◇がちゃS一周年のお祝いと感謝の気持ちを込めて管理人様をメインの読者に見据えた物を書いてみました。どうぞお納めください。◇
◇ただし、見据えた方向については保証いたしかねますのでご了承くださいませ(汗)。◇
「た〜るっ♪」
「『た〜るっ♪』、ってなんなんですかっ!? どうして此処、薔薇の館にこんな物が在るんですっ?」
「この中にはね、いっぱいに「うに」が詰まってるんだよ!」
「ううう、うに!? い、一体全体どういう理由でそんな物が詰まってないといけないんですか」
「るんるんるん♪ あ、この鼻歌、藤組の生徒に習ったんだ〜」 パカリ(←蓋を開ける音)
「話をまるで聞いてませんし……、ってまた勝手に開けてしまっては……」
「へっ?」
「お姉さま? どうしたんですか?」
「……入ってないよ、うに。なーんにも入ってない。あれぇ? ねえ、なんで?」
「――こほん。えーと、そもそもうにが詰まっているという発想からして間違っているんです。だいたいそんな物が詰まってたら相当な重さですからとてもこの二階まで運んでこれるとは思えないですし、だいいちそんな沢山あったらすごく生臭いし」
「う〜ん……。あっ、そうだ。自分で採取すれば良いんだよね?」
「……はぁ?」
「ねぇねぇ、明日、近くの森にうに拾いに行こう?」
「いい、いきなりなにをっ!……? うに拾い? 森? 森、ってあの森ですわよね……。え〜と、あの、お姉さま? うには海に住んでいますが」
「行こう? ね?」 ニコニコッ(←狸が化かす擬音)
「ハイ、行きます。……はっ!? え、えっと。あっそうですわっ、お姉さまお一人で森に分け入るなんて迷子に成りに行くようなものだから放って置けませんの。それにこういう時支えになるのが妹の務めですから。しょうがないのですわっ」
「じゃあ、そっちもって」 ゴトゴト……(←樽を動かす音)
「(ス、スルー……泣)どうするんですか?」 ゴトゴト……(←同上)
「だってこれに詰めるんだから、持ってかないといけないじゃない」
「こ、これ持っていくんですかっ!?」
「うんっ♪」
「はぁぁ……。この樽、お姉さまのなのですか?」
「それは違うよ」
「はい?」
「これはぁ、『タル』じゃなくって、『た〜るっ♪』、なんだよ? さ、言ってみて」
「…………それに何の意味があるのか解りませんが、分かりましたわ。では改めて。この『た〜るっ♪』、お姉さまのなのですか?」
「ううん。違うよ。誰の物なのかな?」
「まあっ! それじゃあダメじゃないですかぁ。他人の物を勝手に拝借しては悪いですわ。これは置いておきましょう」
「え〜〜!? じゃあ、うに入れるものが何も無いよ。持って行こうよ?」
「だめですわ」
「ど、どうしよう……」
「ふふっ、大丈夫ですわ、お姉さま」 ゴソゴソ……(←何かを取り出す音)
「こっ、これ……!」
「フフフ。こんな事も在ろうかと、軽くて丈夫でたくさん物が入る背負いカゴを用意しておきましたの。どうぞお持ちくださいな」
「わあっ、すご〜い! ね、ね、アタノールは無いの?」
「アタ……?? それは聞いた事無いですけど、今度調べて手配しておく事にします」
「すごいすご〜い!! わ〜いっ、だ〜い好き♪」 ムギュッ(←ムギュッの音)
「――!! おおおお任せくださいませ。こ、この私に掛かればヴィラント山のドラゴンだって一突きですもの」 モジモジ……(←何か葛藤中らしい)
「よ〜っしっ、私もがんばろ〜! じゃあまずは予定を決めなくちゃね。えーと、この後はうちでお泊り会して――――」
§
「樽、いっぱいの……。樽いっぱいの銀杏。素敵ね」
「さ、さて、そろそろ帰――」 ガタガタッ、ガチャッ(←慌ててペンケースを落とした音)
「まあ乃梨子。明日の収穫をあなたも手伝ってくれるのね」 ニッコリ(←魔法)
「えっ、は、はあ……。あ、あのでもあの樽いっぱい位なら志摩子さん一人でも軽いんじゃ……」
「違うらしいわよ」
「はい?」
「樽ではなくて、『た〜るっ♪』、なのだそうよ? さ、乃梨子も言ってみて」
「た、『た〜るっ♪』……」
「さあ、うちに帰って準備しましょう。今日は泊まっていって」
「ううっ……」 モジモジ……(←天国と地獄)
§
「樽、いっぱいの……菜々。な〜んて……」
「…………!? って、な、なによそれっ! そこまで思い詰めてる訳じゃないもんっ。大体誰も居なかったら妹にしようってだけでそんなに大好きって訳じゃないしっ。今のは間違い、そう何かの間違い一時の気の迷いよっ! そ、そうね、私ならあの樽いっぱいの、じゃ無くってあの、『た〜るっ♪』、いっぱいの得物ねっ!! 刀や槍や弓や矛。それが良いわっ! そうと決まれば早速、刀千本狩りに出発よっ。確か京都鴨川の五条大橋で良かったのよね? う〜ん腕が鳴るわっ!!」
「よ、由乃〜ぅ」
「あ、令ちゃんも行く?」
「……良いけど。その代わり、もう一回言ってくれない?」
「ん? なんて?」
「『た〜るっ♪』、って。可愛かったよ」
§
「ああっ、ダメだわ……」 ガクリッ(←orz)
「あのコなら、『た〜るっ♪』、があったら自分から入ると思ったのに……。どうして入らないのかしら、解らないわ……」
「とにかく……、「『た〜るっ♪』ごとお持ち帰り」作戦、失敗なのね。残念だわ……」