がちゃS・ぷち

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No.742
作者:くま一号
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2005-10-18 15:10:38
萌えた:7
笑った:5
感動だ:7

『身を焦がす未練いっしょに暴走』

がちゃSレイニーシリーズ 【No:737】の続き


(だまって行けばよかったのに、なぜ乃梨子さんに話したんだろう。)

 止めて欲しかった? いいえ、瞳子はもう決めたこと。
あの、脳天気な方に振り回されるのはもうごめんです。いえ、あの方と私の意志とはなんの関係もありません。
 瞳子は自分の意志で世界へ翔ぶのですわ。

 四時間目が終わる。昼休みになったら、車が迎えに来てカナダ大使館へ。
最後の挨拶にもう一度だけ登校するけれど、それでおしまい。
そう、おしまい。涙なんて流さない。新天地が瞳子を待っている。

「それじゃあ、これまで。来週までに今の課題をレポートで提出するように。」
授業が終わった。机の上を片づけて立ち上がると、乃梨子さんが待ちかまえていた。

「瞳子、ちょっと待って。」
「時間がなくってよ。またあらためてお別れのご挨拶に参りますわ。」
「待てって言うのに。」
凄い力で腕をつかんでいる乃梨子さんを、無理矢理ふりほどく。
「乃梨子さん、これは持つべき人にお返ししますわ。」
ロザリオを外して、乃梨子さんにかける。
「ダメっ、志摩子さんにもらったんだから志摩子さんに返さなきゃダメだよ。受け取らないっ。」

 一年椿組ディフェンス陣は、ふーん五人、ゾーンディフェンスですわね。
一番やっかいなガードののっぽは、後ろの扉、ならば前へ。

「瞳子は行くと言ったら行くんですっ」
言い捨てて、ロザリオを外そうとしていた乃梨子さんを突き飛ばす。がたんっと机にぶつかる乃梨子さん。ごめんなさい。

 左右から敦子さんと美幸さんが挟むように塞いでくるのを、二人の間をカットイン。そこへインターセプトに出てきた千草さんに右にフェイント。あっ、と右に振られた千草ちゃんの左を駆け抜け、一気に机三つ分前進。

 教壇の前から前扉に駆け抜けようとしたところに、来ましたね。細川可南子。
「ばかドリル!!」
「ノッポにそんなことを言われる筋合いはありませんわ。」
「自分だけで暴走してどうすんのよ。」
「まわりが騒ぎすぎなのですわ。自分で決めたんですっ。」
 いいながら隙をうかがう。

「可南子ちゃん!」
「あ、祐巳さま!」

 はっ、と可南子の注意がそれたすきに、教室の扉を飛び出す。

「待ってよ! 瞳子ちゃん!」

 え? 今、可南子さん、お幸せに、って言った?
えーい、今はそんなこと関係ありません。祐巳さまの足の速さは体育祭の時に見てますからね、追いつかれやしません。

 私はもう半分リリアンの生徒ではありませんからね。プリーツもカラーも関係ありません。でも、あなたは紅薔薇のつぼみなんですよ。あーあ、まわりが唖然としてみていますわ。ほんとうにあれで来年紅薔薇さまがつとまるのかしら。ちゃんと支えてあげる人が、支えて……。
 いえ、終わったことは終わったことなんですっ。

 廊下を駆け抜けたところでもうだいぶ差がついて、でも靴を履き替えている間はないので外靴を手に持って、上靴のまま飛び出る。いいでしょう? もう使わないものだもの。



 マリア様に心の中でさようなら、と挨拶をして、正門まで一気に走っていく。
ん? 正門に人だかり。

 あーーーあ。真っ赤なロードスター、そのまえで『ふっ』なんて髪をかき上げる優お兄さま。

「お兄さまー。お、お待たせしましたー。」

『優さん! 瞳子ちゃんを車に乗せないで。祐巳と私からのお願いよ。』

 放送!! 祥子お姉さま!? まさか紅薔薇さまがそんなこと。

「お兄さま?」
「ごめんよ、瞳子。ボクは祐巳ちゃんの頼みは聞くことになってるんだ。」
「お兄さま!」
「拗ねるんじゃないよ、瞳子。」

「瞳子ちゃーん、待ってー。」
祐巳さまの声が迫ってきた。

 えーい、もうしょうがない。
どこへ行くって行く当てはないけど、もう走るしかないでしょうが。
校門を走り出て、外へ駆け出す。

 このあたり、花寺とリリアンの敷地が広がっている周りは、武蔵野の雰囲気を残した林がところどころにあって、閑静な住宅地。

「瞳子ちゃん、逃げたって、どこまででも追っかけていくからねー。」
「いまさら、なにを言ってるんですかー。」

 林の中に、駆け込む。追ってくる祐巳さま。
「待ってよー、瞳子ちゃーん。」
「待ってって言われて待つ人はいませんわー。」

 だんだん、自分がなぜ走っているんだかわからなくなってきた。
ただ、林の中で二人きり、祐巳さまと走っている。


 走る、走る、ただ、祐巳さまと二人で走る。


 だいぶ息切れがしてきた。

 この時間もそろそろ終わりかな。ほんとうに終わりなのね。

 なんだろう、人が集まっている。教会だ。


「結婚式ね。」
「ぎゃう。ゆゆ祐巳さまいきなり抱きつかないでください!」



(コメント)
くま一号 >なんかわし、やたらに走らせるのが好き?(No.3677 2005-10-18 15:16:28)
読み人 >涙などーもう流さないー♪(No.3679 2005-10-18 16:15:14)
あああ >あああ(No.3680 2005-10-18 17:26:25)
風 >いよいよなのね、ドキドキ。(No.3683 2005-10-18 18:14:43)
良 >嗚呼、続きが気になるわぁ(No.3684 2005-10-18 18:24:19)
琴吹 邑 >No.654から、ずいぶん方向性が変わったみたいだなあ。瞳子・・・。何があったんだろうか・・・。(No.3715 2005-10-19 18:52:01)
くま一号 >うん、始業前から3時間目までの間に大逆転、って思いついたので三連投走ってしまいました。うーん、リレーにならなくなっちゃったかなあ。(No.3718 2005-10-19 22:33:15)
琴吹 邑 >うーん瞳子はともかく紅薔薇さまが行動がどうしてこうなったのかなあと・・・。祥子が柏木の到着タイミングを知ることは非常に難しいと思うのですけど・・・。瞳子の心理を読み切って放送したんだろうか? でも、654の展開の後では、それはちょっと難しい気も・・・。柏木から連絡でもあったのだろうか? でも、校内では携帯は切ってると思うんですよねえ・・・。早退するという言葉で、迎えは柏木と判断するのも難しい気も・・・。そう考えると、654の後から3時目までに瞳子と祥子の間に何かがあったと考えるのが自然かなあ・・・。でも、何故乃梨子さんにという言葉を考えると、瞳子と祥子の間に何かがあったようには思えないし・・・。この空白をどう埋めるのがいいのかなあ・・・。(No.3725 2005-10-20 10:43:19)
渋柿 >超展開でつね(No.3726 2005-10-20 11:32:30)
ROM人 >この後、祐巳を振り払って闇雲に走り出す瞳子が、脱輪してコントロールを失った某M社のトラックに轢かれそうになって、間一髪でかわしたがガードレールに激突して頭を打った瞳子は昏睡状態……。 祐巳は自分のせいだとふさぎ込み、眠り続ける瞳子から離れない。 そして、数日後意識が回復した瞳子は記憶が無くなっていたりして、妙に素直でしおらしくなっちゃった瞳子に「こんなの……瞳子ちゃんじゃない」と呟いた祐巳を乃梨子がビンタしたりなどしつつ、祐巳は瞳子の記憶が戻るように一生懸命尽くしたりするけども、実は途中から瞳子の記憶はすっかり戻っていたりして、乃梨子に「いい加減に祐巳さまを許してやりなよ」とか何とかいわれたのをきっかけにカミングアウト→祐巳にロザリオをもらう。 みたいな展開を想像してみたりしてました。 続き楽しみにしてます。(No.3727 2005-10-20 11:37:39)
ROM人 >ちなみに、瞳子海外ENDとかも浮かんだり。  瞳子が演劇部の先輩の妹になるENDも考えてたりしました(w(No.3728 2005-10-20 11:41:26)
篠原 >それだけ考えてたなら続き書きましょうよ、ROM人さん。…そろそろRW人さん?(No.3750 2005-10-21 00:30:18)
ROM人 >書いちゃいました_| ̄|○  改名は今さら変えるのもアレなのでこのまま行くことにしました(笑)(No.3829 2005-10-23 05:26:32)
風 >ところで、藍子は一年李組ですよお。(No.4064 2005-10-29 17:31:08)
くま一号 >千草ちゃんと交代。(つっこまれてから何ヶ月もほっとくなよ) 以後も藍子ちゃんは千草ちゃんと交代します(No.5157 2005-12-11 15:29:57)

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