【1229】 幸せでいて欲しいから  (琴吹 邑 2006-03-06 05:25:56)


「ちょんまげ」
 祐巳ちゃんからもらったクリスマスプレゼントのリボンを使い、私の頭で楽しそうに遊ぶ江利子。
 されるがままになっている私。

 ここは薔薇の館。
 クリスマスパーティもおわり、今館に残っているのは、私と江利子だけ。
 賑やかだった館が、二人だけと言うこともあり、すごく寂しく感じる。
「最後は、きゅーぴーちゃんと」
 江利子は満足したのか、私の髪形をきゅーぴー人形のようにして、江利子は私の隣に座った。
「今日は、楽しかったわね」
「そうね。蓉子がやきもち焼いているところも見られたし」
 その言葉に、私は肩をすくめる。
「あなたの所は良いわね。最初から孫付きだったから、こんな思いをすることもないでしょう」
「言い方悪いけど、由乃ちゃんには楽しませてもらっているわよ。令を挟んで弄ると反応がかわいくてね。手術がうまくいってから、制限なしに弄れるようになったのがいいかな。」
「あなたに弄られる、由乃ちゃんは大変ね」
「ま、それが孫の務めだし」
「かわいい反応と言ったら、祐巳ちゃんも負けてないわよ」
 その言葉に江利子はクスリと笑う。
「あれは反則。あんなに表情が顔に出たら賭け事とか弱いだろうね」
「確かにそうね」
 その言葉を境に沈黙が訪れる。
 それは堅苦しい物ではなく。余韻を楽しむために訪れた柔らかいもの。

「今日は、楽しいパーティだったわね」
「そうね。本当に楽しいクリスマスパーティだった」
 余韻を破ったのは江利子の言葉。
 クリスマスパーティーは楽しかった。
 妹たちも楽しんでくれただろう。でも、今回のクリスマスパーティーだけは、それは二の次だった。
 私は聖にクリスマスパーティーを楽しんで欲しかった。
 いばらの森の件で感傷的になっているであろう聖に。
 だから、飾り付けをいっぱいし、少しでも賑やかになるようにしたのだ。

 だから、聖がパーティーの間中楽しそうに笑っていたのが嬉しかった。
「江利子もありがとう」
「私は何もしていないわ。面白そうなことに顔をつっこんだだけ」
 そういう風に言うが、令にケーキを用意させたり、私の気が回らないところで、色々助けてくれたのだ。
 皮肉屋なこの友人は絶対に口に出さないだろうけど。

 私はもう一度肩をすくめると、本題を切り出した。
「明日の件だけど大丈夫?」
「ばっちりよ。聖の方は大丈夫なの?」
「一応あけておいてっていってある」
「そう、それはよかったわ。じゃあ、明日は11時に蓉子の家ね」
「ええ」
 明日は聖の誕生日。
 サプライズパーティをするのだ。
 去年の事なんか思い出す暇が無いように、楽しいことで塗りつぶしてあげたいから。

 だから………


 江利子と一緒に驚かすのだ、ハッピーバースデーと。


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