最初書こうとしていたネタを無視して題名に引かれてやっちゃいました!!
これって、どうなのでしょう?皆さまの反応が怖いなぁと思いながら……。
『クゥ〜』
一年桃組、藤堂志摩子は溜め息をつき、手に巻きつけたロザリオを見る。本来、こんな場所にして良い物ではないが、自分にはふさわしい場所だと思っているからこれでいい。
溜め息をつき、物思いにふける志摩子に声をかける友人はいない。
それは中等部から変わらない出来事。志摩子が望んだ結果でもあるから、問題はない。ないはずなのに志摩子はやっぱり寂しさを覚える。
だが、志摩子の寂しさを分かってくれる人―お姉さまが出来た。
自分に似ていながら、どこか似ていない人。それだけで今の志摩子には十分だった……そう、彼女に出会うまでは。
「それじゃぁ、転校生を紹介するわね。入ってきて」
高等部二学期の転校生。時期外れとも思えるが、先生の話では帰国子女らしい。それなら納得かもしれない。
ガッラ!!
教室の前の扉が開く。だが、そこに誰もいない。
ザワ、ザワザワ!!
教室全体が一瞬騒がしくなるが、志摩子はその騒がしさに違和感を覚える。何だか、前の方と後ろの方の騒がしさが違うのだ。
ピッシャ!!
そんなことを思っていると自動的に扉が閉まった。
「怨霊か?」
志摩子は小さく呟いて懐の護符を掴む。
怨霊にしては気配がない?なに?
志摩子が緊張していると小さな影が教壇を駆け抜け、先生が自分用の椅子を教壇に置く。
「!!!!」
志摩子は思わず絶句した。いや、クラス全体が活動を停止する。
教壇の先生の椅子を借りて現れたのは。ツインテールの可愛い。
「ふくざわゆみ!五さい!!きょうからこうとうぶいちねんもも組におせわになります!!」
小さな女の子だった。
「あー、見たままだ。彼女は福沢祐巳ちゃん。五歳。少し前までアメリカの方で暮らしていたが、今回日本に帰国するにあたってリリアン女学園に編入となった」
編入って、明らかに幼稚舎の子供。
「まぁ、皆の驚きはもっともだが気にするな。福沢さんはこう見えても編入試験代わりの一学期の期末でダントツトップだったから問題はない。いわゆるとび級だ」
「……と、とび級って」
クラス全体に不安がよぎる。当然だろう。
再びざわめくクラス。先生も何だか困った顔に成っている。
志摩子はどうしようと思うが、自分から声を上げることはない。クラスも先生もざわめく状態の中、それを止めたのは祐巳ちゃんだった。
「よろしくお願いします!!」
はっきりとした澄んだ声で、ニッコリと極上の笑顔。
「「「「「「「はぁ〜」」」」」」」」
クラス中に広がる盛大な溜め息。皆、祐巳ちゃんに魅了された瞬間だった。そして、志摩子もまた「はぁ〜、可愛い」と溜め息をついていた。
……フッ。
「それじゃぁ、祐巳ちゃんはどこが良いかなぁ?」
先生がクラスを見渡す。
「先生!!祐巳ちゃんは小さいからま……え……バッタ!!」
発言をしようとした桂さんがそのまま倒れこむ。
「まったく、脇の分際で」
志摩子はそっと懐に小さな棒をしまい、倒れた桂さんの代わりに志摩子は手を上げる。
「先生、私が祐巳ちゃんのお世話をしますわ」
「あー、藤堂さんか。貴女なら安心ね」
「ええ」
志摩子は出来るだけ優雅に頷く。
「あっ、でも、隣の席が空いているのは」
ヒュン!!ベッゴ!!ごろごろごろ、ベッシィ!!!
「隣、空きましたわ」
「そ、そう」
確かに志摩子の隣の席は空いていた。
「今、藤堂さんが裏拳を使ったような……まぁ、いいわ。それでは福沢さん。彼女の横の席に」
「はーい!!」
明るく返事をして祐巳ちゃんが志摩子の隣に座る。
「よろしくね、祐巳ちゃん。私は藤堂志摩子」
「しまこおねえちゃん?」
「えっ?」
しまこおねえちゃんしまこおねえちゃんしまこおねえちゃん。
「ゆ、祐巳ちゃん。もう一度言ってくれる?」
「う、うん。よろしくね、しまこおねえちゃん!!」
〜〜〜〜〜!!あぁ、マリアさま!!感謝します!!
志摩子は机の上でマリアさまに感謝の祈りを捧げ、祐巳ちゃんは「へんな、しまこおねえちゃん」と笑っていた。
五歳児の高等部編入。その話は次の休み時間には全校生徒が知ることになった。
桃組の外の廊下には、それは恐ろしいほどの生徒が、祐巳ちゃんを一目見ようとつめかけていた。
「しまこおねえちゃん、なんだかこわいよ」
志摩子でさえ恐怖を覚える光景。小さな祐巳ちゃんにはどれほどの恐怖だろうか、それに加え桃組内部でも……。
「……志摩子さん、一人で祐巳ちゃんを独占して」
「いいなぁ、私もおねえちゃんと呼んで欲しいなぁ」
「くっ!!隙がない!!」
虎視眈々と祐巳ちゃんのおねえちゃんを狙うクラスメイトたち。
「ふふ、祐巳ちゃん、大丈夫よ。志摩子おねえちゃんが祐巳ちゃんを守るから」
「うん!!」
安心した笑顔を志摩子に向けてくる祐巳ちゃん。志摩子はどんな手を使っても、祐巳ちゃんの笑顔を守ることをマリアさまに誓う。
志摩子は、脅える祐巳ちゃんを抱きしめながら廊下のほうを見渡す。
祐巳ちゃんを独占するために、最大の障害となるであろう人物たち。その姿はいまだ見えない。
だが、彼女たちは必ず来る。なぜなら、彼女たちほど刺激を求めている人たちはいないからだ。
志摩子は誓う、この戦いに必ず勝利して祐巳ちゃんのお姉ちゃんの座を死守して見せることを!!
そして、志摩子の胸の中に抱かれた祐巳は……フッ!
笑っていた。
まぁ、なんというか……これで終わったりして……ははははは。
笑って逃げます。『クゥ〜』