【1353】に続いて、今度は紅薔薇姉妹を書いてみました。
ちょっとだけ未来のお話。
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「ふわ〜」
ホテルの部屋に入ったとたん、また変な声を出してしまった。
確かに祥子さまのお父様がホテルを取ってくださった。お母様が2人にプレゼントするっておっしゃってくださったけれども。
でも、でも、遊園地側に面したスイートルームなんて!
「どうしたの?」
「い、いえ、いままでこんなお部屋、泊まったことはおろか入った事もないです」
「うふふ。これだけじゃないのよ。
荷物を置いてこっちにいらっしゃい」
お姉さまに手招きされるまま、窓へ向かうと。
その先は暮れなずむ遊園地が一望できるテラス!
「ひやああああ」
「変な声を出すのはおやめなさい」
そう言うお姉さま、言葉とは裏腹に満面の笑顔。
椅子に並んで座るとお姉さまはそっと肩を抱いてくださり、もう片方の手で私の手を握る。私もおずおずと手を握り返す。
そして、そして・・・ショーが始まる。
「祐巳」
ああ、別の世界にいるみたい。
「祐巳」
ああ、幸せ。本当に幸せ。
「祐巳!」
「・・・はい?」
「もう、びっくりさせないでよ。
体調悪くしたのかと思ったわ」
「いえ、あまりにきれいで、あまりに幸せで。
ちょっとぼうっとしちゃいました」
えへへ。と笑うとお姉さまがこつんとゲンコツ。
「じゃあもっとびっくりさせてあげる」
「へ?」
「目をつぶって」
首になにかをかける感触。
「目を開けていいわよ」
「こ、これは!」
「そう、ロザリオ。
あなたに以前渡したロザリオは***ちゃんに渡してしまったでしょう?
これは私とあなただけのロザリオ。
私はもう間もなく卒業してしまう。
いくら同じリリアンでも毎日は会えないわ。
でも私はあなたの姉でいたいし、あなたには私の妹でいてほしい。
だからこのロザリオ、改めて受け取ってもらえるかしら」
ああもう、私はどうすればいいの。
涙が、涙が本当に止まらない。
お姉さま、お姉さま、お姉さま。
私の大事な、一番大切なひと。
すれ違ってしまった事も、ぶつかってしまった事もあった。
でも、でも、お姉さま、大好きです。
姉妹になれてよかったです。
祐巳がこんなに泣くなんて。
こんなに、こんなに喜んでくれるなんて。
私、本当に祐巳に出会えてよかった。
姉妹になれてよかった。
いっぱいの感謝を込めてあなたにロザリオを贈るわ。
いっぱいの感謝を込めてあなたを抱きしめるわ。
いっぱいの感謝を込めて・・・あなたにキスするわ。