【No:1074】
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【No:1081】
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〆―――――――――――――――――――
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|☆さてどうする?
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┣ 『気づいた時には 【No:1074】』
┣ 『負けじ魂増殖 【No:1081】』 (めにゅう)
┣ 『ためらわない君の首筋に【No:1091】』
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|>抜刀する
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☆〔抜刀する〕
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「分かったわ」
菜々の、止めと言える台詞を聞いあ後、由乃はそう呟いた。
その表情には、さっきまでの戸惑いはない。そして、何らかの決意を秘めた表情で、こう続けた。
「それにしても、貴方も大した事ない人だったのね。」
「は?」
明らかに攻撃的な言葉に、菜々は眉をひそめて、少し睨みつけるように由乃を見る。だが由乃はその視線を無視して、続ける。
「大した事ない、って言ったのよ。たかがスール程度の環境に置かれたぐらいで、自分の世界が狭くなるなんて、底が知れてるわね。」
「……………」
「私も見誤ったわ。アドベンチャー好きって言うだけで、貴方を過大評価していたみたい。ごめんなさいね。貴方、案外普通の人だったのね。」
強い口調で続ける由乃に、菜々は由乃を本格的に睨みつける。
「ええ、私は案外普通の人なんです。だから、普通じゃ無い事にこだわるんです。それが何か?」
「別に。ただ、私は貴方にだけは文句を言われたくないと思っただけよ。」
「……どういう意味ですか?」
由乃の言葉に、菜々は怪訝な顔をして問掛ける。
「私だって、自分の事ぐらい薄々感じてはいたわよ。 だから、変わろうとしているのよ。親友を支えて、親友に支えられて、もっと強くなる為に、令ちゃんが居なくてもいいように。 たとえ今は、私のそんな様子が虚構であったとしても、私はいつか必ず、実軸にしてみせるわ。 だけど、貴方は、自分が普通である事を認めて、それ以上成長をしようとしていないじゃない。 普通でない事を周りばかりに求めて、普通でない周りに身を置く事で自分を安定させている貴方に、とやかくは言われたくないわ。」
そう言って、由乃は静かに竹刀を取り出す。
「私は変わるわ。貴方を妹にして。」
そう言って、水平に竹刀を構える。
「力ずく、でもですか。ですが、貴方程度の腕で私を倒せると思っているんですか?」
由乃に問掛けながら、菜々も竹刀を取り出す。
「倒してみせる。そして、菜々を、妹にする。」
由乃の言葉を火蓋に、菜々が疾走する。一瞬で由乃の前まで間を詰めて、由乃の突き出されたままの竹刀を掻い潜ろうとした、その瞬間
「……bayonet」
由乃がそう呟くと同時に、由乃の竹刀の剣先が光り、そして、菜々の意識は薄れていった。
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「……ここは?」
菜々が目を覚ますと、そこは見慣れない真っ白な部屋だった。
「やっと目を覚ましたわね。」
不意に声がして、ドアの方に顔を向けると、そこには由乃が林檎と果物ナイフと皿を持って入ってきた。
「あの、ここは何処ですか?」
「ここは高等部の保険室よ。まったく、貴方を運ぶのに苦労したわ。」
そう言って近くにあった椅子を、菜々のいるベッドの方に引き寄せて、腰をかける。
そして、皿を机に置いて、林檎をたどたどしく剥きはじめる。
しばらく、林檎の皮を剥く音がだけが聞こえた後、菜々が言葉をきりだす。
「私、負けたんですね。」
「そうよ。勝者は私。負けたのは菜々。」
ちっとも気を使わずに言う由乃に、菜々は少しだけ苦笑する。
「ところで、私は一体どうやってま―――」
「それにしても、これは黄薔薇の運命かしらね?」
菜々の言葉を遮って、由乃が菜々に問掛けるように言う。菜々は何の事だか分からず、きょとんとして由乃を見つ続けていると、由乃が少し顔を赤くして、菜々の胸元を指差す。
「ベッドで寝込んでいる相手にロザリオ享受だなんて、変な伝統が出来ちゃったわね。」
「あっ…」
由乃の言葉に、慌てて胸元を見ると、そこには綺麗なロザリオが首にかかっている。
「いい、菜々。貴方がなんと言おうと、今から貴方は私の妹よ!分かったわね!?」
「……はい。」
顔を真っ赤にして、目を反らして言う由乃に、菜々は小さく微笑んで、応えた。
私はこの人となら変われるかもしれない。と菜々は、林檎と同じくらいに真っ赤になった由乃を見て、そう心のなかで呟いた。