がちゃS・ぷち
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No.61
作者:琴吹 邑
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2005-06-19 22:41:11
萌えた:2
笑った:8
感動だ:0
『達人の域に達した聖が否定する』
何の因果か、私の前にそれはあった。
志摩子からずいぶん大きい小包――大きい小包って何か微妙な言葉だけど――が届いたのは、ほんの数分前のことだった。
なんだこれ? 私に荷物が届くことも珍しいが、送り主が志摩子からって言うのも珍しい。
私は早速、その小包――段ボールを開封した。
「こ、これは……あの時壊れたはずの………」
開封した箱の中から出てきた物、それは、以前写真部が部費の調達をするため、総力をあげて作り上げた1/1祐巳ちゃんフィギュアだった。
しかもあの時と同じように、リリアンの古風な制服にフリフリエプロンとカチューシャを装備している。
「やっぱり祐巳ちゃんはかわいいなぁ。あの時は祥子に邪魔されて抱きつけなかったから、今度こそ」
私は祐巳ちゃんフィギュアの背後に回り、いつも本物にしているように後から抱きついた」
「ぎゃう」
コミュニケーション能力を装備したフィギュアは私の抱きつきに反応して、いわゆる、怪獣の子供のような声を発した。
私はすこし首をかしげた後、祐巳ちゃんフィギュアから離れ、もう一度、さっきと同じように抱きついた。
「ぎゃう」
祐巳ちゃんフィギュアが発した怪獣のような鳴き声が、寒々しく部屋に響いた。
「これは駄目だね」
確かに抱き心地は良かった。特殊開発したウレタンフォームというのは伊達ではないと思う。
でも、あの祐巳ちゃんのぽわぽわとした柔らかさには全然叶わない。
フィギュアが発する恐竜の子供の泣き声も、本物の方が反オクターブ高くそして柔らかい。
祐巳ちゃんにじゃれつけない素人の祥子や電動ドリルなら、まだ、これで満足できるかも知れないが、祐巳ちゃんに抱きつくことに関して、もはや達人の域に達した私にはとうてい満足できる物ではない。
「ちぇ、残念だなあ」
そう言いながら、私は1/1祐巳ちゃんフィギュアを傷つけないように、丁寧に箱に戻した。
「はい。確かにお預かりしました。到着は、明後日以降になる予定です」
次の日、私は大学へ行く前に、昨日届いたそれを、あの人の所に発送した。
それが届いた後で、会いに行って、いろいろといじればきっと面白い反応が返ってくるだろう。
私はニシシと笑いながら、愉快な反応を返してくれるであろうあの人に思いをはせた。
【No:426】へ続く
(コメント)
琴吹 邑 >このお話は くま一号さんが書かれた「No.47 紅いメイドさん!」を参考にさせてもらいました。(No.175 2005-06-19 22:42:56)
琴吹 邑 >1/1祐巳ちゃんフィギュア、どうやら写真部が造った物と、乃梨子が造った物と2つあるみたいですね。(No.176 2005-06-19 22:45:29)
くま一号 >まさか続くとは・・・あは・は・はは(No.177 2005-06-19 22:46:30)
春霞 >振られちゃった祐巳ちゃんを拾ってくれるのは誰なのでしょう?(涙(No.213 2005-06-20 19:09:45)
琴吹 邑 >今回は誰かにつながるを意識して、あえて送付先をぼかしてみました。そのせいで、おはなしとしてはいまいちかもしれないですね。(No.223 2005-06-21 01:19:06)
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