がちゃS・ぷち
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No.2652
作者:アリとキリギリスのキリギリス
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2008-06-13 22:58:37
萌えた:10
笑った:41
感動だ:10
『天才少女』
スーパー祐巳ちゃん 科学者編
【No:2646】→【No:2647】の続き
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
波乱の火曜日A
「祐巳さん。そろそろ終わりにしましょう」
同じ掃除グループのクラスメイトが、窓を閉めながら言った。
や、やっと終わった・・・
祐巳は長くて濃かった一日の終わりを噛締めた。
そしていそいそと帰り支度をしようとした時、ふと思った。
この時間、バスは混む。このまま帰ったらまた・・・襲われる!
ということで、少し残ることにした。
「掃除日誌をまだ書き終えていないから、皆さんお先にいらして」
祐巳は有無を言わさず、クラスメイトを帰した。
一人になりたいのだ。
ずっと追い掛け回されていたのだ。そう思っても仕方がないはずだ。
祐巳の掃除の担当場所は音楽室。
必然的に立派なグランドピアノが目に入った。
「ピアノ・・・か。弾いてみようかな」
何とはなしに呟くと、祐巳はピアノに手をかけた。
祐巳の奏でる音楽は実に素晴らしかった。祐巳の才能は、科学の分野だけではないのだ。
ちなみに曲は、グノーのアヴェ・マリア。特に意味はなかった。
曲が終盤に差し掛かった時。
まるで祐巳の手に重ねるかのように、背後から別の手が出てきた。
「☆×■◎△――――!?」
「何て声だしているの」
「さ、祥子さま?!!
音もなく背後から現れないでください!そ、それに手!一体、何なんですか?!」
「まぁ!ピアノ演奏の邪魔をしたらいけない、という配慮からよ。別に、襲おうだなんて思ってないわよ」
「・・・・・・」
言ってる意味がよくわからない。
祐巳はじと目で祥子を見た。
そして思った。祥子さまもおかしい人・・・?
「とても素晴らしい演奏だったわ。ピアノ、習っているのね」
訝しがる祐巳などお構いなしに、祥子は話を続けた。
祥子は上級生だ。さすがに祐巳も無視はできない。
仕方がないので話をあわせた。
「いいえ。
最も、昔テレビで見た姿に憧れて一度弾いたことはありますけど」
「一度?!・・・凄いのね」
祥子は唖然とした顔で祐巳を見つめた。
あれ?何か変なこと言ったかなぁ?
祐巳はキョトンとした顔で祥子を見つめた。
まぁ、確かにね。祥子が驚くのも無理はない。
何せ祥子は、いや学校の人たちは、祐巳は平均的な普通の少女だと思っているのだから。
そんな祐巳がプロ顔負けの演奏をしていたのだ。それも、過去に一回しか弾いたことはないなどという。驚いて当然である。
実際YU-MIxx2TYPEには平均的な能力をインプットさせているのだから、祐巳を平均的な少女だと思うのも仕方がない。
どうも祐巳は自分の能力を過小評価しがちである。というか、自分は平均的だと思っている。
そのせいで祐巳とYU-MIxx2TYPEの能力面は違っていた。
ちなみに、性格は祐巳そのものである。
しばらく唖然としていた祥子だったが、気を取り直したかのように「行きましょうか」と声をかけた。
「は!?」
「は、じゃないわよ。私が何をしにここまできたと思っているの?」
はて。何しにきたのやら。
祐巳にはわからなかった。
「あなたを迎えにきたのよ」
祥子は、当然でしょう、というように片眉を上げて斜に構えた。
「これから学園祭までずっと、放課後は私たちの芝居の稽古に付き合ってもらうわ」
「へ?どうしてっ?!」
「あなたはシンデレラの代役なのよ?
練習に出ないなんてこと、もちろん許されるわけないでしょ」
代役って・・・あぁ、賭けのことか。
「でもそれは、私がロザリオを受け取った時の話ですよね?」
「そうよ。それは絶対のことなんだから、練習に行くのは当然でしょう?」
そう言うと、祥子は信じられないほどの力で祐巳を引っ張った。
「そんな無茶苦茶な・・・」
祥子の力に抗えなかった祐巳は、一人呟いていた。
連れてこられたのは第二体育館だった。
「あ、祥子がきた」
「遅いよ」
薔薇さまたちの声が体育館に響き渡る中、祐巳はふらふらと祥子の後を追って体育館の中へと入った。
そんな祐巳を興味津々の目が追っていたけれど、祐巳は気付かなかった。
精神的に疲れていて余裕がなくなっていたのだ。周りが見えなくなっていた。
祥子は祐巳に、とりあえず端で見学しているように、と告げた。
祐巳はその言葉に従い、げっそりとした面持ちのまま壁際へと移動した。
「いらっしゃい。福沢祐巳ちゃん」
呼ばれて振り向くと、蓉子が手招きをしていた。
「こっちの方が、よく見えるわよ」
そう言われて、祐巳は初めて体育館の中を見渡した。
ダンスの練習・・・?
「まあまあの出来でしょう?」
祥子と令がペアになって踊っている姿を指差しながら、蓉子は言った。
すごい。
祐巳は素直に感動した。
祥子が踊る姿に目をとられていた。
「祥子はね。正真正銘のお嬢さまだから、社交ダンスぐらい踊れて当たり前なのよ」
祥子の姿に釘付けになった祐巳に、少し自慢げに蓉子は語った。
祥子の習い事はすごかった。
五歳の時からバレエを。中一から三年間は社交ダンスの個人レッスン。
その他にも、英会話やピアノ、茶道、華道など、中学までは何かしらの家庭教師が毎日来ていたらしい。
「うわぁ」
思わず声を漏らしていた。
祐巳はめんどくさがりなのだ。お稽古事を毎日やるなんて、考えられないことだ。
「あ、でもそれなら大丈夫なんじゃないですか?」
祐巳はふと思い、蓉子に言った。
「何が?」
「ダンスです。今更どうこう言うこともないんじゃないですか?」
「そうなの。実は、私たちもそれが疑問だったの。
あまりに嫌がるから、私たちも理由を知りたくて、すぐには降板を許さなかったの」
う〜ん。一体何が嫌なんだろう?
祐巳が頭をかしげながら考えていると、聖が近づいてきて徐に祐巳の髪をいじりだした。
な、何なの?!髪!何で触るの?!もしかして、白薔薇さまもおかしい人?!
戸惑う祐巳を余所に、聖はにこやかに尋ねた。
「祐巳ちゃんダンスは?」
「い、いいえ。全然」
「あれー?ねえ、ダンスって二年生になってからだっけ?」
「そうだった、と思うけど」
カセットテープを巻き戻しながら、江利子が興味なさげに答えた。
「じゃ、教えてあげよう。ワルツだから三拍子ね」
一、二、三、一、二、三・・・と、聖がリズムを刻む。
祐巳もそれに合わせて踊る。
「ゆ、祐巳ちゃん?ほんとにやったことないの?」
「はい。あ、何かおかしいところでもありましたか?
祥子さまたちが踊る姿を見てたから、大体の感じは掴めたと思ったんですけど・・・」
「いや、むしろ完璧だよ。
何だかイメージと違うなぁ。平凡な普通の子だと思ったんだけど・・・」
落ち込む祐巳に、唖然とした顔で聖が言った。
無理もない。
祐巳は優雅に躍って見せたのだ。
聖だけでなく、この場にいる全員が驚いていた。
「ねえ、祐巳ちゃん。祥子と踊ってみたらどうかしら?」
「それいいね。祥子、祐巳ちゃんと踊ってみなよ」
江利子の提案に、聖が乗った。
「わかりました。祐巳、こっちにいらっしゃい」
祥子が祐巳を手招きする。
祐巳が祥子の傍まで行くと、江利子が曲を流し始めた。
「・・・凄いわね」
「ほんと。まさかこれほどまでとは・・・」
「祐巳ちゃんって、一体何者なのかしら」
祐巳と祥子が踊る姿を見ながら、蓉子、聖、江利子は呟いていた。
「祥子さま。ダンスって楽しいですね」
「本当ね。私も知らなかったわ」
微笑み合って踊る二人は、まるで一枚の絵のようだった。
おまけ。
はぁはぁはぁ。
祐巳は走っていた。一刻も早く家に帰るために。
ようやく下駄箱まで辿り着くと、そこには一人の少女が。
「祐巳さん」
その少女は祐巳の名を呼んだ。
祐巳は頭をフル回転させて、少女の名前を思い出そうとする。
「(えーっと、見たことはあるんだけど・・・んー誰だっけ?
あ、そういえば同じクラスだったような・・・えーっと、確か・・・・・・・・・)桂さん!」
「・・・祐巳さん。その間は何かしら?」
「あ、えっと・・・何でもない!何でもない、よ?」
「・・・まぁ、いいわ」
ところで祐巳さん。と、桂は仕切り直すように言った。
「ど、どうしたの?桂さん」
「平凡の代表格であるあなたが、どうして祥子さまの妹に・・・!
一体、何したの?どうやったの?何を使ったの?!教えてっ!!」
桂は必死に祐巳に縋りついた。
(コメント)
アリとキリギリスのキリギリス >もう少しだけ続けますね(No.16582 2008-06-13 23:34:55)
SAM >「桂さん!」の一言を捻出するための余計な心理描写に噴きました(笑)(No.16584 2008-06-14 01:17:07)
通りすがりS >何気に桂さんの言動が酷いww(No.16585 2008-06-14 02:14:12)
非魔人 >もう一本の作品と平行して、っつーことでw(No.16586 2008-06-14 03:39:43)
ケテル >今回の祐巳の天才的ステップと、YU-MIxx2TYPEのおそらく平凡なたどたどしいステップ・・・・・・、さぁ、どういう整合性を持たせるか、楽しみ^^(No.16589 2008-06-14 23:07:38)
アリとキリギリスのキリギリス >コメントありがとうございます!整合性・・・か、考えてなかった。。で、でも何とかなる予定です。はい。もう一個の方も考えてはいるんです。考えては・・・ね(焦(No.16592 2008-06-15 23:06:22)
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