がちゃS・ぷち

[1]前  [2]
[3]最新リスト
[4]入口へ戻る
ページ下部へ

No.3774
作者:琴吹 邑
[MAIL][HOME]
2013-09-28 02:52:58
萌えた:6
笑った:1
感動だ:6

『最大限に言葉を選んで甘い時間』

【短編祭り参加作品】

「志摩子、今日は中秋の名月だから一緒にお月見しない? あと、夜遅くなるから志摩子の家に泊めて欲しいのだけど問題ない?」

 そんなお姉さまの誘いがあって、私は今、お姉さまと一緒にお月見をしている。
 九月の半ばが過ぎ、夜はもうめっきり涼しくなった。
 少し肌寒いと思いながら、私たちは縁側で、ただぼんやりと月を眺めていた。

「そうだ。月見団子を用意したんだっけ。せっかくだから食べようよ」
 そう言ってお姉さまは、カバンからコンビニで買ったみたらし団子取り出した。
「では。せっかくなので、いただきます」
 私は三本のうちの一本を手に取り、口に運ぶ。
 甘いたれの味と白玉のもちもちした食感が口の中に溢れる。

 しばらくの間、私とお姉さまは月を見ながら、みたらし団子食べていた。

「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」

 そう言い合い、お互いにくすりと笑う。
 鈴虫の声を聞きながら、ただただぼんやりとお姉さまと月を眺める。
 そんな静かで穏やかな時間が過ぎていった。



「志摩子と一緒にいると、月が綺麗だね」
 どのくらいの時間が過ぎたのだろうか。穏やかな沈黙を破ったのはお姉さまのそんな言葉だった。
 その言葉に、私ははっとして、お姉さまを見る。
 お姉さまは、今言ったことに気づいているのかいないのか、今までと同じように、ただ、ぼんやりと月を眺めていた。
 お姉さまが、その言葉をどのような意図で言ったかわからない。
 これが祥子さまや蓉子さまだったら、そんな意図で言ったと確信できるし、祐巳さんや由乃さんなら、そんな意図で言っていないと確信できる。

 私は少し考えて、すぐに考えるのを放棄した。

 月が綺麗なのは、確かなことだったから。

 だから、私はこう言ったのだ。

「そうですね。私、お姉さまと一緒にこんな綺麗な月が見られるなら、死んでも良いです」
 私のその言葉に、お姉さまはちょっとびっくりして、私の顔をのぞき込んだ。
「なんですか?」
 そういう私の顔は少し赤くなっていたに違いない。
 お姉さまは私の表情を見て、合点がいったのか、何も言わず、ただ首を横に振った。
「ねえ、志摩子、こっちにおいで」
「なんですか?」
「えい!」
 私がお姉さまに近づくと、お姉さまは、背中から私を抱きしめた。
「お姉さまは甘えん坊ですね」
「そうだね」

 それからまた会話はとぎれ、私たちはその体勢のまま月を眺めた。

 鈴虫の声を聞きながら、お姉さまの体温を感じながらの会話が全くない、静かなお月見。
 そのお月見はお姉さまが船をこぎだすまで、続いたのだった。



紅薔薇コース NG サブタイトル無し
白薔薇コース クリア 登場人物3名以下
黄薔薇コース クリア 2000字以下


(コメント)
琴吹 邑 >お久しぶりです。企画参加させてもらいますね。タイトルを、月見団子を食べながらにしようとずっとおもっていて、掲示板に書き始めるときに、タイトルをランダムにしなければ行けないことを思い出しました。(No.20949 2013-09-28 02:55:01)
bqex >お祭り参加感謝です。綺麗な聖志摩をありがとうございました。(No.20952 2013-09-29 22:52:56)
くま一号 >綺麗〜。最近、某百合ゲーがらみの翻訳をやるので、漱石の逸話のことはよく考えます(No.20972 2013-10-11 10:59:23)
琴吹 邑 >コメントありがとうございます。無事企画参加できてよかったです。ついったーとかで話題になっていたのでちょっときになってて、書いてみました(No.20982 2013-10-13 23:13:18)
琴吹 邑 >蓉×祥、聖×栞、志×乃とさまよって、聖×志になった経緯があります。(No.20983 2013-10-13 23:16:25)
やなる哲 >癒されますねぇ 聖志摩は何だか久々に摂取した気がするので新鮮でした(No.21025 2013-10-20 11:58:01)

[5]コメント投稿
名前
本文
パス
文字色

簡易投票
   


記事編集
キー

コメント削除
No.
キー


[6]前  [7]
[8]最新リスト
[0]入口へ戻る
ページ上部へ