がちゃS・ぷち
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No.1110
作者:投
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2006-02-11 22:36:09
萌えた:8
笑った:1
感動だ:25
『きせかえ姉妹』
【No:1088】→【No:1093】→【No:1095】→【No:1097】→【No:1101】→
【No:1102】→【No:1105】→【No:1108】の続き
金曜日、放課後。
今日は被服室で演劇に使う衣装の、仮縫いの試着を行っている。
「まー、シンデレラお美しいわ」
金や銀の糸で飾られた光沢のあるアイボリーのドレスは、清楚で豪勢で、とても祥子に似合っていた。
さすが祥子、似合うわねぇ。
お姫様って感じがちゃんと出てる。
「胸もと、少し開きすぎじゃないかしら?」
祥子が気にしながら呟くと、義母役のドレスをたくしあげて江利子が飛んできた。
「駄目よ、勝手に襟を詰めちゃ。少しくらい祥子ファンにサービスしなさい」
と言って祥子をその場でクルリと回転させ、祐巳ちゃんの前で向き合うようにして止めた。
どう?江利子が祐巳ちゃんに尋ねる。
「と、とっても似合ってます」
真っ赤になりながら祥子を見つめている祐巳ちゃんを見て、江利子は満足したようだ。
祥子もそんな祐巳ちゃんを見て満足したようで、それ以上は何も言わなかった。
「祐巳ちゃん、寸法はピッタリみたいね」
そのまま、祐巳ちゃんの衣装を確認している江利子を見ていると、江利子が楽しそうに言った。
「祐巳ちゃんもあのドレス着てみる?」
「ええええー?」
突然大きな声を祐巳ちゃんが上げたからみんなが驚いている。
江利子は構わず、祥子それ脱いで、と続けた。
渋っていた祐巳ちゃんだけど、江利子が相手ではどうにもならないようで、
結局、着替えさせられることに。
「うわー、かわいいなぁ」
隣で見ていた聖が、シンデレラの衣装に着替えた祐巳ちゃんを眺めながら呟いた。
確かにかわいい。山百合会のメンバーも手芸部のメンバーも皆、
祐巳ちゃんを見てかわいいとか、似合ってるとか褒めている。
「どうせなら髪型も変えてみましょうか」
調子に乗った江利子が楽しげに言う。
皆もそれに賛成した。
そんな暇はないけど。
まぁ、今日くらいは大目にみましょうか。
江利子に連れられて行く祐巳ちゃんを、心配そうな表情で見ている祥子。
まだ姉妹ではないけれど、既に立派な姉ばかっぷりを覗かせている。
私はそんな祥子を眺めながらふと、この間のことを思いだした。
あの時……。
祐巳ちゃんと蔦子さんが部屋を出て行ったあと、呆然としている祥子に私は言った。
「祥子、今すぐ祐巳ちゃんを追いかけなさい」
けれど祥子は動かなかった。
心を失ってしまったように、無表情でぴくりとも動かなかった。
祐巳ちゃんを追いかけようとしていた他のみんなも、そんな祥子に気付いて動きを止めた。
「祥子……?」
私の呼びかけに祥子は涙で応えた。
つっと頬を涙が伝う。
私は聖と江利子に目配せをした。
二人はすぐに分かってくれたようで、私と祥子を残して皆を引き連れて部屋から出て行く。
全員が部屋から出るのを見計らって、私は席を立って祥子の傍に立つ。
「祥子、あなた……」
そっと肩に手を触れると、祥子の身体が小刻みに震えている事に気付いた。
「祐巳ちゃんの事……」
「………………った」
「え?」
「嫌……われて……った」
両手を握り締めながら呟いている。
「好き……、だったのね?祐巳ちゃんの事」
祥子は小さく頷いた。
ポタポタと、涙がスカートに落ちて染みていく。
「あの時、あなたは祐巳ちゃんを探しに行こうとしたのね」
再び小さく頷く。
そして祥子は声を上げて泣きだした。
見栄も誇りも何も無く、ただ泣くだけの一人の少女の姿がそこにある。
「ごめんなさい。私があなたを追い詰めなければ、こんな事にならなかったのに」
間が悪すぎた。
それは分かる。
勘違いさせてしまった。
祥子のことばかり気にしすぎて、祐巳ちゃんの状態に気付けなかった。
祐巳ちゃんを傷つけてしまった。
祥子も傷ついてしまった。
「祥子、聞いて。祐巳ちゃんはあなたのこと、本当に嫌ってはいないと思うわ」
「え?」
涙に濡れた顔を隠しもせず、私の方を見る。
「お手伝いには来ますって言ってたでしょう?
あれは、きっと祥子とまだ関わっていたいからではないかしら。
だから、まだ終わってはいないはずよ。終わるとしたら、それは祥子が諦めたとき」
「……で……も、どうす……れば」
「どうするかは祥子が決める事でしょう?」
傍にいるから、寄り掛かってもいいから。
あなたが考えて、あなたが答えを決めなさい。
どれくらい時間が経っただろうか?
次第に落ち着いてきた祥子は、ゆっくりと言う。
「あ……やま……り……ます」
「ええ、そうね謝らなければならないわね。あなたも、私達も」
祥子はこれから、どうするかを決めた。
謝ること。
誤解を解くこと。
明日の山百合会の仕事は休ませて欲しいこと。
考えることがあるのだろう。
きっとそれは、祐巳ちゃんのこととシンデレラの役のこと。
それくらい分かる、だって祥子の姉だもの。
祥子は強くなれる。
祐巳ちゃんの為なら強くなれる。
それは、時には弱点になってしまうかも知れないけれど。
私は、少し祐巳ちゃんに嫉妬した。
さて、もう祥子は大丈夫。
みんなを呼びに行きましょうか。
「…………」
皆が皆、沈黙を以って応えた。
……反則よね?
いつもの左右二つに分けていた髪型がストレートに変わっただけ。
それだけなのに、こうまで変わるとは……。
「あの……?」
反応の無いみんなを見て、不安そうに首を傾げる。
茶色がかった黒髪がそれに合わせて揺れた。
皆の視線は祐巳ちゃんに釘付けだった。
お化粧をしている訳ではない。
確かに美少女な祐巳ちゃんだけど、
今の祐巳ちゃんは、いつもより数段上の更にとんでもない美少女。
雰囲気も大人っぽくなって、落ち着いて見えて、少しお姉さんっぽいというか……。
「どこのお姫様よ……?」
江利子がぽつりと呟いた。
私もそう思った。
どこかのお城から抜け出してきた本物のお姫様。
思わず溜息をつきたくなる。
いや、実際についていたかも知れない。
と、そんな中、祥子が複雑そうな表情で祐巳ちゃんを見ていた。
「どうしたの?」
「え……?あ……お姉さま。いえ、なんでもありません」
ふふ、変な祥子。一瞬、誰だか分からなかったとか?
それとも、こんな祐巳ちゃんを皆に見られた事に嫉妬した?
「胸が……」
仕事どころでは無くなりそうだったので、元の髪型に戻して衣装を脱いでもらう。
脱ぐと同時に祐巳ちゃんは悔しそうに呟いた。
いくらかショックを受けているみたい。
祥子に慰められている祐巳ちゃんを見て、思わず笑みが零れてしまう。
あなたが慰めてもそれは逆効果よ?
それにしても祐巳ちゃんは不思議な子ね。
何時の間にか皆を笑顔にしてくれる。
あの時、あんなに悲しい顔をしてた祥子が、今はとてもやさしい微笑を浮かべているもの。
「いい子ね、私も祐巳ちゃん欲しいわ」
近くに寄ってきた江利子が私に言った。
「あら、駄目よ。祐巳ちゃんは祥子が大好きなんだから」
「逆もでしょ?」
そうね、と二人で笑いあう。
なになに?聖が私達の方へと寄ってくる。
「ふふふ、なんでもないわよ?」
祐巳ちゃんと祥子、二人なら心配ない。
きっと四季咲きの、大輪の花を咲かせるわ……
まだまだまだまだまだまだまだまだ続く……のか?
(コメント)
投 >疲れた…(No.6385 2006-02-11 22:37:21)
ガチャ読 >相も変わらずすばらしい更新速度・・・お疲れ様です^^; このSSの祐巳の絵が見てみたいなぁ(No.6389 2006-02-11 22:53:49)
にゃ >お祖母ちゃん、かく語りき。刻一刻と近づく学園祭、どうなることやら♪(No.6391 2006-02-11 23:00:26)
風 >妹ばかと姉ばかの使い方。違っているような?(No.6392 2006-02-11 23:00:33)
にゃ >それから、校正もどき。 妹ばかになるのは妹の方ではないですか? 親がなるのが親ばか、姉がなるのは姉ばか……の筈。自分の語彙力に自信がない……(No.6394 2006-02-11 23:06:27)
にゃ >って、風さまが指摘されてるし……五輪見ながらレスするもんじゃないですなぁ……(No.6395 2006-02-11 23:08:19)
紅雪 >マイペースに更新をしてくださいw頑張りすぎるとdownしてしまうので…。(No.6398 2006-02-11 23:19:40)
投 >妹ばかと姉ばか…最初そう思ったんですけど、検索してみるとおかしな事に親子と姉妹では逆転してsまう不思議な…どっちなんだろ?(No.6403 2006-02-11 23:43:33)
投 >sまう→しまう 削除パス入れ忘れた…(No.6404 2006-02-11 23:44:30)
投 >うーん、どうやら調べたところが悪かったのかな?やっぱり逆のようです…(No.6405 2006-02-11 23:49:28)
投 >ということで直しました。あっちも直しときます(No.6406 2006-02-11 23:51:16)
投 >ご指摘ありがとうございました〜。(No.6407 2006-02-11 23:56:53)
風 >そういう時は原作です。チェリブロで祐巳ちゃんが詳しく説明してくれてますよ。(No.6408 2006-02-11 23:59:57)
投 >バッチリ載ってました…p222真ん中辺りに『単なる「妹バカ」だが、それでいいのだ』そうです…ぐふっ…(No.6411 2006-02-12 00:11:09)
YHKH >いい感じですねぇ…せめてこのままロザリオ授受のシーンまでは連載を続けてほしいです。投様頑張って!(No.6414 2006-02-12 01:02:03)
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