【1203】 ともかくキレた祐巳  (まつのめ 2006-02-28 16:18:22)


うっかり書いてしまいました。
【No:1168】→【No:1177】→続き。
(注意:これは『新世紀エ○ァンゲリオン』とのクロスです。 クロスオーバーとかGAINA×とかが苦手な方や、この手のSSはもうたくさんな方はご注意ください)




「へ? 学校?」
 聖さまの言葉に祐巳は間の抜けた声をあげた。
「そうよ。 編入手続きしたから今日から通ってね」
 朝早く叩き起こされたと思ったらいきなりである。
「は、はぁ……」
「なに気の抜けた返事をしているの。 義務教育なんだからちゃんと通わなきゃだめよ?」
「え? 義務教育って……」
 この世界では高校は義務教育とか?
 まさか。 でも何でもありの世界みたいだし……。
 祐巳が俯いてぶつぶつ言っていたら聖さまが言った。
「何を言ってるの、あなたまだ中学生でしょ?」
「ええ!?」
「なに驚いてるのよ?」
「い、いえ、そういえばそうでした。 あはは……」
 祐巳は頭を掻きつつ、愛想笑いをした。
 そういや主人公は中学生だったっけ。

 アニメを見た時の記憶と違って何故か転入先の第壱中学校は女子校だった。
 祐巳はまず職員室へ行き、担任の先生に連れられて教室へ行った。
 クラスには知った顔も数人居た。
 でも自己紹介をしたあとの自習時間、お約束のごとく祐巳の周りに人だかりが出来たのだけど、何故だかそこにいた顔見知りだったはずの人も普通に転校生を珍しがる反応をしていた。

 そんなこんなで、数日。

 学校に通っていて判ったことがある。
 それはこの世界に見られる『前の世界』の祐巳の知り合いは殆どが『前の記憶』は無く、この世界の住人としてふるまっているらしいということだ。
 知り合いと言ってもよく知っているのは桂さんと蔦子さんくらいで他は、お互いに顔は知っているという程度のものだったのだけど。
 蔦子さんに関してはこの世界でもカメラを持って女の子を撮りまくっているらしく、転入してきた日もクラスの人たちが祐巳を取り囲んでいる時、遠巻きにカメラを構えて祐巳や他の女の子たちを狙っていた。
 彼女とはここへ来てからまだ一度も会話を交わしていない。


 ――夢ならば、いつかは覚めるのだろうけど。

 いままで“日常”というものに大きな反旗を翻すこともなく生きてきた祐巳は、この超非日常的な世界にあって、あてがわれた自分の役割を果たす以外の選択肢が思いつかなかった。
 いや、ひとつだけあるとするならば、それは『祥子さまを探す』という目標だが、正直何からはじめたら良いのか判らなくて、聖さまに聞いた以外はまだ行動に出られずにいた。


 〜 〜 〜


 祐巳はシミュレータと呼ばれる訓練装置の中にいた。
 戦闘の初心者だから、ということでしばらく、形になるまでは放課後毎日訓練に来るように言われていた。
『祐巳ちゃん、調子はどう?』
 モニタ越しに蓉子さまが話し掛けてくる。
「慣れました。 悪くないと思います」
 要は全方位画面のシューティングゲームみたいなもだった。
 しかも操作方法はエ○ァと同じで思っただけで自キャラが動かせるというスグレモノだ。
『それは結構。 エ○ァの出現位置、非常用電源、兵装ビルの配置、回収スポット、全部頭に入ってるわね?』
「えっと多分」
 ちょっと記憶力に自信がなかったけど何回も確認してなんとか頭に入れていた。
 その他にも通常エ○ァは通常ひも付きでアンなんとかケーブルっていうのから電力をもらって動くとか、そのケーブルが切れても電池に切り替えて少しは動けるけど一分が限度とか、その辺の説明も受けていた。
『では昨日の続き、インダクションモード始めるわよ』
「はい」
『目標をセンターに入れて』
 目の前に構えている武器の照準が表示される。
 エ○ァを操作してそれの真ん中に敵を持ってくるのだ。
『スイッチオン』
 トリガを引くイメージをする。
『落ち着いて、目標をセンターに』
 とりあえず慣れれば難しくは無かった。
「目標をセンターに入れて、スイッチオン。 目標をセンターに入れて、スイッチオン……」
 こんなものでいいのだろうか。
 でも敵に勝たなければみんな死ぬらしい。
 その場合、戦闘の矢面に立たされる祐巳は一番に死ぬのだろう。
 だからこれは死なないための訓練だ。
 痛いのは嫌だし、祥子さまに会うまで死にたくない。
 そう自分に言い聞かせながら、祐巳はトリガーを引いた。


 〜 〜 〜


 朝八時。
「聖さま。 もう朝ですよ」
 やれば出来るのに、例えば祐巳の登校初日みたいに何かある日はちゃんと起きてるのに、普通の日は大抵祐巳が聖さまを起していた。
「うーん、……さっきまで当直だったのよ〜」
 布団の中からくぐもった声が聞こえてくる。
「え?」
「今日は夕方までに出ればいいのよ〜、だから寝かせて〜」
「じゃあ、私は学校行きますから」
 そう言って祐巳が行こうとするとすこしはっきりした聖さまの声が聞こえた。
「今日、木曜だっけ?」
「あ、はい」
 振り返ると聖さまが布団から顔だけ出していた。
「燃えるごみお願いね?」
「はぁ……」
 なんか生活しちゃってるなぁ。
 なんて思いつつ。
「学校の方はもう慣れた?」
「ええ」
「そう。 いってらっしゃい」
「いってきます」

 『慣れた』か。
 なんでだろう。 夢のようでありながらここでの時間感覚ははっきりしている。
 聖さまと一緒に暮らして毎日学校に通い、放課後は訓練のために聖さまの職場へ行く。
 それが祐巳が『ここ』に来てからの日常だった。


「おやよう福沢さん」
「あ、おはよう」
 教室に入ってクラスメイトに挨拶を返す。
 制服はまだ出来ていないので祐巳は最初着ていたリリアンの黒にアイボリーのセーラー襟の制服を着ている。
 ここの制服は白い無地のセーラー襟のブラウスに明るい青の変形ジャンパースカートだから、黒が基調の祐巳の制服は目立ちまくっていた。
 それに加えて祐巳には高校に通っていた記憶があるため中学のクラスに違和感を感じてしまって、自分でもわかるくらい周りと壁をつくってしまっていた。
 前に高校生の自分が何故か幼稚園に通っている夢をみたことがあるがそのような感じだ。
 その夢では自分以外の友達はみんな幼児になってるのに自分だけ(幼児に比べたら)大きい女の子なのだ。
 実際はそんなに差が無いのだから、きっかけがつかめればもっと溶け込むこともできるのだろうけど、今、祐巳は孤立気味だった。

(あれ?)
 祐巳は席に着いてから視界の隅に気になるものが引っかかった。
 昨日まで空席だった窓際の席に座っている女の子がいたのだ。
 それが気になったのは彼女が包帯の巻かれた右手を吊って頭にも包帯を巻いていたということもあるが、それだけでなく、彼女が祐巳の知っている人だったからだ。
(志摩子さん、同じクラスなんだ)
 今までいなかったのは入院してたから。
 退院したのだ。
(あとで話しかけてみよう)
 すぐにでもそこに行って話しかけたかったが、もうすぐ授業が始まる。

 ところで。
 この学校は全生徒に学習用のノート型端末が貸し与えられている。
 授業もこれを使って行うのだ。
 リリアンではノートも教科書も紙だったのでこれはなかなかカルチャーショックだった。
 教科書やノートだけでなく当然メールやチャット機能も標準で使えるのでなかなか便利である。
 授業中のコミュニケーションにはよく紙を回すなんていうことをするが、この端末があると本当はいけないのだけどチャットを使って喋り放題なのだ。 この辺は転入当初に回りの子たちが教えてくれた。
 会議室を作って数人で話したり、クラス全員に同時にメッセージすることも出来るそうだ。
 そんなチャット機能だけど、実際に授業中にメッセージをもらったのは今日が初めてだった。

 それは先生が授業を脱線して寝府川の話を始めた時だった。
『:福沢さんがあのロボットのパイロットというのはホント? Y/N』
 辺りを見回す。
 志摩子さんが外を眺めているのが目に入った。
 もっと後ろ。
 後ろから二番目の一番窓際の席の子とその隣の子がこちらを向いて手をぱたぱた振っていた。
 隠すほどの事でもないけど、いいのかな?
 秘守義務だっけ? そんなのがあったような……。
『:ホントなんでしょ?』
 また来た。
 まあ、パイロットかどうかくらい良いか。
 祐巳は余り考えないで『YES』とキーを叩いた。
『:YES』
「「ええーーー!!!」」
 チャット画面に返事が表示されたとほぼ同時に、教室は蜂の巣をつついたみたいな騒ぎになった。
 がたがたと席を立ってクラスの生徒たちが祐巳の席に集まってきた。
「ちょっともう!」
 そんな中、前の方に座っていたお下げ髪の子が一際大きな声で叫んだ。
「みんな! まだ授業中でしょ! 席についてください!」
 クラス委員長さんだ。
 彼女は初日に「なにか判らないことがあったら聞いてね」っていってくれた、世話好きそうで感じの良い人。
「あー、またそうやってすぐ仕切る〜」
「いいじゃんいいじゃん」
「良くない!」
 クラスで一番背が低いせいかいまいち舐めらてれる気がするんだけど、同時に可愛がられてもいるので委員長の機能は一応果たしているという不思議な立場の人だ。
 結局なし崩しに殆どの生徒が祐巳の周りに集まってしまった。
「ねぇねぇ、どうやって選ばれたの?」
「テストとか有ったの?」
「怖くなかった?」
「操縦席ってどんなの?」
 祐巳が答える間もないくらい矢継ぎばやに質問してくる。
「い、いえ、あの……」
 先生はなんか寝府川にトリップしちゃってて注意もしないし、委員長さんも諦めたように前向いて席に座っちゃうし。
「あのロボットなんて名前なの?」
「名前? あ、確かエ○ァとか」
「必殺技は?」
「さ、さあ?」
 結局全然授業にならなかった。


 〜 〜 〜


「福沢祐巳さん」
「はい?」
 休み時間になってすぐ、話し掛けてくる人がいた。
 銀縁眼鏡に小型カメラ。 蔦子さんだ。
「ちょっと付き合ってくれるかしら?」
 なんだろう?
 もしかして彼女も『記憶のある人』?
 などと、期待しつつ校舎の裏までついていくと、そこには腕組みした表情の険しい生徒がひとり。
 七三に分けた前髪をピンで留めた短髪の少女。 真美さんだ。
 そういえば彼女を教室で見たのも今日が初めてだった。
「あの……おごっ」
 真美さんのそばまで行って声をかけようとしたらいきなり頬をグーで殴られた。
(い、痛い)
「い、いきなり何を……」
 殴られた頬を手で抑えて抗議しようとしたら無言でまた腕を振り上げ、反対側を殴ってきたので祐巳は回避しようとしてバランスを崩し、
「きゃっ!」
 そのまま尻餅をついてしまった。
 見上げると真美さんが迫ってきていた。
 祐巳はまた殴られるのを恐れて上体を支えていた両手を顔の前に持ってきて交差させた。
 支えを失って祐巳の背中は地面についてしまった。
(あれ?……もう殴ってこない?)
 地べたにあお向けになったまま、恐る恐る手をどけて見上げると真美さんは見下すように祐巳を睨んでいた。
 そして「ふん」と鼻を鳴らし、祐巳を地面に寝そべらしたことで満足したのか、振り返って去っていった。
「悪いわね。 こないだの騒ぎであの子のお姉さまが怪我しちゃったのよね」
(は?)
「まっ、そういう事だから」
 横でカメラを構えていた蔦子さんもそう言い残して去っていった。

(はぁぁぁぁ〜……)
 ツッコミどころ満載なんですけど。
 お姉さまって? 姉妹制度があるわけ? 三奈子さまなわけ?
 いきなり殴るのってなんなの?
 蔦子さんはこんな時にもしっかり写真撮ってるし。
 真美さんが怒ってた理由は判ったけど、祐巳はちょっと起き上がる気力を無くして空を見上げていた。

「非常召集」
「え?」
 祐巳の視界に入ってくるものがあった。
「先、行くから」
 志摩子さんだった。
「あ、うん……」
 志摩子さんは本当に先に行ってしまった。



 〜 〜 〜 〜



『LCL電化』
『圧着ロック解除』
 祐巳はLCLに浸かりながら操縦席に座り、オペレータの子たちの声を聞いていた。

 怖かったのだ。
 あのとき、制服が汚れるのもかまわず寝そべっていたのは。
 『夢のような』っていっても殴られれば痛いし傷つけば血も流れる。
 前回の祐巳の『戦闘』で人が傷ついたという事実が、真美さんに殴られて実感できてしまったから。
 流されるようにして敵の前に出て。
 でも、それしかないから祐巳はまた『これ』に乗ってる。

『祐巳ちゃん、出撃、いいわね?』
「はい」
『発進!』
 視界が流れていく。
 LCLに浮いていると加速はあまり感じないという話を聞いた。
 でも、体内には必ず少しは空気が残っていて、それが圧力で加速度と反対方向に押し付けられるから気分が悪くなったり最悪気を失ったりすることもあるから覚悟しておいてねって聖さまに脅された。
 実際はそんなことがないような加速に抑えているから心配するなって、これは蓉子さまが言ったのだけど。
 少しの気分の悪さを我慢していると、やがて視界が開けてまぶしい外の景色が飛び込んできた。
 と同時に敵の姿も確認した。
 藤色の巨大イカ(いや海老?)が空中に浮いていた。

『いい、敵のATフィールドを中和しつつパレットガンでの一斉射撃。 練習どうり大丈夫ね?』
 蓉子さまは訓練の教官だった。
 技術部なのに何でって思うのけど、シミュレーターの開発者だからだって。
(目標をセンターに入れてスイッチっと)
 壁をイメージしながらトリガを引く。
 この辺は練習で散々叩き込まれた。
『作戦どおり、いいわね?』
「はい」
(目標をセンターに入れてスイッチ……)
 シミュレーターと違って反動が結構ある。
 発射した弾が光の帯を引いて敵に向かって次々と飛んでいく。
 それは一応当たっているんだけど、当たったそばから砂埃のように煙が上がってそのうち煙で巨大イカが見えなくなった。
『ばっ! 爆煙で敵が見えない!』
「え!?」
 聖さまの声に我にかえる。
『下がって!!』
「はいっ!?」
 咄嗟に一歩下がったが下がりきらないうちに光のムチのような物が煙の向こうから飛び出して来てパレットガンを真っ二つにした。
 エ○ァは昼間、祐巳が真美さんに殴られた時のように尻餅をついた。
『予備のライフルを出すわ、受け取って』
 聖さまの声が聞こえ、近くのビルがガコンと開いた。
 でも祐巳は動けなかった。
 煙はいつのまにか晴れ、あの藤色のイカはいつのまにか直立するように一方の端を地につけ、ゆっくりと迫っていた。
 イカの胸(?)にある玉が不気味に赤く光っている。
『祐巳ちゃん? 祐巳ちゃん!』
(怖い)
 その恐怖は無言で殴ってくる真美さんの比じゃあない。
 相手は得体の知れない怪獣なのだ。
 人間なら言葉も通じるし話し合って仲直りできる可能性だってある。
 でもこの『敵』は祐巳を殺しにやってくる。
 倒さなければ祐巳が殺されてしまうのだ。

 じりじりと後退していたが、背中が大きなビルにあたり、祐巳は追い詰められた。
 敵が光のムチを一閃。
 咄嗟に横に避けた。
「きゃああああああっ!!」
 ビルが音を立てて崩れその破片が頭から降ってきた。
『アンビリカルケーブル断線!』
『エ○ァ、内臓電源に切り替わりました!』
『活動限界まで後4分53秒!』
(すごいなぁ、あの子たちなんてあんなに息が合ってるんだろう)
 ものすごい危ない時なのにどういうわけか関係ないことを考えてしまうのは祐巳の癖なのか?
 いや、それは戦闘に集中していないってことなのだろう。
 なぜなら、その直後、祐巳の乗ったエ○ァは足をムチに絡め取られ山の斜面におもいきり投げ飛ばされてしまったのだから。

(痛ったあ……)
 やっぱりフィードバックが痛いのは理不尽だと思う。
『祐巳ちゃん! 大丈夫? ダメージは?』  
 聖さまが慌てた様子で聞いてくる。
 最後の『ダメージは?』はオペレータ席に向かって発した言葉だ。
『問題ありません! いけます!』
(問題ないって、痛いんですけど……)
 エ○ァを起き上がらせようとしてなにか警告が表示されているのに気づく。
「なに? 右手のところ?」
 祐巳が意識するとそれに感応して手の付近のアップが表示された。
 指の間に蔦子さんと真美さんが顔を青くして抱き合ってるのが見えた。
『祐巳ちゃんのクラスメイト!?』
『何故こんなところに?』
 聖さまと蓉子さまが驚いてる。
 そんなことをしているうちに巨大イカは目の前まで接近してまたムチによる攻撃を仕掛けてきたが、近くに友達がいるってことで必死になったのが良かったのか、祐巳は奇跡的に巨大イカが攻撃してきた二本のムチをそれぞれ両手で掴まえることに成功した。
(手が、熱いっ……)
 ムチを抑えられたイカは逃れようともがいたがムチ以外の攻撃をしてくる気配がなく、戦闘はこう着状態となった。

『初号機活動限界まで後3分28秒』
『祐巳ちゃん、そこの二人を操縦席へ! 二人を回収した後一次退却、出直すわよ!』

 操縦席へってどうやるの?
 そう思ったら即蓉子さまの声がした。

『許可の無い民間人をエントリープラグに入れられると思ってるの?』
『私が許可します』
『越権行為よ! 佐藤一尉』

 なんか争ってる。
 それどころじゃないんだけどな。

『初号機活動限界まで後3分』
『エ○ァは現行命令でホールドししその間にエントリープラグ排出。 急いで!』

 どうやらそっちは発令所からやってくれるみたいで、聖さまはオペレータに向かって指示を出していた。 
 そうこうしているうちに、目の前の表示がなにやら変化して手の熱い感覚が薄れた。
 そして、操縦席全体が動いてハッチが開いた。
『そこの二人、乗って。 早く!』
 なるほど。
 あっちから結構いろんなことが出来るんだ。
 聖さまの声はどこから出たのか外の二人に伝わって、蔦子さんと真美さんが慌てて立ち上がるのが見えた。

 やがて、ハッチの方から声が聞こえてきた。
「うわっ、水?」
「これがL……おっと、でもカメラが」
「早くして!」
 祐巳は振り向いて声を上げた。
「……ええい、仕方がない」
「きゃああっ!」
 蔦子さんが真美さんを引きずり込んだのだ。

『神経系統に異常発生』
『異物を二つもプラグに挿入したからよ。 神経パルスにノイズが混じってるわ』
 蔦子さんたちは異物扱いか。
『今よ、後退して!』
 ハッチが閉じ、祐巳が前を向くと聖さまがモニタ越しに言った。

「福沢さん! 後退だって!」
 真美さんが叫ぶ。
「くっ!」
 ホールドが解けた瞬間、敵のムチが手からすり抜けた。
(攻撃が来る!)
 その時、何を思ったのか蔦子さんが祐巳の横に来て顔を寄せて耳元で囁いた。
「………」
「え?」
 蔦子さんと目が合う。
 そうか。
(わかった)

 訓練で教わった通りにナイフを出して構える。

『プログレッシブナイフ装備!』

(真美さんに殴られたのも……)

『祐巳ちゃん、命令を聞きなさい。 退却よ! 祐巳ちゃん!』

 聖さまが叫んでる。

(柏木さんが総司令なのも……)

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

『馬鹿っ!!』

 藤色イカに特攻する。

(みんな、おまえが悪いーーーーっっ!!!)

 ムチがおなかを貫通した。
 痛いけどどうせ私のじゃない!
 そのままナイフをグサッと赤い玉に突き刺す。

『初号機活動限界まで後30秒、28、27、26、25』

 感触が硬い。
 おなかの痛みを堪えて思い切り踏ん張る。

『14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1』

 突然、痛みが消えてエ○ァの感覚か消失した。
 と同時に操縦席も暗くなる。

『エ○ァ初号機活動停止』
『目標は完全に沈黙しました』

「ふうぅ……」
 祐巳は操縦桿を掴んだままぐったりと顔を伏せた。
「福沢さん……」
 真美さんの呟きが聞こえた。





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 このあたりは人が動くので書きやすいんですよね。
 でも後に行くほどモチベーションの維持が難しい。

 一応、票数とコメント数(まつのめ除く)を基準に次を書くか決めるつもりです。
 前のは合計が10そこそこだったので別のやつの続きを投稿しようとしてたのに、ついうっかりこっちを(笑)。


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