がちゃS・ぷち

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No.651
作者:朝生行幸
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2005-09-27 22:54:22
萌えた:1
笑った:32
感動だ:0

『道草を食う淑女』

「昨日の帰り道、途中で道草食っちゃったよ」
「いいわね祐巳さんは。私なんて家が近いから、滅多に道草なんて食えないわ」
「私も帰宅時間が長いから、あまり道草食ってる時間がないわね」
 祐巳、由乃、志摩子の二年生トリオが、薔薇の館で雑談していた。
 その様子を、静かに見守る乃梨子と瞳子の一年生コンビ。
「まぁ、特に用がなければ道草なんて食わないしねぇ」
 瞳子にしか聞こえないような小さな声で、乃梨子はそっと囁いた。
「……」
 眉を顰めて、二年生たちを見ている瞳子。
「瞳子は、道草食うのは反対?」
「え?あ、いいえ。別に構わないと思いますわ」
「そう?その割には、嫌そうな顔してたみたいだけど」
「そ、そんなことありませんわ。食う食わないは、本人の自由ですし」
「そりゃそうだろうけどね」
「私は食べたことありませんけれど…」
「?」
 なんだか違和感があったが、三年生の薔薇さまたちが来たので、そのまま忘れてしまった乃梨子だった。

「祐巳さま、私も昨日、道草食ってしまいましたわ」
 嬉々として、祐巳に話し掛ける瞳子。
「へぇ、瞳子ちゃんもそんなことするんだ。いつも真っ直ぐ帰ると思ってたよ」
「そりゃ、私だって道草くらい食べますわ。でも、あれって全然美味しくないですわね」
『へ?』
 その場に居合わせた全員が、アンタ何言ってんだ?と言わんばかりの目で瞳子を見た。
「苦くて、青臭くて、とても食べられたものじゃありませんでしたわ」
 冷や汗を流して硬直する一同だったが、納得したのか、誰ともなく咳払いする。
 困った表情の祐巳を肘で突付いて、唇の動きだけで「あとは任せたわよ」と言った由乃は、そのまま何事も無かったかのように振舞う仲間に加わった。
「あのね、瞳子ちゃん」
「はい?」
 ほっとくわけにも行かない、祐巳は瞳子に話し掛けた。
「道草食うのは、体にあまり良いことじゃないから、もうやらないようにしようね。私も二度としないから。ね?」
「そうですか?祐巳さまがおっしゃるなら、私もそうしますけれど」
「うん、そうしてくれると嬉しいよ瞳子ちゃん」
 仕方がありませんわね、とでも言いたいような顔の瞳子だった。

 さすがの祐巳も、本当のことは言えなかった。
 まさか瞳子が、“道端に生えている草”を食べるなんて、思いもしなかったから。
「お嬢様って怖いなぁ…」
 祐巳は、誰にも聞こえないように小さな声で呟いた。


(コメント)
みゆき >レディな瞳子は淑女ってことでひとつ。(No.2682 2005-09-27 22:58:07)
春霞 >にゃはははは。 あの由乃でさえ突っ込めないとは。 ビバッおぜうさま。 (No.2684 2005-09-27 23:08:59)
さんたろう >祥子「祐巳、私も道草というものを食べてみたいのだけれど…」(No.2702 2005-09-28 09:50:53)
一体 >祐巳「はい、お姉さま。じゃあマヨネーズ用意しときます!」(No.2737 2005-09-28 22:22:46)
水 >小笠原SP『お嬢様の通学路の雑草を、すべてハーブに植え替えろっ。急げっ!』(No.2769 2005-09-29 05:21:31)
一体 >こうして、SPたちによる(No.2772 2005-09-29 05:57:03)
一体 >失礼しました。SPたちによる涙ぐましい努力によって、ここら一帯のハーブの値が天井知らずに高騰するのであった。(No.2773 2005-09-29 05:59:03)
一体 >ていうか本当に失礼しました、みゆきさま。人さまの作品に(No.2774 2005-09-29 06:05:03)
一体 >失礼しました、改めて失礼致しました、みゆきさま。人さまの作品に関係のない茶々を入れてしまい申し訳ありませんでした(汗(No.2775 2005-09-29 06:10:11)
みゆき >いえいえ、そこまで考えておられるなら、ぜひとも続編を書いていただきたい(笑)。(No.2815 2005-09-29 13:25:30)
一体 >うっ、か、考えておきます(汗(No.2847 2005-09-29 21:48:03)

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