がちゃS・ぷち

[1]前  [2]
[3]最新リスト
[4]入口へ戻る
ページ下部へ

No.77
作者:琴吹 邑
[MAIL][HOME]
2005-06-22 01:06:37
萌えた:10
笑った:36
感動だ:4

『君にキスを乱れ撃ち』

 正直私のお姉さまは、気分屋で気分が乗らないと全く何もやらない。
 そのくせ、自分が面白いと思ったことは、どんな障害を排除しても、実行してしまう、そんな人だ。
 今のお姉様のブームは、私や由乃をからかうことだから、最初呼びかけられたときには、一体どんな無理難題がふっかけられるか、どきどきしていたのだが………。

「令。私の気持ちを受け取って欲しいの」

 真剣な顔で私の顔を見つめるお姉さまに、私の心臓は高鳴った。

「これから投げキスするから、それを全部令に受け止めて欲しいの」

 何で突然そんなことをを思いつつも、お姉さまなら思い立ったらやるだろうし、お姉さまからの投げキッスはそれはやっぱり妹として、ちょっと欲しいなと思ってしまう。
 少なくても、今日の夜は幸せな気持ちで過ごせるだろう。

「は、はい、喜んで」

 私は、緊張でどもりながらも、お姉様に肯定の返事をした。

「わかった、しっかり身構えていてね」

 お姉さまは私に笑ってそう言うと、3メートルくらい下がり後ろを向いた。

「いくわよ、令」
「はい!」

 次の瞬間、お姉様の手から銀色の何かが放たれた。

「は?」

私がびっくりしていると、その銀色の何かは、次から次へと、私に向かって投げられていた。

「令、ちゃんと私の気持ち受け取りなさいよ」
「え?」

 思わず避けようとしたそれを、お姉さまの言葉で、慌ててつかみに行く。
 捕まえた手に、ぬちゃりとした冷たい感触が伝わってきた。
 思わず放り出しそうになるのを必死に我慢して、私はお姉さまが次々と投げてくるそれを、次々と捕まえた。
 幸いなことに、お姉さまは手加減してくれたらしく、私はお姉さまが投げたそれを一つ残らず捕まえることが出来た。

「さすが令ね。あれを全部キャッチしたとは。えらいえらい。それ、家に持って帰って由乃ちゃんにご馳走してあげて」
「は、はあ」

 お姉さまが投げてきたモノ。――それは、銀色に輝く新鮮そうな鱚だった。

「お姉さま……」

 確かにお姉さまは投げ鱚といった。だからあれは私が勝手に投げキッスと解釈したのだが、でもこれはあんまりではないだろうか。投げキスと聞いて、誰が鱚が乱れ飛ぶさまを想像するだろうか。
 さすがの私もこれには半泣きになった。

「あら、もう一つあったわ。しっかりと受け取ってね」

 そんな私の気持ちを知ってかしらずか、お姉さまはにこやかに私にそう言った。
 お姉さまがそう言うからには仕方がない。私はこぼれ落ちそうな涙をこらえてお姉さまの方に向いた。

「じゃあいくわよー」

 次の瞬間、銀色の鱚が飛んでくると信じて疑わなかった私に飛んできたのは、正真正銘お姉さまの気持ちのこもった投げキッスだった。


(コメント)
柊雅史 >思いついた時、江利子さますげー嬉しかったでしょうね、このギャグ(^^)(No.247 2005-06-22 01:57:52)
琴吹 邑 >江利子さんって、こういう事、普通にやりそうですよね(No.273 2005-06-23 07:29:24)
さんたろう >こーゆーのも「飴と鞭」って言うんでしょうかー(No.475 2005-07-04 10:18:02)

[5]コメント投稿
名前
本文
パス
文字色

簡易投票
   


記事編集
キー

コメント削除
No.
キー


[6]前  [7]
[8]最新リスト
[0]入口へ戻る
ページ上部へ