がちゃS・ぷち

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No.748
作者:8人目
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2005-10-20 18:06:39
萌えた:1
笑った:1
感動だ:10

『舞台女優前後不覚応援キャンペーン』

『がちゃSレイニー』

     †     †     †

「可南子さん。瞳子さんを逃がしてしまって…よろしかったのですか?」

 瞳子に突き飛ばされた乃梨子さんを助け起こしていると、背後から声が聞こえた。
 千草さんだ。藍子さんと、のぞみさんも傍にいる。
 乃梨子さんはお姉さまに伝えると言って、すぐに教室から走って出て行ってしまった。
(はしたないわね。人の事は言えないけれど)

「祐巳さまが来てたでしょ?それに祐巳さまは本気だから。ド…瞳子はちょっとやそっとじゃ逃げられないわよ。あの二人は話し合うことが必要なの。それより、あなたたちこそどうして―――」

 その時、前置きもなく突然、紅薔薇さまの声が響いた。

『優さん! 瞳子ちゃんを車に乗せないで。祐巳と私からのお願いよ。』

「「くすっ」」
「ふふ…」
「あはは…」

 まさか紅薔薇さまが私用で放送を使うとは。やはり祐巳さまの周りには、お節介な人が集まるのね。
 ひとしきり笑って、茶話会トリオに疑問を投げかける。

「どうして祐巳さまの手伝い…いえ、祐巳さまの噂を広めたの?」
「「「………」」」

 三人、目を見合ってうなずく。

「祐巳さまに頼まれましたの。瞳子さんの耳に入るようにって」
「私たちは祐巳さまの妹になる気はありませんので、名前は伏せておきましたけれど」
「なるほど、それを瞳子が勘違いして信じたのね。自分が受け取ってしまった志摩子さまのロザリオの重みも相まって。それであの暴走か…」
「少し薬が効きすぎましたでしょうか?」
「それくらいで丁度良いと思うわ。瞳子は天邪鬼な上に隠し事が上手くて、すぐ逃げるから。何もわかっていないのに、諦めがいいと言うか、途中で舞台から降りようとするのよ。隠しているものを全部打ち明けた方が、スッキリすると思うのにね」
「「はぁ…」」

 瞳子はずっと、遠くから“祐巳さま自身”を見てきた。その想いは私の上を行っている。
 同じ祐巳さまを傍で見ていた私だからこそ気づけるくらいの微かな想い。それがわかったから私と瞳子は天敵と呼ばれるほどの仲になったのかもしれない。
 だけど私は瞳子より先に舞台から降りた。瞳子とは見ていたものが違っていたと気付いたから。
 祐巳さまに全てを打ち明けて、仲違いして、拾われて。学園祭までの間、本当の祐巳さまを見て気付いたから。
 始めから勝負にはなっていなかったのだ。はっきり負けたと悟った。

「それよりも、みんなで祐巳さまの後を追いかけるんでしょ?」
「な、なぜそれを…」
「だてに半年も祐巳さまと瞳子を見てきていないわよ。祐巳さまの考えそうなことだわ。それに、瞳子にも荒療治が必要よ」

 追いつめられなければ素直になれないなんて、なんて厄介な性格だろうか。
 この先の祐巳さまの気苦労を思うと同情する。

「でも。あなたたちは、祐巳さまの妹に瞳子が決まっても良いの?」
「私たちには…まだそんな資格がありません。可南子さんや瞳子さんと違って、純粋に祐巳さまを見ていなかったから」
「それに気付いたのが、剣道部の交流試合の翌週」
「祐巳さまが訪ねていらっしゃった時です」
「私もあなたたちと変わらないわ。わかったのなら今からでも遅くはないわよ?だいぶ瞳子に先を行かれたけれど」
「いえ。祐巳さまの心には、もう瞳子さんがいらっしゃいますもの…」
「そう…」

(さて、それじゃ最後の仕上げね)

 敦子さんと美幸さんが、祐巳さまの後を追っているから居場所はすぐに知れる。
(お昼だから他の組の娘も混じっているわね。丁度いいわ)
 廊下や教室で、唖然とこちらを見守っている一年生たちに、

「みなさま。このお昼休み、祐巳さまと瞳子さんの舞台を見てみたい方はついて来ませんか?」
「「お昼を後回しにする価値はあるかもしれませんわよ」」

 茶話会トリオはそう言うとすぐに教室を出て行った。
 祐巳さまと瞳子の舞台まで、敦子さんたちと連携してみんなを誘導するために。


(コメント)
八極子 >しょうもないツッコミで恐縮ですが;中ほどの「瞳子はずっと、遠くから祐巳さま自身を見てきた。」につき、主語と目的語が異なるので"自身"は文法上誤り。(No.3736 2005-10-20 19:24:06)
八極子 >校内放送を私用で使った紅薔薇さまが職員室で叱られる姿なども見てみたいですね。(No.3737 2005-10-20 19:28:36)
風 >えっと。“体言”の使い方がよくわからないのですが、「遠くから祐巳さまそのものを見てきた」と書いたほうが良いのでしょうか?>八極子さま(No.3738 2005-10-20 19:44:54)
八極子 >私もよくわからないのですが、単に「遠くから祐巳さまを見つめ続けてきた」のではなくて「その視線は可南子の到底及ばない、祐巳さまの深い部分までしっかりと捉えていた」というようなことを仰りたいのでしょうか?(No.3739 2005-10-20 20:04:06)
風 >はい。次の行の「同じ祐巳さまを見ていた私」の「見た」と区別したくって…。(No.3740 2005-10-20 20:08:36)
風 >あ、深い部分とまではいかないけれど、昔の可南子とは違うものを見ていたと書きたかったんです。(No.3741 2005-10-20 20:11:06)
風 >あとで書いていますけれど。;;(No.3742 2005-10-20 20:14:18)
八極子 >私は平易な文章を尊ぶので自分で書くなら上記のように2文に分けて書くでしょう。が、風さまがどうしても1文でお書きになりたければ「"祐巳さま自身"」のようにダブルクォートで括ると、「自身」が動詞の再帰性と区切られて、「祐巳さまの本質」の意味で読めるのではないかと思います。(No.3743 2005-10-20 20:21:41)
八極子 >老練なSS作家の皆様方にも御教授いただけましたら幸いです。(No.3744 2005-10-20 20:25:58)
風 >何度も同じ様な事を書くと少し“くどい”かな?とも思うので、ダブルクォートで括ってみます。ありがとうございます。>八極子さま(No.3745 2005-10-20 20:28:04)
くま一号 >はあ、続いてくれたあ(大汗)ありがとお。 んー、体言としての使い方は原文で間違ってないと思うけど? その、直す前の一番最初のが一番すっきりしてるんだと思うんだけど、うーん、ごめん正確な文法には自信ないけど、「自身」は「祐巳さま」を強めて修飾する語として使われているので主語が「瞳子」目的語が「祐巳さま自身」になって、文法的誤りとは言えないのではないかと。ダブルクォートなくても。(No.3758 2005-10-21 06:42:51)
くま一号 >1 自分。みずから。 「彼は―で来た」 2 体言、特に人名や代名詞に付いて、「そのもの」「それ自体」という気持ちで強めていう時に用いる語。「私―の責任だ」(大辞林) 2の用法で目的語として、おかしい? 私もよく使っちゃうのでだれかご教示を。(No.3759 2005-10-21 06:46:57)
八極子 >他動詞とともに「自身」を使用する場合は1.の意味に解されると思うので、曖昧さ無く伝えるにはやはりひと工夫必要な気がします。難しいですね。(No.3760 2005-10-21 07:10:39)

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