【No:1518】を読んでぱっと思いついたもの。
「この温室にある植物の半分以上が薔薇なのよ」
「へえ、そうなんだ?」
志摩子さんに言われて、乃梨子は周囲を見回した。
なるほど。よく見れば、確かにたくさんの種類の薔薇がある。
「いろいろな種類があるね」
乃梨子がそれらを見て感心していると、志摩子さんが一本の見慣れない花を指差した。
「これがウサ・ギガンティア」
「これが? ……………うさっ!?」
それは、白くてとげがたくさんあって、目を引くのになぜか儚い印象のある花だった。
「ときどき黒いのよ」
志摩子さんは誇らしげに言った。
ときどきなのか……、と乃梨子は思った。
ウサギの耳みたいな花びらがゆれていて、今にも歩き出しそうだった。
「この花のこと、覚えておいてね」
忘れられるはずがない……、と乃梨子は思った。