『【No:269】逆行した』の真ん中あたりから分岐して【No:1222】の向こう側に繋げてみるテスト。
「何をへらへらしてるの! 人がまじめに話をしているのに」
だって嬉しかったから。叱られても祐巳の表情は緩みっぱなしだった。
〆 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 選択肢
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|>三奈子さまが現れてなし崩しに姉妹の儀式
| 蔦子さんが「台無しね」発言。
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「……じゃあ、儀式の後、インタビューよろしいかしら?」
「え?」
「あら、三奈子さん」
「はい、新聞部でーす」
いつから居たのかポニーテールの女性がメモとペンを携えて蔦子さんの隣に控えていた。
祐巳は記事にされるのは嫌だったのだけれど、祥子さまは変に噂されるより先に紙上で公言してしまったほうが良いのだと言い、あれよあれよという間に、三奈子さまが今晩中に記事を仕上げ、明日の早朝祥子さまが記事を確認してから号外として配布という段取りが決められてしまった。
この辺は流石は祥子さま。 その気になったらなんでも利用するというか、祐巳が意見をはさむ隙もなく祐巳が祥子さまの妹になることは決定事項になってしまっていた。
祐巳としてはこれから学園祭までの祥子さまとの絆を確かめあうイベントが欲しかったのだけど、既に祥子さまはシンデレラをやる気満々だし、祐巳はもう祥子さまのとこを「お姉さま」って呼びまくっちゃってて同じイベントは起こりようもない。
だから祐巳は後ろ向きに考えることはやめた。
ここで妹になれるんなら堂々とお姉さまのフォローができるのだからそれで良しとしよう。
やる気満々とはいえ、祥子さまは勢いだけでやると言っただけでまだ具体的なことを何も考えていない節があるし。 というか、十中八九なにも考えていないであろうから。
祥子さまは相手の実力がわかっている時は勝てようが負けようが堂々と向かっていくようなお方だ。
でも、それが判らない時、どうしようもなく弱気になってしまう人なのだ。
今回の柏木さんもその一つ。 そもそも祥子さまがシンデレラ役をやりたがらなかった理由がこれなのである。
蓉子さまは男嫌いを克服する機会くらいにしか考えていないのだろうけど、祥子さまにしてみればとんでもない話なのだ。
これに関しては祐巳がここで蓉子さまに進言してあげるって手もあるけど、それは多分祥子さまのプライドを傷つけてしまうから言わない。
祐巳は祥子さまがやりたいようにやるのを側にいてサポートするつもりだ。
ほら。
祐巳の中でももう祥子さまの妹になることは既に決定事項だったのだ。
蔦子さんの是非にと云う希望で二股のマリア様の前に移動した。
時間的に半端で人目が少なかったものの若干名帰りがけの生徒が興味深げにこちらを眺めていた。
「じゃあ、改めて聞くわ」
そう言って祥子さまはロザリオの鎖を広げた。
「祐巳、これを受け取ってくれるかしら?」
「はい、お受けします」
祐巳と祥子さまの姉妹の儀式は前の時と違い、マリア様だけでなく蔦子さんと三奈子さまとその他数人の生徒達が見ている前で行われたのだった。
〜 〜 〜
昨日「号外、号外♪」とスキップしていく三奈子さまの後姿を見送った時から覚悟はしていたけど、リリアンかわら版の号外を配る新聞部員の姿を見て祐巳は朝から憂鬱だった。 もちろん問題の号外を一部貰うのを忘れない。
記事には『衝撃!紅薔薇のつぼみの妹』と題字が紙面の約三分の一を占め、さらに『たった一日でつぼみの心を射止めたミラクルガール』とかものすごい煽り文句がこれまた目を引く字体で書かれていてこれでもう紙面の半分は埋まっていた。
祐巳の写真を載せるのはなんとか勘弁してもらった。というか続報で載せるから号外では名前だけって話で落ち着いたのだ。
そんなわけで、とりあえず教室まではそんなに注目を集めるということも無かったが、祐巳が教室に一歩足を踏み入れた直後、教室は妙な緊張感の漂う静寂に包まれた。
「ご、ごきげんよう」
祐巳が恐る恐る朝の挨拶をすると、真っ先に解凍した蔦子さんがこちらに駆け寄ってきた。
「祐巳さん! ごきげんよう。 ちょっと」
こっち来てと、祐巳を教室の外へ引っ張り出し、そのまま階段の踊り場付近まで移動した。
「なに馬鹿正直に時間通りに登校してるの」
「え? まずかったの?」
蔦子さんは額に手をあてて「ああもう」と。
「普通に来たら質問攻めにあうに決まってるでしょう? こういうときはぎりぎりに教室に入るものよ」
なるほど、そうすれば朝の混乱は回避できそう。でも蔦子さんってこんなに世話好きだったっけ?
「でも、休み時間になったら一緒でしょ」
「はぁ」
蔦子さんは気の抜けたため息をついた。
「なんか損しちゃったわ。 号外の件は私も一枚かんでるから責任を感じてたのに」
新聞部ほどじゃないにしてもいつも当事者よりも見る側に回る蔦子さんが、らしからぬ行動してると思ったらそういう裏があったのか。
「大丈夫よ。ああいうのは一回ビシッっと言っちゃえば静かになるから」
そういって祐巳はにこりと笑った。
「ああ、なんか祐巳さんもう貫禄身につけてるわ。薔薇さまのつぼみの妹になっただけでこんなに変わるのね」
「そんなことないよ」
そう。 これは祥子さまの受け売りなのだ。 『前回の』だけど。
折角だからと授業が始まる直前に教室に戻って次の休み時間。
やはり、というかクラスのみんながわらわらと集まってきた。
「祐巳さん、かわら版の記事読みましたわよ」
「おめでとう、祐巳さん、あなたずっと祥子さまのファンでしたものね」
「念願が叶ったのですわね」
集まってきたクラスメイトの言葉はみな祐巳への祝福で、祐巳がビシっと言う必要はなかった。
朝の蔦子さんの行動は無駄だったのか。 いや、みんなに記事を吟味する時間をあけたのがかえって良かったのかもしれない。
「みんな、ありがとう」
何を聞かれるかと緊張していた祐巳は感激して泣いてしまった。
「山百合会のお仕事頑張ってくださいね」
「私たちも応援しますから」
流石はお嬢様学校。 多少やっかむ者も居ただろうが所詮お人よしの集団である。 雰囲気に流されてかクラス全体で祐巳を応援する空気が出来上がってしまった。
「もうクラスのみんなの心を掴んじゃうなんて、やっぱりミラクルガールだわ」
いつでも傍観者でクラスの雰囲気に取り残されたの蔦子さんの言葉である。
「それで、めでたく姉妹になれましたってわけなのね、ミラクルガールの福沢祐巳さん」
「静さま、その呼び方はやめてください」
音楽室の掃除の後、祐巳は蟹名静さまと話をしていた。
実はこの合唱部の先輩のことはちゃんと祐巳の記憶にあった。
ただ、『髪の長い合唱部の先輩』という認識しかなくてそれが後の静さまと結びついていなかっただけだったのだ。
「うふふ、でもあやかりたいわね。私も……」
「……白薔薇さまですか?」
その直後、目を見開いて硬直し、持っていた譜面をばらばらと落とした静さまを見て祐巳は「しまったぁ」と思った。
「あのっ、その、そうだ、憶測でものを言っちゃだめですよね、私、静さまなら白薔薇さまと合うかなーなんて……」
「……ミラクル」
「へ?」
静さまは祐巳の両肩を掴んでこう言った。
「私、頑張っちゃうわ。ミラクルが味方になってくれるんですもの」
「あの……私、みらくる?」
「あなたが合うって言ってくれたならきっと上手くいくに違いないわ。ありがとう」
今度は祐巳の手を取り、思い切りシェイクした。
「あー、えーっと……」
静さまは上機嫌にスキップで音楽室から出て行ってしまった。
あんな性格だったっけ? 静さまって。
あっけに取られて静さまを見送った祐巳だったが。
「あっ!」
聖さまと静さまで、思い出したことがあった。
それは山百合会役員選挙の結果発表の時のこと。
結果発表の直後、聖さまの後を追って目撃した、今はまだ未来の出来事。
祐巳は慌てて静さまが散らかしていった譜面を拾い集めて机の上にまとめ、静さまを追った。
聖さまは薔薇の館にいるのだろうか? だとしたら静さまもそこに向かったはずだ。
祐巳は自分の失言の為に白薔薇姉妹に波風を立てたくは無かったのだ。
なにしろ聖さまはあのとき、静さまにあんなこと……。
「きゃっ!」
回想に浸りながら歩くものではない。
祐巳は中庭に出る昇降口で誰かに追突してしまった。
「ゆ、祐巳さん?」
「あ、静さま」
ぶつかった相手は静さまだった。
なぜか静さまは中庭に出ないで廊下の所に留まっていたようだった。
祐巳がそれに追突して中庭に押し出してしまったのだ。
「あら、祐巳ちゃんのお友達?」
「って、聖さま!?」
中庭には聖さまが。
どうなっているのか良く判らないが、どうやら、祐巳は静さまが聖さまに会うのを後押ししてしまったようだ。
「ねえ祐巳ちゃん」
「は、はい?」
「きれいな子ね。 紹介してよ?」
「あ、あの友達というか、合唱部の蟹名静さま、聖さまご存知ありませんか?」
「え?」
あごに手を当てて聖さまはちょっと考え込んだ。
「知らなかったわ。 祐巳ちゃんのクラスメイト……じゃないわよね、二年生かしら?」
そうだった。
聖さまはこういう人なのだ。
あの選挙の時も、静さまを知らなかった祐巳と『お仲間』だったし。
「静さま、面白がってないであとはご自分で……」
横で祐巳と聖さまとのやり取りを見ながら苦笑を浮かべていた静さまにそう促した。
が、それは失敗だったと祐巳は後悔することになった。
「白薔薇さま、私は二年藤組、蟹名静です。 以後、お見知りおきを」
「私のことは知ってるわね」
「ええ、高等部に上がる前から」
「え……」
「ずっとあなたを見ていました」
静さまは決して目を知らさず聖さまをまっすぐ見つめていた。
ちょっと目を見開いていた聖さまは、真剣な顔つきになって静さまと見つめあった。
「そうだったの……」
聖さまは静さまに近づき、頬に手を触れた。
静さまの頬がほんのりと桜色に染まる。
そんな映画のシーンのような成り行きを黙って見ていられる祐巳ではなかった。
「……祐巳ちゃん、そういうのなんていうか知ってる?」
「知りませんし、聞きたくありません!」
祐巳は二人の間に割って入っていた。
「人の恋路の邪魔をするのは無粋って物よ?」
「なにが恋路ですかっ!」
まだ志摩子さんと姉妹になったばかりのはずなのに何を言うのか。
「静さま、すみませんけど、私は志摩子さんの味方ですから」
祐巳はそう言って頭を下げたのだけど、静さまが何か答える前に聖さまが言った。
「あら、志摩子は関係ないわよ」
「どうしてそういうこと言うんですか?」
「志摩子に聞いてみたらいいわ」
けろっとしてそんなことを言う。
判らない。
本当に白薔薇姉妹はわからない。
ほら、静さまも困った顔してるし。
「じゃあ、このまま静さま連れて志摩子さんの所に行けますか?」
「あら、それはいいアイデアだわ。 どう? これから山百合会主催の劇の練習なんだけど見にこない?」
「聖さまっ!」
本当に行った。
体育館まで行って、志摩子さんなんか放っておいて、祐巳の前で静さまといちゃいちゃ。
祐巳が蓉子さまに言われて令さまと踊っている間も、聖さまは目が合うとわざわざ見せびらかすように静さまの肩に手を回して手を振ったりして。
おかげで令さまに「よそ見しない」って叱られてしまった。
もう、我慢ならなくて、終わってから志摩子さんに言ってやった。
「志摩子さん、あれ放っておいていいの?」
「あら、どうして?」
「どうしてって志摩子さん、聖さまの妹でしょ?」
「いいのよ。 祐巳さんが心配することは無いわ。 私たちはそういう姉妹なの」
志摩子さんはそう言って微笑むのだけど……。
そういう姉妹って、前回、聖さまが祐巳に絡みまくるのを志摩子さんが放っておくのは理解できなかったまでもなんとか納得したのだけど、今回のはそういうのと次元が違う気がするのだけど、どうして平気なのだろう。
とうとう静さまは聖さまと組んでみんなの注目を集めながらダンスを始めてしまった。
あんなにべったりくっついてっ!
一曲終わって聖さまは戻ってきた。
「志摩子と話したの?」
「……やっぱり納得できません」
ちょっと泣きそうになりながらそう答えると、聖さまは祐巳の頭を撫でながら言った。
「聞いたんでしょ? 志摩子のこと心配することは無いわよ?」
ううっ、双方からこう言われてしまっては祐巳は引っ込まざるを得ないではないか。
でも。
「静さまは良いんですか?」
「え?」
「聖さまには志摩子さんっていう立派な妹が居るのにこんな……」
「そうね……それは後で話すわ」
「後で?」
「それより、祐巳さんって、白薔薇さまの言うとおり」
「でしょ?」
「え? え?」
なんか祐巳の知らないことで二人して納得し合ってるんですけど。
ところで。
今回祐巳にとってはちょっとショックな出来事があった。 いや、あったというか無かったというか。
中庭での一件の直後、祐巳を探していた祥子さまが現れたのだ。
そして「こんなところにいたのね」っておっしゃった。
そう。 前回、祥子さまは音楽室でピアノの鍵盤を叩いていた祐巳の背後に現れたのだ。
なのに今回は静さまにかまけて音楽室から早々に出て行ってしまったので一緒にピアノを弾けなかった。
貴重なイベントを逃したと知った祐巳が落ち込んだのは言うまでも無い。
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ここから「静−志摩子、祥子−祐巳−乃梨子」まで持っていくわけですが、
がちゃSに集う作者の皆様ならどう料理されますか?(リレー可、というか是非)
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保留にしてた体育館のシーン加筆しました。(2006/3/13 20:25)
〆 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 選択肢(複数可)
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| ・聖と静が意気投合して祐巳をからかう
| ・静は蓉子に劇に出てくれるよう要請される
| ・祐巳が白薔薇姉妹と静にかまけてばかりで祥子が拗ねる
| ・その他
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