がちゃS・ぷち
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No.2972
作者:鬼饗 雪姫
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2009-06-19 20:04:14
萌えた:23
笑った:4
感動だ:28
『正統派な大人の会話』
※オリジナル設定・オリジナルキャラクターを多数、使用しております。
苦手な方・お嫌いな方は、スルーして下さい。
【No:2969】『上をむいて可愛いキャラクター』の続きとなっております。
「祥子、ひとまずは掛けなさい。」
祥子が、融の私室へと入るなり、そう言われた。
「・・・お父様、あの子は・・・!」
「まずは、私の話を聞いてくれないか?祥子。」
話を切り出そうとした祥子を、融はそう言って遮った。
「・・・はい。」
祥子はひとまず、勧められるままに、椅子へと腰掛けた。
天使(エンジェル)さまがみてる 第3話
「幸穂ちゃんには、これなんかどうかしら?」
「お母様。幸穂には、こちらの方が良いかと思いますわ。」
とあるデパートの子供服売り場には、2人の女性が、小さな女の子の周りであれやこれやと、様々な洋服を見立てていた。
2人の女性とは、祥子とその母親である清子であり、その中心にいる女の子は幸穂であった。祥子は約束通りに、幸穂と買い物に来ていたのだった。
表向きは、別荘に行くのに必要なモノを買いに来たのだが、実際は、幸穂の服を買いに来たのだった。
幸穂の持っていたリュックサックの中には、数枚の着替えや服は入っていたが、汗ばむ夏場では、いくらあっても足りないくらいだった。しかし、あれやこれやと買っている内に、すっかり大荷物になってしまった。
「お母様、少し買いすぎでは?」
何軒かの洋品店を回った3人は、喫茶店で小休止を取ることにした。
祥子は、注文した紅茶を飲みながら、際限なく買い込みそうな様子を見せた清子に釘を刺した。
「あら、祥子さん。子供服はいくらあっても足りないものよ。少し多めに買っておいても損はないわ。」
ニコッと微笑む清子を見て、祥子は、今の清子に何を言っても意味がないことを悟り、ため息を吐いた。
「お祖母ちゃん、たくさんのお洋服ありがとう。でもね、そんなにたくさん買ってもらっても、着られなくなっちゃうから、もう良いよ?」
「そうね。お買い物が久しぶりだったから、お祖母ちゃんも、ついつい羽目を外しすぎちゃったわ。ごめんなさいね、幸穂ちゃん。」
幸穂がそう言うと、清子は申し訳なさそうにそう言うのだった。
娘の一言よりも孫の一言の方が効き目があるという現実に、祥子は再度ため息を吐くしかなかったのだった。
「清子、待たせたね。」
「え・・・?お父様?」
祥子は、背後から聞こえてきた声に驚いて、慌てて振り返ると、父の姿があった。
「あ、お祖父ちゃん!」
幸穂は、融の姿を見つけると、ニコニコとしながら、手を振った。
「どうして・・・ここに?」
祥子の記憶通りならば、融は数日前から留守にしており、あと数日は帰宅しないはずである。しかし、目の前に、その姿は確かにあった。
「融さん、遅かったですね。」
「すまない、会議が少し延びてしまってね。」
祥子が呆気に取られているにも関わらず、清子と融は夫婦の会話に、花を咲かせていた。
「お、お母様、まさか、お父様がいらっしゃるのが分かっていたのですか!?」
「ええ。私が融さんに電話をして、帰ってきていただいたのよ。幸穂ちゃんを融さんに会わせてあげたかったしね。」
「お母様!!」
祥子の大声が、店内に空しく轟くのだった。
「祥子。後で話があるから、私の部屋に来なさい。」
あの後、融の提案で一行は外食を済ませた。そして、屋敷に戻る車中で祥子は、融にそう言われた。
「分かりました。」
祥子は、そう返事をする事しか出来なかった。
私室に戻り、部屋着に着替えた祥子は、融の私室へと向かった。
「失礼します、お父様。祥子です。」
「祥子か・・・入りなさい。」
ノックをすると、中から融の返事が聞こえてきた。
そして、冒頭のような状況になるのだった。
「彼女は、祥子の未来の娘だそうだね。」
融はそう言って、切り出した。
「どうして、ご存じなのですか?」
「清子が電話してきた時に、そう言っていたからだ。そこで、会うだけ会ってみようと思ってね。清子に会う段取りを、付けてもらったという訳さ。」
それを聞いて、祥子は、清子があの喫茶店に入りたがった理由が分かった。
「信じてくださるのですか?」
「ああ、信じているよ。祥子は、私と清子の子供だからね。子供の言うことを信じずに、誰の言葉を信じるのだい?」
「・・・。」
融の口から、思わぬ言葉が出たので、祥子は驚いてしまった。
「ただ、私にはね、気になることがあるのだよ。」
「気になることですか?」
「うん。幸穂ちゃんの父親だよ。」
それは、祥子にとっても、疑問だった。しかし、その疑問を、どこかで避けていた自分が居ることに、祥子は気がついた。
「それに、祥子。幸穂ちゃんが、これからもずっと、この時代に居る可能性も0ではないはずだ。」
「それは、そうですね。」
「それに、祥子。そうなったら、君一人だけの問題ではなくなってしまう。周囲から、あらぬ噂や攻撃があるだろう。なんせ、あの子は、『小笠原祥子』の『娘』だからね。」
「私が、幸穂を守って見せますわ。」
胸に手を当てながら、祥子がそう言うのを見て、融は苦笑を浮かべた。
「ただ、祥子。これだけは約束してくれないか?」
「何ですか?お父様。」
「父親の事もそうだが、一人の人間を守るという事は非常に大変なことだ。楽しいことだけじゃない。いや、正確には辛いことの方が多いはずだ。そうなった時は、遠慮なく、私や清子を頼りなさい。」
「お父様・・・。」
祥子は、そう言われて、少しだけ心が軽くなった。
「さぁ、今日はもう遅い。もう寝なさい。」
「お休みなさい、お父様。」
祥子は、融の私室を出た後、幸穂用にと充てられた私室へと向かった。
「・・・幸穂?起きている?」
ノックをしたが、反応がなかったので、祥子は静かに扉を開けた。
「・・・すぅ・・・すぅ・・・。」
ベッドには、パジャマを着て、ぬいぐるみを抱きながら眠る幸穂がいた。
「フフフ。」
祥子は、静かに幸穂のベッドに腰掛けると、幸穂の頭を軽く撫でた。
「まったく、もう少しだけ、自重してくださればよろしいのに・・・。」
ベッドだけでなく、部屋全体には大小問わず、いくつものぬいぐるみがあり、部屋にはいくつものオモチャと一緒に転がっていた。
買ってきたのは、紛れもなく、母親である清子であることを、祥子には分かった。
「あら・・・?何かしら、これ?」
祥子は、ぬいぐるみによって、押し倒れてしまった写真立てを見つけた。
フレームはシンプルであったが、大切にされていたことが分かった。
「・・・これは!?」
写真には、幸穂が写っていた。
そして、椅子に腰掛ける幸穂の後ろには、今よりもやや老けた融と清子の夫妻。
幸穂の右隣には、大人の雰囲気を醸し出す祥子。その真逆には、少し老けてはいるが、紛れもなく、祥子の知っている人物が写っていた。
「優さんが・・・・幸穂の父親なの?」
フレーム下の『小笠原家の人々』と書かれているのだった。
祥子は、呆然としてしまった。
<つづく>
お・ま・け
小笠原 幸穂 (おがさわら さちほ)
所属 :リリアン女学園 幼等部 3年1組
誕生日:2008年 8月10日
第3話段階で、まだ8歳。
身長 :132p
祐巳よりも、頭一つ分低い。
好きなもの:家族 ストロベリーケーキ
嫌いなもの:ウソつき
備考:学校の成績などは、上の中程度である。
友達もたくさんおり、同い年の頃の祥子よりも、浮き世離れしていない。
(コメント)
鬼饗 雪姫 >前回、ボタンを押してくださいました皆様、コメントをくださいました皆さん、ありがとうございました。(No.17675 2009-06-19 20:04:55)
鬼饗 雪姫 >前回、幸穂の名前の読み方が分からないというコメントがありましたので、書かさせていただきました。参考にしていただければ、幸いです。(No.17676 2009-06-19 20:07:11)
LAND >続きありがとうございます。これからどうなるか楽しみです。やっぱ長編っていいですね(No.17684 2009-06-20 23:58:07)
ロビン >楽しく読ませていただいています。続きがとても気になります。(No.17687 2009-06-21 03:26:10)
あ >自演乙(No.17688 2009-06-21 14:00:13)
い >今後の展開に期待です。父親の大どんでん返しに期待です。(No.17689 2009-06-21 22:36:52)
愛読者v >あの王子が・・・・・・・・(No.17691 2009-06-22 21:34:38)
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