それはある日の昼下がりのこと。
祐巳さんと一緒に、志摩子さんの美化委員のお手伝いで花壇を弄っていたときのことだった。
「なにこれ?」
由乃はスコップで掘り返した土の中に、それを見つけた。
「なになに?」
「どうしたの?」
由乃の声に、祐巳さんと志摩子さんがすぐに来てくれる。何だか、友達っていいなぁ。
「これよ」
由乃は今、自分が掘り出した物を指差す。
それは大きな岩のようでもあるのだが。
「なにこれ?岩」
「触ってみて」
「……わっ!!生暖かい?!それに脈打ってるよコレ!!」
そう。岩とも思えるそれは、祐巳さんが言ったように温かく脈を打っていた。
「少し、怖いわ」
志摩子さんの意見はもっともだが……。
「掘り返してみようか?」
「ええ?!」
「やめたほうが、いいのでわ?」
「いいからいいから」
明らかに嫌がっている二人に無理やりスコップを持たせ、岩らしきものを掘り出させるのを手伝わせる。
……。
…………。
「はぁはぁ」
「もう無理だよ、由乃さん」
「そ、そうね」
だが、岩は予想以上に大きく三人では少ししか掘り出せない。
「どうしよう?」
「もう、諦めるしかないと思うわ」
志摩子さんの意見はもっともなのだが、何か悔しい。だが、これ以上何も出来ないのも事実だ。
そこに祥子さまが来られた。
「ごきげんよう、三人ともお疲れさま。それで、作業は進んでいるのかしら?」
由乃は、ハッと閃く。ダメでもともとだ。
「あの、祥子さま」
それから数時間後。
夕暮れの校舎の側には何台もの重機が作業をして、あの物体を掘り出していた。
由乃が、祥子さまを説得……爆弾かもとか脅した……すると、祥子さまはすぐさまヘリで重機を運びいれ作業を開始。
驚いてやってきたシスターたちを説得しつつ作業を進めついにそれを掘り出した。
それは大きな卵の形をしているが、血管のようなものが卵の表面に浮かび、その中に人のような姿が見える。
「なにコレ?」
騒ぎを聞きつけてきた令ちゃんが驚きの声を上げる。
「私、コレ知っているかも」
由乃の言葉に、周囲にいた皆が注目する。
「コレは……。
「「「「「「「コレは?」」」」」」
「巨神兵よ!!」
「「「「「「「はっ?」」」」」」
ビッシっと腰に手を当てて巨神兵の卵を指さした由乃に、皆、呆れていた。
「それで、その巨神兵って何するの?」
「それは当然……」
「「「「「「「当然?」」」」」」
そんなの注目されると恥ずかしいなぁ。
「甦れ!!……な〜んて叫んでみたりして」
て、皆、なんだか引いてるし。
「やだなぁ、そんな簡単に出てくるものですか」
まったく、馬鹿なSSじゃあるまいし。
「由乃さん!!後ろ!!」
――ビッシィィ!!
由乃が卵を見ると、ヒビが入り中の液体が噴出している。
「しまったぁぁぁ!!!馬鹿なSSだった!!!」
由乃の声が響く中、卵が割れ。中から赤黒い人のような物が出てくる。しかし、その表面はどろどろ。
「く、腐ってやがる!!」
令ちゃんの声が響く。
「由乃さん!!コレ、どうするのよ」
「どうするって言われても、ここは一つ!!なぎ払え……なんてね」
――ピッカ!!どぎゅるるるる!!!!!!!ドォオオオオンンンンンン!!!!!!!!!
花寺が炎の中に消えた。
「……ど、どうしよう?」
由乃が振り返ると、そこには令ちゃんしかいなかった。
「あれ?皆は……」
令ちゃんはゆっくりと空を指差す。そこにはヘリに乗って逃げる祐巳さんと祥子さま。
「ひどーい!!友人だと!!親友だと!!思っていたのに!!」
由乃がそう声を張り上げた瞬間、大地が揺れ始める。
「な、なに?地震??」
「違う!!由乃、あれ見て!!」
令ちゃんが指差した先、そこには赤い絨毯が広がっていたのだが。
「なに?アレ??山が、真っ赤な山が動いている?」
「こ、これはオーム?!どうしてこんなところに??」
「ふふ、こんなこともあろうかと用意していたのよ」
そう言って、お姉さまは向こうから向かってくる一台のヘリを指差す。
祐巳が目を凝らしてみると、その黒くスマートなスタイルのヘリの下には、痛々しい姿の子供のオームがいた。
「お姉さま!!なんてことをなさるのですか!!」
「でも、祐巳」
「でもではありません!!さぁ、早く。オームの子を群れに帰すのです!!」
「そんなことをしても、もう止まらないわ」
「それでは、私とあの子を群れの前に降ろしてください!!」
「祐巳!?」
「そうでなければ、このロザリオをここで!!」
「わ、わかったわ!!」
祐巳の脅しに祥子さまは操縦者に命令して、祐巳とオームの子を群れの先に降ろす。
「祐巳!!!!!!」
祥子さまの声が小さくなっていく。オームの群れは街を破壊しながら向かってきていた。
「ごめんね、ごめんね」
祐巳は、オームの子によるとその痛々しい姿に寄り添う、光沢のない深い色の制服がオームの子の青い血で、青く染まっていく。
その様子を、薔薇の館に逃げ込んだ乃梨子が見ていた。
「志摩子さん!!理不尽です、祐巳さまの制服が青く染まっていきます」
「乃梨子、そこにいるの?」
「え?志摩子さん」
乃梨子が志摩子さんの方を見ると、そこには壁に手をついて立ち尽くす志摩子さんがいた。
「志摩子さん、目が」
「えぇ、さっきの巨神兵の光にくらんでしまっただけだから少しすれば大丈夫よ。それより、私に教えて、祐巳さんはどうなったの?」
「あぁ、祐巳さま!!志摩子さん!!祐巳さまが、祐巳さまが!!」
祐巳さまの小さな体が、オームの群れの中に消える。
「祐巳さん!!巨神兵、何をしているのよ!!さっさとアレをなぎ払いなさい!!」
由乃は叫ぶが、巨神兵は再び光を放とうとして崩れていく。
「やっぱり腐っていた。わぁぁぁぁぁ」
「いやぁぁぁぁぁ」
由乃は、令ちゃん共々、腐って溶けた巨神兵の中に飲み込まれていく。
一方、薔薇の館。
「あぁ、志摩子さん……祐巳さまが、祐巳さまが」
祐巳さまが、オームの群れの中に消えると、オームたちの動きが止まり。赤かった目が青くなっていく。
「祐巳さんは、その命と引き換えに、リリアンを守ってくれたのよ」
「祐巳さま……あぁ!!志摩子さん!!祐巳さまが!!」
志摩子さんの言葉に、乃梨子が泣きそうに成ったとき。祐巳さまがオームたちの中に浮かび上がってくる。
「あぁ、祐巳さま」
オームの中に黄金の野が広がっていく。
その中に、祐巳さまがゆっくりと立ち上がった。
「志摩子さん!?祐巳さまが生き返った!!それになに?祐巳さま綺麗」
「乃梨子、私にも見えるわ……あれは金色の野」
「金色の野?」
「そう、その者、青き衣を纏いて、金色の野に降り立つべし……あぁ、伝説は本当だったのね」
「伝説って……なに?」
感動する志摩子さんを見ながら、乃梨子は感動もなく。呆然と見ている。
らん、らららんらん、らん、らららん、らん、らららら〜。らら、らららんらららん、らん、らららら〜。
「志摩子さん……歌が聞こえる〜〜」
乃梨子が一人、着いてこられない中、志摩子は感動し。
祐巳は、金色の野で踊っていた。
「あは、うふ、うふふふふふ」
「祐巳〜」
「お姉さま〜」
祐巳は金色の野から、ヘリのお姉さまに手を振る。
その様子を、マリアさまが見ていた。
言い訳。
某世界的に有名な作品のクロス?……ネタ物?です。
あまりに有名で誰かやっていそうなので、ダブったらごめんなさい。
いや、でも、あの作品いいわ。それでこんなもの書くなんて……ごめんなさい。
場合によっては消去します。
『クゥ〜』