【145】 ペット生活  (犬好きな匿名 2005-07-02 22:18:08)


『お座りなさい、祐巳』
扉の向こう側から祥子の声が聞こえてきた
今日は結構はやくHRが終わったから一番のりだと思っていたのに・・・・
『いいコね あなたは・・・・少しブラシを掛けた方がいいみたいね』
・・・・祥子ったら今日は随分祐巳ちゃんを甘やかしているみたいだ
ここは姉妹水入らずだし邪魔しちゃ悪いかな・・・・
とりあえず外にでも・・・
「入らないの?令ちゃん」
「よ、由乃」
「何慌ててるの?」
「いや、中で祥子達がなんかいい雰囲気だから邪魔しちゃ悪いかと思って・・・」
「祐巳さんたちが?」
由乃はそういうと扉にぴったりと耳をつけた
まったく由乃はしょうがないな
『新しいリボンを貰ったの。これは似合うかしら?・・・・これはちょっとイマイチね やっぱりいつものがいいわ』
「令ちゃん・・・なんか今日の祥子様、雰囲気が違うね?物凄く甘い、昨日令ちゃんが作ったケーキより」
「そうだね」
由乃につられて思わず声のトーンが下がってしまう
そろそろ志摩子たちも来るだろうからいい加減盗み聞きはやめないといけないのだけど・・・
『それじゃあそろそろ散歩をしようかしら・・・首輪をつけないと・・・』
散歩?首輪?
「令ちゃん」
由乃の目が祥子を止めようと訴えていた
このまま二人がアブノーマルな世界に行ってしまうのを友人として止めなくては・・・
「開けるよ、由乃」
意を決してドアノブに手を掛け由乃を見ると由乃は大きく頷いた

「祥子!ちょっと祐巳ちゃんに何をしようとしてるの」
部屋に勢い良く乱入する
「どうしたの?令 そんな血相を変えて」
「どうしたもこうしたも祐巳ちゃんに何をしようと・・・・あれ?祐巳ちゃんは」
祥子の傍に祐巳ちゃんの姿どころか、部屋のどこにも彼女はいない
「祐巳ならまだ来てないわよ」
「でもさっきまで祐巳ちゃんの名前呼んでたし・・・」
そう聞くと祥子は笑いを堪えながら四角いものを見せた・・・・アレって
「あっ、もしかしてアレですか?○inten○ogs」
「えぇ、そうよ」
「だから散歩で首輪なわけか」
由乃は一人ウンウン頷いているが私にはなんの事だかさっぱりわからない
「もしかして私が祐巳に首輪をして散歩に連れ出すとでも思ったのかしら?」
祥子は私達が乱入した理由を確認して少し睨んだ
「でも祐巳さんの名前をつけるのはどうかと・・・」
「そうかしら?でも好きな人の名前を付けるとその分愛情が増すわよ・・・令はまだわかっていないみたいね」
祥子がそう言うから思わず頷く
「二人にも紹介するわ」
そういいながら祥子は立ち上がると四角いものを私達に見せた
それにはディスプレイが二つあり、そのうちのひとつの画面の中に白くて小さなチワワがリボンと首につけて尻尾を振っていた

「瞳子ちゃん、瞳子ちゃん」
祐巳さまが嬉しそうに手招きをする
こんな顔をしている時、この方はやたらとしつこく絡んでくる
無視を決め込む訳にもいかず、仕方なく祐巳さまに近づいた
「良いもの見せてあげる」
そう言って鞄の中から取り出したのは最近祥子お姉さまがはまっている四角いゲーム機だった
「ジャーン」
自慢げに見せた画面には、犬が一匹寝転がっている
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
垂れた耳が実に愛らしい
「名前を呼ぶとこっちに来るんだよ」
そう言って祐巳さまは画面に向かって名前を呼ぶ
「トウコ、トウコ」
「何で私の名前を付けてるんですか」
「トウコは良い子だね」
無視して画面の犬の頭を撫でている
「お手、トウコは本当に賢いね」
画面の犬が頭を撫でられて気持ちよさそうに目を瞑っている
ふと祐巳さまをみるとじっと私の顔を見ている
「瞳子ちゃん、お手」
「あっ」
反射的に祐巳さまの出す手の平に手を乗せてしまう
「い、今のはなしですわ〜」


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