がちゃS・ぷち

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No.3853
作者:奏葵
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2016-06-12 22:14:26
萌えた:6
笑った:0
感動だ:8

『マリアの言うとおり』

               マリア様がみてるif
                 太陽と聖女

「ごきげんよう」

「ごきげんよう」

さわやかな朝の挨拶が、澄みきった青空にこだまする。
マリア様のお庭に集う乙女達が、今日も天使のような無垢な笑顔で、
背の高い門をくぐり抜けていく。
汚れを知らない心身を包むのは、深い色の制服。
スカートのプリーツは乱さないように、白いセーラーカラーは翻らせないように、ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。
もちろん、遅刻ギリギリで走り去るなどといった、はしたない生徒など存在していようはずもない。
私立リリアン女学園


「以上でHRを終わります。気をつけて帰ってください。ごきげんよう」

高等部入学式の後のHRが終わり皆帰宅の途に就く。

そんな中、一人の少女は違う方向へと足を向けていた。

黒髪ロングヘアの美少女。女性から羨望されるほどの美しさと敬虔なクリスチャンであることから本人の知らないところで聖女さまとさえ呼ばれていた。
彼女が向かう先はお御堂。

リリアンに入学してからの習慣づいた行為。
お祈りをするためだ。

「あ・・・。桜」

ふと目をやると1本だけある桜の木が満開になっていた。
お祈りの後に迎えに来るであろうあの娘と少しだけお花見をしようかな、などと考えつつお御堂のマリア像の前に足を進めた。
(恵みあふれる聖マリア主はあなたとともにおられます。
主はあなたを選び、祝福し、あなたの子イエスも祝福されました。
神の母聖マリア、罪深いわたしたちのために、今も、死を迎える時も祈ってください。)



いつものお祈りを終え満開の桜へと足を向ける。

「綺麗・・・。」

桜に見惚れていると後ろから軽快な足音が聞こえてきた。
どうやら中等部も終わったらしい。

「栞ちゃん!!お待たせ!」

栞が振り返るとそこにはツインテールの髪型で今見ている桜ではなく満開のヒマワリのような笑顔と人を暖かくつつみこむような雰囲気を持った清らな少女が向かってきていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


今日は高等部同様に中等部も入学式だ。
その為2・3年生は授業はなく半日で放課となる。
HRも終わり部活のない学生は帰宅の途に就いていた。

「今日もお御堂に行くの?」

「うん。栞ちゃんが高等部も今日は半日って言ってたから。桂さんは?」

「私はテニス部にちょっと顔出しが」

「そっか。部活紹介の練習だっけ?」

「ええ。3年の初仕事だから。はぁ〜、緊張するな〜」

げっそりとした顔でぼやく桂。

「あはは。頑張ってね」

「まったく他人事だから気楽に言ってくれて。じゃあ行ってくるね。ごきげんよう。」

「ごきげんよう」

友人である桂と別れ、鼻歌交じりにお御堂へと向かう。

「ふふふ〜ん・・・。と、栞ちゃんはどこかな〜」

お御堂に着くなり目的の人を探し出すが見当たらない。
顔なじみのシスターに聞くと裏の桜の木を見に行ってるとのこと。

「そういえばあの桜満開になる時期だっけ」

シスターにお礼を言いお御堂裏に向かうと、そこには満開の桜とそれを見上げている栞を見つけた。


「栞ちゃん!!お待たせ!」

「ふふ、祐巳はいつも元気いっぱいね」

「あはは、それが取り柄だからね〜。桜見てたの?」

「ええ、この桜今年も満開に咲いたわ。今が一番の見ごろ。だから祐巳とお花見しようと思ってここで待ってたの。」

「今年も綺麗に咲いたね。これでお団子もあったらなおいいけど」

花より団子の祐巳であった。

「もう祐巳ったら相変わらずなんだから」

「あはは」

「ふふふ」

(祐巳の笑顔は見ている人を元気にしてくれる。それに人柄というのかしら、接した人を変える力をもっている。今私が心の底から笑っていられるのこの子のおかげね。)

小学生の時に両親を事故で亡くした栞を引き取ったのは叔父にあたる福沢家だった。 福沢家に来た当初は悲しみに暮れ、塞ぎ込んでいた。そんな栞を変えるきっかけが祐巳の笑顔である。

満開の桜の下で微笑みあい話に興じる2人。それは一枚の祝福された絵画の様である。

その2人の様子に見惚れ無意識のうちにこちらに向かってくる1人の少女。
色素の薄いロングヘアに日本人離れした容姿。
いつもは近寄り難い雰囲気を醸し出しているのだが、今の彼女からはそういった感じは見受けられずむしろなにかの熱に浮かされた雰囲気を感じる。
一歩また一歩と2人に近づく。
あと数メートルといったところで栞が近づいている存在に気づき挨拶をする。

「ごきげんよう」

それにつられ祐巳も笑顔のまま挨拶をした。

「ごきげんよう」

初めて自分が彼女たちに近づいたことに気づき慌てて返事を返した。

「えっ?あ、ああ、ごきげんよう」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


今日は高等部の入学式であり半日だ。
HRが終わり白薔薇の蕾になった今、本当は薔薇の館に顔を出さないといけないのだが正直気分が乗らない。

(さぼるか。お姉さまと蓉子あたりには小言を言われるだろうけど)

しかし家に帰ってもすることもないので校内をぶらつくことにした。

(うん?なんだか視線を感じる・・・)

校内を回っていると残ってる生徒が意外に多いことに気づいた。
新入生がグループになって校内探索をしていたのだ。
その新入生たちがこちらを遠巻きにしていた。

「白薔薇の蕾よ・・・。すごく綺麗な方・・・」

「ええ。お近づきになれないかしら・・・?」
こちらにも聞こえる程度の話声で羨望の視線を送ってくる。

(やめてくれ。そんな目で見るのは)

視線に耐え切れず早足に外へ出て1人になれる場所を探す。
無心で歩き続けお御堂の近くまで来たときには周りに新入生の姿はなかった。
近くにあったベンチに腰を下ろすがそうするとまたいつもの考えが頭をよぎる。

(結局誰も私のことを分かってくれない)

こうやっていつも自分の殻に閉じこもってしまう、お姉さまから指摘され悪い癖だとわかっていても殻の破り方がわからず結局何も変わらない。卑屈の渦に溺れ呑みこまれる。自分が何を求めているのかすら分からなくなっている。
ベンチに座り卑屈になった思考でぼんやりしているとお御堂からシスターたちが出て行っているのが見えた。

普段なら用事がなければ絶対に入らないお御堂だが本当に単なる気まぐれから中へと足を踏み入れた。
人がおらず閑散とした雰囲気のお御堂は一種の異様さを持っていた。
そんな中ぼんやりと進んできて祈るわけでもなくマリア様の前まで来て何をするかと思えば。
心の中でピストルを抜き、

(バン!!)

と、引き金を引いた。

(はは・・・、信仰心の欠片もないな。・・・帰るか)

自虐しつつも少しだけ気分を良くし帰路に就こうとお御堂を出たところで鞄がまだ教室にあることを気づき面倒だなと思いつつも一旦戻ることにした。

(そういえばお御堂裏から校舎に行けたっけ・・・。)

お御堂の裏手から校舎への近道があるのを思い出しそちらに向かって歩き出した。

(桜か・・・)

1本だけある桜が満開になっているのに気づきそちらに目をやる。
するとそこには2人の少女が居ることに気づく。
普段であれば人がいれば近づかずやりすごすのだが今回は違った。
一瞬で目を奪われたのだ。一目惚れと言ってもいい。
共に美少女ではある、だが惹かれたのはそんなことではなく雰囲気や笑顔だった。ただ直感したのはここに私が求めているものがここにはある"ということだろうか。
やがて覚束無い足取りで2人に近づく。
あと数メートルといったところで髪の長い娘が彼女の接近に気づいた。

「ごきげんよう」

するともう1人の子もそれにつられ笑顔のままあいさつをしてきた。

「ごきげんよう」

初めて自分が彼女たちに近づいていたことに気づき慌ててあいさつを返す。

「えっ?あ、ああ、ごきげんよう」

「何か御用でしょうか?」

「いや、桜が咲いてたからね、少し見ようと思って」

適当に言葉を濁し、もう1人のツインテールに少女に目を向けると中等部の制服を着ていることに気づく。

「君、中等部?」

「あ、はい!中等部3年の福沢祐巳と言います!」

(笑顔もいいけど、元気もいいな)

「私は高等部2年の佐藤聖。よろしく。君は?」

「私は高等部1年の久保栞と申します」

「祐巳ちゃんに栞ちゃん・・・、いや栞でいいかな?」

「お好きなほうで結構ですよ」

「うん、じゃあ栞で」

簡単に自己紹介を済ませたが聖自身は驚いていた。ある意味人見知りをする性格であることは自分が一番分かっている。蓉子の時でさえ時間を要したというのに。

「2人はよく一緒にいるの?」

「そうですね、一緒に帰っているので放課後はお御堂にいます」

「お御堂に?」
「はい。習慣なんですお祈りが」

「へ〜敬虔なんだね、祐巳ちゃんも?」

「へ?私は・・・あはは・・・」

どうやら栞とは違うらしい。

「ふ〜ん、じゃあ私も時間ある時は来ようかなお御堂」
「お祈りにですか?」

「あはは。まさか。2人と駄弁りに」

仲間が増えず少し残念そうな栞と仲間が増え嬉しそうな祐巳。

「栞ちゃんがお祈りしてる間実は暇だったんですよ。えへへ。」

「ということでよろしくね」

「はい!」

「よろしくお願いします」

マリア様の庭で偶然がなした出会い。3人にこの先どういった未来が待ち受けているかはまだ誰も知らない。


===================================
[あとがき]
はじめまして。初投稿の奏葵(そうき)と言います。
初作品でもあるため駄文ですが投稿させていただきました。
作品のコンセプトはもし聖と栞そして祐巳が同時に出会っていたらといったところです。
栞の性格はほぼオリジナル化されています要注意!!
続き書くのかな・・・?


(コメント)
通り過がり >マリみてss少なくってるので、続き待ってます!(No.77009 2016-06-12 23:54:38)
マリみて好き >新しい投稿があると嬉しいですね♬(No.77010 2016-06-14 08:14:57)
千早 >面白かったです、私続きが気になります(No.77011 2016-06-14 17:45:52)
奏葵 >皆様、ありがとうございます。鋭意がんばりますのでよろしくお願いします。(No.77012 2016-06-14 22:26:07)

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