がちゃS・ぷち
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No.2331
作者:朝生行幸と『がちゃS』の愉快な姉妹たち
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2007-07-11 00:38:19
萌えた:1
笑った:10
感動だ:0
『だけど割と面白い運命的な出会い』
※多分がちゃS初の、読者参加型SS(笑)。
※参加を締め切りましたので、書き込みは出来ません。
(↓お題↓)
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さて、すったもんだの挙句、ようやく“紅薔薇のつぼみの妹”となった松平瞳子。
放課後、彼女が足早に薔薇の館へ向かう途中、見慣れた髪型の後姿を見つけた。
能天気にピコピコ揺れるツインテールを見ていると、自然に頬が緩むのが分かる。
しかし、これではいけませんわ、と、頬をパチパチと叩いて気分を改めると、姉の背中を追いかけようと走り出した。
だが、踏み出した足がハタと止まる。
何故なら、姉に追いつくことが不可能だということに気付いたからだ。
姉に追いつくには、少なくとも今現在の彼女の位置まで移動しなければならない。
でも、そこまで移動しても、姉は先へ進んでいる。
そして更にそこまで移動しても、姉は更に先へ進んでいる。
これが、延々と繰り返されることになる。
このままでは、何時まで経っても追いつくことが出来ないではないか。
(いったい、どーすればいーのですかー!?)
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と言うわけで皆さん、なんとかして瞳子を姉のもとに辿り着かせてあげて下さい。
この企画の意図は、皆さんの様々なアイデアを拝見して、一緒に楽しみたいというもの。
資格は特に必要ありませんので、参加されたい方は、当がちゃSでお馴染みの方からリードオンリーの方まで、ご自由にどうぞ。
なお、参加されるにあたっては、以下の諸項目に留意していただくようお願いします。
・原文(お題)を弄ってはいけません。
・グッドエンド、バッドエンド問いません。
・あまりにも短すぎるもの、或いは長すぎるものはお控えください。
・一応マリみてSSですので、他作品とのクロスは禁止です(パロディは可)。
・オリジナルキャラクターの使用は禁止です(オリジナル設定は可。例:真心シスターズ敦子と美幸、関西弁Std乃梨子等)。
・ネタがたくさんあるならば、何回書き込みしても結構です。
・上記に反しない限り、どんな手段を用いても構いません。
・必ず何らかの形で完結させてください(解決ではありません、“完結”です。これは、現状維持も含まれます)。
・他の参加者に続く内容にしても構いませんが、その旨は表記ください。 →(X.Yから続く):Xは通し番号、Yは続きの元となる番号
・ただし、リレーSSではありません。
・出来れば、参加者殿の名前を表記してください。
・現在の編集パスは、「無印のラスト、祥子と祐巳の踊りを小文字で」です。
・編集パスは予告なしに変更する場合がありますが、その時はコメント欄で公表します。
・変更する場合、既刊文庫の中から無作為に単語を選出しますが、これは、悪意を持って“がちゃがちゃSS掲示板”に接するトンチキに対する防衛策ですのでご了承ください。
・書き込む前に、正しい編集パスかどうか、ご確認をお忘れなく。
・得票数は、完全に度外視しています(うん、まぁ無理もない)。
・実験的投稿なので、あえて良く知られたテーマ(ゼノンのパラドックス:アキレスと亀)をお題にしましたが、思想的な含みはありません。
がちゃSに投稿してみたいけど二の足を踏んでいる方や、リハビリが必要な方は、練習のつもりで如何でしょう?
タイミングによっては、弾かれる可能性がありますので(ほぼ同時に書き込んだ場合、後になった方の書き込みが優先される?)、事前にデータで保存しておくことをお勧めします。
あと、荒らしや意味不明の書き込みがあった場合、見つけ次第即座に消去します。
万が一、心無いスットコドッコイに丸ごと消されるようなことがあれば、その時は管理人殿、お手数ですが復帰作業よろしくお願いします(念のため、当方でもバックアップしています)。
特に柊さん、まつのめさん、いぬいぬさん等、お馴染みの方々には、是非ともご参加いただきたく(催促)。
(↓ここからどうぞ↓)
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(1.お題から続く)
慌てず騒がず冷静に対処する。
それが三河以来の松平家の家訓である。(多分)
追いつけないのは姉が現在も移動しているからである。
ならば、止めれば良い。止めた後、自分がそこまで移動すれば間違いなくたどり着ける。
アキレス敗れたり。
由乃さまのような事を思いながら、瞳子は姉を呼んだ。
「祐巳さま」
しかし、紅薔薇のつぼみは止まらない。この距離と今の声の大きさなら届いているはずだが、ひょっとしたら聞こえなかったのかもしれない。だから瞳子はもう一度呼んだ。
「祐巳さま!」
しかし、能天気に揺れるツインテールは止まらない。聞こえていないはずは無いのですが、と思いつつも、演劇部仕込みの腹式呼吸により、さらなる声を出して呼ぶ。
「祐巳さま!!」
しかし、蒲公英頭は止まらない。視界の端で見知らぬ生徒がこちらを向いている。あの距離の生徒に聞こえているのに、祐巳さまに聞こえていないはずは無い。
瞳子は不意に、昨日言われた事を思い出した。
「瞳子。今後、私は瞳子に『祐巳さま』と呼ばれても、返事をしないことにしましたから。
けじめをつけて、ちゃんと『お姉さま』ってお呼びなさい」
ツンデレが邪魔をして恥ずかしくて呼び方を以前のままにしていたら、こう宣言されてしまった。昨日はそのまま演劇部へ行って有耶無耶にしたが、今日も実践しているのかもしれない。
それにしても、あの時の祐巳さまの言い回しと話し方は祥子さまのものだ。おそらく自分も言われた事を瞳子にもそのまま言ったのだろう。
似合わないのに、お姉さまぶろうとするなんて、そんな祐巳さまもス・テ・キ♪
これではいけませんわ、と、頬をパチパチと叩いて気分を改めると、瞳子はある事に気付いた。
全く事体が改善されていない?
それどころか距離が開いた分悪化している?
(いったい、どーすればいーのですかー!?)
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半年ぶりに書いてみましたC.TOEです。とりあえず現状維持という極めて無難なパスをしてみました。構想5分、執筆30分?この量で30分もかかるなんて、もう少しリハビリが必要なようです。
(↓続きをどうぞ↓)
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(2.1から続く)
「しかたありませんね」
瞳子は慌てず騒がず懐から銃を取り出しました。
もちろん、倒すことが目的ではなく動きを止めることが目的です。
ですから、いつもは9oパラのベレッタですが、今回はストッピングパワーを重視してデザートイーグルの50AEです。
いや、待て、すとっぴんぐぱわーってなんかちょっと違わないかな………
どこかから妙な声が聞こえた気がしましたがそんなことを気にしている場合ではありません。
これならいくらにぶい祐巳さまだって止まるに違いありません。
「2度と動かんわー!!!!!」
「ぐぼぉっ!」
どうやったものか、一瞬で距離を詰めた祐巳さまが左手で銃を跳ね上げ、そのまま懐に入り込むと右の肘を下からみぞおちに向けて突き上げていました。
ああ、止めるどころかそちらから来てくださるなんて、大成功……デス…Wa
めでたしめでたし?
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篠原です。すぐに思いついたのはC.TOEさんと同じ「回答」でした……orz
まあ、呼び止めるってのは皆思いつきますよねーというわけで一歩進めて呼び寄せるに! ……失敗?
(↓次の方どうぞ↓)
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(3.1から続く)
逡巡している間にも祐巳さまはどんどん遠ざかっていく。
ええい、ままよ。たとえ追いつけないにせよ、少しでも近づかなければ。
瞳子は祐巳さまを追いかけて走った。遠ざかる祐巳さまを追いかけて走った。追いつけなくても、少しでも近く。
ぼふっ。
意外なことに、追いつけないはずの祐巳さまに瞳子はあっさり追いついた。勢いあまって祐巳さまに後ろから抱きつくような格好になってしまったが、もろともに倒れてしまわなかったのは祐巳さまが踏ん張ってくださったおかげだろう。
「あれ、瞳子ったら大胆」
「祐、お姉さま──」
「もう少しこのままでいたいところだけど、何か注目の的みたいだし、さすがにこれじゃ歩けないから、ね」
周りを見渡すと、あからさまに視線をそらす人、人。
「あっ」
申し訳ありません、と慌てて離れる瞳子に、祐巳さまが振り返ってその手をとりなおす。
「それじゃ行こうか」
「えっ」
「薔薇の館に決まってるでしょ」
そう言ってすたすた歩き始めるので、瞳子は遅れないようについていくしかない。
「待ってください祐巳さま」
「お姉さま、でしょ」
「お姉さま、待ってください──」
ビスケット扉を開けたら白薔薇姉妹が先に来ていた。
「あ、瞳子に祐巳さま、ごきげんよう。じゃあもう2杯追加ね」
返事も待たずに乃梨子は手に持っていた缶から茶葉をすくってポットに入れる。
ああっ。予定では瞳子が手づから祐巳さまに入れて差し上げるはずでしたのに。
「うん、ありがとう乃梨子ちゃん」
その言葉は、その言葉は瞳子にかけていただけるはずでしたのに。覚えていなさい、乃梨子、今度は私が白薔薇さまにも紅茶を入れて差し上げますわ。
「でも、何だってあんな急に飛びついてきたりしたの?まあ私はうれしかったからいいけど」
紅茶をすすりながら、祐巳さまが訊ねる。どうしてこの方はこんなうれし恥ずかしいことを真顔で言うことができるのだろう。おかげで瞳子のお姉さま大好き病は悪化する一方だ。ええと。こほん。
「別に私はお姉さまに抱きつきたくて走ってきたわけではありませんわ。だって私は決して追いつけない筈だったのですもの──」
瞳子は先の理論を展開する。
「ふうん、なるほどね」
祐巳さまがカップを置く。かちゃり、とソーサーが鳴る。
「でも、瞳子は重要な点を見逃してるよ」
「どういうことですの?」
「私達には大きさがある、ということよ」
祐巳さまは鞄からノートを取り出した。
「ゼノンの理想的なアキレスと亀は点でしかなかったけれど」
と言って3センチほどの間隔をあけて2つの点を描く。そして各点を中心として半径2センチくらいの円を描きながら続ける。
「体の中心と中心で考えたら確かに一致することはないけれど、その前に体を表すこの円は重なるよね。フィラデルフィア・エクスペリメントじゃないんだから、ぶつかった所で止まるけど」
なるほど。確かに瞳子の理論では体の大きさを考えていなかった。やっぱり祐巳さまってすごい。
隣で白薔薇姉妹が「ねえ、ツッコんだほうがいいかなあ」「せっかく楽しく語らっているのに、邪魔しちゃ悪いわ」とか何とかごちゃごちゃうるさいが、まあ無視しよう。
「でも、」
ふと気づいて瞳子は反駁する。
「前を行く祐巳さまの背中と後ろから追いかける私の胸で考えると、やっぱり追いつけないことになりますわ」
言いながら、瞳子は祐巳さまのノートに時系列で図を描いた。
○|→ |○→
○|→ |○→
○|→|○→
「うーん……これじゃ、確かに追いつけないね……」
さしもの祐巳さまにも、これは難題のようだ。眉間にしわがよる。もしかして、瞳子は祐巳さまにとんでもない問題をつきつけてしまったのか。急に不安になった。
と、祐巳さまが相好を崩す。
「でも、瞳子は私に追いついた。瞳子と私は出会った。そうだよね?」
「ええ、そのとおりですわ」
「追いつくはずのない瞳子が追いついた。出会うはずのない二人が出会った。だからこれは奇跡、いや違う、そう運命なのよ」
運命の出会い。そうだ、運命なのだ祐巳さまと瞳子が結ばれるのは。
はい祐巳さま、瞳子は一生お姉さまについていきます。
「おーい瞳子、帰ってこーい。……だめです反応ありません」
「仕方ないわね。それじゃ祐巳さん、悪いけど瞳子ちゃんの担当分もよろしくね」
「ええーっ」
「だって妹の不始末の責任は姉がとらなくてはいけないわ」
「それはそうかもしれないけど…いいよね志摩子さんは乃梨子ちゃんが優秀だから」
「いえ、そんな、私はただ、お姉さまに迷惑はかけられないと……それに今回、瞳子がああなったのは祐巳さまにも原因があると思いますが」
「そうかなあ。……ところで黄薔薇姉妹は?」
「出番なし」
どっとはらい。
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素晴です。妄想をかきたてられたので書いてみましたが、途中からあらぬ方向へ。
他の方の祐瞳甘々も読んでみたいところですので、どんどんどうぞ。
(↓次の方どうぞ↓)
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(4.お題から続く)
あ、一部に新刊(フレーム オブ マインド)のネタバレを含みます。
「 どうやら私の出番のようね! 」
祐巳との距離が永遠に縮まらないと焦る瞳子に、そう呼びかけたのは・・・
「 ・・・・・・・・・・・・誰ですの? 」
瞳子の素朴な疑問に、何故かガックリと膝をつくテニスウェアの少女。
「 ・・・・・・ふ、ふふふふふふふふ。このくらいで負けるもんですか。新刊では、このドリルですら回想シーンだけでほぼ出番ゼロだったのに、私はセリフ付きで思いっきり本編に絡んだんだから! 」
うつむいたままブツブツと呟いていたが、何やら自己完結したらしく、自身に満ちた笑顔で立ち上がる少女。
「 フ・・・ 私の名前は桂。祐巳さんの友人よ! 」
「 知りません 」
瞳子の間髪入れない返しに、再び膝を付く少女。
そして再びブツブツと呟いていたが、またもや自己完結したらしく、先程以上のイキオイで立ち上がる。
「 おだまり!! 友人っていったら友人なのよ! 決して忘れられてなんかいないわ!! 」
泣きそうな顔でそう叫ばれても、瞳子には意味が良く解からなかったが、このままでは話が進まないと判断し、とりあえず名も知らぬ彼女の話を聞いてみることにした。
「 それで、か・・・ 克己さま? 」
「 桂!! 」
「 失礼。桂さま、“私の出番”とは? 」
「 やっと話が進むわね・・・ そう。あなた、祐巳さんに追いつけないと思って困っているわね? いわゆる“アキレスと亀のパラドックス”で 」
「 もしや何か解決策が?! 」
「 あるわ! 」
テニスウェアの少女は、自身たっぷりにうなずく。
「 是非ともお聞かせ下さい! か・・・・・・ 一絵さま? 」
「 桂だって言ってるでしょうが!! K・A・T・H・U・R・A、かつら! どぅーゆーあんだすたん?! 」
「 そんなことはどうでも良いですから解決策を教えて下さい!! 」
「 どうでも良いって・・・・・・ くっ、まあ良いわ。あなたは新刊ではほとんど出番が無かったから許してあげる 」
何やら意味不明な理論を展開しつつ、彼女は“解決策”について語り出した。
「 要はパラドックスの原因は、亀となる対象が動き続けていること。それなら、亀の動きを封じるまでのことよ 」
「 でも、この距離では呼び止めても声が届きそうにないし、どうやって? 」
「 ふふふふふ。伊達に祐巳さんと付き合いが長い訳じゃないのよ 」
そう言うと、テニスウェアの少女はゴソゴソとアンダースコートのポケットをまさぐり始めた。
「 あの・・・ 私、女性の下着を見て喜ぶ趣味は無いのですけど 」
「 誰が脱ぐか!! そうじゃなくて、コレよ! 」
そう言って、彼女がスコートから取り出したのは・・・
「 ・・・・・・何ですか? その缶ジュースは 」
不思議そうな顔をする瞳子に、自身満々な少女は答えた。
「 ジュースじゃなくて、お汁粉よ! 」
「 ・・・・・・はあ、そうですか 」
「 反応薄っ! 」
瞳子の淡白な反応に突っ込むテニスウェアの少女。
「 で、その缶入りのお汁粉が何か? 」
もはや興味を無くしかけているのか、瞳子の聞きかたも、どこか投げやりな感じだ。
まあ、取り出した場所が場所だけに、瞳子があまり良いイメージを持てないのも確かではあった。
だが、テニスウェアの少女はくじけること無く答える。
「 祐巳さんといえば甘党。いえ、超甘党と言っても過言では無いわ。その祐巳さんが、お汁粉の香りに気付かないはずが無いじゃない! 」
「 ・・・・・・・・・・・・へぇ〜 」
瞳子は白けた顔でそう返すと、振り返り、先程よりも離れてしまった祐巳の後姿を見る。
瞳子の顔には、もはやあきらめの色が浮かんでいた。
「 ちょ! ホントだってば! 信じなさいよ!! 」
慌てた様子でそう叫び、彼女は“プシッ”と小気味良い音をたててプルタブを起こした。
「 信じろと言われましても・・・ この距離でお汁粉の香りになんて 『 この香りはアサヒの缶入りお汁粉!! 』 気付いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?! 」
驚く瞳子の視線の先では、確かに祐巳が叫びと共に振り返っていた。
「 そんなアホな・・・ 」
「 フ・・・ 夏でも(2007年 7/12現在)ホームページの商品情報に“缶入りお汁粉”を載せているアサヒ飲料を舐めないことね 」
自分の策が功を奏したのに気を良くしたのか、やたらと偉そうなテニスウェアの少女。
祐巳を止めたのは、あくまでも“お汁粉の香り”であって、彼女ではないのだが。
「 ・・・え〜と・・・・・あ、ありがとうございました、か・・・ カツ代さま? 」
「 誰が料理研究家よ! 」
結局、テニスウェアの少女の名前を覚えきれていない瞳子だったが、自分の策が上手くいったからか、彼女はすぐに機嫌を直した。
「 ついでだから、もう一つ祐巳さんに有効なアイテムを教えてあげる 」
「 お姉さまに有効なアイテム? 」
テニスウェアの少女は、今度はテニスウェアの胸ポケットから何かを取り出した。
「 ・・・・・・チロルチョコ? 」
そう。それは、豊富なラインナップで常に女の子を魅了し続けるチロルチョコだった。
「 これを開ければ一発よ♪ 」
そう言いながら、チョコの包装をペリペリと剥がす少女。
上機嫌な彼女の顔とは対照的に、瞳子はまた不審そうな表情になっていた。
「 そんな物で本当に 『 今、チロルチョコを開ける音がしなかった? 』 来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?! 」
瞳子が驚いて振り向くと、いつの間にか祐巳が背後に立っていた。
なんと、祐巳を呼び止めるだけではなく、呼び寄せることにまで成功したテニスウェアの少女。
彼女はいったい何者なのだろうか?
「 ・・・・・・さっきからムカつくナレーションだわね 」
気のせいです。
「 まあ良いか、少しは活躍できたし 」
そう言うと、テニスウェアの少女は瞳子にチョコを手渡し、晴れやかな顔で部室棟のほうへと去っていった。
チョコの香りに軽く興奮状態の祐巳にまとわりつかれつつ、瞳子は彼女の後姿を見送る。
「 ありがとう・・・ え〜と・・・ か、か、・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとう! テニス部のかた! 」
本当に感謝しているかどうか微妙な感じの瞳子だった。
「 ねえ瞳子ぉ・・・ 」
呼ばれて振り向けば、何やらキラキラと期待に満ちた目をした祐巳が立っていた。
もし祐巳が犬ならば、1秒間に5回はシッポを振っていそうなテンションだ。
「 ちょっとお姉さま・・・ 」
大好きな姉に見つめられ、ちょっと恥ずかしくなった瞳子は、照れ隠しにこんなことを言ってみた。
「 オスワリ! 」
普通なら妹にこんなことを言われたら怒るところだが、チョコでテンションが上がっている祐巳は、あろうことか素直にオスワリしてしまった。
その瞬間、何故か“きゅん”と胸の高鳴る瞳子。
( 何? この背中がゾクゾクする感覚・・・ )
瞳子の中で、何かが目覚めようとしていた。
それが、紅薔薇姉妹にとって、幸せなのかそうでないのかは、誰にも解らない。
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いぬいぬ 朝生さんの召還に応じて原文の続きを 。
新刊を読み終えたのに、あえてこんな扱いをしてみる(笑
(↓次の方どうぞ↓)
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(5.お題から続く)
「瞳子、もしかして困ってる?」
「ええ、困ってますとも。何の脈略もなく乃梨子が現れても、疑問に感じないくらい困ってます」
「そもそも考え方の前提からして間違ってる、っていう突っ込みはしちゃいけないのかな?」
「それは、企画の本質に関わる問題ですから」
「うーん、じゃあちゃんと『瞳子が今の祐巳さまの位置まで行く、そうすると祐巳さまはその間に先に進んでしまう』って所から考えてみようか」
「あくまでそこを突っつくつもりですか?」
「あ、その前に、瞳子って」
「何か?」
「そのドリルってマ○リアルフェアリー?」
「ドリルじゃありません。それに『絶●少年』なんて誰も知りません」
「そうかな。結構好きだったんだけど……」
「つまり、わっくん繋がり?」
「誰が座敷わらしか」
「ネタばれ禁止。話を戻しませんか?」
「まあいいか。じゃあ、判りやすく瞳子の足元をA地点、今、祐巳さまの居る所をB地点とするわね。いい?」
瞳子、頷く。
「で、瞳子が祐巳さまの今居るB地点まで行き着いた瞬間の祐巳さまの居る位置をC地点とするの。で、このままじゃ計算しづらいから、A地点からB地点までの距離をaとして、B地点からC地点までの距離をbとするわ。つまり瞳子の進んだ距離がa、同じ時間で祐巳さまが進んだ距離をbとするの、ここまでいい?」
A―――――――B――――C
a b
「わかった」
「じゃあ、続きね。瞳子が進む長さが0からaに行くまでに、祐巳さまは0からbまで進む。つまり瞳子が進んだ距離から祐巳さまの進んだ距離を求められる。これは判るわね?」
「そのくらいなら」
「じゃ、“『瞳子が進む長さ』のa分のb”が『祐巳さまの進む距離』、これもOK?」
「お、OK……」
『祐巳さまの進む距離』 = 『瞳子が進む長さ』 × b / a
「で、実際の祐巳さまの居る場所だけど、最初の瞳子の場所、つまりA地点を基準にすると、祐巳さまの位置は、これにaを足したもにになるよね? つまり瞳子がある距離を進んだ場合の祐巳さまの居る位置よ」
「ちょっとついていけなく……」
「何処がわからない?」
ここで少し瞳子は考えこみ、そして、
a b
A―――――――B――――C
―――→瞳
―――――――― ―→祐
『祐巳さまの位置』 = 『瞳子が進む長さ』 × b / a + a
「いや、判った」
「よし。ここまで判ればあとは簡単よ。つまり瞳子が祐巳さまに追いつくにはこの 『祐巳さまの位置』と 『瞳子が進む長さ』が同じになればいいのよ」
『瞳子が進む長さ』 × b / a + a = 『瞳子が進む長さ』
「あとは方程式を解くだけ。簡単でしょ?」
「え、ええと……」
a = 『瞳子が進む長さ』 − 『瞳子が進む長さ』 × b / a
a = 『瞳子が進む長さ』 × (1 − b / a)
『瞳子が進む長さ』 = a / (1 − b / a)
「こうかな?」
「えっとね、これだと式がわかり辛いから分子と分母にaをかけて」
『瞳子が進む長さ』 = a × a / (a − b)
「つまり、この距離を進めば祐巳さまに追いつくって事。ここで注意して欲しいのは瞳子と祐巳さまの進む距離、つまりaとbが同じだった場合、答えが発散して無限に進んでも追いつかないって事になっちゃう。つまり祐巳さまより速く走らないと永遠に追いつかないって事ね。ちゃんと現実に即してるでしょ?」
「あら、でも、祐巳さまの方が速かったら、マイナスになってしまうけれど?」
「それは過去って意味でしょ? ここに来る前も同じスピードだったと仮定した場合、『ここより後ろのある場所で一致してた』ってことになるわ」
「なるほど。では“祐巳さまより早く歩けばいつか必ず追いつく”のね」
「そういうこと。それが答えよ。ところでその祐巳さまだけど」
「はい?」
「もう姿が見えないんだけど」
「なんですとーー」
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なんか名前が挙がっていたので。まつのめです
あれ? 変だな。ちゃんと『答えた』筈なのに、何処で間違ったんだろう?
というか乃梨子に対する瞳子の口調が良く判りません。
(↓次の方どうぞ↓)
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(6.お題から続く)
どうするか……、なんて考えるまでもないことだ。足早に祐巳さまの元へと向かえばいい。祐巳さまの歩く速度よりも瞳子の足の方が速ければ、追いつくことができるだろう。
けれど、それを実行しようにも、瞳子の前には大きな問題が壁のように立ちはだかっていた。
それは、ここが校舎の三階だということ。瞳子は、校舎の三階にある中庭に面した窓から、祐巳さまの後ろ姿を見つめていたのだ。
つまり、この場所からではどんなに急いだとしても、祐巳さまに追いつくことは不可能なのである。
おそらくこれは、祐巳さまへの愛を確かめるために、神様が瞳子に与えた試練に違いない。
それならば――。
祐巳さまを愛するこの想いが、嘘やまやかしではないことを見せてやろうではないか。
まず、窓を開ける。
次に窓枠に足をかけて、狙いを定めて飛び降りる。
そして、中庭に茂る木の枝に何度か手を引っ掛けるようにして降下の速度を落とし、着地時の衝撃を和らげる。
最後に、トンッと美しく軽やかに着地。そのあとは、祐巳さまに向かってまっしぐらだ。
「……それを実行しちゃったわけだ?」
「おかげで全治三ヶ月です」
担ぎ込まれた病院のベッドの上で、瞳子は呆れているらしい祐巳さまに答えた。
人生とは、やはり自分の思い描いた通りにはならないようだ。
でも、祐巳さまがやさしく介抱してくださるので、良しとしておこう。
──────────────────────────────────────
こんなのでもいいのだろうか? 通りすがりのS。
(↓次の方どうぞ↓)
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(7.お題から続く)
突然、目の前に黒尽くめの女性2人が立ちはだかった。
「な…なんですの、あなたがた」
顔をこわばらせながらも、瞳子は内心妙に納得するものがあった。
(もしかして、これは…)
脳内の記憶装置をフル回転させてたどりついた、ある記憶。
それは3日前、突如現れたGのために薔薇の館が阿鼻叫喚の地獄と化したときのものであった。
「ぎゃ〜っ!」
祐巳を含む全員がパニックを起こしてしまい、ただひたすら叫ぶだけ。
そこにいる人たちがこの状況に対して何ら有効な手段を打ち出せていないことを悟った瞳子は、自らも恐怖で心臓を口から飛び出させそうになりながらも、すばしっこいGを倒せるチャンスとそのための武器を慎重にさがした。
ふと目に留まった、盛大に湯気をたてるやかん。
(そうだ…Gは熱には弱かったはず!)
それに気づけば、あとはお湯の届く範囲にGが来るのを待つだけである。
(お菓子か何かでおびき寄せるという手もありますわね)
トラップに必要なエサを探していた瞳子。
すると、なぜ気づかなかったのか、目の前にお菓子がある。
(今はシンク側の壁、大体10cm程度の高さ…このままいけばあと2分もすれば地上に降りてくるかも…そこを一気に熱湯で片付ければ!)
さっそく目星をつけた位置にトラップを仕掛けた。
それからおよそ2分30秒後。
Gの触角がお菓子を捕らえた、ように見えた。
次の瞬間!
「くらえ、熱湯!」
ナイアガラの滝のごとくに容赦なく熱湯を浴びせられ、Gは息の根を止めた。
『おのれ瞳子…この恨み、必ずや晴らしてみせる!』
今目の前にいるのは、どうやらそのとき消したGの仲間のようである。
『お前が祐巳に追いつくことはありえない。なぜなら祐巳は私たちの特殊能力で、距離は縮んでも追いつけないという状況にしたのだからな』
そういうことか。
瞳子の脳裏で、すべてのピースがぴったりとはまった。
要は最後の瞬間、あのGは結界を張ったのだ。
距離を縮めることはできても、決して破ることのできない結界を。
『もし追いつきたければ我々を倒すがいい。できるものなら!』
瞳子は薄く笑った。
「邪魔立ては無用ですわお二方…」
そう一言言うと、右手を天にかざした。
目を閉じ、呪文を詠唱する。
『天空高く流れる水よ…』
今度は左手を大地に向けた。
『地中深く流れる水よ…』
その両手をゆっくりと近づける。
『今この瞬間、我が意に従え!惑星流水神聖波(プラネット・ウォーター・ディヴァイン・ウェーヴ)!』
瞳子の周囲100m以上に渡って強大な気の流れが生まれ、それにひきつけられるように大量の水がものすごいスピードでその両手に集まった。
その感触を一瞬確かめると、瞳子は迷うことなく両手の中の水をG兵士にたたきつけた。
『ぐ…ぐわ〜っっ!!』
断末魔の叫びを残して、Gは彼方へと消えた。
戦い終わって、瞳子は気づいた。
空気の流れが明らかに変わり、自分の足取りが軽くなっていることに。
「ごきげんよう瞳子…あれ、どうしたの?そんなに息切らして」
まさか祐巳のためにGと戦っていたなどとは、口がさけても言えない。
「別にっ!何でもありませんわ」
(ほんっとうに、祐巳さま、あなたという方は…っ)
やっと追いついた安堵と、今までの自分の苦労をまるで分かっていない祐巳へのじれったさで複雑な気持ちになりながら、瞳子は校舎までの道を大切な人とともに歩いた。
もちろん祐巳たちは知らない。
こののち自分たちが、「ミッション・インポッシブル」として次世代のメンバーとともに大暴れすることになろうとは…
──────────────────────────────────────
若杉奈留美です。
例によって例のごとくな感のあるGネタ。
こんな感じでもよろしいでしょうか…?
(↓次の方どうぞ↓)
──────────────────────────────────────
(8.お題から続く)
永遠に祐巳さ――お姉さまには追い付けない。
そんな絶望的な思いが瞳子を打ちのめしたのは、しかし一瞬のことだった。
(いいえ、諦めてはいけません。そうですとも。事実、絶対に無理だと思っていた紅薔薇のつぼみの妹になれたのですから)
ぐっと顔を上げて、瞳子は前方を行くお姉さまの背中を見る。
いつだってそうだった。お姉さまはいつも瞳子の前を歩いていて、瞳子はその背中ばかり見ていた。
姉妹になる前もそうだ。自分の小さな世界に囚われていた瞳子のことを、お姉さまはもっと広い世界から見守ってくれていた。そうやって瞳子のちょっと前を歩いて、瞳子を導いてきてくれた。
そうして、瞳子が自分だけの小さな世界を飛び出して、お姉さまの隣に並んだ時。瞳子はお姉さまの妹になれたのだ。
だから、大丈夫。
また少し、お姉さまが前に進んでしまったとしても、瞳子がちゃんと自分の足で歩き続ければ、きっとお姉さまの隣に並ぶことはできるはずなのだ。
(そうですとも。ここはきっと、もっとグローバルな視点が必要なのですわ)
気を取り直した瞳子はうむ、と一つ頷いた。お姉さまの世界は瞳子よりもずっと広い。
(そうですわ! 直線で考えるからダメなんですわ!)
線から面へ――世界を少し広げれば、こんなに簡単な話はないではないか。わたし凄い、と瞳子は自分を誉めてみた。
(即ちっ! お姉さまが薔薇の館に行くには、次の曲がり角を曲がることになる! しかし目的地が分かっている以上、それにおいつくことは容易! 斜めに進めば良いんですわ!)
長方形でも正方形でも、辺の部分を進むよりも対角線上を進んだ方が絶対に早い。ちょっと視点を変えれば、こんなに簡単なパズルがあるだろうか。
(わたしがお姉さまに決しておいつけない? そんなことなど、あり得ないのです!)
瞳子は前を歩くお姉さまの背中を見詰めながら、意気揚々と進路を斜めに変えた。
ゴズッ。
奇妙な音が聞こえて思わず振り返った祐巳は、そこでポカンと口を開けて歩みを止めた。
「――と、瞳子ぉ!?」
祐巳の背後、いつからそこにいたのか愛しい妹の姿があった。
愛しい妹の、校舎の壁に激突して劇画チックなスローモーションでぶっ倒れる姿があった。
「わ、わぁーーー! 瞳子ぉーーーー!」
ぱたし、と崩れ落ちる愛しの妹の姿を見て、祐巳は血相を変えて駆け寄った。何があったか知らないけれど、先程の衝突音は尋常ではない。前方不注意で校舎に全力ダッシュでアタックしない限り、あんな豪快な音にはならないだろう。
「と、瞳子! 大丈夫、瞳子!?」
祐巳が駆け寄って瞳子を抱き起こすと、側頭部をぷっくり腫らした瞳子が薄っすらと目を開ける。良かった生きてる、と祐巳は安堵の息を吐いた。
「何があったの? 大丈夫?」
問い掛ける祐巳に、瞳子が震える手でぐっと親指を立てる。
「け、結果オーライ・・・ですわ・・・」
「お、オーライ?」
「ですが・・・3次元まで、考慮する、べき・・・でした・・・」
「と、瞳子ーーーーー!」
謎の言葉を残してかくん、と意識を失う瞳子を、祐巳はぎゅっと抱きしめた。
何があったか分からない。瞳子の身に何が起こったのか、分からない。
でも、どこか満足げな表情だった瞳子に、祐巳は悟ったのだ。
瞳子はきっと、何かと戦って――そして、大いなる成長と共に、勝利したのだ、と。
リリアン女学園の片隅で、感動的に抱き合う紅薔薇のつぼみ姉妹のことを、アキレス様だけがみていた――かもしんない。
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指名(?)されたっぽい柊です。出遅れた分、厳しかったです。
とりあえず瞳子ちゃんは祐巳においついた(てか、祐巳が戻ってきた)ので、瞳子ちゃんの勝ちってことで。
どことなく感動編でした(ぇ
(↓次の方どうぞ↓)
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(9.お題から続く)
冗談ではありません。
とんでもないことです。
なんて、いうことでしょうか。
せっかく、本当にようやく姉妹になれたというのに、こんな扱いはひどすぎですわ。
愛しいお姉さまの背中に永遠にたどり着けないなんて、こんな辛いことがありましょうか。
瞳子も祐巳さまも数々の苦難を乗り越えて、やっと手に入れた安住の地であるというのにこの仕打ち。
ああ、この世には神もマリア様もいらっしゃらないのでしょうか。
耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び、ようよう歩き出した私たちに、まだ――溝を為そうとは。
まさか瞳子と祐巳さまは近づいてならない運命を課せられているというのでしょうか。
これが罰だとでも?
祐巳さまを嘲り、祐巳さまを欺き、祐巳さまを見損うという罪を犯した瞳子への罰だというのでしょうか……?
ふ。
そう、そういうことなのですね。
ふふふつまりこれは瞳子と祐巳さまの愛を試すいわば試練!
恋愛とは戦争であると彼のガンジーさまも仰っていました。(言ってません)
罰も罪も知ったことではありません。
私の恋は指輪の銘などより遥かに長く、またMAX300の激より激しいことを教えて差し上げますわ!
呼びかけは無意味だということが既に並行世界すなわちパラレル・ワールドの私によって証明されています。
同時に、実弾による実力行使も”止められない”ことはわかっています。
呼び掛けを強化してACT.1?
9パラと50の間を取って45ACPや40S&W?
いえ、ここは発想の転換。しかも160度くらいの。
ずばり!
追いつけないのならば追いかけなければ良いのですっ!
押して駄目なら引いてみろですわ、ああ素晴らしき先人の知恵バンザイ。
しかも駄目押し、追いかけないどころか逃げてしまえば倍率ドン! 更に倍!
一気に祐巳さまに近づけるというこの算段!
ああ、瞳子は自分の素晴らしい頭脳に惚れ惚れいたします。
「お姉さま!」
「ん? どうしたの、瞳子ちゃ……こほん。瞳子。何でそんなに離れてるの?」
「少々お待ちくださいませ! 今そちらに参ります!」
ずどどどどどーーーーっ!
「ちょっ!? と、瞳子ちゃん! とーこちゃーーーーん!!」
間。
「―こしき、ファァーーーイナルっ!」
「へぶぅっん!?」
光よりは遅いですが音よりは圧倒的に速い速度で一周してきた瞳子渾身の拳がリリアンを突き抜けました。
握り締めた拳に残るかすかな感触――祐巳さまの温もり。柔らかさ。ああ、至高ですわ。
天高く舞い上がった祐巳さまの表情もどこか驚愕――いえ、呆然――もとい、恍惚とされていて可愛い妹と触れ合えた幸せに満ちているよう。
触れ合いに幸せを感じるのは姉も妹も同様ということでしょうか。
ああ、素晴らしきは姉妹制度。
お父様、お母様。瞳子は今日、また一つ大切なことを学びました。
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面白そうだったので飛び込んでみたSKです。
教訓。テンションのおかしい時にSSは書くべきでない(マテ
(↓次の方どうぞ↓)
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(10.お題から続く)
(困りましたわね、このままでは一生祐……お姉さまに追いつけないではありませんか)
だが、追いつけないだけならまだ良い。
瞳子は、“アキレスと亀のパラドックス”のついでに、別のことも思い出してしまった。
それは、“飛んでいる矢のパラドックス”。
弓から放たれた矢は、目標までの中間点を必ず通過しなければならない。
とすると、その中間点が新しい目標となる。
しかし、その目標に至るには、更にそこまでの中間点を通過しなければならない。
とすると、その中間点が、更に新たな目標となる。
しかし、その目標に至るには、更にそこまでの中間点を通過しなければならない。
とすると、その中間点が、更に……。
これが延々と繰り返されることになる。
つまり瞳子は、祐巳を追いかけるどころか、その場から一歩も動けなくなってしまったのだ。
(なんてこと、追いつけないだけでなく、動くこともできないなんて……)
両手を握り締めて、歯噛みする瞳子。
でも……と、深呼吸を数回繰り返し、冷静になってみる。
何故なら、“アキレス”も“矢”もパラドックス、どこかに必ず理論の穴があるはず。
なに、焦ることはない、ゆっくり考えてみよう……。
「アンタ、何やってんのよ」
「わぁ!?」
必死で考えているところに割り込んできたのは、聞きなれた声と、肩を叩かれた感触。
驚きのあまり瞳子は、思わずたたらを踏んでしまい、数歩前へ踏み出すことに。
(ってあら? 動けるではありませんか)
「……何呆然としてるの」
「コホン、ごきげんよう乃梨子さん。貴女のおかげで、一つ目の難関は突破できたようですわ。ありがとうございます」
多少拍子抜けの表情ながらも瞳子は、背後に現れた白薔薇のつぼみ二条乃梨子に、サラリと応じた。
「ごきげんよう。いえいえどーいたしまして……って、意味はサッパリ分からないけど」
それもそのハズ、いくら瞳子の心理を読むことに長けている乃梨子であっても、パラドックスに惑わされていることまでは見抜けない。
「実はですね……」
頼りになるであろう親友の登場に、瞳子は内心喜びつつ、事の次第を説明する。
「なんだ、簡単な話じゃない」
「え?」
「だって、瞳子は祐巳さまに追いつけないんでしょ? だったら追わなければいい」
「それでは、どうやってお姉さまの元に行けばよろしいのです?」
「だから……」
乃梨子に耳打ちされたその方法に、瞳子の顔が綻んだ。
「まぁ、さすがは乃梨子さん。学年トップの頭脳は伊達ではありませんのね。それでは早速」
言うが早いか瞳子は、ポケットから携帯電話(リリアンでは原則禁止だから、似たような物か)を取り出し、何処かに連絡している模様。
「誰と話しているの?」
「ええちょっと。それでは乃梨子さん、また後ほど薔薇の館で」
そう言い残した瞳子は、乃梨子はそのままに、薔薇の館とは反対方向に駆け出して行った。
「え? ああ、うん。ってあれ?」
腑に落ちない、って顔で乃梨子は、瞳子の後姿を見送る。
その視線の先には、みるみる大きくなるヘリコプターの姿があった。
瞳子の所在が不明なまま、一週間が経った。
「うう、瞳子が、瞳子がぁ……」
落胆した祐巳が、姉や友人に支えられながら、薔薇の館に向かう途中。
不意に聞こえてくるのは、バラバラバラという重低音。
どこかで聞いたなぁと思いつつ、乃梨子が音の聞こえる方を見たところ、どこかで見たなぁと思うヘリコプターが、だんだんと近付いてくるところだった。
凄まじい爆音と気流を投げ落としつつ、祐巳たちの手前でホバリングするヘリから一本のロープが垂れ下がり、リリアンの制服を纏った人物が一人、ラペリング降下してきた。
降り立ったのは、一週間前に姿を消した瞳子その人。
去り行くヘリのローターに煽られ、砂埃が舞い上がり、祐巳や乃梨子の髪が乱れまくっている中、瞳子の縦ロールだけはピクリとも動いていない。
「ごきげんよう」
ようやく爆音が去った後、涼しい顔で挨拶する。
「……と、瞳子?」
「ええ、お姉さま。しばらくでしたね」
祐巳は、嬉しさのあまり、瞳子の懐に飛び込んだ。
「どこ行ってたのぅ、心配してたんだようぅ〜」
泣きじゃくる祐巳を宥めながら、やっと彼女の元に辿り着けたことをマリア様に感謝している瞳子に、
「それでアンタ、一週間もどこに行ってたの?」
呆れた顔で、乃梨子が問い掛けた。
「いやですわ乃梨子さん。貴女が言ったのではないですか。追いつけないなら、反対方向から対面すればいいって」
「いや、確かにそう言ったけど」
「だから、車や船や航空機を乗り継いで、地球を一回りして来ましたの」
『そこまでやったんかーーーー!?!?!?!?!?!?!?』
祐巳も含めて、全員が瞳子に突っ込んだ。
一週間も無断欠席したため、学園長にしこたま叱られたのは、また後の話。
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言いだしっぺの朝生です(笑)。
後ろがダメなら前からだという、実に当たり前の話なのですが、地球一周はいくらなんでもやり過ぎ。
これなら、普通に追いかけた方が早かったですね。
少なくとも薔薇の館の前まで行けたなら、帰りの祐巳に会うことが出来たのですから。
(↓次の方どうぞ↓)
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(11.お題から続く)
お姉さまが歩いているのなら、私は走ればいいのですわ。
と、一歩を踏み出した瞳子だったが
「お待ちなさい」
「ぐぇ」
左側の縦ロールを誰かに捕まれた瞳子の首が、嫌な角度に曲がる。
「な、何しやがりますかっ!」
「廊下を走っては駄目でしょう、瞳子ちゃん。それに、何、その言葉使い」
「さ、祥子さま」
縦ロールを、むんずとつかみ瞳子を見下ろす祥子。
「祐巳に追いつきたいのは分かるけど、ルールを守らなくては駄目よ」
言い放ったかと思うと、大股で歩き始める祥子さま。瞳子も必死で後を追う。
しかし、10歩もいかないうちに差がみるみる開き始めると、瞳子はこの勝負の結末が見えてしまい愕然とする。足の長さが違いすぎる。
そして、とうとうお姉さまと合流する祥子さま。私との距離は10メートルくらいか。
「ごきげんよう祐巳」
「あ、ごきげんようお姉さま」
幸せそうに微笑み合う二人を見せ付けられ、瞳子のドリルがチリチリと煙を上げる。
後5メートル。
しかし、祥子さまは後ろを振り向いたかと思うと、小さく笑う。
「祐巳」
「はい?って、わぁっ」
お姉さまの手を取ったかと思うと、突然祥子さまは走り出した。それに引っ張られて、お姉さまも走り出す。
「なっ!」
あまりにも急すぎる展開について往けない瞳子、あの祥子さまが廊下を走っている。
段々と遠く、小さくなっていく二人を呆然と見送る瞳子であったが、やがてクスリと小さく笑う。
「ライバル・・・かぁ」
まだ瞳子が祐巳さまの妹になる前に、祥子さまが言った言葉を思い出す。
『あなたはライバルにすらなってくれない』
祥子さまが卒業するまで、後1ヶ月もない。けれど、やっと祥子さまはライバルを手に入れたのだ。負けず嫌いの祥子さまの事だ、全力でくるだろう。全力で楽しむだろう。
「やっと姉妹になれましたのに・・・」
新婚、しかし前途多難。でも、
「負けませんわよ、祥子さま」
もう追いつけない程開いたであろう距離、しかし瞳子は走り出す。
今回は私の負け。でも、次は勝つという意思表示。
そんな瞳子の姿を、マリア様とシスターが見ていた。
そしてシスターに嫌という程怒られた。
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クリ○・ベノ○っちです。諸事情で名前は封印。
(↓次の方どうぞ↓)
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(12.お題から続く)
(本当に追いつけないのでしょうか・・・?)
考える瞳子。
考える考える考える・・・・・・
「考える時間があるなら、追いかければ良いのです!」
瞳子は走り出した。
突然の豪雨。
辺りは雨に煙って祐巳さまは見えなくなってしまった。
「負けるものですか!」
祐巳さま目指してひたすら走る瞳子。
雨は更に激しくなり、自分が進む道すら怪しくなる。
「土砂崩れ・・・?」
雨で地盤が緩んだのであろう、目の前に立ち塞がった土砂の山。道が塞がれてしまった。
「このままでは進めません・・・しかし!」
瞳子はEMS05型ドリルを起動、掘削を開始して地中を進み始めた。レーザートーチで周囲を焼き固めつつ、ドリルでガンガン進む。
「ジャブ□ー攻略!」
片仮名のロではなく白抜き四角なのだが、祐巳さまに負いつくためなら瞳子は手段を選ばない。やっと晴れて姉妹に成ったのだから。
「抜けた・・・」
土砂の山を通り抜け、再び道無き道を走り出す瞳子。
いつのまにか雨はやんでいる。しかし道はぬかるみ、足場は悪い。
そして次に瞳子の前に立ち塞がったのは・・・
「川が・・・」
増水して氾濫していた。
川の流れは濁流と化している。
橋は既に流されていた。橋の土台のところで亀がたむろっている。
普通にこの川を渡ることは望むべくも無かった。
「普通では進めません・・・しかし!!」
瞳子は地中用ドリルを水中用スクリューに換装すると躊躇なく飛び込んだ。
「機関最大!魚雷発射!!」
襲い来る亀を魚雷で撃破、濁流をものともせず突き進む瞳子。今なら独立戦闘国家すらぶっちぎりの速力である。
「渡った・・・」
濁流を渡りきり、対岸に上陸した瞳子。
道らしきものをたどり走る。
「夕陽は、未だ、沈んでいない・・・」
ひたすら太陽に向かって走る瞳子。日が沈んで夜になってしまうと、乙女一人で歩くには危険な時間帯になってしまう。ぜひともその前に祐巳さまのもとにたどり着かなければ・・・
しかし・・・
「おうおう、ここを通すわけにはいかないんだよー?」
瞳子の前に立ち塞がるモヒ漢。邪魔される心当たりは無いわけではないが、いやむしろたくさん有ったり無かったりする、というか胸の名札に「あきれす」と書いてあるが、今は関わっている時間は無い。
「おっと、無視するなよ。痛い目にあうぜー?」
これ見よがしに斧を弄ぶモヒ漢。なぜこういうモヒ漢は斧か鉈を持っているのだろう。日本刀ではだめなのだろうか。
「おっと、時間切れだ、ここでおねんねしてもらおうかー?」
斧を振り下ろすモヒ漢。
しかし。
「盾ロール神拳究極奥義!
姉 想 転 生 ! !」
ドリル音とともに大きな穴が開きいろんなものをぶちまけるモヒ漢(あきれす)。一子相伝のドリルの前にモヒ漢(あきれす)は文字通り散った。
そして何事も無かったかのように走り始める瞳子。
そして―――
「あれは・・・」
懐かしの、祐巳さま。
そう、すべては祐巳さまに追いつくためだったのだ。
「祐巳さま!」
振り返る祐巳さま。跳び込む瞳子。
「待ってたよ、瞳子」
妹を優しく受け止める姉。
アキレスと亀と戦い、瞳子は祐巳さまに追いついたのだ。
つまり。
「瞳子の祐巳さまに対する想いは、理論なんかに負けません!!!」
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C.TOE リベンジで2回目
あれ?「走れメ□ス」をふまえて書き始めたのに、メ□スの要素はどこ逝った・・・?
(↓次の方どうぞ↓)
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(13.お題から続く)
(いったい、どーすればいーのですかー!?)
「――なんて。私が思うとでも?」
うつむいた瞳子の顔に微笑が張り付く。
見ているものがいたなら、周囲の温度が10度ほど下がったような気がしただろう。
そのまま後ろを振り返り、空の何も無い空間を一瞥して「ふふ」と笑った。
流石はリリアンの主演女優、どんな仕草でも絵になるものだ。
「ばかみたい……」
己に言ったのか、いや、くだらない考えで人を惑わす過去の亡霊に対してだ。
実行することすら永遠に不可能な哲学は、自分の頭の中だけでやるものだ。一人で。
(私には必要ないことだわ)
ただ私の前を祐巳さまが歩いていて、その後ろを私が歩いている。
お姉さまは祐巳さまで、そのたった一人の妹が瞳子。
祐巳さまが瞳子の心をつかまえてくれている。それだけで十分なのです。
もうすでに心の深い部分で繋がってるんですから、いまさら追いつくだの移動するなど考えるなんて、おバカさんのすることですね。瞳子反省。
「ああんもうっ! 繋がっているなんて、瞳子恥ずかしいですー「何が繋がってるの?」」
「いやですは。決まっているではありませんか。瞳子とゆ? って、なんですのーっ!?」
ずざーっと、ゼノンさん(誰?)もビックリの奇妙なポーズをとりつつ一瞬で後退った瞳子。
瞳子の肩に祐巳さまが顔をちょこんと載せていたからだった。
ということはすなわち、祐巳さまは瞳子のことを後ろから抱きしめていたのだ。
しかし考えてみれば、瞳子を形作る素粒子レベルで考えると、誰かさんの到達しなければならない位置やゴールなどという概念すらあるかどうかも危うい。
ってそんなことはどうでもいいのですけれど。
「今のテレポ?」
「は? 何をおっしゃられているのかわかりませんけど?」
突然何を言い出すのやら。
「あ、ごめん。最近はまってて」
「はあ……でもお姉さまはどうして」
私のことを抱きしめていたのですか? それだけでも嬉しいんですけれど、どうせならもっと情熱的にぎゅーってしてほしいです。などと心の片隅で思っていたとしても恥ずかしくて口が裂けても言えはしない。
片隅ですよ?
「へ? あぁ。薔薇の館に行こうと思って歩いていたら。後ろに瞳子ちゃんがいるじゃない? じっと佇んで物憂げに空を見上げているから、何が見えるのかなーって。瞳子ちゃんが遠くに行ってしまいそうで心配になっちゃって……ね?」
えへへと頬を染めて、なんて心地良い感覚。瞳子のことで頭がいっぱいな祐巳さま。
そんな些細なことでも、瞳子の小さな胸は『きゅん』と締め付けられるのだった。
若干、質問の意味を勘違いしている祐巳さまだが、それはそれで好ましいと思う。
(これが恋なのかしら?)
「お姉さま……」
身に余るお姉さまの愛情に、瞳子はうるうると瞳に涙を留めて祐巳さまを見つめた。
祐巳さまもそれに気づいたのか、真剣な目で見つめ返してくれている。
心なしか祐巳さまの背景に紅薔薇が咲いて見えます。これが噂の薔薇さまオーラというものでしょうか。(←瞳子ビジョン発動)
こんなにも長い時間、祐巳さまの瞳の中に瞳子がいる。ああなんて幸せなんでしょう。
見詰め合っていると吸い込まれそうで、このまま一気に距離を詰めてしまいたい。そんなふしだらな考えが瞳子の脳内を侵食し始めた。
ど、どうしましょう。いったい、どーすればいーのですかー!?
「瞳子……ちゃん? で、何が繋がってたの?」
祐巳さまが瞳子を無理やり現実に引き戻した。
危なかった。助かったけれど、でもちょっと残念。
「ご、ご自分でお考えになってくださいっ」
瞳子は祐巳をおいて、すたすたと薔薇の館へと歩き出した。心なしか耳が赤い。
あんな三文芝居のような台詞、絶対言えませんわ。
「えー気になる。教えてよー」
祐巳さまが瞳子の後を追いかけて追い越して、くるりと振り向いて言った。
「鈍感な人には教えてあげません」
「う。瞳子ちゃんのイジワル」
「知りません」
永遠に追いつけなくとも、こうやって二人が一緒に居ることはできるのですから。
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とりあえず参加してみたSoMです。
えと、被ってないですよね……?
(↓次の方どうぞ↓)
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(14.1から続く)
(いったい、どーすればいーのですかー!?)
頭を抱えたところで、すぐにピンと来た。
私が追いつけないのは祐巳さまも移動しているから。
ならば、止めれば良い。
そして私は、止まった祐巳さまに悠々と松平の名に恥じぬ淑女たらん歩みで接触するのだ。
――そう、考え方は間違っていない。
問題のパラドックスは、あくまでも理論。
現実と並べれば、それは机上の空論ほどに曖昧で地に足がついていないものになってしまう。
私は、理論を崩す方法に気付いたのだ。
「要はAとBで考えるのが間違いなのよね……」
二人で同じ速度で移動するから追いつけない。
単純に、近道、速度を上げる、などの解決法がある。そこが現実との違いだ。
私がするべきことは、祐巳さまを呼ぶことではなかった。
前を歩く誰かを止める方法は、それこそ無数にあるのだから。
つまり、呼ぶ相手が違うのだ。
AとBでは追いつけないのであれば、第三者「C」を介入させればいい。幸い祐巳さまに対する「C」は少なくないのだから。
アキレス敗れたり。
私はこの一言で、理論を越える!
「――アッ!! 祐巳さまが転んでパンツ見えた!!」
……ドドドドドドド!!!
ヒュッ ヒュッ
ガサガサガサガサガサガサ
廊下から、教室から、下校中の人並みから、私の隣から、それこそ親の仇を見るような鋭い目で走り出すリリアンの子羊――いや、あの顔は狼の群れだ。一人だけノッポさんがいるけれど。細川可南子め、やはり諦めてなかったか。
まるで某大晦日のアレのように全力疾走を始めた生き物たちの中に、種類の違うカメラを持った生き物が、狼たちの群れの中を、人知を超えたスピードでジグザグに前へ前へと進んでいた。しかも並び走るリリアン生たちを通りすがりにカシャカシャ撮りながら。――武嶋蔦子、恐ろしい人だ。……ところであそこにぐったりと倒れているのは内藤笙子さんだろうか? きっと蔦子さまの後に続こうとして失敗して飲まれたのだろう。
ガサガサと緑の中を移動するのは、きっと新聞部のあの方か。バッファローの群れのようになったそれに真っ向体力勝負を望まないところが利口である。
第三者「C」は、祐巳さまのファンだ。
彼女らの誰かが祐巳さまを捕まえればミッションコンプリートだ。あとは人込みに飲まれて移動などできなくなるだろう。
しかも。
しかもだ!
「もみくちゃにされる姉を助ける健気で優しい妹」を演じることで、私という妹ができたにも関わらず妹の座を狙う不届き者に睨みを利かせ、かつ窮地を救った妹に姉の好感度はググーーンとアップ!
先程までの距離なら、私の声が聞こえただろう。
だが距離を離されたことで、きっと私の声は祐巳さまには届いていないはず。
ピンチをチャンスに変える発想!
完璧な策!
そう、私が松平瞳子ですわ!
……というわけで、あとはもう、止まった祐巳さまに悠々と淑女たらん歩みで接触するだけだ。
ふふふ、待っていてください、祐巳さまいえお姉さま!
誤算があったのは、認めたくないが、認めようと思う。
だって……因果応報ですもの……
「あなたに祐巳さま(のパンツ)は渡さないわ!!」
悠々と追いついた集団の中から、私が姉を助けるアクションを起こす前に、そんな声が上がった。
ギラリと一様に振り返る狼の瞳。
……まさか。
私が妹になって日が浅いせいか、それとも選挙の時などの悪評のせいか、単純に祐巳さまが好きなだけなのか。
とにかく、一つのアクションで同志が寄り集まったことで、いわば反松平瞳子派(もしくは福沢祐巳親衛隊)の最後の一線を越えさせてしまった……の、だろうか?
「と、とぉーーーこぉーーーーー!! たぁーすけてぇーーーー!!」
人込みの中から届く姉の悲鳴。
「ゆ、ゆ、祐巳さまぁぁぁーーーーーー!!!」
囲まれて腕とか袖とかスカートの裾とか足とか縦ロールとかを掴まれて、どこぞへと強制連行される私。
……だ、誰!? 今どさくさに紛れて私の胸触ったの誰!?
「……あぁぁぁぁぁ……」
まるでゴミのように焼却炉の前にポイッと捨てられた私は、がっくりと両手両膝を着いて、自分が放った完璧すぎる一言を、悔やむことしかできなかった。
策士、策に溺れて強制退場。
視界の端にあるしおれた縦ロールが自分でも情けなかった……
――この日を境に、リリアンの生徒達が、私と姉の接触を露骨に邪魔するようになった。
後に「紅薔薇革命」と報じられた解決策の見えないこの事件は、姉が卒業するまで続くことになる。
もう毎日がレイニ―ブルー状態で。
私はかつてのことを振り返り、「因果応報」という言葉を、嫌でも心に刻まされるのだった。
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お言葉に甘えて書かせていただきました、海風です。
長い……かな? というかこれでいいのかな……?
(↓次の方どうぞ↓)
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(15.お題から続く)
「今の二人の間に〜」
「永遠は見えるのかな〜」
「あ、出た。出番がないことさえ話題にならない並薔薇のつぼみズ」
「ごきげんよう。敦子です」
「ごきげんよう。美幸です」
「えっとごきげんよう。それで、何が言いたいのかしら、敦子さん、美幸さん」
「瞳子さん、あなたは祐巳さまに追いつくことができないことを悩んでいますね」
「でも、そんなことは小さいこと。答えは」
「「永遠です!」」
「わああっ。そんな耳元で大声を出さないでくださいっ。永遠に追いつかないから大変なんじゃないですか」
「そうでしょうか。ちょっと実験をしてみればいいのですわ」
「いいのですわ」
「祐巳さまは薔薇の館に行こうとしています。ここに薔薇の館」
「で、こっちに祐巳さま、そして瞳子さんがここ」
「簡単のために、祐巳さまと瞳子さんの距離と、祐巳さまから薔薇の館までの距離を同じとします」
「とします」
「はあ」
薔____________祐__________瞳
「瞳子さんが祐巳さまがいたところまで行くと祐巳さまは」
「もっと先へ行ってしまうのでこうなります」
薔_____祐______瞳
「はあ、それで?」
「「ここが大事なところなんです!」」
「わあああっ。だから耳元で大声をださないでくださいっ」
「瞳子さんと祐巳さまの距離は半分になりました。でも追いつきません」
「でも、『祐巳さまと薔薇の館の距離も半分になりました。でも行き着きません』のですわ」
「あっっ!」
「もう一段やってみましょうか」
「みましょうか」
薔__祐__瞳
「瞳子さんは祐巳さまのいたところ、祐巳さまは少し前へ」
「でも、祐巳さまは永遠に薔薇の館に行き着かないのです!」
「ないのです!」
「おおおっ。これはなんということでしょう。祐巳さまは永遠に薔薇の館にたどり着かない。私は祐巳さまに追いつかない。これが永遠に続くのですか?」
「「それでいいじゃありませんか」」
「え?」
「祥子さまは卒業してしまいます。祐巳さまも来年には高等部を去ります」
「時の流れを止めることはできないのですよ、瞳子さん。でも祐巳さまと瞳子さんだけは」
「「永遠です!!」」
「わあああぁっ。だからいきなり大声を出さないでくださいって。このままずーっと永遠の追い駆けっこを続けろと?」
「やがて、祐巳さまが1ミクロン進めば瞳子さんが2ミクロン進む」
「ほとんど重なってしまうではありませんか」
「(だれかが祐巳さまにも瞳子にも大きさがあるからその前にぶつかるとかなんとか「「永遠ですっ」」
「わあああっ」
「たしかに、幾何学的一点でお二人が重なることはないかもしれません」
「でも、0.01nmと0.02nmというような、距離に重なっちゃうんですよ」
「0.01nmと言えば原子間距離より近い」
「お二人はほとんど重なり合って、永遠に追いかけ続けるのです」
「今の二人の間に〜」
「永遠は見えるのかな〜」
「歌はいいからっ。うう、祐巳さまとほとんど重なり合って永遠……それって理想? そうなのかもしれないわ」
「それでは、マリア様のご加護を」
「ごきげんよう」
『きみとぼくとの間に〜』
『永遠は見えるのかな〜(フェイドアウト)』
「……祐巳さまと、永遠に……」
「って、それ、なんの解決にもなってないからっ!!」
──────────────────────────────────────
くま一号でした。
(ナノは10のマイナス9乗、などと新聞のように書いてみる)
──────────────────────────────────────
勝手ながら、現時点を持ちまして、締め切りとさせていただきます。
ご参加下さいました、C.TOEさん、篠原さん、素晴さん、通りすがりのSさん、若杉奈留美さん、SKさん、クリ○・ベノ○っちさん、SoMさん、海風さん、くま一号さん、ありがとうございました。
また、柊さん、いぬいぬさん、まつのめさんには、こちらの一方的な催促にお時間を割いていただいたこと、特に御礼を申し上げます。
こうして見ると、理論で対応する方、別の方法を用いる方、関係無い話?で煙に巻く方等、皆さんの個性のようなものが垣間見えて、中々興味深い結果になりました。
でも、ほとんどが“お笑い”に分類される話になっているのは、やはりがちゃSにその傾向が多く見られるからでしょうか(笑)。
萌えや感動には、なかなか持って行きにくいお題でしたからね。
今回は、あって10、最大で20、最低で0という参加者数を予想していましたが、予想最大数には及ばなかったものの、総勢13名もの方々に参加していただいたことは、望外の喜びでした。
今後も、リレーとか、クイズ形式とかで、読者や作家方々が自由に参加できるような投稿が出来れば……いや、させて貰えればいいなぁ。
最後に、勝手に読者参加型にした当投稿に対し、寛容かつ肯定的に対応して下さった管理人殿に、改めて感謝いたします。
(コメント)
朝生行幸 >ご存知、“アキレスと亀のパラドックス”より。 ちなみに編集キーは、朝生の下の名前をローマ字小文字で。(No.15531 2007-07-11 00:39:58)
mim >あぁ……ごめんなさい、朝生さまの下の名前を読めないことにたった今きづいてしまいました…。重ねてごめんなさい…朝生さまのサイトをつい最近まで『ツンデレー』と読んでました……m(_i_)m(No.15534 2007-07-11 01:31:57)
柊雅史 >スットコドッコイに丸消しされた場合は、普通に復帰しますとも! 朝生さんの意思で消す時は、本文にその旨記入してから消してくださいな。・・・ちなみに、私も下の名前の読み方を知らなかったりして(ぉ(No.15535 2007-07-11 01:42:06)
朝生行幸 >スミマセン、編集キーを変更しました。 →「無印のラスト、祥子と祐巳の踊りを小文字で」 一応防衛策ということでご理解いただきたいです。(No.15541 2007-07-11 13:39:04)
C.TOE >とりあえずこんなんできましたけど、OKなんでしょうか>朝生さま(No.15542 2007-07-11 17:16:07)
朝生行幸 >皆さんにお知らせ。基本は「原文の続きを書く」ですが、アイデアがあるなら、参加者に続く内容でも構いません。ただし、リレーSSではありませんので、そこにはご注意を。 OKですよ。>C.TOEさん(No.15545 2007-07-11 18:44:56)
joker >手元に無印が無い……(No.15546 2007-07-11 22:20:08)
C.TOE >すいません、リレーだと思い込んでいました。いきなりキラーパスでゴールだったんですね。しかしここにはキラーパスさせたら右に出るものの居ない永谷○さまが・・・(No.15550 2007-07-12 00:51:12)
素晴 >なぜか編集できない……。(No.15552 2007-07-12 03:05:06)
篠原 >ああ、すいません。犯人は私でした。いつものパスワードのまま書き込んでいたようです。直したのでご確認ください。いや、ほんとに申し訳ない。(No.15554 2007-07-12 18:13:44)
朝生行幸 >やっちゃうんですよね(笑)。←経験者(No.15555 2007-07-12 18:47:41)
素晴 >おかげさまで編集できました。しかしまあ、読むのと違って文章を書くのって難しいものです。(No.15556 2007-07-12 23:48:27)
いぬいぬ >呼ばれて飛び出て(以下略 いや、なかなか難しいですねぇ。(No.15557 2007-07-13 00:50:01)
通りすがりのS >面白そうなので参加してみたのですが、ごめんなさい、としか言えない内容に……(No.15560 2007-07-13 17:04:51)
素晴 >いや、笑いましたよ?しかし色々投票ボタンを押しにくい企画ではあります。(No.15561 2007-07-13 20:02:49)
柊雅史 >若干、通りすがりのSさんとネタが被ってるような気がするのは気のせいだということにしておいてください。お願いします。(No.15565 2007-07-14 03:14:48)
柊雅史 >しかし、中々性格というか特徴っぽいのが出てて、面白いですな〜。(No.15566 2007-07-14 03:26:25)
SK >単発ではない、連作でもない……キーワードではなく、作者の「がちゃがちゃ」という感じですね。(No.15567 2007-07-14 03:39:14)
朝生行幸 >整理が終了しましたので再開します。朝生も近々書き込む予定(言いだしっぺだし(笑))。(No.15568 2007-07-14 11:59:21)
joker >トピックツリーシステムが欲しい今日この頃。(No.15569 2007-07-14 17:16:15)
朝生行幸 >てなワケで、朝生も参戦。一週間で地球一周出来るんでしょうか?(No.15570 2007-07-14 17:16:26)
アレシア >すっごい分岐っぷりに感動しましたわ.「タイムマシン」の公認続編「タイムシップ」も真っ青なくらい.(No.15571 2007-07-14 20:00:47)
C.TOE >コメント書かないと、いつ投稿したのかよくわからない罠。(No.15574 2007-07-14 22:27:56)
若杉奈留美 >わっ、ほんとだ。C.TOEさまのおっしゃる通りの状況に…。書かせていただいたのは昨日の夜11時ぐらいだったかと思いますが、本当に面白い企画ですね。今後が楽しみです。(No.15575 2007-07-14 22:55:16)
琴吹 邑 >よかったら確認掲示板を使ってください。ツリー形式で見えるのではないかと。(No.15576 2007-07-15 00:42:22)
海風 >失礼します。ものすごく面白い企画ですねー。十人十色、という感じで楽しく読ませていただいております。……ああ、コメントするだけでドキドキするよ……(No.15578 2007-07-15 02:31:30)
朝生行幸 >よろしければ、琴吹さんも海風さんも、ご参加くださいな。(No.15582 2007-07-15 14:19:20)
SoM >む、むずかし……。(No.15584 2007-07-15 20:33:14)
海風 >お言葉に甘えて書かせていただきました。本当に難しいですねこれ……(No.15587 2007-07-16 08:26:04)
くま一号 >厄除け(No.15589 2007-07-16 10:28:05)
くま一号 >これはお題がよかったですね。行幸さまの企画勝ち。(No.15590 2007-07-16 10:33:09)
朝生行幸 >補足:『解決ではありません、“完結”です。』としてありますが、もちろん解決していただいても構いません。つまり、解決でも未解決でも良いから、とにかく完結させる、という意味です。(No.15592 2007-07-16 21:21:57)
くま一号 >これ、完結です(ボソ)……脱兎(No.15596 2007-07-18 08:28:06)
朝生行幸 >うーむ、そろそろ打ち止めですかねぇ……? ちなみに上記補足は、くま一号さんへのあてつけではありませんので(笑)。(No.15597 2007-07-19 15:49:08)
朝生行幸 >それでは、一応22日(日)の午後6時を目処に、いったん締め切りとします。書き込み予定の方は、焦ってくださいね。(No.15604 2007-07-21 23:38:41)
朝生行幸 >はい皆様、お疲れ様でした。mimさん、jokerさん、アレシアさん、琴吹さんにも、是非参加していただきたかった……。(No.15605 2007-07-22 18:49:41)
mim >「だって地球は丸いんだもん!」ってゆー、くま一号さま以外には多分イミフなネタしか思いつかなかったorz(No.15606 2007-07-22 22:59:32)
クゥ〜 >しばらく来なかったこと悔やむしかないですね。とほほ。(No.15612 2007-07-23 00:45:03)
くま一号 >え? わかんない>mimさま あーー、りはびりの解決してないのが〆めになっちった(大汗 書き落としましたが行幸さまの飛んでいく矢のパラドックスネタをパクってます。(No.15616 2007-07-23 07:38:15)
朝生行幸 >要望が多ければ、再開しますよ?(No.15617 2007-07-23 22:29:42)
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