【1148】 こんな気持ちはうぎゃぁぁぁぁぁぁ!哀れみたまえ  (mim 2006-02-20 01:25:24)


バレンタインディのイベントが終わり祥子が靴を履き替えようとしたらロッカーから手紙が出てきた。

『日曜日の夕方、薔薇の館にいらしてください。 Yumi & Toko』

すったもんだの挙句、二人は姉妹となり、今日の祐巳のカードも瞳子ちゃんが見つけたようだ。

「結局なるようになったということね。ちょっと淋しい気もするけど、これで私も安心して卒業できるわ」


日曜日、祥子がビスケット扉を開くと、
「「ごきげんよう!(祥子)お姉さま、お待ちしていました」」
祐巳と瞳子ちゃんが出迎えてくれた。
「ふふふふふ、あなたたち、今日はデートだったのでしょう。私がお邪魔してよかったのかしら」
「お姉さまには散々ご心配意をおかけしましたので、瞳子ちゃんと相談して今日はお姉さまを寸劇でおもてしすることにしたんです。演劇部の瞳子ちゃんには敵わないかもしれませんが、私もがんばりますのでどうかご覧になってください」
「台本は瞳子が書きました。元本はこちらの白編です」
瞳子ちゃんが差し出した本のタイトルは『ウァレンティーヌスの贈り物(後編)』。


劇が始まった。どうやら、バレンタインディのイベントで祐巳のカードを見つけた瞳子ちゃんが日曜日の学校で週末デートをするという筋書きのようだ。
(それって、そのままじゃないの)と祥子はツッコミたくなったが無粋なのでやめておいた。劇は佳境に入っている。


「祐巳さまはどうかわかりませんけれど、今日は楽しかったですわ。私、祐巳さまに意地悪をして差し上げたかったんですの」
「意地悪?」
「平気な顔をしていましたけれど、以前祐巳さまに拒絶されたのを結構恨みに思っていましたのですのよ、私」
「え〜!私、瞳子ちゃんのこと拒絶なんかしてないよぉ」
「ふん、なにをおっしゃいますか祐巳さま。『チェリブロ』から『さつさつ』あたりまで瞳子のことを邪魔に思っていらしたくせに!」
「どどどどど、どーしてそれを……」
「おめでたい!祐巳さまの百面相を見れば誰だってそれくらい分かります!」
「うひゃー」
「祐巳さま、話を本題に戻しますわよ」

「だから、何か憎まれ口叩いたり振り回したり−。でも、完璧に悪役に徹することができないところが私の弱いところですわ」
「最初のころは結構完璧に悪役に徹してたような気が……」
「祐巳さま、そんな無駄なアドリブはいりません。これからがいいところなんです。まじめにやってください」
「(ひーん、怖いよう)……、私、瞳子ちゃんのことが好きだよ」
「ありがとうございます。瞳子も祐巳さまのことが、す、す、す、す、すkiss」
「「ぶちゅー」」


ギリギリギリ
(私の目の前で祐巳とキスなんかして……。瞳子ちゃん度胸あるわね。後でこのハンカチみたいにしてあげるわ)とハンカチの残骸を握り締め額に青筋をたてた祥子は思った。


「「はぁ、はぁ……」」

「皮肉ですわね。もしかしたら私たち、紅薔薇さまの存在がなければもっと早く姉妹になれたかもしれないですわ。……二人とも紅薔薇さまのことが大好きだっていうのに」
「でも、紅薔薇さまは存在するから」


「というわけで、」

祥子のほうを見た祐巳は言った。この世のものとも思えぬ素晴らしい笑顔を浮かべて

「紅薔薇さま。卒業しちゃってもいいよ」(will最終頁準用)


「いいいいいやぁぁぁぁぁ〜」
祥子の悲鳴が薔薇の館に木霊した。




その後、祥子は三学期期末試験を白紙で提出し留年を図ったが、なまじこれまでの成績が優秀であったため、学園長の恩情により無事卒業の運びとなったという。


めでたし せいちょう


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