【140】 いつでもカメラ目線アクシデント  (素晴 2005-07-02 03:02:54)


「あれ? 志摩子さん、どうしたの? さっきから窓の外を見て……」
「いいえ、ただ小鳥たちが可愛くさえずっているなぁ、って思っただけよ」
だが、祐巳が外に向けた目には、一匹の小鳥も映ることはなかった。

そういえば、この間も……
お祈りを終えた志摩子さんが、マリア様の像をじっと、いやその視線はもっと
遠くに注がれていた。
「志摩子さん、マリア様の向こうになにかあるの?」
「いえ、ちょっと、ちょうちょがね……」
しかしやはり祐巳の目には青々とした茂みが映るばかり。
思い返せば、幾度となくそういうことはあった。これは……。
やがて祐巳は一つの結論に達したのだった。

「志摩子さん、実は視える人?」
志摩子さんは少しの間怪訝な顔をしていたが、すぐにああ、とうなずいた。
「見える、というわけではないのだけれどね、なんとなくわかってしまうのよ。
 どうしてかしら?」
ああ、やっぱり志摩子さんはそうなのね。それにしても、そんな力があるのなら、
怖い目にもずいぶんあったに違いないのに。祐巳は自分の推測が正しかったことを
確認しながらも、そうやって淡々と話す志摩子さんの微笑みが少し怖かった。


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