【164】 山百合会の気の合う仲間と歯磨きする  (西武 2005-07-05 22:30:21)


「何なのこれ、志摩子さん」

今日は7月7日、山百合会でも七夕の飾りつけ。
手を休めて、短冊に書かれたそれぞれの願い事を覗いていた由乃さんがいきなり声を上げた。
「勝手に見ちゃだめだよ、由乃さん」
言いながらも、近づいて由乃さんの手元を見るとそこには謎の1文が。
すなわち、今回のタイトルである。
「いいのよ、祐巳さん。わたしね、館のみんなが大好きだから、もっと家族のような関係になりたいと思って書いてしまったの。でも、歯磨きはおかしいわよね」
「そんなことないよ、志摩子さん。わたしもそうなりたいもの」「あ、ずるい、祐巳さん。わたしだって」
「ありがとう、祐巳さん由乃さん」


「ねえ、祐巳さん」
「由乃さん、仕事しようよ」
「志摩子さんはさっき、わざわざ『気の合う仲間と』って書いてたよね」
「うん」
「気の合わない人もいるってことじゃない?」
「まさか」ええ?でもそういうこと?。
「誰かしらね。まあ、乃梨子ちゃんはとりあえず除外するとして」
そりゃ、自分で妹にしたんだしねえ。
「令ちゃんと祥子さまは、宗教裁判で恨まれてる可能性が高いわね」
…そうかも。
「祐巳さんだって、去年聖さまに大分かまわれてたから、相当やきもち焼いてても不思議じゃないわよねー」
「そ、それなら由乃さんにだってさっきのこととか仕事してないこととか、内心怒ってるかもよ」
「むむー」
「うーん」
「確かめるしかないわね。志摩子さんがあの笑顔の裏で何を考えてるか」


「どうやって?」「それはこれから考えるのよ」


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