【1589】 サルでもわかるウサギガンティア  (篠原 2006-06-06 19:07:06)


【No:1518】を読んでぱっと思いついたもの。


「この温室にある植物の半分以上が薔薇なのよ」
「へえ、そうなんだ?」
 志摩子さんに言われて、乃梨子は周囲を見回した。
 なるほど。よく見れば、確かにたくさんの種類の薔薇がある。
「いろいろな種類があるね」
 乃梨子がそれらを見て感心していると、志摩子さんが一本の見慣れない花を指差した。
「これがウサ・ギガンティア」
「これが? ……………うさっ!?」
 それは、白くてとげがたくさんあって、目を引くのになぜか儚い印象のある花だった。
「ときどき黒いのよ」
 志摩子さんは誇らしげに言った。
 ときどきなのか……、と乃梨子は思った。
 ウサギの耳みたいな花びらがゆれていて、今にも歩き出しそうだった。
「この花のこと、覚えておいてね」

 忘れられるはずがない……、と乃梨子は思った。


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