【114】 陰謀渦巻く  (joker 2005-06-27 21:31:30)


「ごきげ―――」
「貴方、一体どういうつもりなの?」
 放課後、薔薇の館。祐巳の挨拶は、由乃の地獄の底から響くような声により瞬殺された。
「貴方がどう言い逃れしようと、私が標的だという事は分かっているわよ!」
 …なんなんだろう、この光景。由乃さんがいつにも増して恐ろしい形相で名も知らぬ一年生をシメている。部屋の隅では令さまがヘタレ…もとい、怯えている。志摩子さんはいつも通りに、にこやかにその光景を眺めている。お姉さまや乃梨子ちゃんはまた来てないらしい。っていうか、志摩子さん、悪鬼由乃さんをなだめようよ。
「祐巳さん、それは無理というものよ。『あの』由乃さんよ?」
「…また私、百面相してた?」
「祐巳さん、察しが良くなったわね。」
 流石、赤薔薇の蕾ねって、デジャヴですか?志摩子さん。  しかし、この状況はどうしたものだろうか。由乃さんの推理ショウ(?)は佳境に入りつつある。
「江利子さまのメッセージは、〇△□。これは、丸めこまれた者が参画して、刺客になるという意味よ。そして、先月にこの手紙が来た同じ日に、特に理由も無く来た貴方が刺客よ!江利子さまの指図とは言え、私を狙うとはいい度胸ね。」
 由乃さんの口調はますきつくなっていく。名も知らぬ一年生は、もう泣きじゃくっている。そこに由乃さんのトドメの一撃。
「…今度こんな事をしてみなさい。江利子さま共々斬り捨てるわよ!」
「ご、ごめんなさぁい。」
 名も知らぬ一年生は、その場に泣き崩れた。可哀想に。
「よ、由乃さん、一体何があったの?」
 泣き崩れた一年生を撫でながら、由乃さんに聞いてみる。
「あら、ごきげんよう、祐巳さん。来てたのね。」
 由乃さんはさっきの事なんか気にもせず、余裕な態度で紅茶を飲んでいる。
「来てたのね、じゃないわよ。この子、どうしたの?」
「ああ、その娘ね。その娘は江利子さまが私と菜々の絆を確かめる為に送り込んだ刺客。しらばっくれたから推理ショウしてたの。」
 ……あれがショウですか、もはや、糾弾なのでは?
「だけど、このままやられっぱなしじゃ悔しいわね。」
 等とぶつぶつ言い始めた。
 ……まずい、この状態は、何か良くない事を考えている時だ。大抵被害を受けるのは私か祐麒。
「祐巳さん、祐麒君借りるわよ。やっぱり、男手があった方が有利だしね。」

 ああ、祐麒よ。お前はとんでもない人を選んだのよ。と心の中だけで同情した。


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