がちゃS・ぷち

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No.784
作者:朝生行幸
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2005-10-29 21:32:17
萌えた:7
笑った:19
感動だ:1

『ついうっかり』

『あぎゃー!!!』
 リリアンに通う乙女らしからぬ絶叫が二つ、同時に松組に轟いた。
 叫び声をあげたのは、紅薔薇のつぼみ福沢祐巳と、写真部のエース武嶋蔦子の二人。
『ど、どうしたの?』
 これまた同時に、二人にそれぞれ別々に問い掛けたのは、黄薔薇のつぼみ島津由乃と、新聞部部長山口真美だった。
『ポンチョ忘れた…』
 力なく呟いた二人を、クラスメイトは呆れた表情で見るだけだった。

「くっ、私としたことが…」
「ちょっと蔦子さん、もう少しゆっくり歩いてもらえない?」
「あ、ゴメン」

「あー、やっちゃった…」
「ほら祐巳さん、ちゃっちゃと歩く」
「う、ゴメン」

 今日はリリアン女学園高等部二年生の、健康診断日だった。
 施設への移動や診察のために、制服の代わりに身に纏うポンチョ。
 それをうっかり忘れてしまった祐巳と蔦子は、それぞれ由乃と真美のポンチョに入れてもらい、現在移動の真っ最中だった。

「だーかーら、蔦子さん、貴女のペースで歩かないでよ。私はそんなに早足じゃないんだから」
 真美の背中にピッタリ張り付いた状態の蔦子、つい癖で早足になるので、真美を背中から無理矢理押し出してしまうのだった。
「そんなこと言ったって、癖ってなかなか抜けないものへれ…?」
「私のペースに合わせるだけでしょ?何も難しくないってば」
 蔦子は、真美より背が高い。
 真美の頭頂部が、ちょうど蔦子の鼻の頭ぐらい。
 真美の髪が蔦子の鼻をくすぐるので、語尾がたまに変な音になる。
 悪態を吐きながらも、顔が赤い真美。
 なんせ背中には、結構肉感的な蔦子が密着状態。
 体温と感触がダイレクトに伝わるので、照れくさいような気持ちいいような。

「だーかーら、祐巳さん、もうちょっと早く歩かないと、どっちも見えちゃうよ?」
 祐巳に後から張り付かれた状態の由乃、ついつい早足で歩いてしまうため、ゆっくり歩く祐巳と離れてしまいそうになる。
「そんなこと言ったって、由乃さんが早く歩き過ぎなんだよ?」
「そんなに早く歩いていないわよ。祐巳さんが遅過ぎるだけよ」
 祐巳は、由乃よりほんの少しだけ背が高い。
 実際の差は、1〜2cmってところだ。
 密着していると、祐巳は前が見えないので、由乃の右肩に顎を乗せて歩く。
 体温が平均より低い由乃、平均より高い祐巳の体温を背中でダイレクトに感じつつ、耳にも祐巳の吐息が当たる。
 その為か、由乃の顔が若干赤くなっていた。

『それじゃ、リズムに合わせて』
 数メートル離れて、同時にイチニイチニと歩き出す。
 まるで二人三脚だった。
 隣同士並んだ祐由と蔦真が、互いに見合わせ微笑を交わすと、周りの失笑を買いつつも、先を争いだした。
 イチニイチニ、イチニイチニ。

 ついつい熱中してしまった両者、そのおかげで目的地を行き過ぎてしまったのは、当然の成り行きと言うべきか…。


(コメント)
みゆき >ついうっかりポンチョを忘れて、ついうっかり行き過ぎてしまったお話。(No.4066 2005-10-29 21:32:51)
ケテル・ウィスパー >忘れたのなら、別な方策を考えるんじゃ無いだろうか? 体操服を使うとか・・・・ と言う突っ込みを、ついうっかりしてはいけないんですね。(No.4067 2005-10-30 02:13:40)
ROM人 >他人の白ポンチョの中に入れてもらうってかなり凄い展開のような……。(滝汗(No.4076 2005-10-30 16:14:25)
ROM人 >ヤキモチ焼きの姉妹にみられたら……(No.4077 2005-10-30 16:15:24)
みゆき >首が通るのか甚だ疑問。(No.4322 2005-11-07 22:35:24)

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