【1489】 女になった祐麒人生は暗い  (HLJINN 2006-05-18 21:20:00)


折角このようなタイトルになったので、【No:1487】の続きということで。
設定として、ROM人さんの【No:624】および【No:637】を勝手に参考。
ROM人さんごめんなさい




「祝部 祐麒です。今日からよろしくお願いします」

オッス、オラ祐麒!今日からリリアン女学園高等部高等部1年椿組に転入することになったんだ。
え?どうしてこの1月の中途半端な時期に転入して来たのかって?大体お前男だろうって?
これには深い理由があるんだよ・・・・・・・。






話は1ヶ月ほど遡る。

ず〜〜〜〜〜ん

擬音で表すとこんな感じだろうか?現在、ここ薔薇の館には重苦しい空気が漂っている。
発生源はいつも元気でニッコニコ!紅薔薇の蕾こと福沢祐巳である。
百面相といわれ、ころころと変わる豊かな表情もなりを潜め、今見えるはまさに絶望。
普段とはまるで正反対のその様子に、一緒にいる黄薔薇、白薔薇ファミリーまでも暗くなっている。
ちなみに、祥子は私用がある為に数日学校を休んでいる。
白薔薇ファミリーは、祐巳に気付かれないようになにやら話していた。

「志摩子さん。祐巳さまはまだ落ち込んだままなんですか?」
「ええ。私も由乃さんも何とか元気付けようとしたのだけど・・・・・。
 問題が問題だけに、ね。どうしようもないのよ」
「確かに。はぁ・・・・・・あの2人もやってくれたわ」
「でも彼女達に非はないわ」
「それはわかってるけど。最近仲がいいとは思っていたけど、まさかあんな事になるなんて」






さらに遡る事数日。
12月に入り福沢祐巳は焦っていた。最近瞳子と話をしていないのだ。
学園祭の終わり、祥子に「妹をつくらんかい」と言われ、
自分なりに悩んだ結果、相手としてうかんだのが瞳子だった。

(瞳子ちゃんとならうまくやっていけそうな気がする)

そう考え、善は急げと探しているのだが、タイミングが悪くここ数日会うことが出来なかったのだ。
そのうちよくない話を耳にした。
瞳子と可南子が11月初めの学園祭から最近、特に仲がよいというのだ。
それだけなら微笑ましい事なのだが、先月瞳子が可南子の家に泊まりに行ったさい、
可南子の父親もいたらしいのだ!
彼の噂なら聞いている。好みのタイプには見境なく襲い掛かり、脅威の命中率を誇るらしい。
そんな訳で悶々と日々を過ごしていた祐巳だったが、放課後、薔薇の館で乃梨子から伝言をうけた。
なんでも、瞳子が話したい事があるらしく、仕事が終わり次第例の温室へ来て欲しいとのこと。
・・・・・・何かとてつもなく悪い予感がする祐巳だった。






「お早かったですわね祐巳さま」
「瞳子ちゃん・・・・・・それに可南子ちゃんも?」
「お久しぶりです祐巳さま」
「そうだね。ところで話したい事って?可南子ちゃんも関係があることなの?」
「えぇ。大いに」

そこまで聞いて、祐巳の悪い予感は、強くそして確実なものになってゆく。
顔色も段々と青ざめてきた。

「最近噂にもなっているので聞いているかもしれませんが、先月可南子さんの家に泊まりに行きましたの。
 その時、可南子さんのお父様がいらしていて」
「・・・・・・そう。それで?」
「その、まぁいろいろありまして。あれから1ヶ月以上経ったのですが、その」

瞳子は顔を真っ赤にして下を向き、恥ずかしそうにもじもじしている。

「こないんです。それで可南子さん一緒について来てもらって病院へ行ったのですが、
 まだ1ヶ月と少しなので絶対にとはいえないそうですが、ほぼ間違いないだろう、と」
「・・・・・・つまり?」
「赤ちゃん、できましたの」

瞳子はイヤンイヤンと首を振りながら嬉しそうにそう言った。

「そ、そうなんだ。あはははははははは・・・・・・お、おめでとう」
「ありがとうございます祐巳さま(ぽっ」
「本当に情けないです」
「可南子ちゃん?」
「前回殴ってやった傷もまだ癒えていないというのにこのていらく。
 さすがにこれ以上妹が増えないように、先日新潟へ行ってしこたま殴ってやりました。
 メリケンつけて、それはもう局部を集中的に」
「た、大変だね可南子ちゃんも・・・・・・・・」

可南子は何も言わずに「ニコリ」と微笑んだ。
このままいけば彼はいずれ殺されるんじゃないかというくらいの迫力に満ちていた。
ここまでの話で、祐巳の頭はオーバーヒート。真っ白だ。
瞳子の話は続く。

「これからのことなんですけど、来年には学校を辞めて育児に専念しようと思ってますの」
「え!学校辞めちゃうの!?」
「大きなお腹で学校へ通いたくはありませんし。胎児にも悪いですし」
「私は、育児が落ち着くまで休学をしようと思っています」
「可南子ちゃんも!?」
「はい。乃梨子にはもう話をしています」
「そんな・・・・・」

祐巳が絶句するなか、瞳子の話は続く。

「ねぇ祐巳さま。私、実は祐巳さまの妹になりたかった」
「・・・・・」
「生意気にも、私が支えてあげなければと考えていました」
「・・・・・・私もそう思ってる」
「でも、祐巳さまなら大丈夫ですわ!きっと直ぐにすばらしい妹がみつかりますわ!」
「いや、だから私は瞳子ちゃんが」
「それでは祐巳さま。これから話し合いの為新潟へ行きますので、本日はこれで」
「話し聞けよオイ」
「では可南子さん、参りましょう」
「ちょっと」

祐巳が止めるまもなく瞳子たちは去っていった。

「あはっ、あははははははははははは」

温室には祐巳の乾いた笑い声が響いた。
それからずっと祐巳は落ち込んでいるのだ。






「ちょっと令ちゃん。何か手はないの?」
「無理言わないでよ由乃」
「まったく。役立たずなんだから」
「由乃ぉ〜」

このまま祐巳が立ち直るまでどうしようもないのか?
みんながそう思った時、救いの女神が舞い降りた。

「いつまでうじうじしているの、祐巳?」
「・・・・・・お姉さま」
「祥子?」
「瞳子ちゃんだけが妹として相応しいという訳ではないでしょう?」
「ですが、私は瞳子ちゃん以外にはいないと」
「違うでしょう祐巳。もう1人、あなたの妹として相応しい人がいるはずよ」
「可南子ちゃんですか?」
「いいえ。もっと身近なところによ。わからないかしら?」
「・・・・・・考え付きません」
「はぁ、仕方がないわね。連れてきたから会ってみなさい。
 大丈夫、きっとピッタリだから。さぁ、入ってらっしゃい」

祥子の言葉に、みんな入り口の方を注目する。
そこから入ってくるのは1人の乙女。
注目されている所為なのか、顔を真っ赤にしてうつむいている。
髪は茶色がかった黒髪で、令よりも長いがショート。背はそれなりに高い。
どことなくタヌキに似ている顔は愛嬌があり、まるで祐巳のようで・・・・・

「ってお姉さま?祐麒に女装させたところで妹にはできませんよ」
「何を言っているの祐巳。この子は祝部祐麒さんよ」

祝部?母の旧姓ではないか。

「わかりましたお姉さま。名前のことはひとまず置いておきましょう。
 ですが、男は妹には出来ませんよ」

祐巳の意見に、みんなはうんうんと頷く。
だが祥子は不適に笑うと

「何を言ってるの?祐麒さんは女の子よ」
「は?」
「だから、祐麒さんは女の子よ」

ちょっと待て。目の前にいるのはどう見ても福沢祐麒だ。
いくらなんでも祐麒がいきなり女の子には・・・・・・はて?
そういえば最近祐麒の姿を見ただろうか?
そして、小笠原の力を持ってすれば、数日で男を女に改造するのは簡単な事ではないのか?

「まさか・・・・・・」

祐巳は、震える手を祐麒へと伸ばす。

むにゅむにゅ

「あっ」

祐麒の口から悩ましい声が。

「ある・・・・・・しかも私より」

そして下の方へと手を伸ばすと

「ひあっ!」
「ない!アレがない!」

祐巳は、信じられないといった様子で首を振りながら後ずさった。

「祐麒、どうして?」
「・・・・・・わからないんだ。学校の帰りに柏木に拉致されて。
 クスリ嗅がされて眠らされて。さっき目が覚めたらこんな体に・・・・・・」

どうしてだろう?己の身に降りかかった不幸に、
自嘲気味に笑った祐麒に何故か色気を感じてしまい、祐巳はドキドキした。

「とりあえず」
「はい?」
「責任とってねお姉さま♪」
「・・・・・・はふぅ」

祐巳は、とうとう現実を受け止めきれなくなって気を失い倒れた。






というわけで、福沢祐麒改め祝部祐麒は祐巳の従姉妹として1年椿組に転入する事になったわけさ。
教壇から見渡すと、乃梨子ちゃんや瞳子ちゃん、それに可南子ちゃんが生暖かい目でこちらを見ている。
はぁ、俺はこれからどうなってしまうのだろうか?
とりあえず、折角だからと体を狙ってくる柏木先輩や聖さんから貞操を守るすべを身につけないとな。
・・・・・・一刻も、早く。いやマジで





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後書き

何かもうごめんなさい。
特にROM人さん。勝手に設定を利用してすいませんでした
※リンクの間違いを修正。がらざふさんありがとうございます


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