【1542】 エロ・フェティダ引き継がれると決まっている  (六月 2006-05-27 01:39:58)


今年も無事に学園祭が終わり、そろそろ引退、そして入試・卒業を考える時期が近づいてきた。
3年生も後半となり、リリアン大学部に優先入試を決めている分気楽に隠居ができる。
なんて考えてる時にこの凸は・・・。
「なにか言った?由乃ちゃん」
「いいえ、何も言ってませんわ、江利子さま」
しかし、私を弄るのに飽きないんだろうか?いつまで付きまとわれるやら。
今、薔薇の館には私と江利子さま、令ちゃん、菜々の4人。黄薔薇ファミリー4代揃っている。
「まったく、令がしっかりしてないから私まで出てくることになってしまったわ」
「すみません、お姉さま」
「黄薔薇の宿命を話しておかないなんて、抜け過ぎよ令」
黄薔薇の宿命?令ちゃんが何か申し送りして無かった訳?
もう、しっかりしてよね!
「由乃ちゃん、それから菜々ちゃんだっけ?これは真面目な話なんだから心して聞いてちょうだい」
「・・・はい」
むむ、江利子さまの目に珍しく真面目な光が宿っている。いつもの悪ふざけじゃ無いということか。
「まず、令が年下・・・限度考えろって思うけど・・・の男の子とお見合いをしたのは知ってるわね?」
「えぇ、令さまが卒業間際にリリアンかわら版に大スクープだと載っていたので、中等部にいた私も覚えています」
菜々の言葉に江利子さまが頷く。
「その前の年の『イエローローズ』騒動のことは?」
菜々は「いいえ」と首を横に振ったが、私は頷き深いため息を吐いた。
「覚えていますよ。黄薔薇さま援助交際か?って大騒動でしたから」
「そうね、実際は私のバカ親とバカ兄達の暴走と、私が山辺さんと恋に堕ちただけの話だったけど」
いや、「だけ」というには話が大きくなり過ぎていました。
「そして、その前年。私のお姉さまは花寺にいた幼なじみと駆落ち騒動を起こされたの」
は?
「その前は卒業前に電撃的な婚約騒動、その前は妊娠疑惑、その前は・・・」
「ちょ、ちょっと待って下さい!それって全部黄薔薇さまなんですか!?」
「そうなのよ、由乃。これは私も聞かされてきた話だから」
令ちゃんは知ってた?
というか、代々の黄薔薇さまは卒業間際に・・・。
「あなたの想像通りよ由乃ちゃん。黄薔薇家は卒業間際になると男絡みの騒動を引き起こすのよ」
「そんなバカな。ありえないですよね、お姉さま。・・・お姉さま?」
すぐ横で聞こえる菜々の声も私の耳に入らない。
そんな・・・もしかして私も?アレがバレるなんてことが・・・。
「由乃ちゃん、あなた最近・・・」
と江利子さまが何かを言おうとした時。
ばぁん!だだだだだだ・・・ずだん!どばん!がごん!・・・・・・だだだだだだだ!ばぁぁんっ!!
「由乃さん!大変!!」
会議室のビスケット扉を叩き壊す勢いで祐巳さんが飛び込んできた。って、祐巳さん、階段落ちなかった?頭から血吹いてるよ。
「これ、これ、どーいうことよ!!」
と一枚の紙を突き出してくる。よく見るとそれはリリアンかわら版だ。
ものすごーーーーく嫌な予感がするが、受け取って記事を読み・・・固まる。
「・・・・・・!!」
「どうなさったんですか、お姉さま?ちょっと拝見します・・・・・・えぇぇーーーーー!?」
私の手からリリアンかわら版を引ったくった菜々が、記事を読みすさまじい驚きの声を上げた。というか、剣道部で鍛えた声量は大きすぎ。
かわら版はさらに菜々の手から令ちゃんへと渡る。
「どれどれ・・・『黄薔薇さまの休日、花寺生徒会長とのラブラブ密会』?えーっと『週末のK駅前の喫茶店で黄薔薇さまを発見。花寺学院生徒会長と親密に語らい合う姿は恋する乙女のそれであり・・・云々』か」
しかもご丁寧に一つのグラスから二本のストローでジュースを飲む二人の写真がトップを飾っていた。
「由乃さん、いつの間に祐麒と付き合ってたの?」
祐巳さんが私の顔をのぞき込むが、全く反応できない・・・何コレ・・・江利子さまの言葉が正しかったの?
呆然と立ち尽くす私の両肩に、江利子さまと令ちゃんが手を置きこう言った。
「「おめでとう!あなたもこれで名実ともに完璧な黄薔薇さまよ!!」」
こ、こんな称号なんて要らなーーーーい!!



「あ、再来年は菜々ちゃんに期待してるからね」
「そんな期待、しないで下さい!!」


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