【1487】 可南子の進化の止まらない水虫  (HLJINN 2006-05-18 02:44:47)


初挑戦です。いきなりこんなのが出てしまいましたが、何とかやってみます。



「乃梨子さん相談があるんだけど・・・・・」

放課後、薔薇の館へ行こうとしていた乃梨子は可南子に呼び止められた。

「ごめん、今日はちょっと。山百合会の仕事が溜まってるし」
「晩くなっても構わないから。じゃあ古い温室で待ってるわ」
「あっ、ちょっと!」

乃梨子の止める間もなく、可南子は去っていった。

「はぁ、しょうがない。志摩子さんに迷惑かけるけど、仕事は速めに切り上げるか」

そう呟くと乃梨子も教室を出て行く。
だが、2人は気が付かなかった。教室にはもう1人いたことに。

「可南子さんが相談・・・・・・。私にはしないなんて水臭いですわ!
 確かあの温室でしたわね?ふふ、待っていてください可南子さん。
 例えどんな難問であろうと私が解決して差し上げますわ!」

そう言うと彼女も教室を出て行った。






「ふぅ」

可南子は待っていた。唯ひたすらに乃梨子が来るのを待っていた。

「どうして私が・・・・・・」

可南子には今、乙女として深刻な悩みがあった。
母は仕事が忙しく、最近は顔も合わせていないので相談は出来ない。
と、残るは親友の乃梨子と瞳子だ。
だが瞳子は駄目だ。彼女は親友でもあるがライバルでもある。
こんな弱みを見せる事など絶対に出来ない。特に今悩んでいる事などは。
それに彼女に相談すると、祐巳に知られてしまう恐れが出てくる。
梅雨の事件から数ヶ月。特に学園祭を終えてからというもの、
祐巳は瞳子の扱いが格段にうまくなってきている。つい喋ってしまうかもしれない。
その点、乃梨子は口が堅いのでそこから誰かに知られる心配もない。
そういう訳で、可南子は瞳子には相談しなかったのだ。

ガチャッ

後ろで扉が開いて誰かが入ってくる。
この古い温室はどこか神聖視されているところがあり、
一般性とが待ち合わせに使うことはまずありえない。だとすれば・・・・

(乃梨子さんだ。山百合会より私を優先してくれた!)

教室で別れてからさほど時間は経っていない。
直ぐに温室に来たということは、つまりそういうことで。
可南子は嬉しくて、満面の笑みを浮かべて振り返った。

「ご「ごきげんよう可南子さん」・・・・・・・瞳子さん」
「水臭いじゃありませんの」
「な、なんのことかしら?」
「先ほどの教室での事です。乃梨子さんはお忙しいのですから、
 手を煩わせてはいけませんわ。大丈夫、私がきっと解決して差し上げますから!」

胸を張る瞳子を前に、可南子は泣きたくなった。
こうなった以上、もう自分には彼女を止めることはできないだろう。
直接関係はないことだったが、クラスメイトとしてマリア祭の時の彼女を見ている。
止められるとすれば、祐巳か紅薔薇さまの祥子しかいないだろう。
可南子は腹を括った。

「瞳子さん。これから相談する事は誰にも知られたくないの。1人の女として」
「わかっていますわ。2人だけの秘密ですわね(ぽっ」
「そ、そうよ。絶対に内緒だから(何で赤くなるのよ!)」
「それで?悩みはどのようなことですの?」
「実は・・・・・・・・」






「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・志摩子さんには、感謝しないとね」

乃梨子は温室を目指し駆けていた。
薔薇の館へ行ってみると、既に志摩子が来ていた。
そこで相談を持ちかけられたことを話すと、
仕事はいいから友達を優先しなさいと言ってくれたのだ。
そこで乃梨子は、早めに終わったら戻ってくるからと約束して可南子のもとへ急いだ。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・って、あれ?」

ようやく温室が見えたと思ったら、中から可南子が出てきた。瞳子に手を引かれて。
2人は乃梨子に気付くことなく、そのまま校門の方へと歩いていく。

「なんで瞳子が?」






瞳子に連れられるままに可南子がたどり着いた先。それは

「ようこそ我が家へ。歓迎しますわ可南子さん」
「お邪魔します。でも、なんだか無駄に大きな家ね」
「あら、祥子お姉さまの家なんてここの数倍はありますわよ?」
「そうなの?金持ちの考えはわからないわ」
「そんな事より早く上がってください。スリッパはこちらのものを使ってくださいね」
「こんな高そうなもの使っていいの?それにもし他の人が・・・・・・」
「大丈夫。直ぐに捨てますから」

理由はわかっているとはいえ、ちょっぴり傷ついた可南子だった。
その後瞳子の部屋に案内されて「準備があるから待っていて」と1人にされる事暫く。
お手伝いさんを引き連れ瞳子は戻ってきた。

「荷物はそこに置いてくださいまし」
「かしこまりましたお嬢様」
「一体何なの瞳子さん?」
「直ぐにわかりますわ」
「それでは細川様もごゆっくり」
「はぁ」

お手伝いさんたちは出て行った。さて、と可南子と向き合う瞳子。

「はじめますわ」


1.酢漬け療法

「それでは可南子さん。そこに足を置いてください」
「わかったけど・・・・・その手に持っているものは何?」
「うちにあったお酢ですわ」
「お酢?」
「えぇ。前にお酢が利くと聞いたことがありますの。
 ちょっとでも効き目がありますように最高級のものを使用しますわ」
「本当に効くんでしょうね?」
「大丈夫ですわ。瞳子を信じて」

ぬりぬりぬりぬり。
可南子の足にこれでもかとお酢を塗りたくる瞳子。
自分はちゃっかり分厚いゴム手袋をしているので、お酢の臭いが手に付くことはない。
反対に可南子の足は、お酢の臭いが染み込んでいく。

「さて、どうですの?少しは良くなりまして?」
「いや、何か余計痒くなった気がする」
「そうですの。では次を試しましょう」


2.ニンニク療法

「本当に効くんでしょうね、それ?」
「大丈夫ですわ。瞳子を信じて。料理長に聞いて一番香りのよい物を選びましたから」
「香りは関係ないと思うんだけど」

すりすりすりすり。
摩り下ろしたニンニクを、可南子の足にこれでもかと塗りたくる瞳子。
自分はちゃっかり分厚いゴム手袋をしているので、手にニンニク臭が付くことはない。
反対に可南子の足は、お酢とニンニク臭が合わさってそれはもうすごい臭いが。

「と、瞳子さん?」
「どうしました可南子さん?」
「なんか・・・・さっきよりも痒みが増してきたような気がするわ。それに臭いし」
「そうですの。では次を試しましょう」


3.米ぬか療法

「さあ可南子さん。ここに足を突っ込んでくださいまし」
「・・・・・本当に効くんでしょうね、それ?」
「大丈夫ですわ。瞳子を信じて。これも料理長が30年かけて熟成した・・・・」
「そんな大切なもの、こんなことに使っていいの?」
「私にとっては可南子さんの方が大事ですから。さ、遠慮なくスブッと」
「わかったわ。じゃあ」

ぺたぺたぺたぺた。
置いた可南子の足に、これでもかとぬかを被せて覆っていく瞳子。
自分はちゃっかり分厚いゴム手袋をしているので、手にぬかが付くことはない。
反対に可南子の足は、お酢やニンニク、ぬかの臭いが混ざりすごい臭いが。

「と、瞳子さん」
「何ですの可南子さん?」
「今思ったんだけど、こういうのって直ぐに効果がでるものじゃないんじゃないの?
 暫く続けないと駄目なんじゃないかな。
 それにいくつも治療法を混ぜるのって反対に良くないんじゃない?」
「・・・・・それもそうですわね。迂闊でしたわ」
「だから今日はここまでにしましょう?時間も晩いしそろそろ帰らないと」
「では送らせますわ」
「助かるわ。それと、明日も治療手伝ってくれない?」
「もちろんですわ可南子さん!」
「・・・・・ありがとう、瞳子さん」






次の日
瞳子が教室に入ると、すでに可南子は来ていた。だが、何時もと様子が違う。
体育祭で活躍し、学園祭で棘がなくなった可南子は最近人気が急上昇し、
いつも数人のクラスメイトに囲まれているのだが、
今日は1人、『ぽつねん』と席に座っている。

(まさか可南子さん、避けられている?クラスメイトとはいえ、
 そして如何な理由があろうと可南子さんを悲しませる事はゆるしませんわ!
 でも大丈夫ですわ可南子さん。私が憑いていますから・・・・むふふふふふふ)

瞳子は微笑を浮かべながら可南子へと近づき、声をかけた。

「ごきげんよう、可南子さ・・・・・・って臭っ!」
「あぁ、ごぎげんよう瞳子さん」

可南子からは異臭が漂っていた。

「か、可南子さん。つかぬ事をお伺いしますが、その、この臭いは一体?」
「昨日ね、家に帰って気がついたの」
「え?」
「それでね、洗ったの。一生懸命洗ったの」
「はぁ」
「でも取れなかった!」

可南子はついに泣き崩れた。
突然の事に驚いた瞳子だったが、可南子の手を取り走り出す。

「私と可南子さんは保健室へ行ってまいりますわ!」






とりあえずベッドに座らせて、瞳子は可南子が泣き止むまでずっと抱きしめた。
ぽんっ、ぽんっ、と背中を叩きながら、落ち着くのを待っていた。
そして落ち着いてきた頃、瞳子は「ごめんなさい」と可南子に謝った。

「私の所為ですわね。昨日いろいろ試したから」
「そうじゃないわ。貴女は私の為にしてくれただけですもの」
「でも」
「デモもストライキもないわ。それより先生が来るまで話し相手をしてもらえない?」
「・・・・・えぇ、わかりましたわ」






その後、先生が来たので事情を説明した2人だったが、こっぴどく怒られてしまった。
そして先生に連れられて病院へ行き、診断してもらったのだが、ここでも怒られた。
なんでも、ニンニクやお酢の所為で足がかぶれていたらしい。
あのまま自分達で治療を続けていると大変な事になったそうだ。


病院へ行ったり薬局で薬を買うのが恥ずかしかったから、
親友に相談して何とか自分達で治そうとした可南子。
結局は病院へは行くことになり、怒られもして余計恥をかいた。
しかもクラスメイトには足の臭い女と認識されてしまい、これは乙女として散々だ。



これをご覧の皆さんも、『水虫かな?』と思ったら、
恥ずかしがらずに市販の薬を利用するか、できれば病院へ行きましょう。
素人判断は危険です。1度ちゃんと診てもらいましょう。
また、「痒い」などの症状が現れる時のみ薬をぬるといったやり方はせず、
症状が治まってからも毎日サボらず1ヶ月は塗り続けましょう。
皮膚細胞は約1ヶ月で生まれ変わるので、1ヶ月続ければほぼ間違いないそうです。



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後書きのようなもの

とある水虫サイトを参考に書き上げました。
しかし・・・・・マリみては難しい。うまくキャラが動かないというか。
尻切れトンボ感が否めない。
「可南子はこんな泣き虫な子じゃない!」とかそう言う意見はなしの方向でお願いします


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