※下ネタ注意報発令中!
福沢家、とある休日の夕刻の事
「・・・・・・何で祐巳が俺の部屋にいるんだよ」
「ん〜?あっ、お帰り祐麒」
福沢祐麒は部活動に所属していない。
だが生徒会会長なので、体育祭を目前に控えたこの時期は、いわゆる休日出勤はあたりまえなのだ。
今日も疲れきって帰ってくると、祐巳が祐麒のベッドに横になり、何か読んでいた。
・・・・・だらけきったその姿が、疲れた祐麒をイライラさせる。
「ねぇ、祐麒。このジョジョって面白いね!」
「そうだな」
「読み終わるまでここにいていい?」
「読み終わるまで?今どこまで読んだんだ?」
「んっとね、アバ茶?が出てきたところ」
「あのなぁ」
祐麒は実はジョジョファンである。以前渋谷で開かれた「ジョジョ立ち」企画に参加したほどだ。
そんな訳で、全巻とも持っているのだ。
現在第6部のラストまで発売されているので、読み終わるのは何時になる事か。
「・・・・・勝手にしろ」
「うん勝手にするよ」
そう言うと、祐巳は視線を戻し再び読み始める。
こうなるといくら抗議しても無駄だ。無視して読み続けるだろう。
暫く無言で祐巳を見ていた祐麒だったが、おもむろに服を脱ぎ始めた。
「ってちょっと!何してんのよ祐麒!」
「何って、汗かいたから着替えるだけだよ。自分の部屋だし問題ないだろ?」
「あのね。年頃の乙女がここにいるでしょ!」
「そんなに嫌なら出て行けばいいじゃないか。この部屋から」
「私はここで読みたいの!」
「じゃあ読めばいいだろ?俺は遠慮なく着替える」
そう言うと、祐麒はベルトをはずしズボンに手を掛けた。
「んもうっ!祐麒のバカ痴漢変態シスコン!」
祐巳はプンスカ怒りながら部屋を出て行った。
「そこまで言うこと無いだろ。でもこれでゆっくりできるな。
しかし・・・・・あぁやっぱり。食べカスだらけだ」
祐麒のベッドの上にはお菓子の食べカスが落ちていた。ポテトチップスの袋もある。
祐巳は本を読みながらベッドに横になり、お菓子を食べるのが大好きだ。
だが、寝ながら食べると食べカスをたくさん落とす事になる。
自分のベッドを汚すのは嫌なので、たまにこうして祐麒のベッドで本を読むのだ。
祐麒は食べカスを払い落とすとベッドに横になった。
体育祭の準備や乱闘騒ぎの所為で今日は疲れた。夕食は食べなくてもいい。
風呂も明日の朝入ろう。今は一刻も早く眠りたい。そう思いながら。だが
「・・・・・・くっ!祐巳の匂いがして眠れない!」
ベッドからは祐巳の甘い香りが。結局、祐麒はその日悶々としてあまり眠る事が出来なかった。
明けて月曜日の放課後。生徒会室へ向かい歩いていると
「あっ、祐麒!」
「祐巳!?」
何故か祐巳がそこにいた。山辺先生を伴って。
「何で祐巳がここに?」
「ほら、花寺の体育祭が近いでしょ?そのお手伝いの事でなんだけど確認しておきたいことがあってね。
そっちは忙しいだろうし、祐麒だけリリアンに呼んで打ち合わせをしようってことになって。
こっちから出向いてもいいけど、お姉さまが男の人苦手だし」
「だからってお前が来なくてもいいだろ?危ないじゃないか。
それに連絡入れてくれればちゃんと行ったのに」
「呼び出しだと校門で待っててもらわなくちゃいけないでしょ?それじゃ時間かかるし。
それに大丈夫、連絡入れて山辺先生に案内してもらったから」
「だけど・・・・・」
「それよりほら。時間が惜しいからもう行くわよ。それじゃ山辺先生、ごきげんよう」
「ごきげんよう祐巳ちゃん。祐麒君、生徒会のみんなには僕から言っておくから心配しなくていいよ」
「ちょっと祐巳そんなに引っ張るなよ!それじゃ山辺先生おねがいしておきます」
祐巳と手をつなぐのは嬉しいが、嫉妬や何やらで周りの眼が痛い。
それはリリアンに入ってからも変わらずで、祐麒は視線にビクビクしながら薔薇の館に連れられていった。
確認は順調に進んでいった。
祥子から櫓(やぐら)に上がるのはいいが高さが中途半端だ。
どうせならもっと派手にして高さも5メートルくらいにしたらどうかなど意見が出たが、
そんな高さじゃ恐くて上がれないし予算的にも無理だとみんな反対した。
確認が終わると、みんなでお茶を飲みましょうということになり、
それなら折角だからお姉ちゃんが準備をするよ!と祐巳がお茶を用意する事になった。
何故か手伝いを断って1人で準備をすると言い張って。
祐巳がお茶を準備している間祐麒はみんなと話をしていたのだが、
あとから考えれば、この時ちゃんと祐巳の方を注意してみていれば、悲劇はまぬがれたのしれない。
「さ、皆さんお茶が入りましたよ。それとお菓子がありましたのでどうぞ」
祐巳はそう言ってみんなにお茶とお菓子を渡していく。しかし
「あれ?祐麒の分のお茶がない」
「俺はいいよ」
「それじゃ駄目だよ。待ってて、お詫びにとびっきりのを入れてあげるから」
「祐巳、それなら私の分を祐麒さんに」
「いいえお姉さま。私のミスですので」
「そう・・・・・」
実は祥子は善意から祐麒にお茶を譲ろうとしたのではなく、
祐巳のとびっきりというのが飲みたくてそう言ったのだが、ばっさりと切り捨てられがっかりだ。
祥子は落ち込んだ。
祐麒はそれに気がついたが、祐巳のとびっきりは譲れん!と思いだまっていた。
そして少し待っていると、祐巳がお茶を持って祐麒の席へ。
「はい祐麒。『すぺしゃる祐巳ぶれんど』略して祐巳茶よ。心して飲んでね♪」
「ありがとう祐巳」
そう言ってカップに口をつける。だがしかし!
(うっ!この臭いはまさか・・・・・・・ジョジョのアバ茶のつもりか!)
驚いて祐巳を見ると、みんなには見えないように薄く哂ったように見えた。
やっぱりか!と暫くその姿勢のまま固まっていると、祐巳は急に顔を伏せた。
「私のすぺしゃる、飲みたくなかったのかな?やっぱり他の人が入れた方がよかった?
そうだよね。私みたいなタヌキより、みんなみたいな美人さんが入れた方がいいよね」
祐巳がそう言うと、祥子からメデューサ級の殺人視線が。
みんなからも冷たい目で見られた。
「祐麒さん?いらないなら私が飲むけれど」
「いえ大丈夫です!飲みます!」
祐麒はそう言うと、一気に祐巳茶を飲み干した!
祐巳は驚いて目を見開く。
(ふふふ。残念だったな祐巳よ。他の人ならともかく、俺にとってこの祐巳茶は飲めないものじゃない。
いや、むしろもっと飲みたい!自他共に認めるシスコンの俺にとってはな。
あの時お前が言ったとおり、俺は変態シスコンなのだから)
祐麒は飲み終えると恍惚とした表情を浮かべ、みんなを少し引かせると潤んだ目で祐巳を見た。
「祐巳茶、美味しかったよ。最高だ」
「・・・・・そう。よかった」
こうしてお茶会は何事もなかったように進んで、
そろそろお開きにしようかという時、祐巳がそういえばと言い出した。
「あのね祐麒」
「なんだよ祐巳」
「さっきの祐巳茶のことなんだけどね。あれ山辺先生に協力してもらったんだ」
「協力?」
「うん。原料を、ね」
「原料・・・・・・まさか」
「そうだよ。でも美味しかったんだよね?じゃあ今度山辺先生に言っておこうかな。
これで花寺でも祐巳茶が飲めるよ。良かったね祐麒。折角だから柏木さんにも言っておこうかな♪」
祐巳はそう言って微笑んだ。
その言葉を聞いた瞬間、祐麒は目の前が真っ暗になり気を失った。
「な〜んちゃって。嘘だよって、聞こえてないか。ふふふ」
その後、祐麒が祐巳に逆らえなくなったのは言うまでもない。
汚い話でごめんなさい!だめだこりゃ。次、いってみよう
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後書き
祐巳茶でアバ茶を連想し、こんな話に。
知らない人の為に解説。
アバ茶→ジョジョの奇妙な冒険(第5部)で、
アバッキオという人が主人公ジョルノに飲ませようとしたお茶。
差し出されたティーカップには、紅茶ではなくアバッキオの尿が入ってました。