がちゃS・ぷち
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No.648
作者:くま一号
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2005-09-27 08:04:42
萌えた:3
笑った:2
感動だ:31
『面接試験の真相は直球勝負』
高等部からの外部入試の面接。
二条乃梨子の面接が進んでいた。
「じゃあ、第二問。化学記号の……」
するどいツッコミにたじたじとなった四谷先生が、必死で立て直しを図っているのだが、もう勝敗は決している。
一次試験で、最難関の受験校でも突破できる成績で首席のこの子に、そういう質問をこれ以上しなくてもいいだろう。
さっきのツッコミで詰め込み勉強だけじゃなく機転が利くのはよくわかった。
「四谷先生、もう結構です。」
この子、欲しいわ。
リリアンには、よくしつけられたお嬢様は多いのだけれど、こういう健全な外の常識を持った生徒が少ない。そう、たとえばもし、あのとき聖と栞のそばにこの子がいたらどうなっただろう。ふっと、今年送り出す紅薔薇水野蓉子の顔が浮かぶ。あの子は生真面目すぎた。
それなら、この子は。ふと、いたずら心がわいた。
「二条さん、我がリリアン女学園はカトリックの学校です。あなたはキリスト教のお祈りを唱えることができますか。」
「アーメン」
うわ。ふふふ、ここの面接に来る子は主の祈りくらいは覚えてくるものだけれどね。いいわこの子。
「キリスト教について、あなたの知っていることを教えてください。」
「はい、1549年フランシスコ・ザビエルによって…
くくく。ほんとに教義もなにもしらべてこなかったのね。
「化学だけでなく日本史も得意なようですね。」笑いを押し殺してつぶやく。
「その他にはもうないですか?」鹿取先生。やはり笑いを押し殺しながら。
「えっと。−−−キリストの母親はマリア。」
「正解です。」あなたも気に入ったみたいね、鹿取先生。
「では、この学校を志望した理由を。」
「この学校出身の大叔母の希望です。」
「ほう。」
え・・・・。
二条という姓は多くない。四谷先生が身上書類をめくっている。この子の大叔母となれば私と同じ年代になるはずね。
両親は公務員と教師。通学できる距離ではないので大叔母の家に下宿すると、ああ、やっぱりそうだ。
二条菫子。せい子との深すぎる交際を最後まで心配してくれたあの人と、こんなところで。
ずっと、連絡も取ることはできなかった。せい子を喪った私には。
でも、奇跡がせい子に会わせてくれたのだから、もう菫子に会うことだってできるはず。
そう、菫子がこの子をここへ来させたのね。
あらためて見れば、菫子に似ているわ。この子。
「では、あなたの希望は別の所にあるのかしら。」
「はい。」
二条乃梨子は、間髪を入れずはっきり答えた。
黒い瞳がまっすぐこちらを射る。
しかし、この子との縁はこれだけでは切れないだろう。
そう、この子には白薔薇の香りがするのだ。
「そうですか、第一志望校に合格するといいですね。」
そう私はエールを送った。たとえリリアンに入らなくても、この子は私の運命に関わってくる、そんな気がする。出会い、というのはそういうものだ。
「おそれいります。」
「はい、いいですよ。ご苦労様」
「ありがとうございました。」
一礼して部屋を出る二条乃梨子。
「はっきり、いいますね。」四谷先生。
「まあ、すべり止めでしょうから。」鹿取先生。
「いいえ、みていてごらんなさい。あの子はここへ来るわ。」
「また学園長の予言ですか?」
「そう。あの子にはなにか惹かれるのよ。同じ匂いがする、と言ったらいいのかしら。」
「まあ、とにかく合格ですね。来てくれるかどうかは別として。」
「そうしましょう。」
(コメント)
くま一号 >加筆修正 9:55(No.2648 2005-09-27 09:54:38)
みゆき >あー、先に四谷先生使われてしまった…。(No.2656 2005-09-27 12:23:15)
くま一号 >あ、いや、ここは原作で四谷先生出てきますので。使ったというわけではなく(w(No.2659 2005-09-27 12:35:07)
くま一号 >それよりもマイナーキャラ「学園長視点」ですので(No.2661 2005-09-27 16:05:13)
春霞 >園長先生かっこ良い! しかし、この男前な乃梨子は後に、リリアンに染まりきり (No.2673 2005-09-27 19:45:42)
春霞 >それにしても、くま一号さんったらすごい時間に投稿されてらっしゃる。 早起きさん? (No.2674 2005-09-27 19:47:01)
くま一号 >出社時間の遅い番の日にキーワードを見てしまったが最後(No.2678 2005-09-27 21:15:05)
くま一号 >「読者はありがたいものですわね、祐巳さま。」 「そうね、瞳子ちゃん。二条という姓は実はかなり珍しい姓だということをメールでご指摘いただいたのよ。ある資料では日本に41世帯しかないんですって。」 「一条、九条みたいな藤原系のよくある名字だと思ってあっさりスルーしていたのね。そしたら九条も意外に少ないの。」 「梨々さんの六条は多いのですわ。」 「瞳子ちゃん、六条梨々ってだれよ。」 「そ、それは秘密なのですわ。」 「四谷先生が乃梨子の身上書類をめくっているシーンが原作にはあるのだけど、菫子さんのところにころがりこむのは受験の時にはまだ決まっていなかっただろうと思ってこれもスルーしてしまったのよ。」 「修正した方がもっと運命的ですわね。」 「修正しましょう。」(No.2707 2005-09-28 12:23:27)
くま一号 >「それにしても瞳子ちゃん。なぜ二条って名字が少ないのかしら。」 「二条大路といえば内裏つまり皇居の朱雀門に面した大通りですわ。藤原道長の屋敷などもあったはずなのですけれど。」 「九条はなぜ少ないの?」 「こちらはたぶん……九条さんを名乗る方には申し訳ないですけれど、平安京の九条となると場末ですわね。」 「あん?」 「今のJRが八条でしょう? あの辺から南ともなればもう荒れたところ。羅城門があるのが九条ですもの。九条を名乗る家は後代になってからなのではないでしょうか。」 「うーん、いいかげんな推測。」(No.2708 2005-09-28 12:36:03)
くま一号 >「大嘘でしたね。」 「まるっきり大嘘だったわね。平安時代には詳しくないのよ。」 「九条家も道長の家系、つまり藤原本流。二条家は九条家から分かれているのね。両方とも摂関家と言われる摂政関白を出す五家のうちに入っているのよ。」 「それがなぜ、こんなに名乗る人が少ないのでしょう。」 「不思議ですわねえ。」(No.2711 2005-09-28 13:07:31)
くま一号 >「そうなるともっと面倒な話があるわよ。」 「そうですわ。二条家は明治維新まで摂政関白を務めているのだから、41世帯ってほとんど本当の貴族、つまり乃梨子ちゃんって。」 「小笠原家どころじゃない、貴族の出?」(No.2712 2005-09-28 13:14:06)
もりしゃん >し、しまった。くま一号さんのコメントに思わず「笑った」を押してしまった。(No.2739 2005-09-28 22:49:35)
くま一号 >こんな風に修正してみました。菫子さんの設定にかなり思いこみがはいってますけど。(No.2895 2005-09-30 10:11:52)
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