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No.2348
作者:彷徨うコロンタ
[MAIL][HOME]
2007-07-30 21:39:20
萌えた:1
笑った:11
感動だ:0
『気合を入れて祐巳にドッキドキ!元気出していこうね』
※始めに・・・・
この作品は【No:2338】の続きになります。
この作品内の人物相関及び学年等はほぼ原作通りです。
この作品内の山百合会のメンバーは以下の通りです。
紅薔薇姉妹 祐巳 瞳子
黄薔薇姉妹 由乃 菜々
白薔薇姉妹 志摩子 乃梨子
この作品内の時間軸はマリア祭終了後です。
以下の内容を確認の上、本作品をお楽しみください。
木曜日の放課後、図書館内の会議室・・・・
普段あまり使われない室内には、テーブルとパイプ椅子に移動式のホワイトボードといった物しかなく、とても殺風景な空間が広がっている。
その室内で4人の少女達が、席に座って最後の1人が来るのを、静かに時間を潰して待っていた。
暫くして「コンコン」とドアを叩く音と共に、一人の少女が静かに入室して来た。
「遅れてすいません」と部屋で待っていた少女達に言いながら、近くの空いている席に着いた。
髪の毛を両脇で分けて三つ編みにした少女が、全員が揃った事を確認すると「では、これから緊急対策会議を始めます!」と静かに宣言した。
マリア様が見てるif
福沢祐巳の絶叫<中篇>
紅い子狸が薔薇の館の中心で○○〜!!!!と叫ぶA
現在この部屋には、祐巳以外の山百合会のメンバーが揃っていた。
今日は、殆どの部活や委員会活動が休みなので、本来ならこんな所で油を売ってないで、今頃は姉妹仲良く帰宅するはずだった。
しかし、今日の昼休み中に起こった出来事に危機感を感じた由乃は、午後の授業開始前にメンバーに非常召集をかけて、今回の会議の場を設けた。
「ところで瞳子ちゃん。祐巳さんには、今日のことを誤魔化すことが出来たのかしら?」
「はい、志摩子様。今日は調べ物があるからと言って、帰宅するのが遅くなると伝えてきました。お姉さまの方も館の掃除が終わったら直ぐに帰宅してしまいましたわ」
今日の会議の件を祐巳に悟られない様、瞳子には事前に祐巳とは放課後は別行動になると伝えてもらう事になっていた。
「もしかして瞳子。祐巳様が帰宅したのを確認してからここに来たの?」
「良いじゃありませんか。事が事なので、慎重に行動したまでですわ」
それが遅れた原因か?と呆れたように呟く乃梨子に、瞳子は、それがどうした!と言わんばかりに威嚇した。
「ハイハイ2人共、そこまでにしてもらえるかな。話が先に進まないからさ」
そんな2人を、由乃は慣れた感じで諌めると話を進めた。
「それじゃ、色々と忙しい所みんなに集まって貰ったのは、この件を話し合う為です!」
由乃は「本日の16時ま○ぎー!!」と某TV番組の司会者風に言うと、ヨイショと掛け声と共にホワイトボードを反転した。
そこには『目指せ1勝!気合を入れて祐巳さんにドッキドキ!元気出していこうね大作戦』と1面の上半分いっぱいに書かれていた。
「・・・・もしかして、これを仕込む為にこの部屋に一番乗りしたのですか?お姉さま」
「いいでしょ別に。これを一度やって見たかったのよ!」
ちょっと呆れ気味に呟く菜々に、由乃は、何か文句ある!と言わんばかりに噛み付いた。
「由乃様、じゃれつくのは後にして話を進めましょう」
「そうですわ、今はお姉さまの件で話し合う為に集まっているのですから」
先ほどのお返しとばかりに、突っ込みを入れる乃梨子と瞳子である。
「確かにその通りだわ。それじゃさっさと始めましょうか。しかし、ここまで行くと違う意味で奇跡だよね」
「そうね、祐巳さんの為にも勝てない原因を突き止めて解決策を見つけましょう」
志摩子のまともな意見に、残りのメンバーも本来の目的を思い出したようで、お互い視線を合わし、改めて由乃を中心に話し合いが始まった。
きっかけは、月曜日の放課後に決まった『罰当番を賭けたトランプを使った勝負』で、今日まで4回連続で祐巳が負け続けたことがそもそもの原因だった・・・・
火曜日の昼休み、薔薇の館の会議室・・・・
昨日の打ち合わせ通り、昼休みに集まったメンバーは、昼食後にその日内に処理すべき雑務を行っていたが、その作業も大して時間も掛からず終了した。
「それじゃー昨日と同じように、トランプで今日の放課後と明日の朝の当番を決めましょう!」
「またババ抜きですか?お姉さま」
「う〜ん、それもあまり芸がないわね。それに今日は時間があるし、何回か勝負が続けられそうだから・・・・」
「はい!由乃様。私、『七並べ』を希望します!」
昨日と同様、ノリノリで話を進める黄薔薇姉妹に、このまま流されるのも癪に感じた乃梨子は、積極的にこの勝負に参加することに決めたようだ。
「じゃあ、乃梨子ちゃんの提案に反対の人・・・・はいないみたいだから、それで行こう。」
「それではカードを配りますね、お姉さま」
由乃が、全員に乃梨子の提案の賛否を確認するを見ていた菜々は、手馴れた手つきでカードを全員に配り始めた。
「いよいよですわ、お姉さま」
「いよいよだね、瞳子」
「昨日は、2人でいっぱいマリア様にお祈りをしたから、今日は大丈夫ですわ」
「私、今日の朝もいつもより長くお祈りしてきたから、絶対に大丈夫だよ」
昨日の敗戦から立ち直った紅薔薇姉妹は、今日は気合十分である。
「あら祐巳さん。ずいぶん強気の発言ね」
「勝負は最後まで分かりませんよ、祐巳様」
既に臨戦態勢の黄薔薇姉妹からは、すかさず鋭い牽制が飛ぶ。
「ねえ志摩子さん、マリア様って勝負事に強い人だっけ?」
「いいえ、私は聞いたこと無いわね」
今日も、相変わらず落ち着いた様子の白薔薇姉妹である。
そして由乃は、全員準備が出来たのを確認すると開始の合図を宣言した。
「それでは、第二回 山百合会主催 リリアン初夏の陣を始めます!」
「「「「「おぉ〜!!」」」」」
昨日とうって変わって、全員のやる気に満ちた掛け声とともに戦いの火蓋が落とされた。
「え〜と・・・・これもダメ、こっちもダメ、あっちもダメ」
「さあ祐巳さん、早くカード出して出して」
「うぅ〜ん・・・・ダメだ、どこにも出せない。私、パス」
「はい祐巳さん、これでパス3回目だから今回もビリ決定!」
「そんな〜!!!!」
結局、最後までこの調子で負け続けた祐巳が、めでたく本日の罰当番に決定したのである。
「・・・・それでは、第二回も祐巳さんに決定しました。今日の放課後と明日の朝の当番ヨロシクね。それじゃ行きましょうか、菜々」
「はい、お姉さま。それでは皆さんごきげんよう」
「えーと祐巳さん。『2度あることは3度ある』じゃ無かった『3度目の正直』と言うことわざの通り、明日はきっと勝てるわ・・・・多分」
「それじゃ瞳子、後はヨロシク。祐巳様ごきげんよう」
そう言うと、祐巳と瞳子を残して4人は部屋から出て行った。
「ねえ、瞳子」
「今日は部活があるから手伝えませんよ、お姉さま」
「そうじゃなくて・・・・この近くに、勝負事に強い神様がいる所知ってる?」
「・・・・はい?」
一瞬自分の耳を疑った瞳子は、体ごと祐巳に向いて次の言葉を待った。
「やっぱりマリア様は『見守り・導く』存在であるから、こと勝負事には向かないような気がするの」
「はぁー、まぁー確かにそれも一理ありますね・・・・」
「だから、ここは勝負事に強い神様に、明日の勝利を祈願しないといけないと思ったの」
「・・・・え〜と」
仮にも、幼稚舎からリリアンにいる人の言葉とは思えない祐巳の言動に、瞳子が対応に困っている間に、当の本人はドンドン行動が加速していった。
「あの〜お姉さま」
「そうだ!乃梨子ちゃんなら仏像見るために色々なお寺を回っているから、もしかしたらわかるかも」
「もしもーし。聞こえますかー!お姉さま!」
「今から急げば、まだ始業時間前に間に合うかも・・・・よし、善は急げだ!」
「ちょっと待ってくださいお姉さま!」
祐巳はそう言うと、物凄い勢いで部屋から出て行った。瞳子は直ぐにでも祐巳を止めに行きたかったが、部屋の戸締りに手間どったために、結局祐巳を止めることが出来なかった。
「ホントあの時はビックリしたんだから。突然祐巳様が教室に飛び込んできて教室中がパニックになったから、騒ぎを収めるのに大変だったよ」
「その件では姉に代わって謝りますわ。乃梨子」
「それに私、仏像の事は詳しいけど神様の事はあまり知らないから、込みで思われるのも困るのよね」
その時の苦労を思い出して疲れた声で話をする乃梨子に、瞳子にしては珍しく素直に謝罪をしたのである。
「でも、祐巳さんも大胆な事をするようになったわね。流石は紅薔薇様」
「まさに『ワラをも掴む』って感じですね」
黄薔薇姉妹は、祐巳の大胆な行動を他人事の様に愉快に評価した。
「2人共、そんな風に祐巳さんの行動を評価するのは、あまり誉められる事ではないわ」
「志摩子さんの言う通りですよ。だいたい元はと言えば、2人が祐巳様の出すカードを妨害したからこうなったんですよ」
「何言っているの乃梨子ちゃん。相手の妨害をするのは勝負に勝つための基本よ。それが偶然、祐巳さんの出すカードに絡んでいただけよ」
由乃はそう言うと、何か文句ある!と胸を張って答えた。さすがに勝負が絡むと由乃は容赦がない。
「確かに、一昨日は乃梨子の言う通り黄薔薇様の所が原因でしたけど、昨日の原因は白薔薇様の所じゃないかと思いますが」
瞳子の指摘に、残りのメンバーは昨日の出来事を思い出していた・・・・
水曜日の昼休み、薔薇の館の会議室・・・・
本日も昼休みに集まったメンバーは、昼食後にその日内に処理すべき雑務を行っていたが、その作業も大して時間も掛からず終了した。
「それじゃー今日もトランプで、今日の放課後と明日の朝の当番を決めましょう!」
「今日はどうしますか?お姉さま」
「そうね、時間もあるから何回か勝負が続けられそうだけど・・・・」
「はい!由乃様。私、『ダウト』を希望します!」
昨日と同様、ノリノリで話を進める黄薔薇姉妹に、乃梨子も負けじと積極的に意見した。
「じゃあ、乃梨子ちゃんの提案に反対の人・・・・はいないみたいだから、それで行きましょう。」
「それではカードを配りますね、お姉さま」
由乃が、全員に乃梨子の提案の賛否を確認するを見ていた菜々は、手馴れた手つきでカードを全員に配り始めた。
「昨日は乃梨子ちゃんから場所を聞き出せなかったけど、お正月にお参りした神社に行って必勝祈願してきたから、今日は絶対大丈夫だよ」
「それはとても心強いですわ。お姉さま」
昨日の敗戦から立ち直った紅薔薇姉妹は、今日も気合十分である。
「あら祐巳さん。ずいぶん強気の発言ね」
「勝負は最後まで分かりませんよ、祐巳様」
既に臨戦態勢の黄薔薇姉妹からは、すかさず鋭い牽制が飛ぶ。
「ねえ志摩子さん、必勝祈願ってこういった勝負に効いたっけ?」
「いいえ、私は聞いたこと無いわね」
今日も、相変わらず落ち着いた様子の白薔薇姉妹である。
そして由乃は、全員準備が出来たのを確認すると開始の合図を宣言した。
「それでは、第三回 山百合会主催 リリアン初夏の陣を始めます!」
「「「「「おぉ〜!!」」」」」
本日も、全員のやる気に満ちた掛け声とともに戦いの火蓋が落とされた。
「はい、4」
「え〜と、今志摩子さんの出したカード『ダウト?』」
「ちょっと祐巳さん、そこは疑問系で言う所じゃないわよ」
祐巳の中途半端な宣言に、すかさず由乃は突っ込みを入れる。
「だって自信がないんだもん」
「じゃあ祐巳さんどうする?取り消すの」
「う〜ん・・・・」
由乃の提案に、ここは自分の直感に従い『ダウト』と宣言するか否か、祐巳は試しに志摩子の顔色を伺ったが、志摩子はいつもと変わらずニコニコと掴み所のない笑顔で、祐巳の選択を待っていた。
「お姉さま!ここは自分を信じ、自信をもって『ダウト』と宣言すべきです。そうすれば、お姉さまの気合でカードを思いのままに操れるはずですわ」
(ちょっと待て、それはイカサマじゃないか・・・・て言うか、そんな事は不可能だし)
瞳子の無責任かつ実現不可能な提案に、4人は心の底からから突っ込みを入れるが、祐巳はその一言に踏ん切りが付いたのか、瞳子の言う通りに気合を入れて宣言することに決めたようだ。
「うん、わかったよ瞳子!それじゃ志摩子さん、そのカード『ダウト!!』」
「ごめんなさいね、祐巳さん」
そう言って、志摩子は出したカードを裏返すと『4』書かれたカードが表に見えたのである。
その隣で、乃梨子は場に出ていたカードを祐巳の方に全部押し付けたのである。
「瞳子〜!!!!」
「そんな事言われても、私が言った通りに気合一つでカードが変わる事が出来る訳が・・・・もしかして、私の言った事を信じたのですかお姉さま?」
「・・・・うん。少し」
(だから、それが出来たらイカサマになるって・・・・て言うか、そんな事出来ないってわからなかったのかー)
やはり気合一つでそんなことが出来る訳も無く、祐巳は見事に玉砕したのである。
その後、祐巳の『ダウト』はことごとく外れ、逆に皆から『ダウト』されまくってしまい、今日も祐巳の罰当番が決定した。
「・・・・それでは、第三回も祐巳さんに決定しました。今日の放課後と明日の朝の当番ヨロシクね。それじゃ行きましょうか、菜々」
「はい、お姉さま。それでは皆さんごきげんよう」
「えーと祐巳さん。勝負を諦めなければマリア様がきっと祐巳さんの願いを聞いて下さると思うわ・・・・多分」
「それじゃ瞳子、後はヨロシク。祐巳様ごきげんよう」
そう言うと、祐巳と瞳子を残して4人は部屋から出て行った。
「ねえ、瞳子」
「今日も部活があるから手伝えませんよ、お姉さま」
「そうじゃなくて・・・・この近くに、精神力を鍛えることの出来る場所知ってる?」
「・・・・はい?」
一瞬自分の耳を疑った瞳子は、体ごと祐巳に向いて次の言葉を待った。
「やっぱり、ただ神様にお願いしたりするだけじゃなく、私も気合を入れてこの勝負を勝ち取らなきゃいけないと思うの」
「はぁー、まぁー確かにそれもそうですね・・・・」
「だから、ここは精神力を鍛えるために『滝にうたれる』なり『炭火の上を素足で渡る』なり『静かに座禅を組む』などしなきゃいけないと思ったの」
「・・・・え〜と」
仮にも、幼稚舎からリリアンにいる人の言葉とは思えない祐巳の言動に、瞳子が対応に困っている間にも、当の本人はドンドン行動が加速していった。
「あの〜お姉さま」
「そうだ!乃梨子ちゃんなら仏像見るために色々なお寺を回っているから、もしかしたらわかるかも」
「もしもーし。聞こえますかー!お姉さま!」
「今から急げば、まだ始業時間前に間に合うかも・・・・よし、善は急げだ!」
「ちょっと待ってくださいお姉さま!」
祐巳はそう言うと、物凄い勢いで部屋から出て行った。瞳子は直ぐにでも祐巳を止めに行きたかったが、部屋の戸締りに手間どったために、またも祐巳を止めることが出来なかった。
「昨日ほどの騒ぎにはならなかったけど、やっぱり祐巳様が教室に来ると教室中がパニックになるから、騒ぎを収めるのに大変だったよ。祐巳様も、いい加減に自分の影響力を自覚してほしいけどね」
「その件も併せて姉に代わって謝りますわ。乃梨子」
「それに私、仏像の事は詳しいけど修行の事はあまり知らないから、込みで思われるのも困るのよね」
その時の苦労を思い出して疲れた声で話をする乃梨子に、瞳子にしては珍しく素直に謝罪をしたのである。
「しかし、流石の祐巳さんも後が無くなってきたようね」
「まさに『なりふり構わず』って感じですね」
黄薔薇姉妹は、祐巳の大胆な行動を他人事の様に愉快に評価した。
「2人共、そんな風に祐巳さんの行動を評価するのは、あまり誉められる事ではないわ」
「志摩子さんの言う通りです。それより瞳子、何処を証拠に今回の原因が私たちだと言うの!」
瞳子の指摘に納得できない乃梨子は、その理由の説明を彼女に迫った。
「今回の勝負は、殆ど御二人の勝利で終わってますよね。しかもお姉さまの『ダウト』を志摩子様はかわしまくり、乃梨子はお姉さまに『ダウト』してばかりでしたわ」
「本来『ダウト』はそう言うルールでしょうが!それが、たまたま祐巳様に集中してしまっただけであって、瞳子の理由は言いがかりでしかないよ」
そりゃそうだ。と言う黄薔薇姉妹に構わず瞳子は話を進める。
「それだけではありません。去年、優お兄様から『ダウトの強い女性は嘘つきだから注意しろ』と言ってましたわ。」
「それが今回の事にどう関係があるのよ」
「何でも、去年の正月に祥子様の家で『ダウト』をした時、たまたま遊びに来ていた佐藤聖様に一回も勝てなかったらしく、とても悔しそうに話をしてましたわ」
「・・・・・」
だんだん乃梨子の顔が険しい表情になって行くが、それに気づかないで瞳子は話を進める。
「聖様は志摩子様のお姉さまでしたよね?だから・・・・」
「ちょっと待て瞳子!聖様はともかく、志摩子さんは嘘つきじゃないよ。それ以上言ったら全力で呪うよ!」
「いや、そんな事を言いたい訳でなくて、最後まで話を・・・・」
何を勘違いをしたのか突然怒り出す乃梨子に、当惑した瞳子は言葉を詰まらせた。
「乃梨子」
「あ、ゴメンね志摩子さん。けど、瞳子が志摩子さんの事を悪く言ったからつい・・・・。でも本気じゃ・・・・」
「わかっているわ乃梨子。私は大丈夫だから」
そう言って興奮気味の乃梨子を落ち着かせると、志摩子はニコリと笑って恐ろしい提案を乃梨子にした。
「家に檀家さんから預かった『首に○い糸が巻き付いた○○人形』と『○メッキでコーティング処理した特製○○釘』があるから、今度裏山で使いましょうね」
「・・・・え〜と、志摩子さん?」
「使いましょうね」
「・・・・はい」
どうやら2人とも今の話を勘違いして解釈してしまい、とても物騒な展開になった事を感じた瞳子は、涙ながらに釈明したお陰で何とか抹殺されずにすんだ様だ。
「とりあえず、瞳子の意見は置いて話を進めるけど、今日の一番の原因は絶対に瞳子だと思うよ」
乃梨子の指摘に、残りのメンバーは今日の出来事を思い出していた・・・・
木曜日の昼休み、薔薇の館の会議室・・・・
本日も昼休みに集まったメンバーは、昼食後にその日内に処理すべき雑務を行っていたが、その作業も大して時間も掛からず終了した。
「それじゃーまたトランプで、今日の放課後と明日の朝の当番を決めましょう!」
「今日はどうしますか?お姉さま」
「そうね、今回も時間もあるから何回か勝負が続けられそうだけど・・・・」
「はい!由乃様。私、『大富豪』を希望します!」
昨日と同様、ノリノリで話を進める黄薔薇姉妹に、乃梨子も負けじと積極的に意見した。
「じゃあ、乃梨子ちゃんの提案に反対の人・・・・はいないみたいだから、それで行きましょう。」
「それではカードを配りますね、お姉さま」
由乃が、全員に乃梨子の提案の賛否を確認するを見ていた菜々は、手馴れた手つきでカードを全員に配り始めた。
「昨日も乃梨子ちゃんから場所を聞き出せなかったけど、家でシャワーに当りながら瞑想してきたから、今日は絶対大丈夫だよ」
「・・・・今日こそ勝てそうな気がしますね。お姉さま」
昨日の敗戦から立ち直った紅薔薇姉妹は、今日も気合十分である。
「あら祐巳さん。今日は何時にも増して強気の発言ね」
「勝負は最後まで分かりませんよ、祐巳様」
既に臨戦態勢の黄薔薇姉妹からは、すかさず鋭い牽制が飛ぶ。
「ねえ志摩子さん、シャワーに当った位で修行の効果ってあったっけ?」
「いいえ、私は聞いたこと無いわね」
今日も、相変わらず落ち着いた様子の白薔薇姉妹である。
そして由乃は、全員準備が出来たのを確認すると開始の合図を宣言した。
「それでは、第四回 山百合会主催 リリアン初夏の陣を始めます!」
「「「「「おぉ〜!!」」」」」
本日も、全員のやる気に満ちた掛け声とともに戦いの火蓋が落とされた。
今回は、あまりに勝てない祐巳に考慮して皆で話し合った結果『祐巳さん個人限定の緊急特別ルール』略して『祐巳ルール』を設定する事にした。
(1)祐巳はどんなカードでもあがる事ができる。その他の人はジョーカー・2で最後にあがる事は不可。
(2)例え祐巳が貧民・大貧民になってもカードチェンジは免除。
(3)祐巳の手札が一番少なくなるように配る。
・・・・以上の3点を特別ルールとして設定した。
今回の祐巳は、新しく設定されたルールのお陰で負け続ける事は無くなったが、未だ平民以上の勝利が無かった。
そして最後の勝負の前の成績では、祐巳と由乃がビリ争いをしている。由乃は大富豪であがらないとビリ確定に対し、祐巳は大貧民にならければ逃げ切れるのである。
やがて最終戦に配られたカードを見て、初めて祐巳は自分の勝利を確信した。
「由乃さん、今回は私の勝ちだから覚悟してね」
「何を根拠にそう言うか知らないけど、売られたケンカは受けて立つわ。来なさい祐巳さん」
早くも勝利宣言をした祐巳に、由乃は武士のごとく立ち塞がった。
「みんなゴメンね。じゃあ『革命!!』」
祐巳はそう言うと、4枚のゾロ目のカードを場に出した。
「流石は祐巳様。これでこの勝負が面白くなりましたね。ちなみに私はパスです」
「奇跡ですわお姉さま!これでお姉さまの勝利は間違いないですわ」
「まさか、ここでカードが4枚揃うなんて・・・・今日こそ祐巳様の勝利かな?志摩子さん」
「まだわからないわね。由乃さんの様子を見るとまだ何かあるかも」
今日の勝負を通じて、始めて『革命』が出たことで、俄然盛り上がる周りのメンバーを尻目に、由乃は祐巳に静かに宣言した。
「祐巳さん敗れたり!『秘儀、革命返し!!』」
「マジ〜!!!!」
そう言って、由乃は同じように4枚のゾロ目のカードを、祐巳の出したカードの上にのせたのである。
結局、それが原因で祐巳は最後まで立ち直ることが出来ず、最終戦を『大貧民』であがることになり、またしても祐巳は罰当番をすることになった。
「・・・・それでは、第四回も祐巳さんに決定しました。今日の放課後と明日の朝の当番ヨロシクね。それじゃ行きましょうか、菜々」
「はい、お姉さま。それでは皆さんごきげんよう」
「えーと祐巳さん。たとえ皆が見放しても、いつの日か・・・・祐巳さんが勝利することを私は信じているわ」
「それじゃ瞳子、後はヨロシク。祐巳様ごきげんよう」
そう言うと、祐巳と瞳子を残して4人は部屋から出て行った。
「ねえ、瞳子」
「あの、お姉さま。今日は何処にも寄らず、何もせずに、ただ明日の勝負に勝つ事だけ考えて、真っ直ぐ帰宅なされた方が良いかと思いますわ」
「・・・・瞳子」
今までと変わって真剣な表情で話す瞳子に、祐巳は自然に瞳子に体ごと向けて話を聞いていた。
「今更ジタバタしても始まりません。ここは気持ちを落ち着かせて、静かに明日を迎えるべきかと私は思うんです」
「・・・・うん、そうだね。瞳子の言う通りに今日は大人しく家に帰る事にするね」
「そう言って頂くと、私も安心して帰ることが出来ますわ」
「ごめんね瞳子。何か色々と心配かけてたみたいで」
祐巳はそんな瞳子がいじらしくなったのか、突然ギュッと正面から抱きしめ「よしよし」といって背中に回した手で瞳子の背中を軽く叩いた。
「おおおおっお姉さま!突然何をするんですか!!」
「いや〜、何となくこうしたかったんだけど・・・・瞳子は迷惑かな?」
「・・・・いえ、迷惑・・・・じゃありま・・・・せん」
「そう。よかった」
顔中真っ赤にして祐巳に抗議の声をあげる瞳子であったが、祐巳の温もりから逃げる事が出来ず、暫くの間祐巳のされるがままになっていた。
「それじゃあ、教室に戻ろうか」
「はい、お姉さま」
午後の始業時間が迫っていたので、部屋の戸締りを確認した2人は、お互いさり気無く手を握ると、仲良く校舎に向かったのである。
「今日のどの辺が、私が原因だと言う証拠があると言うのですか?どう見ても、最後に止めを刺した由乃様が原因だと思いますわ」
「だって瞳子、今回の勝負は最後まで『大富豪』だったでしょう」
「それがどうしたって言うの!」
乃梨子の指摘に納得できない瞳子は、その理由の説明を彼女に迫った。
「皆が、祐巳様に気を使ってなるべく数字の低いカードを出しているのに、瞳子はそんな事は関係なく、カードをドンドン出してはさっさとあがっていたじゃない」
「それはしょうがない事ですわ。手持ちのカードは高い数字ばかりだし、そもそもルール上はカードを出さないとあがれないのですよ」
「それを祐巳様の隣で出すから問題になるのよ。だから、もう少し考えて出せって言ってるの」
「でも、勝負に手心を加えるのはお姉さまに失礼ですわ」
「あの〜結局のところ、祐巳様の敗因に、全員が直接なり間接的に日替わりで関っているって事じゃないですか?」
いつまでも続く出口の見えないいがみ合いに、菜々は冷静に簡潔にまとめた意見を述べた。
「確かに菜々の言う通りね。それに、祐巳さんの持つ勝負運の無さが加われば、まさに『鬼に金棒ね』」
「でも、このままじゃ明日も祐巳さんに勝利はないわ」
由乃も志摩子も、それだけは避けたいと思っているが、ここ一番の解決策がなかなか浮かんでこない。
「私思ったのですけど、明日は個人戦でなく薔薇別の2人組での勝負はどうでしょうか?」
「私もその意見に賛成です。2人なら、幾らかましな勝負が出来るでしょう。それに以前『2人ババ抜き』は負けたこと無いと言ってましたから、それで何とか行けると思いますわ」
「確かに、それなら祐巳さんの勝負運の無さもカバーできると思うわね」
「では、そう言うことにしますか?お姉さま」
「そうね。じゃあ明日は『薔薇別でのババ抜き勝負』ということで行こう」
今までいがみ合いをしてた乃梨子と瞳子からの提案に、残りの3人も、むしろその方法しかないだろうと、お互いの視線を見合って頷いた。
由乃は、みんなの同意を得たことを確認して、今回の会議を終了することにして、全員で部屋の後片付けを始めた。
「それにしても、こんな事が新聞部に知られたら、今頃大変な騒ぎになっていたかもね」
「これ位の事で新聞部は動きませんわ。それより、これが祥子様に知れたらと思うとゾッとしてしまいますわ」
「祥子様ってそんなに怖い方ですか?お姉さま」
「ええ、普段はそんなでもないけど、祐巳さんが絡むと大変な事になるだけは確かよ」
「とりあえず明日さえ乗り切れば大丈夫だと思うけど、一応新聞部の動向は注意しておきましょう」
志摩子の提案に、お互いに視線を交わし頷きあった中、ふと菜々は、ここに来る前にあった出来事を思い出した。
「あの、今の話に関係があるかどうか判らないですけど、今日の掃除が終わった後に、クラスメイトが話をしてたのを小耳に挟んだのですが・・・・」
急に神妙な表情で話をする菜々に、全員が緊張した表情で話の続きを待った。
「何、どう言う話なの」
「最近、昼休み中にリリアンの敷地内で、女性の絶叫と言うか叫び声みたいのが聞こえるって話だったようですけど・・・・これって祐巳様の事ですかね?」
突然浮上した菜々からの情報に、由乃達は軽いパニックに陥った。
「ちょっとそれって拙くない。明日の朝には真美さんが来るよきっと」
「落ち着いて由乃さん。まだそう決まった訳ではないわ」
「志摩子さんの言う通りです。今の話だけでは、まだ正確な場所も人物も特定もされていません」
「それに、今の時点では新聞部に目立った動きはありませんわ」
乃梨子や瞳子の言う通り、今の話だけでは自分達に疑惑の目が向くことは無いと思うが、用心するに越した事はないと思った由乃は皆に注意を喚起した。
「とにかく、明日はくれぐれも用心して行動すること。祐巳さんには、私から言っておくから」
「そうね、そうした方が良いかもしれないわね」
とにかく、明日を乗り切ればどうにでもなる。お互いその事を確認して、会議室を後にした。
その日の夜、福沢家の祐巳の自室・・・・
「おっかしいなぁー、確かこの辺にしまって置いたはずなんだけどな」
お風呂からあがった後に、祐巳は部屋のあちこちをひっくり返して目的の品を探していた。
やがて、戸棚の隅にしまってあったのを発見した祐巳は、中身を確認すると教科書と一緒にカバンに入れた。
そして、明日に備えて祐巳はベットに入って寝る事にした。
次回に続く・・・・
「あとがき」と言う「言い訳」です。
ちょっと長くなりましたが、お陰様で何とか<中篇>を書き終える事が出来ました。
この作品は、一応「祐巳メイン」として書いているつもりでしたが、今回は「祐巳を肴に他のメンバーが大活躍」してる風になった感じです。
とりあえず<後編>で何とか方向を修正して、綺麗に最後はまとめる事が出来たら良いなと思っています。
最後に、色々と突っ込み所が満載の作品ですが、初心者なので大目に見て頂けたら幸いです。
ではまた次回に・・・・
(コメント)
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