がちゃS・ぷち
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No.2480
作者:クゥ〜
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2008-01-17 01:24:15
萌えた:25
笑った:3
感動だ:1
『リボンが大きく見えて温泉』
「ふぅぅぅ」
口をすぼめて息を強く噴出すと、白い息が真っ直ぐに飛んでいく。
「今日は寒いわね」
「えぇ、ですから、そんなはしたないマネはお止めください」
横に並んだ瞳子が少し怒った顔で、祐巳を見ていた。
「だって、寒いんだもん」
「だからって、休みが終わったら紅薔薇さまと呼ばれるのですから」
「良いじゃない、誰も見ていないわ」
周囲を見渡せば、静かな校庭が見えるだけ。
春休みの一日。
休む部活も多いだろう。
祐巳と瞳子は、新学期に向けての山百合会の仕事で出てきただけ。本当なら、祐巳一人でも問題は無かったのだ。
その証拠に、白薔薇さまも次期黄薔薇も出てきてはいない。だが、その事を知った瞳子は、手伝うといって聞かなかったのだ。
祐巳としては、部活も頑張っている瞳子に休みの日くらいはゆっくりしておいて欲しくって、いらないと何度も断ったのだが、それでも食い下がってくるので仕方がなく許した。
瞳子は、お姉さま一人に任せていては問題が起きるかも知れませんとか言っていたが、乃梨子ちゃん通訳では、どうやら春休みにデートの一つも誘わなかった祐巳と少しでも一緒にいられるチャンスを探していたそうだ。
その話を聞いて、昨年の自分のことを思い出して反省した。
……ゴールデンウィークは、何かしないとな。
祐巳としても瞳子とデートがしたいのは同じだ。
「はっぁぁぁぁ」
溜め息と共に白い息が広がる。
「お姉さま!!」
瞳子が、また注意してくる。今度は、そんなつもりは無かったのだが……。
「あはは、ごめん。それにしても本当に寒いよね」
「そうですわね、昨日は暖かったですから余計に寒く感じますわ」
「そうそう、こんな日は温泉とか行きたいよね」
「温泉ですか?」
「うん、温泉につかってポッカポカてね」
考えただけで、本当に行きたくなる。
「そう言えば、駅の向こう側にレジャー施設が出来たよね」
「あぁ、聞いています。何でも乃梨子さんは白薔薇さまと行ったとか」
「えぇ!?そうなの?」
「はい」
白薔薇姉妹が温泉……似合っている。
「いいなぁ」
「はい?何がですか?」
「温泉」
「はぁ、そんなに行きたいのなら行かれればどうですか?」
祐巳は、瞳子の言葉にハッと見る。
「そうだよね、行けばいいんだ」
「?」
「と言うことで、瞳子、行くよ温泉」
「はい、どうぞ」
祐巳は、人事のように返す瞳子の方を、やって来たバスに乗りながら振り返り。
「なに言っているのよ、瞳子も行くの」
デートのお誘い、瞳子は少し考えたようだが理解すると大きく頷いた。
「えっ?は、はい!!」
少し拗ねていた瞳子の顔が一瞬笑顔に変わり、照れていたのかすぐに拗ねた顔に戻った。
ただ、その頬は少し赤かった。
「で、これはどう言う事ですか?」
「何が?温泉だよ」
「それは分かっております!!問題は、なぜ今日で、しかも学校の帰りに制服で温泉なのかと聞いています!!」
「言ったでしょう?寒いから温泉に行こうって」
祐巳はサッサと制服を脱ぎ、備え付けの専用のバスローブを羽織る。
温泉の一式はレンタルした。
「私は寒いんだから早く入りたいのだけど?」
「ですが」
「私に風邪をひかせるつもり?」
「そ、それは」
「もう、ココまで来たんだしお金も払ったのだから、諦めなさい」
「そ、それではお金だけでも!!」
何かと逃げ腰の瞳子の手を掴む。
「それくらいは私に出させなさい」
「ですが!!」
「お姉さまとして、お願いしているんだけれどなぁ」
こんな時くらいは、瞳子のお姉さまとして少しは見栄を張りたい。
瞳子の顔が、真っ赤。
「さぁ、早く」
少し楽しい。
「は、はい」
今の一言が聞いたのは明らかで、瞳子は渋っていたさっきまでとは違い手早く用意を整える。
瞳子と二人、手を繋いで色々な温泉を楽しもう。
「まずは大風呂で温まろう!!」
「お姉さま、そんなに大声を出さなくても聞こえますわ」
指を差し出しポーズを決めた祐巳に、瞳子が冷静に注意する。
「ノリが悪いなぁ」
「まったく、そんな姿を他の生徒が見たら幻滅されますわよ」
「え〜、そうかなぁ」
祐巳は庶民派で人気がある。
それならば見られてもそんなに問題は無いはずだ。
「そうです!!お姉さまは腐っても紅薔薇さまなのですから、その辺を忘れないでほしいものですわ」
「腐ってもって」
本当に酷い言いようの妹だ。
「何をしていますの、お姉さま。早く行きましょう」
「はいはい」
立場が逆転したが、祐巳は嬉しそうに瞳子と大風呂に向かう。
「お姉さま!!」
お風呂に入ろうとして瞳子に呼び止められる。
「どうしたの?」
「先に体を洗うのがマナーですわ」
そう言う瞳子に引っ張られ、温かそうな大風呂が遠のいていく。
「あぁぁ」
「そんな声を出して、お風呂は逃げません!!」
仕方がなく、まずは体をゴシゴシ。
「う〜ん」
横では瞳子が体を洗っている。
「うん!!」
祐巳はココは定番と瞳子の後ろに回る。
「お姉さま?」
「体、洗ってあげるよ」
祐巳は嬉しそうに笑っていた。
一方の瞳子は、当然慌てる。
「お、お、お姉さま!!」
「いいからいいから」
祐巳は嬉しそうに瞳子の背中を洗っていたが、当然、こうして洗うのが目的ではない。
悪戯。
「瞳子って以外に胸有るよね」
「そ、そんなには無いです」
「そうかな?」
そう言いながら揉んでみる。
「ひゃきゃわ!!」
瞳子とは思えないような悲鳴。
「お姉さま!!」
当然、怒る瞳子だがそれが楽しい。
「あはは、今度は真面目に洗うから」
「いいえ、今度は私が背中を流しますわ」
祐巳は悪戯は程ほどにしようと思っていたが、どうも遅かったようだ。
「さぁ、お姉さま」
「瞳子、目が怖いって」
ビクビク。
ドキドキ。
しながら瞳子に洗って貰う。
だが、瞳子は以外にも悪さをせずに祐巳の背中を洗ってくれた。
……悪いことしたかな?
瞳子の態度に、祐巳は自分の行動を反省するが……。
「それでは流しますね」
「うわひゃぁぁ!!!」
瞳子は、お湯ではなく水で祐巳の背中の泡を流した。
そんなドタバタをしながら体を洗い、ようやく大風呂に浸かる。
「ふぁ〜あたたかい」
「えぇ」
瞳子も肩まで浸かり温まっているようだ。
「ポッカポカだぁ」
室内には暖房が入っているので関係ないとは思うが、湯気が視界を遮るほど凄い。
「おっ?」
湯気の中に、古びた扉や遺跡のような柱が見える。
……ここって遺跡風なんだ。
そんなのあったかなとは思うが、まぁ、気にしない。温かいのだ、それで気持ち良いのだから。
「あぁ、冬はやっぱり温泉ね」
ほら、隣のお客さんも同じ意見。
「そうだね〜」
「でっかい、賛成です」
「ぷいにゅう」
うんうんと祐巳は頷く。
「あらあら、でも、夏の温泉も素敵よ」
「そうだな、暑い時に熱い風呂はいいぞ」
「あぁ、確かに」
「ぷいにゅう」
「それもでっかい素敵です」
夏の温泉かぁ。
祐巳も良いなぁと思う。
「…お姉さま……お姉さま!!」
「わっ!!」
祐巳は湯船に沈みそうに成っていた。
「もう、良い気持ちだからと寝ないでくださいませ」
「あぁ、夢かぁ」
見れば遺跡風のものは見えない。
「あはは、ごめん」
「あははではありませんわ、でも、良い気持ちなのは分かりますから、眠気覚ましにでも他の風呂を見に行きませんか?」
「あ〜、そうだね」
祐巳は瞳子の言葉に賛成し、眠気覚ましに変わり風呂を見て周る。
まずはジャグジーだろう。
その後は、サウナに水風呂。
本格的なマッサージとかもあるが別料金のようなので、それらはパスする。
それで気に入ったのは、そんなに大きくない浴槽だが薔薇の花びらで埋め尽くされたアロマ風呂。
「凄い香りですね」
「うん、本当。肌からも良い香りがするよ」
ゆっくりと薔薇の風呂を楽しんでから、祐巳と瞳子はお風呂を上がる。
「ポッカポカだね」
体を拭き、髪を乾かす。
「えぇ」
お互いに髪を結わえ、仕度を整える。
「でも、体が温まったら何だか今度はお腹が空かない?」
体が温まると、今度はお腹が気になった。
「お姉さま」
瞳子が呆れた顔に成るが、瞳子もお腹が空いているはずだ。
「何か食べない?」
「仕方ありませんわね、それでしたら近くによいところがありますわ」
「レストランとかはイヤよ、お金もないし」
「心配要りませんわ」
瞳子もやっぱりお腹が空いているようで、お風呂前とは違い積極的だ。
「それじゃ、行こうか」
瞳子と一緒に外に出る。
冷たい風は相変わらずだが、体は温かいし、気持ちも暖かい。
瞳子のトレードマークでもあるドリルはセットしなかったので、今は祐巳と同じツインテール。
ちなみにリボンもおそろい。
瞳子が持っていた予備のリボンを、祐巳が温泉代の代わりに貰ったのだ。
あれほど言ったのに、瞳子はやはりどこか気にしていたようだから……。
同じヘアースタイルが、ビルの鏡の中で同じように揺れていた。
後は、お腹を満たすだけ。
瞳子と手を繋いで、寒い風の中を歩いていく。
だが、そんなのは問題にもならない。
暖かいから。
明日は日も暖かいだろうから。
ある温泉を考えていたのですが……あはは。
『クゥ〜』
(コメント)
通りすがり >いわゆる例の温泉ってやつですね(笑 ⇒ クゥ〜さま。なんか微妙に掠りそうで掠らない、いやなんとも、他の展開をちょっと期待してしまったのは私だけではないはず(汗(No.16071 2008-01-17 21:22:30)
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