がちゃSレイニーシリーズです。
このお話は篠原さんが書いた「【No:1274】親愛なるものへだから気になる」の続きとしてかかれています。
私は、誰もいない薔薇の館で、カップにお湯を注いだ。
一つ。二つ。三つ。
白い磁器のポットから静かにお湯が注がれ、三つのカップに満たされる。
私は、三つのカップにすっかりお湯が満ちるのを確認すると、左手の腕時計で時間を確認した。
早めに来なさいと言い聞かせたから、後10分以内には来るだろうと踏んで、紅茶の用意をする。
今日ここに祐巳に早く来なさいと言ったのは、彼女が、瞳子ちゃんに告白をしたから。
うまくいくにしても、振られるにしても、そのことを祐巳と話したかったから。
でも、昨日の様子だと、祐巳は瞳子ちゃんを妹として紹介してくれるだろう。
姉妹の契りというのは、恋愛感情にも等しいものだと思う。
私の場合は、祐巳の時も、お姉さまの時もほとんど一目惚れに近かった。
祐巳の場合は、おそらく、恋愛は空から振ってくるタイプではなかろうか?
いつも隣にいた何でもない人が、突然、恋愛の対象になるような。
実際瞳子ちゃんの場合はそうだった。
そして、紆余曲折はあったが、昨日、祐巳と瞳子ちゃんの想いは通じ合い、無事に姉妹になれた。
私としては、少し寂しいところだ。祐巳が私の妹というだけではなく、瞳子ちゃんの姉という立場になるのは。
でも、これは、しょうがないこと。これも、時の流れの一つなのだから。
いすに座り、ぼんやりと、湯気の立つカップをみていると、とんとんと階段を上る足音が聞こえてきた。
その音を合図に、私はカップとポットの中のお湯を流しに捨てる。そして、暖めておいたポットにティースプーン三杯の茶葉を入れ、改めてお湯を注ぎ、素早くティーコジーをポットにかぶせる。
私がティーコジーをかぶせたところで、ビスケット扉が開き、待ちかねていた人物が顔をのぞかせた。
「ごきげんよう。お姉さま」
「ごきげんよう。祐巳」
私は祐巳にそう挨拶して、いるはずのもう一人の人物を捜す。
「瞳子ちゃんは?」
「はい。えっと、お姉さまに合わす顔がないとかで、教室に行きました」
私はその言葉に私は眉をひそめた。
「祐巳の妹になったことは、私に顔向けできないことだと?」
「いえ、瞳子ちゃんはそんなこと考えてないと思います。瞳子ちゃんが、お姉さまに顔向けできないって言ったのはこのせいだと思います」
そう言って、祐巳は胸元からロザリオを取り出した。
瞳子ちゃんが所持してなければいけないはずのロザリオを。
私にはそれがどうしても理解できなかった。
「説明してもらえるかしら?」
私はそう言って、じっと祐巳の目をのぞき込んだ。