 08:18:41)
ガチャSファン >ゴメン。オマケが笑った。ドリル神拳サイコー! …そして、多分紅薔薇革命を登録したのは私です。(^^;)(No.17373 2009-02-22 11:13:20)
miso >由乃っち、一年も待てないというより「(身が)持たない」のね…続き希望です!!!(No.17374 2009-02-22 11:18:49)
MK >同じくオマケに笑ってしまい・・・他人事じゃないけどorz 先生そのVのネタが分かりません! そして剣道と言えば・・・二段持ちに正確無比に脇を強打された体育の時間を思い出す・・・ガクガクブルブル(No.17376 2009-02-22 19:30:25)
海風 >思わずコメント。まさかここで「三方一両損」を見ることになるとは…大岡越前おもしろいですよねー。(No.17379 2009-02-23 10:54:59)
寝ぼすけな目覚まし時計 >GJ! このシリーズでハローグッバイまで読みたいですね。(No.17385 2009-02-23 20:00:58)
寝ぼすけな目覚まし時計 >そう言えば、奇薔薇革命の時は模倣犯がたくさん出ましたけど中等部の生徒にロザリオ渡すのも流行っちゃったりするんでしょうか?(No.17386 2009-02-23 20:03:05)
寝ぼすけな目覚まし時計 >うあー、とんでもない変換されてる。・°°・(;>_<;)・°°・。(No.17387 2009-02-23 20:07:38)
↑ >あながち間違いでもないような…「奇薔薇」(No.17394 2009-02-24 17:35:36)
↑ >あながち間違いでもないような…「奇薔薇」(No.17396 2009-02-24 18:40:28)
まめとりもち >Key作業から解放されて、まったり過ごしていた、まめとりもちです。投稿後に力尽きて、ちょっと命の洗濯をしていたので、御挨拶が遅れてしまいました。スミマセン…。さらに息抜きついでに、今月の上旬頃から、他の方の作品を読んでなかったので、一気に読んで居たりして…。自分で投稿しておいて何ですが、今回の話は、えらく間延びしてるというか、ダレていうか……。凄く読み難い作品になって、申し訳なく思っております。この作品を連載するに当って、少なくても原作1冊分の時系列を1話分として投稿しようと決めていたのが、仇になったかもしれません。(何話かに分けた方が良かったかも?) …という訳で、3話の形態を予定通りに書くか?変更するか? 今、思案してますので、3話以降は相当遅れるかもしれません。最後に、おまけのVで、作品で使用しているオリキャラ名が、Keyに登録されている方の代表者として、登場させてしまった、いぬいぬ様、若杉様、本当に御免なさい。気分を害されたなら言って下さい。当該部分を削除しますので…。(No.17398 2009-02-24 21:23:26)
まめとりもち >コメ返しなど--- [不二さん]様、 私の書く菜々は、若干、由乃に振り回される色が有るので、違和感が有るかなと思って居たのですが、気に入って貰えて良かったです。 [ガチャSファン]様、笑分が足りないと、急遽書いた「おまけ」でしたが、楽しんで頂けたのなら、作者冥利で御座います。尚、おまけにはトラップが有って、笑えた人は世代がバレますよ…。(笑) [miso]様、一応、続きを予定してますので、見捨てずにお待ち頂けたらと…。(本気で次は何時投下出来るか分かりませんが) [MK]様、何時もコメントして頂いて有難う御座います。お互いKeyには泣かされますねぇ…。(苦笑) あ、MK様のホラー物、何時も楽しく読ませて貰ってますよ。(此処で書くか?オイ おまけVは、前の書き込みを参照と言うことで…。 [海風]様、由乃さんなら時代劇に詳しいかな?と有名な大岡ネタを使ってみました。(笑) ちなみに、私がこの板に投稿を決意した切欠が、年末の「ハローグッバイ」と海風様の「由乃スキーよ今立ち上がれ」(笑)なSSですので、コメントを頂けて光栄で思っております。 [寝ぼすけな目覚まし時計]様、 …ハハハ(乾笑)、ネタはチェリーブロッサム時点までしか考えて無かったり…。というか、其処まで辿り着くのかな?(オイ) 模倣者については、次話をお楽しみと言う事でご容赦を…。 [↑]様、間違いでも無いと言うより、ずばりその通りですねぇ。なんでこんな風になってしまったやら…。 最後に、コメントおよび、投票ボタンを押して下さった全ての方々に、深くお礼を申し上げます。(No.17399 2009-02-24 21:25:03)
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