がちゃS・ぷち
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No.1813
作者:若杉奈留美
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2006-08-28 23:32:34
萌えた:1
笑った:6
感動だ:0
『突貫在るのみガーディアンガールス世のため人のため』
久々に原点回帰のイニGシリーズ。
【No:1779】ラストシーンと、ROM人さまのコメントに触発されて書いてみました。
「どういうことなのよ…ありえないわ」
島津由乃は眉間にシワを寄せ、腕組みをして考え込んだ。
それほど散らかっているわけでもない、むしろ女子高生の部屋とは思えないほど
殺風景で片付いているこの部屋に、どうして『それ』がいるのか。
「どこかから迷い込んできたのかしら…」
その問いの答えは部屋の中から聞こえた。
『迷う?私たちはここにずっと住んでいたのよ』
「ああ、そうなの…って、誰なの!?」
『ここよ』
声のするほうを見ると、机近くの壁にGがへばりついている。
「ひ…ひっ…」
『落ち着きなさいよ、まだ何もしてないでしょ?』
「これが落ち着いていられますか!だいたいあんたどうして私の部屋なんかに来るのよ!」
由乃は叫ぶ。
しかしGはそれに答えることなく、どこかへと消えてしまった。
『間違いない…以前パチンコショットで私たちの仲間を殺したあの女です』
『偵察ご苦労さま。それで?私たちが生きられそうな環境は整っていたかしら?』
『あいにくとそれらしいものは存在しないようで…どうにも片付き過ぎていて、
とても落ち着いては暮らせません』
『餌になりそうなものもなく、温度湿度も私たちの生存には向かない、というわけね』
『そういうことです女王様、ここを我々の拠点にするのは無理があるかと』
『あら、別にこの部屋でなくてもいいじゃない?普段はこの家の冷蔵庫あたりに潜んでおいて、何かの拍子に驚かせてやれば?
それを何度も繰り返せば、たとえ人間界最強レベルの兵士でも堪えるはずよ』
『女王様、ずいぶんと強気ですね』
『勝算大有りだからよ。この女は突発的な戦闘には強いけれど、持久戦には弱いから。
私もこの部屋に時々訪れて観察していたけれど、勢いだけで進んでしまうから、あとが持たないの。で、何かあると"令ちゃんのバカ!"で終わり』
『ずいぶん細かく観察してますね…』
『当たり前でしょ。私もだてにGの女王やってないわよ』
『ではそこを一気に攻めれば…』
『島津家での新たな拠点構築は可能よ。ベッド下は盲点だろうし、あそこには適度な暗闇と餌になるホコリやハウスダストもある。
忘れないでね、私たちは雑食性なのよ』
…なんか嫌な会話が聞こえてきたが、それを「疲れたせいね」と強引に結論を出し、
由乃はそのまま眠ってしまった。
翌日由乃の話を聞いた山百合会メンバーは表情を変えた。
「由乃さま…すぐミッションを発動しなければ、大変なことになりますよ。
岡本家や安西家の例もあることですし」
乃梨子は断言した。
そのあとをちあきが受ける。
「乃梨子さまのおっしゃるとおりです…特に『持久戦には弱い』のくだりなど、
これほど的確に由乃さまを分析しているとは驚きです」
「まさかうちがミッションの舞台になるなんてね…」
ふだんのイケイケからは想像もつかないほどしおれているのは、眠ったあとも聞こえてくるガサガサという音のせい。
そのおかげで寝不足なのだ。
「どうなさいますか?すべては由乃さましだいですが」
ちあきの最終尋問。
言外に「絶対にノーとは言わせない」という強い意志を見てとったのか、
由乃はついに決断した。
「…分かった。発動するよ」
ちあきは表情を和らげてうなずくと、恒例のミッション・コールを発した。
『今回のミッションは、島津家におけるG軍団の拠点構築阻止!
全員個々の役割を完璧に果たせ!』
『ラジャー!』
「と、意気込んではみたものの…これが普通の女子高生の部屋とは、
とても思えないのよね」
祐巳は素朴な疑問を口にした。
無理もない。
まずこのインテリアの色合い。
白一色の壁の下半分はダークブラウンの木の板でコーディネートされている。
カーテンは薄い黄色地に、濃い黄色と緑のチェック柄。
部屋にある家具は、ミニコンポにベッドに小さなテーブル、そして本棚。
それ以外には何もない。
それに壁にも絵の1枚もかかっていない、まさに殺風景を地で行く部屋。
先ほどのG軍団の分析どおり、片付き過ぎて逆に居心地が悪そうにも思えるが、
本人は気にはしていないらしい。
「確かに掃除のしがいはなさそうな部屋よね」
志摩子はのんびりした口調で付け加えた。
現に、主だった部分の掃除はわずか20分ほどで終わってしまったのだ。
その傍らで祐巳は厳しい顔をしている。
「どうしたの?祐巳さん」
由乃の問いに、祐巳は答えることはなかった。
先ほどから部屋の片隅をじっと見つめたまま、まったく動こうとしないのだ。
「祐巳さん?」
志摩子もさすがに心配になってきた。
普段は厳しい表情など見せることのない祐巳が、身じろぎもせず憤怒の形相でいるのだから。
「…出てきなさい。私たちは逃げも隠れもしないわ」
やがて1匹のGが、意を決したように現れた。
『また私たちの邪魔をしにきたのかしら?いい加減に懲りたらどうなのよ』
祐巳はその挑発を鼻であしらった。
「おあいにくさま、これでも私ってば頑固者だから…あんたたちのたくらみを確実につぶすまでは逃げたくないのよ」
『あきれた意地っ張りね、あなたも…そんなふうに言っていられるのは、今のうちだけよ』
言い終わるとGは配下の軍団を引き連れて、祐巳たちに対峙した。
『全軍出撃!』
「くらえ、怒りのパチンコショット!」
正義のパチンコ玉がG軍団を確実にしとめていく。
『おのれ、こしゃくな〜!』
Gたちは集団で由乃に襲い掛かり、体中を我が物顔に這い回る。
「ぎゃ〜っ!」
あまりの驚きとショックで腰を抜かしかけた由乃に、救いの手が差し伸べられた。
「蜘蛛の網(スパイダーズ・ネット)!」
由乃に群がっていたG軍団を一網打尽にした網。
その技の使い手は、最近力をつけてきた菜々。
「菜々…あんたいつの間にそんな技を…」
菜々は不敵な笑みを見せた。
「由乃さまには分からない場所で、私もいろいろとやっているんです」
育ちのせいかプライドが高く意地っ張りなところがある由乃は、
なかなかその一言が口に出せない。
「…一度しか言わないから」
由乃は耳まで真っ赤にしつつ、小さな声で言った。
「…ありがとう」
『ええい、何をしておる!支倉家からの援軍はまだか!』
『それが…全員トラップに捕まって、身動きできる状況ではないと連絡が…!』
『あの役立たずどもめ…こうなったら我々だけで勝負だ!』
G軍団の攻撃はさらに激しくなり、部屋中を縦横無尽に飛び回っては、
容赦なくミッションを襲撃する。
「いやぁぁぁぁっ!」
美咲が甲高い悲鳴を上げる。
その指先を、Gは渾身の力で食いちぎろうとしていた。
「美咲ちゃん、大丈夫!?」
持っていた強力ゴムでGを払い落とすと、祐巳は指令を出した。
「美咲ちゃんをいったん下がらせて!指をケガしてる」
「了解!」
菜々に連れられて別室に下がる美咲の姿が目に入る。
祐巳の怒りはその瞬間、頂点に達した。
「あんたたち、よほど私を怒らせたいんだね…分かったよ。
私たちの本気を見るがいい…」
激しい怒りの念をこめて、インセンスに火をつけ、そして吹き消す。
あたりに広がる、聖なる煙。
呪文詠唱が始まった。
『今やこの戦いの勝利は我らにあり…
この煙の立つところ、正義が必ず支配し、悪しきたくらみは無に帰する…
神聖薫香竜巻(ホーリー・インセンス・トルネード)!』
白い煙は強烈な竜巻となって、G軍団すべてを大気の彼方へ吹き飛ばした。
「祐巳さん、そしてみんな、ありがとう…ひっ」
そのとき由乃が見た祐巳は。
血走った目に、つりあがる眉。
真一文字に結ばれた口元に、かすかに震える両手。
先ほどまでの戦いの余韻が残る、壮絶な形相で立ち尽くしていた。
『これで終わりだと思わないでね。私たちは不死身だから』
戦いのあとの空間に、敵の最後の言葉が響いた。
「祐巳さま…大丈夫ですか?」
指のケガを治療してもらった美咲が、祐巳を気遣う。
「私は平気よ…美咲ちゃんこそ、大丈夫なの?」
美咲は祐巳の異変を鋭く感じ取った。
声にまったく抑揚がなく、感情がこもっていないのだ。
「祐巳さま!」
悲痛な声で叫び、祐巳の肩を揺さぶる美咲。
「お願いです、戻ってきてください!」
しかし祐巳は美咲の言葉に返事をすることなく、そのまま床にくずおれた。
「祐巳さま!祐巳さま!」
祐巳の体を抱きしめ、美咲は必死にその名前を呼ぶが、反応はない。
「志摩子さま、救急車を早く!」
志摩子は階下へ急いで降りていった。
病院での診察の結果、急激なストレスと疲労による一時的なものと診断され、
ミッションメンバーは胸をなでおろした。
「ごめんね、心配させて…」
「祐巳さま、お願いですからあまり熱くならないでください。
毎回倒れていたのでは身が持ちませんよ?」
ちあきはため息をつきながら忠告した。
しかしそれを一笑に付してしまう祐巳。
「あら、この間『なんなのこの家庭科のテストは!』って智子ちゃんや美咲ちゃんを追い回していたのは誰?
2人がメールで言ってきたよ、『何とかしてください!』って」
「祐巳さま〜…」
「熱いのはお互い様だよね?」
有無を言わさぬ笑顔。
(ねえ…祐巳さん、なんか変わったよね)
(もしかして逆らったらミッションから追放?)
どうやら祐巳がいる限り、ミッションは安泰…かもしれない。
(コメント)
joker >という事は、まっくろクロスけとGが全面衝突?(違(No.12627 2006-08-29 20:54:34)
クゥ〜 >続きがあるとは思っていませんでした(笑(No.12656 2006-08-31 22:15:56)
ROM人 >なんか妙なリアリティを感じたりして、もしかしたら若杉さんちのゴキは喋ったりするのかなぁとか思ってみたり。 女王=女神?(ぉ(No.12714 2006-09-03 00:32:46)
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