がちゃS・ぷち
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No.2392
作者:春日かける@主宰
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2007-10-15 03:59:21
萌えた:1
笑った:0
感動だ:3
『一人ぼっちの花は散り』
※山百合会孤島殺人、2日目です。死にネタが駄目は人は読み飛ばして下さい。
残念ながら桂さんは出番がな(ry
やっといいタイトルにめぐり合えましたw
●1日目/桟橋到着〜館へ【No:2271】→雨〜聖と江利子【No:2278】→夕食〜最初の事件【No:2280】→可南子と聖〜蓉子の死【No:2283】→可南子、疑心暗鬼【No:2291】→燃える死体〜由乃の最期【No:2297】
●2日目/令の激昂、聖の決断【No:2302】→困惑、徘徊、監禁【No:2316】→ここ
* * *
「これは遊び? それとも人生のすべて?
ひとかけらのパンかしら? それとも人類の歴史のすべて?」
──森博嗣「有限と微小のパン」より
* * *
<2日目/細川可南子/???>
ここはどこだろう。気がつけば、こんな場所に。
聖さまの部屋?
それとも、まさか犯人の部屋?
手足がしびれている。縛られていたから、血が止まってしまったのか。
喋れない。口に、布が──。
──ドアが、開いた。
ああ、あの人は、私を──。
<2日目/福沢祐巳/広間>
雨が、降る。
ああ、とても嫌な雨。
いつかの、お姉さまとの出来事を思い出す。
窓の外を見ることを拒否した私達は、カーテンを完全に閉め切っていた。
頭上の部屋で起きた、連続事件。
たった一日で、江利子さまが、蓉子さまが、由乃さんが……。
聖さまと可南子ちゃんが、二人で聖さまの部屋に閉じこもった。
令さまは全てを呪い、由乃さんが眠る資料室に閉じこもった。
そして、瞳子ちゃんが姿を消した。
全てが嫌になっていた。
あの令さまの一件から、どれくらい経ったのだろう。
部屋の真ん中に椅子を動かして、私とお姉さまはそこに座っていた。志摩子さんと乃梨子ちゃんも同じように座っている。二人も疲れているようで、うつむいたままだ。
沈黙は続く。聞こえる音は、自分の呼吸音と、激しい雨の音。
「──祐巳」
お姉さまが口を開いた。
「は、はい」
「……瞳子ちゃんを、探してくるわ」
ゆっくりと腰を上げるお姉さまの腕を、私は慌ててつかんだ。
「駄目です、お姉さま!」
咄嗟に言ったが、何が駄目なのか自分でもわかっていない。
お姉さまを一人にするのが? それとも、自分がお姉さまと離れるのが? 志摩子さんたちを置いていくのが?
──瞳子ちゃんが、もし犯人だとしたら?
「……祐巳さん、どうしたの?」
「祐巳さま……」
志摩子さんと乃梨子ちゃんがこちらを見ているのに気づく。お姉さまは、少し眉をひそめていた。
「あ、す、すみません……」
私は手を離すと、お姉さまが頭を撫でてくれた。
「大丈夫よ。瞳子ちゃんは、私の大事な……」
そこまで言うと、お姉さまは目を閉じた。
「そして、祐巳にも、乃梨子ちゃんにも、志摩子にも……大事な人なんですもの」
<2日目/佐藤聖/???>
私は、必死に縛られた手足をもがかせていた。
早く、ここから逃げなければ。
早く、犯人をみんなに伝えなければ。
祐巳ちゃんを、志摩子を──可南子ちゃんを、守らなければ。
床の上を転がる。縄は緩む気配を見せない。
いや、少しだけれど緩みだした。いける、これなら……!
<2日目/支倉令/広間>
「だから、犯人なはずはない、って言うの?」
私はドアを開け放つと同時に言った。祥子や志摩子が、ハッとした表情で私を見る。
「令……」
祥子はよほど驚いたらしい。他の三人も、私をじっと見ている。
それもそうか。私はまだ、右手に日本刀を持っているのだ。
「みんな、聞いて。……可南子ちゃんが、殺されたわ」
「そんな!」
勢いよく立ち上がったのは乃梨子ちゃん。志摩子は口を押さえている。
祐巳ちゃんも、そして祥子も、口をパクパクと動かしているだけ。
「……嘘だ! 可南子さんが!」
乃梨子ちゃんは私が日本刀を持っているのも忘れて、こちら目掛けて走ってくる。私は避けない。
「あんたが! あんたが殺したに決まってる!!」
私を思い切り突き飛ばすと、階段に向かって走っていった。
床に座り込んだ私。カラン、と音を立てて、刀が床に落ちる。
「……令、本当なの?」
祥子の声に、私は頷くことしかできなかった。
<2日目/二条乃梨子/三階廊下>
嘘だ。嘘だ。可南子さんが殺されるなんて。
だって、聖さまと一緒に部屋に閉じこもったじゃないか。
聖さまはどうなったんだ。どうしてあの人だけ。
聖さまが犯人か。それとも、令さまがあの刀で斬りつけたか。
──まさか、瞳子が?
そんなはずは無い。
でも、もう、ここにいるのは──。
三階に上がると、私はあのバリケードに飛びついた。しかし、聖さまの部屋のドアを塞いでいたバリケードは、どかされていた。ドアが開いている。人が一人、通れるくらいのスペースが出来ている。
令さまがどかしたに違いない。外からこれを動かせるのは、あの人しかいない。
私は、そのスペースに身体を入れ、部屋を覗いた。
聖さまはいなかった。可南子さんもいない。
まさか、と思う。
まさか、令さまは「可南子さんが殺された」と嘘をついたのではないだろうか。
そうすれば、きっと私か祐巳さまが動くと思ったのだ。そうすれば、残るのは祥子さまと……。
「志摩子さん!!」
志摩子さんが危ない。あの刀で、令さまは──!!
私がそう叫んだ瞬間、嫌な臭いが鼻に届いた。
もう、嫌だ。この、血の臭いを嗅ぐのは!
しかし、私は部屋に足を踏み入れていた。
クロゼットが開いているのが見えた。そして、そこから、すらりとした足が見えている。
可南子さんは、そこにいた。
不自然なポーズだ、と一瞬思ったが、それは、首が胴体と離れているせいだ、と気づいた。
「う、うわあああああああああああああああああああ!!!!!」
私は叫んだ。
その場に座り込む。頭を抱える。
「もう嫌だ、嫌だ!」
もう、こんなのは沢山だ。いくら日常から離れた場所だからとはいえ、悪夢を見るなんて。
そうだ、早く志摩子さんを連れて逃げよう。嵐だからって構うものか。この館にいるよりはマシだ。
この天候に、小笠原の人が様子を見に来てくれるかも知れないじゃないか。
あと何時間も、ここで迎えを待つなんて!
……ズシン、と重い衝撃が。
痛みは感じない。視界がぼやける。
ゆっくりと振り向く。
右腕が、無いのに気づいた。
「……は、はは、あははは、はははっ」
笑いがこみあげてきた。そして、もう一撃。
倒れる私の視界に見えた人物が誰なのかわかった瞬間、私は「ちくしょう」と呟いた。
大振りな斧の三撃目が、私の意識を切断した。
<2日目/???/聖の部屋>
何回か痙攣を繰り返して、二条乃梨子は動くことを止めた。
彼女は、どうやら死の間際に、私がどうやってこのゲームを行ってきたかを悟ったらしい。
でも、遅かった。
誰も、この空間からは逃れられない。
誰も、このゲームから逃れられない。
このゲームを終わらせる方法はただ一つ。
誰か、私を殺して。
<【No:2407】へつづく>
(コメント)
MMM >メンバーが大分減ってきたので犯人予想は自重しときます、あとから「〜だと思ってたよ!」なんて言いませんから(笑(No.15829 2007-10-17 22:55:09)
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